概要
設計リソース
設計/統合ファイル
- Schematic
- Bill of Materials
- Allegro Layout File
- Gerber Files
- UL-217 Test Documentation
評価用ボード
型番に"Z"が付いているものは、RoHS対応製品です。 本回路の評価には以下の評価用ボードが必要です。
- ADSW-SMOKEALGO-PRODLIC ($27500.00) ADPD188BI Smoke Detection Algorithm
- ADSW-SMOKEALGO-SUP100 ($22500.00) Paid Support 100hrs
- ADSW-SMOKEALGO-SUP200 ($38500.00) Paid Support 200hrs
- ADSW-SMOKEALGO-SUP50 ($12500.00) Paid Support 50hrs
- ADSW-SMOKEALGO-SUPCUST Paid Custom Support
- ADSW-SMOKEDATA-PRODLIC ($11000.00) ADPD188BI Smoke Detection Dataset
- EVAL-ADICUP3029 ($60.92) Ultra Low Power Arduino Form Factor Compatible Development Board
- EVAL-CN0537-ARDZ ($73.09) UL-217 8th Edition Certifiable Reference Design
デバイス・ドライバ
コンポーネントのデジタル・インターフェースとを介して通信するために使用されるCコードやFPGAコードなどのソフトウェアです。
機能と利点
CN0537リファレンス・デザインには、煙/火災検出アプリケーションの開発を促進するために設計されたデータおよびソフトウェアが完備されています。
データタ(ADSW-SMOKEDATA-PRODLIC)パッケージでは、独自のアルゴリズムを開発しようとするユーザ向けにUL-217認定施設で取得した、1000を超える数の広範な煙データセットが利用できます。これには、CN0537ソース・コードが含まれており、初期化、キャリブレーション、環境補償、データの前処理などを行うことができますが、検出アルゴリズムは含まれていません。
アルゴリズム(ADSW-SMOKEALGO-PRODLIC)パッケージには、データ・パッケージにあるすべてに加え、UL認定煙検出アルゴリズムおよび関連するアルゴリズム・プロジェクト・ファイルが含まれています。
製品カテゴリ
マーケット & テクノロジー
使用されている製品
参考資料
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CN0537 User Guide2020/07/07WIKI
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Smoke Detection Solutions Frequently Asked Questions2020/12/17PDF811 K
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ラピッド・プロトタイピングを実現するためのソリューション2024/04/15PDF4 M
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CN0537: 妨害事象検出機能を持つ UL-217 煙検出モジュール (Rev. 0)2020/07/15PDF530 K
回路機能とその特長
このリファレンス設計と関連ソフトウェアは、UL 217/UL 268および同様の煙/火炎検出規格に適合するよう、設計およびテストが行われています。様々な顧客のニーズに対応するため、以下の表にまとめたような多数のソリューションを提供しています。ハードウェアは、Arduino(アルドゥイーノ)フォーム・ファクタと互換性があり、組み込み煙検出アルゴリズムのプロトタイプ作成や評価を促進するよう設計されています。ハードウェアは、CN0537回路ノートで説明しているEVAL-CN0537-ARDZリファレンス・デザイン、および対応するEVAL-ADICUP3029マイクロコントローラ・ボードにより構成されています。データ(ADSW-SMOKEDATA-PRODLIC)パッケージは、独自のアルゴリズム開発を希望するユーザ向けに、UL認証施設で収集された、煙に関する広範なデータセットと、CN0537ソース・コード(検出アルゴリズムを除く)を提供します。アルゴリズム(ADSW-SMOKEALGO-PRODLIC)パッケージには、データ・パッケージのすべてに加えて、UL認証取得済みの煙検知アルゴリズムと、これに関連するアルゴリズム・プロジェクト・ファイルが含まれています。
| ソリューション・オプション | 説明 | 装備 |
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ハードウェア EVAL-CN0537-ARDZ |
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ハードウェア
ソフトウェア
技術文書
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データ ADSW-SMOKEDATA-PRODLIC |
システム開発を促進するためのソース・コードおよび1000を超えるサンプル数の火炎/煙データセット。 |
データ
ソフトウェア
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アルゴリズム ADSW-SMOKEALGO-PRODLIC |
アルゴリズム・パッケージには、UL-217、EN-14604、EN54-7に対するIntertekによる試験結果、煙検出アルゴリズム、関連プロジェクト・ファイル、全ソース・コード、1000を超えるサンプル数の火炎/煙データセットが含まれており、システム開発を促進します。 |
ソフトウェア
データ
技術文書
サポート
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1970年代以降、商業施設や住宅への煙検出器の普及が進みました。現在使われている煙検出器の基本的タイプには2種類あります。電離タイプは、放射性物質を用いて空気を電離させ、電気的不均衡をチェックします。光電タイプは、光検出器から離れる角度に向けた光源を使用して、空気中の粒子に当たってフォトダイオードに反射される光により光検出器で発生する電流をチェックします。両方のタイプを組み合わせたソリューションが推奨されてはいますが、家庭で発生する一般的な火災の検出における信頼性が向上し、無炎燃焼に対する応答時間が短縮された、光電式煙検出器のほうが普及しています。
残念ながら、電子技術や一般家庭で使われる素材はその後数十年で進化を続けているにもかかわらず、煙検出器に関する技術も規制も、1970年代当時からほとんど変わっていません。米国保険業者安全試験所(UL)が公開しているANSI/UL 217およびANSI/UL 268や、全米防火協会(NFPA®)が公開しているNFPA® 72 全米火災警報コードといった規格の改訂版は、最新の煙検出器の設計に対してより複雑な条件を課すことを通じて、こうした隙間を埋めることを目指すものです。EN 14604、EN 54、ISO 7240といった他の世界的に適用されている規格も、将来的にこれらの検討課題に対処するために同様の試験を追加する可能性が高く、より高度な検出能力を備えることがますます重要になっています。
更新されたこれらの規格の目的は、日常生活で発生する誤報の数を減らすことによって安全性を向上すると共に火災関連の死者数を減らすことです。例えば、UL 217の第8版およびUL281の第7版では、炎および煙の検出感度に関する従来の試験に加えて、調理などの紛らわしい妨害事象において、煙検出器が誤認アラームを発報しないよう義務付けています。そのため、最新の煙検出器では、調理などの紛らわしい妨害事象と火災の違いを区別できなくてはなりません。従来であれば、こうしたことを実現するには複数のセンサー技術と一定レベルの人工知能による複雑なソリューションが必要でした。しかし、ADPD188BIを使用することで、はるかにシンプルな形での導入が可能になります。
図1に示す回路は、試験および検証済みの煙検出器リファレンス・デザインであり、入手可能なアルゴリズムとADPD188BI光学モジュールをベースにしたデータセットを用いています。簡単かつ迅速な開発を実現できるよう、Arduino(アルドゥイーノ)フォーム・ファクタのコントローラ・プラットフォームに対応した設計がなされています。ソフトウェアおよび組み込みアルゴリズムはハードウェアと合わせて、UL 217規格第8版およびUL 268規格第7版で仕様規定された煙および火炎試験を評価するために用いることができます。火炎検証済みアルゴリズムは、これを直接使用することで煙検出ソリューションをより速く展開できます。また、追加データを収集してアルゴリズムに追加し、他の規格に適応させるようにすることもできます。

回路説明
ADPD188BIを使用した煙検出
ADPD188BI光学モジュールは、煙検出アプリケーション専用に設計された、フル機能のフォトメトリック・システムです。パッケージには、光エレクトロニクス(2個のLEDおよび2個の光検出器)とアナログ・フロント・エンド(AFE)が内蔵されているため、従来のディスクリート型煙検出回路に代えてADPD188BIを使用することで、設計を大幅に簡略化できます。
ADPD188BIは、二波長手法を利用して煙を検出します。すなわち、2つの内蔵LEDから470nm(青色光)および850nm(赤外光)の、2種類の波長の光が放射されます。これらのLEDは、独立した2種類のタイム・スロットで点滅し、放出された光は空気中に浮遊する粒子状物質によって後方錯乱され、デバイスに向かいます。

次に、内蔵された2つの光検出器が、散乱した光を受信してそれに比例したレベルの出力電流を生成し、その電流がAFEによって内部でデジタル・コードに変換されます。LEDの光パワーが一定に保たれると仮定すると、ADPD188BIの出力値が時間に対して増加する場合、空気中の粒子が増加または蓄積していることを示します。
UL 217およびEN 14604煙および火炎試験用アルゴリズム
UL-217規格では、所定の制限時間および遮光状況(リファレンス遮光計により計測)において、検出器が6種類の火炎や煙に応答できるよう義務付けています。表1は、UL 217の各試験での遮光割合と応答時間の要件をまとめたものです。
| 試験 | UL 217 第8版 | ||
| タイプ | 名称 | セクション番号 | 結果 |
| 風洞 | 感度 | 42 | 合格 |
| 風洞 | 方向性 | 43 | 合格 |
| 風洞 | 速度感度試験 | 44 | 合格 |
| 風洞 | 可変周囲環境(0°C & 49°C) | 62 | 合格 |
| 風洞 | 湿度 | 63 | 合格 |
| 火炎 | 紙類の燃焼 | 51.2 | 合格 |
| 火炎 | 木材の燃焼 | 51.3 | 合格 |
| 火炎 | ポリウレタン・フォームの有炎燃焼試験 | 51.4 | 合格 |
| 火炎 | 無炎燃焼試験 | 52 | 合格 |
| 火炎 | ポリウレタン・フォームの無炎燃焼試験 | 53 | 合格 |
| 火炎 | 調理妨害煙試験 | 54 | 合格 |
| 火炎 | ポリウレタン・フォーム有炎燃焼のGo/No Go試験 | 54 | 合格 |
EN14604:2005規格は、4種類の火炎および煙に対し、所定の範囲の時間、遮光条件(リファレンス遮光計で測定)、および電離測定チャンバ(MIC)読取り値(リファレンスMICで測定)で検出器が応答することを義務付けています。各EN14604試験での感度と応答時間の要件を表2に示します。発注なども含めた詳細については、アルゴリズムおよびデータのページを参照してください。
| 試験 | EN 14604 | EN 54-7 | |||
| タイプ | 名称 | セクション番号 | 結果 | セクション番号 | 結果 |
| 風洞 | 方向依存性 | 5.3 | 合格 | 4.3.2 | 合格 |
| 風洞 | 再現性 | 5.4 | 合格 | 4.3.3 | 合格 |
| 風洞 | 空気流 | 5.5 | 合格 | 4.4.1 | 合格 |
| 風洞 | 眩惑 | 5.6 | 合格 | 4.4.2 | 合格 |
| 火炎 | (TF5)燃焼液体 | 5.15 | 合格 | - | 合格 |
| 火炎 | (TF1) 開放木材燃焼 | 該当なし | 該当なし | - | 不合格 |
CN-0537リファレンス・デザインの場合、ADPD188BIによる青色光および赤外光(IR)出力データを煙検出アルゴリズムを通して分析することによって、本仕様を満たしています。
ADSW-SMOKEALGO-PRODLICアルゴリズムはADPD188BIセンサーおよびAccumold® 28800x煙チャンバを使用して火災状態を検出することに特化して設計されたもので、UL 217およびEN54-7/EN14604規格に従っています。アルゴリズム自体は、表1で示した全テスト・シナリオを網羅する形で、多数のADPD188BIデバイスから収集された、大規模なデータセット、ADSW-SMOKEDATA-PRODLICを使って調整および検証されています。試験は、火災および生命安全性を専門に扱う、OSHA認定ラボで行われました。これらデータセットには、様々な煙発生源でセンサーの性能やアラーム条件を定量化するための、リファレンス測定値が含まれます。煙プロファイルの例を、図3で示しています。IRセンサーと青色光センサーの測定値を、ハンバーガーとポリウレタンの試験シナリオでの煙遮光リファレンス・データと比較しています。
煙検出器では一般的にバッテリ駆動デバイスが使われるため、ADSW-SMOKEALGO-PRODLICは、厳格なUL 217およびEN54-7/EN14604規格を満たしながらも、ADPD188BIから必要とされる出力データおよび必要なマイクロコントローラの演算量を最小限に抑えるよう設計と構築が行われています。試験の検証の詳細については、試験結果を参照してください。

パワー伝達比の計算
ADPD188BIによる煙応答は、受信した光パワーと送出された光パワーの比として、最もよく表現されます。パワー伝達比(PTR)と表現されるこのパラメータは、実際に使用したハードウェア設定からは独立した値となるため、生の出力コードよりも多くの意味を持っています。更に、式1で示しているように、掩蔽レベル(煙検知器による標準的な測定単位)はPTRと直接関係しています。

ここで、
PTRは、パワー伝達比(単位:nW/mW)。
γは、ADPD188BIのスケーリング・ファクタ(青色光の代表値 = 0.64、赤外光の代表値 = 0.24)。
βは、遮光レベル(単位:ft-1)。

個々のLEDにおけるPTRは、式2を使用して算出できます。

ここで、
PTRは、LEDのパワー伝達比(単位:nW/mW)。
IPDは、光検出器の電流(単位:nA)。
ILEDx_PKは、ピークLED電流(単位:mA)。
RPDは、光検出器の応答性(単位:A/W。青色光の代表値 = 0.26、赤外光の代表値 = 0.41)。
ηLEDxは、LEDの効率(単位:W/A)。
ILEDおよびIPDの計算
ADPD188BIでは、租調整/微調整レジスタと電流スケール・ファクタの組み合わせを介して、LEDごとにピーク電流を構成できます。LEDのピーク電流は、式3~式6を使用して計算できます。

ここで、
ILEDx_PKは、ピークLED電流(単位:mA)。
ILEDx(COURSE)は、コースLED電流(単位:mA)。
ILEDx(FINE)は、LED微小電流(単位:mA)。
ILEDx(SCALE)は、LED電流スケーリング(単位:mA)。
ILEDx_COURSE、ILEDx_FINE、ILEDx_SCALEは、各LEDの制御レジスタ用の値です。内蔵の青色LEDの場合、これらはレジスタ・アドレス0x23およびレジスタ・アドレス0x25で設定できます。内蔵の赤外LEDの場合、これらはレジスタ・アドレス0x22およびレジスタ・アドレス0x25で設定できます。ADPD188BIレジスタでは、青色LEDはLEDX1、赤外LEDはLEDX3となることに留意してください。
式7で示したように、光検出器の電流はADPD188BIのデジタル出力を使用して計算します。

ここで、
IPDは、光検出器の電流(単位:nA)。
Codeは、32ビット出力コード(単位:LSB)。
Qは、ADCの分解能(単位:nA/LSB)。
PULSE_COUNTは、タイム・スロットのLEDパルス数。
ADPD188BIのADC分解能は、LEDパルス幅の設定(タイム・スロットAの場合はレジスタ0x30、タイム・スロットBの場合はレジスタ0x35)および内蔵トランスインピーダンス・アンプ(TIA)のゲイン設定(レジスタ0x55)に応じて変化します。TIAゲイン値を変えた場合のADC分解能については、ADPD188BIのデータシートを参照してください。
LED効率の計算
内蔵LED(ηLEDx)の効率は、式3を使用して計算できます。

ここで、
ηNは、LEDの公称効率(単位:W/A。青色LEDの場合 = 0.38、赤外LEDの場合 = 0.22)。
kは、LEDのディレーティング係数(青色LEDの場合、式9を使用して計算。赤外LEDの場合、k = 1.0)。
Cは、デバイス間の差を補償するためのスカラー値。
赤外LEDの場合とは異なり、青色LEDの効率は駆動電流の増加に応じて、非線形的に低下します。そのためディレーティング係数は、まず式9を使用して計算する必要があります。

ここで、
A0 = 9.8976 × 10−1
A1 = −5.1448 × 10−3
A2 = 2.0287 × 10−5
A3 = −2.9645 × 10−8
ADPD188BIのゲイン・キャリブレーション値読出し
式8で示したように、ADPD188BIのスカラー値はデバイスごとの差異を補償します。これは、個々のLEDのゲイン・キャリブレーションであり、式10~式16を使用して計算できます。

青色LEDの場合


赤外LEDの場合

これらのキャリブレーションは、モジュールID 33のデバイスで有効である点に注意してください。モジュールID 30とモジュールID 31のデバイスに対するキャリブレーション式については、AN-2033を参照してください。
LEDの温度補償
ADPD188BIの全ループ応答は、周囲温度により影響を受けます。青色チャンネルの場合、LEDの消費電流量に応じて温度応答曲線の形状が異なる可能性があるため、周囲温度による影響はより複雑なものとなります。図5は、ADPD188BIの動作温度範囲全体にわたる、相対出力応答に対する温度の影響をグラフにしたものです。赤外LEDの共通ILED設定には100mAを、青色LEDには175mAを使用します。赤外チャンネルの場合、温度応答曲線はLED電流の影響を受けません。

相対応答の値を算出するには、周囲温度をリアルタイムで測定する機能が必要です。CN-0537では、温湿度センサーによってADPD188BIに隣接するチャンバ内部の状態を監視します。その後、ADPD188BIの出力を、図5のうち該当するグラフから求めた、現在の周囲温度における相対応答で除算することによって、温度による影響を補償できます。

ここで、
Relative ResponseTは、現在の周囲温度における相対応答です。
CodeTは、現在の周囲温度における出力コードです。
Code25°Cは、温度25℃における出力コードです。
チャンバ内のスペースは限られているため、センサーを選択する際、部品サイズを第一に考える必要があります。このリファレンス・デザインにおけるデフォルト・センサーの温湿度の精度定格は、温度が±0.2°Cで、相対湿度が±2%です。
煙チャンバをADPD188BIと使用する
市販の煙検知器ソリューションの大部分は、周辺光を除去し、内部の光害を減少させ、昆虫やクモが測定値に干渉するリスクを最小限に抑えるため、煙チャンバを使用しています。ADPD188BIでは煙チャンバを使用することで、チャンバ表面からの光散乱により一定のバックグラウンド信号が測定値に現れます。測定値の大きな誤差を防ぐために、バックグラウンド信号のレベルをアラーム閾値以下に保つことが重要です。

ADPD188BIのチャンバに対する応答は、煙応答に加えてパワー伝達比(PTR)にも現れる可能性があり、デバイスのPTRデータを解釈する際に考慮する必要があります。

ここで、
PTRTOTALは、合計パワー伝達比(単位:nW/mW)。
PTRCHAMBERは、チャンバ表面内側から受信した光パワーと、送出された光パワーの比(単位:nW/mW)。
PTRSMOKEは、送出された光パワーを散乱させる煙粒子から受信した光パワーの比率(単位:nW/mW)。

ADPD188BIは、デバイス要件や産業上の要件を満たすよう特別に設計された、アナログ・デバイセズ独自の煙チャンバを使用します。この煙チャンバ内部の形状によって、最高のS/N比(SNR)で測定を実現でき、これによって、ADPD188BIのPTR値を最適なものにできます。
機械的設計は、JESD22-A101、JESD22-A103、JESD22-A104、UL-217、UL-268、EN-54、AEC-Q100などの業界規格において仕様規定されたストレス・テストを使用して、規格に適合しています。ディスクリート型の煙検出器に比べてADPD188BIのサイズは小さいため、チャンバもほとんどの既存のソリューションに対して、かなり小さくなります。設計上、2つある大きなフランジ間の距離はわずか36mmで、その下には109.36mm2もの内部面積が確保されます。
従来型の煙検知器で使用している前方散乱システムとは対照的に、ADPD188BI内蔵の光エレクトロニクスは後方散乱システムを採用しているため、従来の煙チャンバ設計はADPD188BIには対応しません。

加熱による結露防止
世界の一部地域では、結露が妨害要因となることがあり、煙検出ユニットの効率を維持するにはこれに対処しなくてはなりません。この結露に対処するために、CN-0537では、オプションとして加熱抵抗と湿度センサーが用意されており、カスタムのアルゴリズム開発が可能になっています。チャンバの内側表面に露や結露が形成されると、光の散乱を起こす場合があります。システムはこうした光の散乱を、煙として認識します。高湿度の熱帯地域では、結露がごく当たり前に発生するため、このような原因による光の散乱が特に問題になります。
結露による影響を減らすため、光学モジュールの周囲には、必要に応じて結露を防止できるよう、十分な熱を放出する加熱抵抗器が配置されています。結露防止用の抵抗器を選択する際は、必要な温度上昇と、電源から取り込む電流との兼ね合いを考慮する必要があります。
この加熱ブロックによって、設計上のシステムの合計消費電力が大幅に上昇することに留意してください。抵抗値を下げると発生する熱量は増加しますが、より多くの電源電流が必要になります。バッテリ駆動システムの場合はバッテリ寿命が短くなる原因となるため、設計時にはこの点も考慮する必要があります。

CN-0537リファレンス・デザインでは、3つの25Ω抵抗器を並列に組み合わせて使用しているため、温度上昇範囲は10℃~20℃となります。マイクロコントローラ・ボードはトランジスタ・スイッチによって、パルス幅変調された(PWM)出力または汎用の入出力(GPIO)ピンを介して加熱回路ブロックを作動させます。

システム・パワー・マネージメント
CN-0537への電力は、コントローラ・ボードからArduinoフォーム・ファクタのコネクタを介して供給され、回路内で作動しているデバイスの大部分は、3.3Vおよび5V電源から直接電力を供給されます。ただし、ADPD188BIを正しく動作させるには、1.8V、3.3V、および5V以上の供給電圧が必要になります。
ADPD188BIへの電力供給に必要な1.8Vを生成するには、ADP151に3.3Vの安定化電源を供給する必要があります。このCMOSリニア・レギュレータの入力電圧範囲は2.2V~5.5V、最大出力電流は200mAです。ADP151の出力電圧は、デバイス製造時には1.8Vに固定されており、動作に必要となるのは入出力コンデンサのみであるため、回路設計を大幅に簡略化できます。

同様に、ADPD188BIに内蔵されている青色LEDへの電力供給に必要な電圧を発生するため、図12で示したような形で実装された、超低消費電力ブースト・コンバータLT8410に、5V電源が供給されます。

LT8410のレギュレーション出力は、正帰還ピン(FBP)の電圧レベルと直接関連しています。目的とするレベルのVOUTを生成するために、必要となるVFBPレベルを式18を使用して計算します。

ここで、
VFBPは、FBPピンとGND間の電圧(単位:V)。
VOUTは、必要となる出力電圧(単位:V)。
出力電圧が6Vの場合、式18で得られるVFBPは約0.1884Vとなります。この電圧レベルに到達するため、図12に示すように、簡単な分圧器をLT8410の1.235V内部リファレンス電圧と共に使用します。分圧器用の抵抗器を選択する際は、VREFピンに負荷がかからないよう、直列抵抗値が200kΩより大きくなるようにしてください。
LT8410のデータシートで推奨しているように、入出力ピンに使用するコンデンサは、入力が2.2μF、出力が1μFとなっています。CAPピンおよびVREFピンには、0.1μFのコンデンサを使用しています。
インダクタの選択に関しては、LT8410のデータシートでは、最低でも45μHで定格飽和電流がピーク・インダクタ電流よりも大きいインダクタを推奨しています。最大ピーク・インダクタ電流は、式19を使用して計算します。
ここで、
IPKは、ピーク・インダクタ電流(単位:mA)。
ILIMITは、スイッチ電流の制限値(単位:mA)。
VINは、入力電圧(単位:V)。
Lは、インダクタンス(単位:H)。
この設計では100μHのインダクタを使用しています。この値を式に代入すると、入力電圧5Vおよび最大スイッチ制限電流30mAでのインダクタのピーク電流は、37.5mAとなります。
LT8410回路の最大出力電流は、式20~式23を使用して計算します。

ここで、
IRIPPLEは、インダクタのリップル電流(単位:mA)。
IIN(AVG)は、LT8410の平均入力電流(単位:mA)。
IOUT(NOM)は、公称出力電流(単位:mA)。
IOUT は、最大出力電流(単位:mA)。
これらの式に、インダクタンス100μHおよびピーク・インダクタ電流37.5mAを代入すると、入力電圧5Vおよび代表的なスイッチ制限電流25mAでの最大出力電流は、14.23mAとなります。このLT8410回路を、負荷電流範囲にわたってLTspice®でシミュレーションした結果、図13に示す効率線図が得られました。

個々のLEDについて、ADPD188BIがADP151およびLT8410の回路から必要とする電源電流量は、式24を使用して計算します。

ここで、
ILED_AVE_xは、タイム・スロットAまたはタイム・スロットBにおける、LEDの平均電源電流(単位:mA)。
SLOTx_LED_WIDTHは、タイム・スロットAまたはタイム・スロットBにおける、青色LEDのパルス幅(単位:秒)。
ILEDx_PKは、ピーク電流(単位:mA。式3~式6を使用して計算)。
DRは、出力データ・レート(単位:Hz)。
PULSE_COUNTは、タイム・スロットAまたはタイム・スロットBのLEDパルス数。
バリエーション回路
煙検出アルゴリズムに湿度センシング機能が不要な場合は、ADT7302 デジタル温度センサーを使用できます。ADT7302は小フットプリントであるためチャンバ内に設置でき、精度は2°C、分解能は0.03125°Cですが、デフォルト・センサーの数分の一のコストで入手できます。
回路の評価とテスト
以下のセクションでは、CN-0537を評価する際の一般的なセットアップについて簡単に説明します。セットアップ方法の全容や、その他の詳細な説明についてはEVAL-CN0537-ARDZのハードウェア・ユーザ・ガイドを参照してください。
必要な装置
- EVAL-CN0537-ARDZ
- EVAL-ADICUP3029
- Micro SDカード
- micro USB - USBタイプA変換ケーブル
- USBポートのある、パソコンまたはノートパソコン
- シリアル・ターミナル・アプリケーション
- CN0537.hexファイル
セットアップとテスト
CN-0537にはシステム評価用に、実証アプリケーション・ソフトウェアが付属しており、ユーザはEVAL-ADICUP3029開発プラットフォームを使用して、オンボードのADPD188BIと通信できます。このソフトウェアを使用するには、以下の手順を実行します。
- EVAL-CN0537-ARDZのハードウェア・ユーザ・ガイドから、CN-0537実証アプリケーション・ソフトウェア(*.hex)ファイルの最新バージョンをダウンロードします。
- EVAL-ADICUP3029をコンピュータに接続します。コンピュータの画面では、ボードは外部DAPLINKドライブとして表示されます。
- hexファイルをDAPLINKドライブにドラッグアンドドロップして、CN-0537実証アプリケーション・ソフトウェアをEVAL-ADICUP3029にアップロードします。
- コンピュータで、シリアル・ターミナル・プログラムを実行します。
- シリアル・ポートを、EVAL-ADICUP3029に割り当てられたポートに設定します。
- EVAL-CN0537-ARDZのP5ポートに、micro SDカードを挿入します。
- Arduinoフォーム・ファクタのコネクタを介して、EVAL-CN0537-ARDZをEVAL-ADICUP3029に接続します。
- EVAL-ADICUP3029のS1プッシュボタン(3029_RESETと表示)を押します。シリアル・ターミナルには起動時のバナーが表示され、ユーザの入力待ちの状態になります。
- データ・ストリームを開始するには、「s」というコマンドを入力します。
- ソフトウェアが青色光と赤外光に関する応答の取得を開始して、シリアル・ターミナルのPTR値に表示します。
- データ・ストリームを終了するには「i」というコマンドを入力します。
シリアル・ターミナルに出力されたファイルのコピーを取得するには、micro SDカードをEVAL-CN0537-ARDZから取り出して、コンピュータを使ってファイルの内容を読み出します。データ・ストリームの内容は、「.csv」ファイルとして保存されます。
セットアップ方法の全容や、その他の詳細な説明については、EVAL-CN0537-ARDZのハードウェア・ユーザ・ガイドを参照してください。


