セラミックコンデンサの温度および電圧変動、またはご使用の4.7µFのコンデンサが0.33µFのコンデンサになる理由

セラミックコンデンサの温度および電圧変動、またはご使用の4.7µFのコンデンサが0.33µFのコンデンサになる理由

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要約

最新の小型セラミックコンデンサの現実から、データシートを常に読むことが求められます。このチュートリアルでは、X7RやY5Vなど、セラミックコンデンサのタイプ指定が電圧係数については何も示していない事情について説明します。特定のコンデンサが電圧下でどのように動作するかを本当に知るには、データをチェックする必要があります。

この記事と同様の記事が、2012年11月26日に「EDN」に掲載されました。

はじめに:驚くべき事実

数年前、これらの部品を25年以上も取り扱った後に、私はセラミックコンデンサについて新たな知見を得ました。当時、私はLED電球ドライバに取り組んでおり、そのプロジェクトのRC回路の時定数が明らかに正しくないようでした。

私は基板に実装した部品の中に間違った値があると考え、分圧器を構成している2つの抵抗器を測定しました。それらはまったく問題ありませんでした。次に、はんだを除去してコンデンサを基板から取り外し、測定しました。それも問題がありませんでした。念のため、新品の抵抗器とコンデンサを用意し、測定して実装しました。回路を起動させ、基本的な動作が正常であることを確認してから、RCの時定数の問題が解決したかどうかを確認してみました。結果はノーでした。

回路のテストは、自然な環境、つまり天井ライトの「缶」に見立てた筐体に収められたケース内で行いました。場合によっては、部品の温度が+100℃を大きく上回ることもありました。私がRCの動作の再テストに取りかかるまでの短い時間内でさえ、非常な高温になることがありました。次に考えたのは、もちろん、コンデンサの温度変動が問題ではないかということでした。

私はX7Rのコンデンサを使用していたため、この結論に疑いを持っていました。長年、+125℃以下では±15%しか変動しないことを知っていたからです。念のため、また自分の記憶を確かめるために、私は使用していたコンデンサのデータシートを見直しました。そこから、セラミックコンデンサについて考え直すプロセスが始まったのです。

セラミックコンデンサのいくつかの基本タイプに関する背景情報

データシートの内容を覚えていない人(事実上すべての人)のために、表1に、セラミックコンデンサの各タイプに使用される文字と数字、およびそれぞれの意味を示します。この表は、クラスIIとクラスIIIのセラミックについて説明しています。あまり詳細には立ち入りませんが、クラスIのコンデンサには、一般的なCOG (NPO)タイプが含まれます。これらは、表に挙げたものと比べて体積効率に劣りますが、環境条件に対してはるかに安定しており、圧電効果を示しません。一方、下の表に示したコンデンサは、特性が大きく変動することがあります。印加される電圧に応じて膨張したり収縮したりし、低音や高音の可聴音を伴う圧電効果を示す場合もあります。

表1. セラミックコンデンサのタイプ
1st Character: Low Temp 2nd Character: High Temp 3rd Character: Change over Temp (max)
Char Temp (°C) Num Temp (°C) Char Change (%)
Z +10 2 +45 A ±1.0
Y −30 4 +65 B ±1.5
X −55 5
+85 C ±2.2
6 +105 D ±3.3
7 +125 E ±4.7
8 +150 F ±7.5
9 +200 P ±10
R ±15
S ±22
T +22, −33
U +22, −56
V +22, −82

上に挙げた多数のコンデンサタイプのうち、私の経験上、最も一般的なものはX5R、X7R、Y5Vです。環境条件に応じた静電容量の変動がきわめて大きいため、Y5Vを使用したことはありません。

コンデンサメーカーは製品を開発する際、所定の温度範囲(第1と第2の特性)にわたって所定の変動幅内(第3の特性)でコンデンサを動作させる特性を持つ材料を選びます。私が使用していたX7Rのコンデンサは、−55℃~+125℃の温度範囲では±15%を超えて変動しないはずです。そうだとすれば、使用したコンデンサが不良品だったか、回路内でその他のトラブルが起きたかのどちらかでした。

X7Rがすべて同じというわけではない

このRCの時定数の問題が所定の温度変動幅をはるかに超えていたため、私はさらに深く掘り下げる必要に迫られました。静電容量の変動幅のデータとコンデンサに印加した電圧を考え合わせ、私が設定した条件で静電容量がどれくらい変化したのかを確認して驚きました。私は16Vのコンデンサを選んで12Vのバイアスで動作させていました。データシートによると、私の4.7µFのコンデンサでは、これらの条件下で得られる静電容量の標準値は1.5µFになります。これで、私のRC回路に起きていた問題が説明されました。

さらにデータシートでは、コンデンサのサイズを0805から1206に増やすだけで、これらの条件下における静電容量の標準値が3.4µFになることが示されていました。この点についてさらに調べる必要がありました。

村田製作所やTDK®;のウェブサイトには、さまざまな環境条件にわたってコンデンサの変動幅をプロットすることができる気の利いたツールがあります。私は、さまざまなサイズと定格電圧を持つ4.7µFのコンデンサを調べました。図1は、いくつかの異なる4.7µFのセラミックコンデンサについて、村田製作所のツールから抽出したデータをグラフにしたものです。X5RとX7Rの両タイプで、パッケージサイズが0603~1812、定格電圧が6.3VDC~25VDCのものを調べました。

図1. いくつかの4.7µFのコンデンサの温度変動幅とDC電圧の関係

図1. いくつかの4.7µFのコンデンサの温度変動幅とDC電圧の関係

まず、パッケージサイズが増大すると、印加DC電圧に応じた静電容量の変動幅が大きく減少することに注意してください。

第2の興味深い点は、特定のパッケージサイズとセラミックタイプ内では、コンデンサの定格電圧に意味がない場合が多いように思えることです。私は、25V定格のコンデンサを12Vで使用すると、16V定格のコンデンサを同じバイアスで使用した場合よりも変動幅が小さくなると予想していました。1206パッケージでX5Rのトレースを見ると、6.3V定格のコンデンサが、実はより高い定格電圧のコンデンサよりも優れた性能を示すことがわかります。もっと広い範囲のコンデンサを調べていれば、こうした特性が一般的であることがわかったでしょう。検討していた一連のコンデンサでは、セラミックコンデンサに一般的と言えるほどにはこうした特性が見られません。

第3の知見は、同じパッケージではX7RがX5Rよりも常に優れた温度感応性を持つということです。これが普遍的に成り立つかどうかはわかりませんが、私が調べたかぎりでは、まさにそのとおりのようです。

このグラフのデータを使用して、表2では、X7Rの各静電容量が12Vのバイアスでどれくらい減少したかを示しています。

表2. X7Rのコンデンサに12Vのバイアスをかけた場合
Size C % of Nom.
0805 1.53 32.6
1206 3.43 73.0
1210 4.16 88.5
1812 4.18 88.9
Nominal 4.7 100

1210のサイズに達するまでは、コンデンサのサイズが大きくなるにしたがって着実に改善することがわかります。1210を超えると、改善効果はありません。

私のプロジェクトでは、サイズが1つの懸案であったため、4.7µFのX7Rに対して利用可能な最小のパッケージを選択していました。私は知らなかったため、どのX7Rでも効果は同じと思い込んでいました。こうした認識が正しくないことは明らかです。私のアプリケーションに適した性能を得るには、大型のパッケージを使用する必要がありました。

正しいコンデンサの選択

実のところ、1210のパッケージは使用したくありませんでした。幸い、実装する抵抗器の値を約5倍に増やし、したがって静電容量を1.0µFに減少させるだけの自由度がありました。図2は、いくつかの16V、1.0µF、X7Rコンデンサと、対応する16V、4.7µF、X7Rコンデンサの電圧特性をグラフにしたものです。

図2. 1.0µFと4.7µFのコンデンサの性能比較

図2. 1.0µFと4.7µFのコンデンサの性能比較

0603、1.0µFのコンデンサは、0805、4.7µFのデバイスとほぼ同じ特性を示します。0805と1206の両方の1.0µFコンデンサは、1210、4.7µFのコンデンサに比べてわずかに性能が優れています。そのため、0805、1.0µFのデバイスを使用することによって、コンデンサのサイズを維持しつつ、バイアス下で定格の約30%の値ではなく、約85%の値までにしか降下しないコンデンサを手にすることができました。

しかし、ほかにも調べるべきことがありました。私はまだ困惑していました。私は使用していた誘電体が同じ、つまりX7Rであったため、X7Rのコンデンサすべてが同じような電圧係数を持つはずだという印象を持っていました。私は同僚であるセラミックコンデンサの専門家に連絡しました¹。彼は「X7R」として適格な材料は数多くあることを説明してくれました。実は、-55℃~+125℃の温度範囲で±15%というX7R以上の温度特性をデバイスに与える材料は、すべてX7Rと呼ぶことができます。また彼は、X7Rやその他のどのタイプにも電圧係数の仕様がないことを説明してくれました。

これは非常に重要な点なので、繰り返します。ベンダーは、コンデンサが温度係数の仕様を満たしているかぎり、電圧係数がいかに劣悪であっても、そのコンデンサをX7R (または、X5Rやその他あらゆるタイプ)と呼ぶことができます。

1人のアプリケーション技術者として、この事実から、経験豊富なアプリケーション技術者なら誰もが知っている古い格言(maxim)を思い起こさずにはいられません。それは、「データシートを読め」ということです。

製品の小型化に伴って、コンデンサベンダーは使用する材料の面で妥協せざるを得なくなっています。小型化しつつ必要な体積効率を確保するために、ベンダーは電圧係数の劣化を受け入れる必要に迫られています。もちろん、立派なメーカーほど、こうした妥協の悪影響を最小限に抑えようと最善を尽くしています。したがって、小型パッケージのセラミックコンデンサを使用する場合、また実はどのような部品を使用する場合でも、データシートを読むことがきわめて重要です。残念ながら、一般に入手可能なデータシートは簡略版であることが多く、この種の情報がほとんど記載されていません。そのため、より詳しい情報をメーカーに請求する必要があるかもしれません。

私があっさりと否定した、あのY5Vについてはどうでしょうか。余興として、一般的なY5Vのコンデンサを検討してみましょう。ほかのどのベンダーのY5Vと比べてもまったく劣っていないため、この製品のベンダーを名指しすることは差し控えます。6.3V定格、4.7µF、0603パッケージのコンデンサを選び、5V、+85℃での仕様を検討しました。5Vで静電容量の標準値は定格よりも92.9%下がり、0.33µFになります。このとおりです。この6.3V定格のコンデンサに5Vでバイアスをかけると、静電容量が定格の14分の1に低下します。+85℃でバイアス0Vでは、静電容量が4.7µFから1.5µFに、68.14%減少します。これで静電容量が5Vのバイアス下で0.33µFから0.11µFに減少すると予想するかもしれません。幸い、これら2つの効果がそのように複合することはありません。この特定のケースでは、5Vのバイアス下での静電容量の変化は、+85℃よりも室温での方が悪化します。明確にするため、この製品を0Vのバイアス下に置くと、静電容量が室温での4.7µFから+85℃では1.5µFに低下します。一方、5Vのバイアス下では、静電容量は温度とともに増加し、室温での0.33µFから+85℃では0.39µFになります。こうした事実から、製品の仕様を注意深くチェックする必要が実際にあることがおわかりだと思います。

結論

この教訓の結果、私は同僚やお客様に対してX7RやX5Rのみでコンデンサを指定するのをやめました。代わりに、私がデータをチェックした特定ベンダー製の特定の製品を指定しています。また、お客様に対して、実用目的で別のベンダーを検討する際は、こうした問題に直面しないようにデータをチェックするように促しています。

ここでのもっと大きな教訓は、お察しのとおり、例外なく毎回、「データシートを読め」ということです。データシートに十分な情報が記載されていない場合は、詳細なデータを請求してください。X7R、X5R、Y5Vなど、セラミックコンデンサのタイプ指定が電圧係数については何も示していないことも覚えておいてください。特定のコンデンサが電圧下でどのように動作するかを本当に知るには、データをチェックする必要があります。

最後に、ひたすら小型化が追求される中、これがますます日常的な問題になりつつあることを心に留めておいてください。