電源の冷却方法を最適化し、性能を最大限に引き出す

2026年06月05日

Figure 1

   

質問

電源に対し、より優れた冷却方法を適用すると、効率をはじめとする電源の性能を最大限に引き出すことが可能になるのでしょうか?

回答

電源の熱を適切に管理しなければ、効率が低下し、コンポーネントの劣化が加速し、電力密度が制限されてしまいます。設計プロセスの初期の段階で適切な冷却方法を選択すれば、より高い性能、より長い寿命を達成可能な堅牢性に優れる電源を実現できます。

Chill Out Your Power Supply: Efficiency Through Better Cooling

はじめに

熱は、電子機器の信頼性に影響を及ぼす主要な要因の1つです。電子機器の基幹を成す電源においても、熱は放置できるものではありません。実際、熱ストレスは電源の性能やシステム全体の健全性に大きな影響を及ぼします。電源は、民生用機器から航空宇宙システムまでの広範の用途において、電気エネルギーを安定した電圧に変換する役割を担います。よりコンパクトで性能の高い設計に対する需要が高まるにつれ、電力密度は向上し続けています。それに伴い、熱の管理は設計上のより重要な課題になっています。

電源における熱の発生源としては、パワー・トランジスタのスイッチングに伴う損失、誘導性部品の磁気損失、半導体のリーク電流などが挙げられます。それらによって生じる熱が適切に管理されていない場合、電気的性能の低下、平均故障間隔(MTBF:Mean Time between Failures)の短縮、コンポーネントの致命的な故障につながる可能性があります。したがって、負荷や環境の条件が変化した状態でも効率と信頼性を維持するためには、効果的な冷却戦略を適用することが不可欠です。

本稿では実績のある4つの冷却方式を取り上げ、それぞれについて詳しく解説することにします。それぞれの方式は、異なる動作環境や設計上の制約に適した特性を備えています。各方式に伴う技術的なトレードオフを理解することで、性能、信頼性、コスト、複雑さのバランスを考慮し、情報に基づいて的確な選択を行えるようになります。その結果、電源の安全かつ効率的な動作を実現することが可能になります。

電源の回路に潜む熱源

本稿では、主にスイッチング方式の電源を前提として解説を進めます。その種の電源回路では、主にMOSFETやダイオードといった半導体素子から熱が発生します。それらのコンポーネントは、導通損失とスイッチング損失によってエネルギーを消費します。また、トランスやインダクタなどの磁気部品も熱源になり得ます。巻線の銅損や磁性材料の鉄損(主に、ヒステリシス損や渦電流損)によって熱が生じるからです。抵抗素子や制御回路からも熱は発生しますが、通常、それらについては基本的な設計のレベルで適切に考慮されているはずです。以下、それぞれの熱源について詳しく解説します。

  • パワーMOSFET:多くのスイッチング電源では、パワーMOSFETが主要な構成要素として使用されます。MOSFETがオンの状態になると、抵抗成分に電流が流れて導通損失が発生します。また、オンの状態とオフの状態の間を遷移する際にはスイッチング損失が生じます。これらの損失によってパワーMOSFETは発熱します。スイッチング電源のスイッチング周波数が高い場合や大電流を出力する場合には、導通損失とスイッチング損失が著しく増加します。そのため、パワーMOSFETはスイッチング電源における主要な熱源になります。

    スイッチング電源におけるパワーMOSFETの導通損失は以下の式によって決まります。

    数式 1.

    各変数の意味は以下のとおりです。

    • Irms:MOSFETに流れるRMS電流
    • RDS(ON):ドレイン-ソース間のオン抵抗

    一方、パワーMOSFETのスイッチング損失は以下の式によって表すことができます。

    数式 2.

    各変数/定数の意味は以下のとおりです。

    • Vds:ドレイン-ソース間電圧
    • Id:ドレイン電流
    • ton、toff:スイッチング時の遷移時間
    • fsw:スイッチング周波数
    • 0.5:スイッチング動作の際に電圧と電流が線形にオーバーラップすることを前提とした定数
  • ダイオード:いわゆる整流ダイオードなどを含めて、ダイオードに電流を流すと順方向の電圧降下が生じます。それにより、導通しているダイオードはエネルギーを消費し、結果として熱が生成されます。また、ダイオードが高速にスイッチングする場合、追加の損失が発生します。これは、順方向のバイアスから逆方向のバイアスに移行する際、蓄積された電荷が除去される逆回復によるものです。

    ダイオードによる損失は以下の式で表されます。

    数式 3.

    各変数の意味は以下のとおりです。

    • Vf:順方向の電圧降下(シリコン・ダイオードでは0.7V、ショットキー・ダイオードでは0.3V)
    • Iavg:ダイオードを流れる平均電流
  • インダクタ/トランス:インダクタやトランスにおける発熱の主な原因は、巻線の抵抗成分による銅損と、磁性材料で発生する鉄損(主にヒステリシス損や渦電流損)です。これらの損失は、電流、周波数、磁束密度が高いほど多くなります。したがって、材料の選択と設計について慎重に検討しなければなりません。

    銅損は以下の式によって表されます。

    数式 4.

    各変数の意味は以下のとおりです。

    • Irms:巻線のRMS電流
    • Rwinding:巻線の直流抵抗

    一方、鉄損によって発生する損失は以下の式によって決まります(シュタインメッツの式)。

    数式 5.

    各変数/定数の意味は以下のとおりです。

    • k:シュタインメッツ係数(材料に固有)
    • f:周波数(単位は Hz)
    • B:ピークの磁束密度(単位は T)
    • α、β:シュタインメッツ指数(一般的にはα≒1.3~1.6、β≒2.0~2.8)
    • Vcore:コアの体積(単位は cm3またはm3
  • コンデンサ:コンデンサは、その等価直列抵抗(ESR:Equivalent Series Resistance)にリップル電流が流れる際にエネルギーが消費されて発熱します。この現象は、ESRの大きい電解コンデンサでより顕著になります。そのため、電源用のフィルタにおいて局所的な発熱が生じることがあります。コンデンサで発生する損失は以下の式で表されます。

    数式 6.

    各変数の意味は以下のとおりです。

    • Iripple:コンデンサを流れるリップル電流
    • ESR:等価直列抵抗
  • IC:ICは、パッケージ内のダイのジャンクション温度(接合温度)によってシステムに熱を伝えます。通常、ジャンクション温度は以下の式によって計算します。

    数式 7.

    各変数の意味は以下のとおりです。

    • Tj:ジャンクション温度(単位は ℃)
    • Ta:周囲温度(単位は ℃)
    • θja:ジャンクション(接合部)から周囲への熱抵抗(単位は ℃ /W)
    • Pd:消費電力(単位は W)

電源システムの冷却方法

上述したように、電流、電圧、スイッチング周波数が高くなると、コンポーネントにおける電力損失が増加し、温度が上昇します。そのため、電源の設計においては熱を管理する方法について十分に考慮しなければなりません。発熱への対策は、電源の効率の向上や長寿命化にもつながります。そのため、コンポーネントの慎重な選択、回路設計の最適化、効果的な冷却戦略によって損失を最小限に抑えなければなりません。以下では各種の冷却方法について解説します。

自然対流冷却

自然対流冷却は、浮力による空気の流れを利用する受動的な方法です。コンポーネントが発熱すると、周囲の空気の密度が低下します。それにより、その部分の空気が上昇し、代わりに冷たい空気が流入します。その結果、機械的な補助を使用することなく、発熱したコンポーネントの周辺に継続的に気流が生じる状態になります。図1は、この冷却方式における空気の流れを示したものです。

図1. 電源の自然対流冷却における空気の流れ
図1. 電源の自然対流冷却における空気の流れ

自然対流冷却の効果は、コンポーネントの配置、筐体の形状、周囲温度など、いくつかの要因に左右されます。冷却性能を高める方法の1つは、放熱面積を増やすことです。そのためには、ヒート・シンクが一般的に使用されます。そのフィンの形状、材質、配置などは、熱性能の最適化において重要な意味を持ちます。

自然対流冷却を利用することにはいくつかのメリットがあります。例えば、動作音が生じない、メンテナンスを最小限に抑えられる、可動部品を使用しないので高い信頼性が得られるといった具合です。このことから、自然対流冷却は、消費電力を抑えなければならないアプリケーションや、騒音あるいは機械的な摩耗が懸念される環境に最適です。一方、欠点としては放熱能力が比較的低いことが挙げられます。また、周囲の気流に依存することから、大電力を扱うシステムや高密度のシステムでは十分な冷却性能が得られない可能性があります。

強制空冷

強制空冷では、ファンやブロワを用いてコンポーネントの周辺に空気を送ることで放熱性を高めます。それにより対流熱伝達係数が高まり、ヒート・シンク、トランス、スイッチング素子などの表面からより効率的に熱を除去できます。図2に、電源にファンを適用した場合の空気の流れを示しました。

図2. 強制空冷を適用した電源
図2. 強制空冷を適用した電源

設計の観点から言えば、強制空冷では気流を綿密に管理する方法を用意しなければなりません。それにより、ホット・スポットの発生を防ぎ、均一な冷却を維持することが可能になります。必要なのは、ファンの配置、気流の方向、ダクトの取り付け、騒音の抑制について考慮することです。冷却性能、エネルギーの消費量、騒音のレベルのバランスをとるためには、ファンの速度の制御と監視が重要になります。

強制空冷の長所としては、大電力に対応するための拡張性が得られる、実装が容易、コンパクトな設計に対応できるといったことが挙げられます。一方、この方式には、機械的な摩耗や故障が発生する可能性がある、定期的なメンテナンスが必要になる、騒音の発生が懸念されるといった短所があります。また、粉塵が多い環境や湿度の高い環境では、強制空冷の効果が薄れることがあります。気流が妨げられたり、電源システム内の各部に異物が混入したりすることがあるからです。

伝導冷却

伝導冷却では、コンポーネントをヒート・シンクや筐体に物理的に接触させることによって直接熱を逃がします(図3)。この方法は、空気の流れが制限される密閉された環境や過酷な環境に適しています。また、粉塵/湿気/振動が原因でファンによる冷却が現実的ではない場合に特に有用です。

図3. 伝導冷却を適用した電源
図3. 伝導冷却を適用した電源

伝導冷却を採用する場合、熱伝導性をより高めるために、サーマル・パッド、熱伝導ペースト、相変化材料などの熱伝導材料(TIM:Thermal Interface Material)がよく使用されます。伝導冷却の性能は、熱の伝導経路の熱抵抗、材料(銅やアルミニウムなど)の特性、熱の伝導に利用できる表面積に依存します。

伝導冷却には、信頼性が高い、過酷な環境に適応できる、可動部品が不要といった長所があります。一方、短所としては、アクティブな冷却方式に比べて冷却能力が限られることが挙げられます。また、効果的に熱を除去できるような接触を確保するためには、精密な機械設計が必要になります。

液冷

液冷は、非常に高性能の冷却方式です。この手法では、システムに冷却液を循環させることでコンポーネントの熱を吸収/放散します(図4)。冷却液は熱源に取り付けられた冷却板または熱交換器を流れます。吸収された熱は、ラジエータまたは外部冷却システムによって放散されます。

図4. 液冷の概要
図4. 液冷の概要

技術的に言えば、液冷は空気を利用する冷却方式と比べて熱伝導率と熱容量の面で優れています。そのため、狭い空間において大電力を扱うコンポーネントを効率的に冷却することが可能です。液冷には、熱性能が優れている、騒音を抑えられるといった大きな長所があります。しかしながら、液冷を利用するためには、ポンプ、配管、リザーバ、液漏れを防止可能な接続が必要です。そのため、システムが複雑化し、多くのコストがかかることになります。また、潜在的に液漏れの可能性があることも短所だと言えます。更に、システムの健全性と冷却液の品質を確保するために、メンテナンスを定期的に実施しなければなりません。

熱設計のベスト・プラクティス

効果的な熱設計を行うためには、電気的、機械的、環境的な要素について総合的に考慮する必要があります。最適な熱性能を実現するための重要なポイントを以下に列挙します。

  • 熱のバジェットと電力のプロファイリング:まず、最も厳しい条件における各コンポーネントの消費電力を正確に見積もります。それには、スイッチング損失、導通損失、磁気損失なども含めます。シミュレーション・ツールとデータシートに記載された値を使用してジャンクション温度を計算し、温度マージンを確保します。
  • 基板レイアウトの最適化:プリント回路基板では、広い銅プレーンとサーマル・ビアを使用して熱を拡散させます。図5は、サーマル・ビアを使用して熱を拡散させる方法を示したものです。大電力を扱うコンポーネントはヒート・シンクまたは放熱経路の近くに配置します。熱の影響を受けやすいコンポーネントは熱源の近くには配置しないでください。また、内部に放熱層を備える多層基板の採用を検討するとよいでしょう。
    図5. プリント基板への熱の放散。サーマル・ビアの有無により違いが生まれます。
    図5. プリント基板への熱の放散。サーマル・ビアの有無により違いが生まれます。
  • ヒート・シンクの選定と取り付け:熱抵抗、気流に対する適合性、取り付けに関する制約に基づいてヒート・シンクを選定します。放熱性を高めるために、フィンの形状、向き、表面処理(例えば、陽極酸化処理)について検討してください。
  • 気流の管理:気流の経路は滑らかで、層流が得られるように設計してください。急なカーブ、障害物、再循環領域(滞留領域)は避けるべきです。数値流体力学(CFD:Computational Fluid Dynamics)ツールを使用して気流のシミュレーションを実施し、ダクトの取り付け方を最適化してください。吸気口と排気口のサイズと位置が適切であることを確認する必要もあります。
  • アクティブな冷却制御:温度の値のフィードバックを利用する動的なファン制御の機能を実装するとよいでしょう。PWM(Pulse Width Modulation)制御または電圧制御を使用し、熱負荷に基づいてファンの速度を調整します。ファンの故障を検出する機能と過熱した状態に対応する警報機能も実装すべきです。
  • 環境への配慮:周囲温度、標高(空気の密度に影響)、湿度、汚染について考慮してください。過酷な環境では、コンフォーマル・コーティングを採用するか、密閉された筐体を使用します。標高が高い場所または高温の条件下でコンポーネントを使用する場合にはディレーティングについて検討してください。

よくある熱設計上の落とし穴

熱設計に関するミスは、一見些細なものであるように感じられます。しかし、その些細なミスがシステムの信頼性と性能に重大な影響を及ぼす可能性があります。非常によくあるミスの1つは、負荷がピークに達したときや環境的な条件が最も厳しい場合の発熱量を低く見積もってしまうことです。設計者は標準的な動作における熱量だけに注目してしまい、熱の過渡的なスパイクや累積/蓄積された熱量を見落としがちです。結果として過剰な熱による問題が生じることがあります。もう1つよく起きる問題があります。それは、TIMを不適切に塗布してしまうというものです。不均一または過剰にTIMを塗布すると、その中に空気が閉じ込められ、熱抵抗が大きくなって伝導冷却による効果が低下します。また、気流の設計に問題があるケースも少なくありません。その場合、ファンの配置が不適切であったり、通気口が遮られたりすることになります。そうすると、再循環領域やホット・スポットが生じ、強制空冷の性能が低下します。

コンポーネントの配置も、熱の振る舞いを決める重大な要因になります。熱の影響を受けやすいコンポーネントを大電力を扱うデバイスに近づけすぎると、過剰な熱にさらされることになります。そうすると、性能の低下や早期の故障が生じてしまうかもしれません。長期的な信頼性は軽視されがちなものですが、ファンの劣化、TIMの乾燥、埃の堆積による気流の阻害などは、時間の経過に伴って冷却効果を低下させます。熱に関するシミュレーションや実際の稼働環境でのテストを省略することも、落とし穴につながります。データシートに記載された値や理論的なモデルだけに頼ると、予測を誤ってしまうおそれがあります。また、標高、湿度、筐体の密閉性といった環境的な要因に関する判断を誤った場合にも、予期せぬ熱の問題に直面してしまうかもしれません。設計プロセスの初期段階でこれらの落とし穴に対処することにより、堅牢性の高い電源を確実に設計できます。

熱を管理するためのコントローラIC

アナログ・デバイセズは、各種の冷却方式に対応するコントローラICを提供しています。それらは熱の管理に用いる堅牢な製品であり、多様な電源/システムをターゲットとしてカスタマイズされています。各ソリューションを使用すれば、温度、ファンの動作、熱電冷却素子(TEC:Thermoelectric Cooler)を精密に制御できます。そのため、効率と信頼性に優れるシステムを設計することが可能になります。

インテリジェントなファン・コントローラ

MAX31785」は、6チャンネルを備えるインテリジェントなファン・コントローラICです。サーバ、通信機器、産業用電源のような高密度のシステムをターゲットとして設計されています。その特徴の1つは、PWM制御とクローズド・ループのRPM(Rotations per Minute)制御をサポートしている点にあります。それにより、リアルタイムにフィードバックされる温度の情報に基づいてファンの速度を精密に制御できます。また、6つの独立したPWM出力により、複数のファンを同時に制御することが可能です。加えて、I2C/SMBusに対応するインターフェースにより、ホスト・システムとのシームレスな通信を実現できます。更に、最大12のタコメータからの入力(1つのファンに対して2つ)をサポートしています。これは高度かつ、現代のシステムにとって非常に望ましい機能です。図6に、テスト用のファンを取り付けたMAX31785の評価用ボードの外観を示しました。

図6. MAX31785の評価用ボード
図6. MAX31785の評価用ボード

MAX31785を使用すれば、離れた場所にある最大6つのサーマル・ダイオードと、1つの内蔵温度センサーによって温度を監視できます。同ICには、その監視結果に基づいてファンの故障や異常な熱を検出する機能とアラートを発出する機能も実装されています。また、ファンの速度に関する柔軟なプロファイルにより、騒音と熱効率の両方を最適化できます。強制空冷システムでは、システムの信頼性を維持しつつ、騒音を最小限に抑えるために動的に気流を制御しなければなりません。MAX31785は、そのようなシステムに最適な製品です。

高精度のTEC用コントローラ

ADN8834」は、特許を取得済みの技術を採用したTEC用のコントローラICです。その特徴は、インダクタを1つしか必要としない点にあります。そのような構成により、高い効率を実現します。同ICは、光モジュールやレーザー・ダイオードなどに対し伝導冷却を適用したシステムにおいて、高い精度で温度制御を実現できるように最適化されています。必要なインダクタは1つだけなので、2つのインダクタを必要とする従来の設計と比べて実装面積を抑えると同時に高いコスト効率を実現できます。また、最大1.5Aの電流でTECを駆動可能な降圧コントローラを内蔵しています。加えて、比例-積分-微分(PID:Proportional Integral Differential)制御ループを使用して正確に温度を制御できます。更に、サーミスタやダイオード・センサーによる温度の監視にも対応可能です。動作時のノイズが小さいことも特徴の1つであり、ノイズに敏感なアナログ・システムにも適しています。フットプリントが小さく、PID制御のパラメータをプログラムできることから、スペースに制約のある設計においてもきめ細やかな温度の調整を実現可能です。図7は、TECを使用するシステムにADN8834をどのように適用するのかを表したものです。

図7. TECを使用するシステム
図7. TECを使用するシステム

熱解析用のシミュレーション・ツール

熱流の予測、冷却戦略の最適化、プロトタイピングの前に実施する設計の検証には、熱解析用のシミュレーション・ツールが不可欠です。例えば、ANSYSの「Ansys Icepak」は、高密度の電子機器に最適な、気流と熱伝導に関する高度なCFDモデリングの機能を提供します。一方、COMSOLの「COMSOL Multiphysics®」では連成物理シミュレーションの実行が可能です。このツールは、熱の振る舞いが電気的または機械的な領域と相互に作用するシステムに適しています。SolidWorksの「SOLIDWORKS Flow Simulation」は、CAD(Computer Aided Design)システムと直接統合することが可能であり、筐体や機械アセンブリの迅速な熱解析を実施できます。Siemensの「Simcenter Flotherm」(旧Mentor Graphicsの「FloTHERM」)は、プリント基板とシステム・レベルの熱のモデリングに特化したツールです。通信分野や航空宇宙分野で広く使用されています。これらのツールは、熱に関するボトルネックを早期に特定し、設計の反復回数を減らしつつ、信頼性に関する基準に準拠することに役立ちます。

まとめ

電源の安全かつ効率的な動作を実現するためには、効果的な冷却方式を適用することが不可欠です。自然対流冷却、強制空冷、伝導冷却、液冷の各方式には、それぞれに固有の長所と短所があります。自然対流冷却はシンプルで静音性に優れていますが、冷却能力に限界があります。強制空冷は拡張性と効率の面で有利ですが、機械的な複雑さを伴います。伝導冷却は堅牢性と信頼性が高く、密閉された環境に最適です。液冷は大電力を扱うアプリケーションにおいて、比類のない性能を発揮します。但し、システムの複雑さが増大します。

設計者に求められるのは、技術的な原理と限界について理解する、熱設計のベスト・プラクティスを適用する、よくある落とし穴を回避する、シミュレーション・ツールを活用するといったことです。それにより、アプリケーションの要件に応じ、情報に基づく的確な意思決定を行うことが可能になります。アナログ・デバイセズは、多様なシステム・アプリケーションにおいて精度と信頼性に優れる冷却方法を実装するための包括的なソリューションを提供しています。熱管理に向けた各種のコントローラICにより、設計者の取り組みを支援しています。

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Hermogenes Escala

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