概要
設計リソース
評価用ボード
型番に"Z"が付いているものは、RoHS対応製品です。 本回路の評価には以下の評価用ボードが必要です。
- ADALM-UARTJTAG ($58.85) ADALM-UARTJTAG
- EVAL-ADICUP3029 ($52.97) EVAL-ADICUP3029
- EVAL-CN0414-ARDZ ($129.47) EVAL-CN0414-ARDZ
- EVAL-CN0416-ARDZ ($58.85) EVAL-CN0416-ARDZ
- EVAL-CN0418-ARDZ ($153.01) EVAL-CN0418-ARDZ
機能と利点
- フル機能アナログI/Oデザイン
- 堅牢なModbusプロトコル
- HART対応および互換
- 最大16ノードを制御
参考資料
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CN0435 User Guide Wiki2019/07/25WIKI
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CN0435: HART およびModbus 接続機能を備えたPLC/DCS アプリケーション用アナログI/O システム (Rev. 0)2019/07/19PDF280 K
回路機能とその特長
プログラマブル・ロジック・コントローラ(PLC)と分散制御システム(DCS)は、工業用オートメーション・アプリケーションに見られるスマート(HART 対応)フィールド装置とアナログ専用フィールド装置の両方の監視と制御に使用されます。
図1 に示す回路は、Arduino フォーム・ファクタのベースボードによってローカルに制御される2 個の4 チャンネル絶縁型アナログ入力ボードと2 個の4 チャンネル絶縁型アナログ出力ボードを備えたシングル・ノードとホストで構成される、簡単なDCS システムを示しています。RS-485 トランシーバーは、PCまたはその他のホストとインターフェースします。Modbus プロトコルを使用して、このホストとノードの間でデータを交換できます。
アナログ入力データはローカルに読み出され、業界標準規格のModbus プロトコルを使用してシリアル・インターフェースに出力されるので、データの完全性と、各種のソフトウェア・アプリケーションおよびライブラリとの互換性が確保されます。同様に、アナログ出力はModbus レジスタへの書込みによって設定され、アナログ電圧信号または電流信号に変換されます。
各ノードには、アナログ入力ボードとアナログ出力ボードを最大4 個まで自由に組み合わせることができます。提供されるハードウェアおよびソフトウェア・インフラストラクチャを使用して、図2 に示すような最大16 ノードのマルチノード・システムを設計することができます。この回路はポイントto ポイントHART 通信をサポートします。ポイントto ポイントHART 通信は、同じチャンネル上の複数のHART デバイスで構成されるマルチドロップHART ネットワークへの拡張が可能です。
アナログ入力とアナログ出力はいずれも、ボード(4 個の入出力のグループ)ごとに、デジタル・アイソレータ(iCoupler)を用いて絶縁されます。アナログ入力は断線検出機能を備えており、故障を簡単に検出、診断できます。これらの機能により、苛酷な工業用オートメーション環境での動作時の堅牢性が強化されます。
回路説明
このアプリケーションは、Modbus マスタによって制御されるPLC/DCS システムの開発のデモに焦点を合わせて、主要コンポーネントの最新機能をどのように使用するかを示します。シングル・ノードのシステムはPLC と呼ばれ、より大規模なシステムはDCS と呼ばれることがあります。
各ノードは最大16 個のアナログ・フィールド・デバイス(HART 互換またはアナログ専用のセンサーまたはアクチュエータ)を制御できます。システムは最大16 ノードまで拡張可能です。このシステムは、計装、アナログ・データ・ロギング、テストおよび測定などの高精度アナログ・データ・アクイジションの汎用アプリケーションにも使用することができます。
PLC/DCS のトポロジ
様々な接続トポロジがサポートされます。シングル・ノード(PLC またはシングル・ノードDCS)システムでは、ホスト・コンピュータとEVAL-ADICUP3029 プラットフォーム・ボードのUSB シリアル・ポートをmicro-USB ケーブルで直接接続できます。このトポロジは、ホストとノード間の距離が2m 未満の研究室でのテストおよび測定アプリケーションに適しています。
このポイントto ポイント・トポロジでは、ボードあたり4 個のアナログ入出力のグループはホスト・コンピュータから絶縁されます。Modbus プロトコルは、一般的には研究室の装置と関連付けられていませんが、ノードとの通信に便利な標準的手法を提供します。HART 接続により、スマート・センサーおよびアクチュエータの設定が可能です。
ホストとノード間の距離が2m を超えると、信号の完全性、ノイズの混入、および電気的障害が大きな問題となります。EVAL-CN0416-ARDZ は、これらの状況でホストへの堅牢なRS-485 接続を提供します。シングル・ノードのポイントto ポイント・システムでは、ボー・レートに応じて最大1km の距離で、全二重または半二重通信がサポートされます。
マルチノード(DCS)システム用に、EVAL-CN0416-ARDZ はデイジーチェーン・ポート、切替え可能な半二重/全二重動作、切替え可能な終端を備えており、2~16 ノードのシステムを構築できます。
Modbus はシリアル・リンクを介してデバイス間で情報を送信するシリアル通信プロトコルとして使用されます。したがって、規模を問わずに、簡単で信頼性が高く、堅牢なシステムを実現できます。PLC/DCS アプリケーションのハードウェア・スタックは、3 つの異なるリファレンス設計で構成されます。
アナログ入力ボード
図3 に示すCN-0414 は、4 つの完全差動電圧信号または8 つのシングルエンド電圧信号と4 つの電流信号の測定用に設計されています。この回路の中心には、±10V、20mA のアナログ・フロント・エンドを内蔵した低消費電力、低ノイズ、24 ビットのΣ-Δ A/D コンバータ(ADC)のAD4111があります。
電圧入力は最大±10V の入力範囲に対応します。AD4111 は、5V または3.3V 単電源での動作時に±10V の電圧入力で断線検出が可能な独自の機能を内蔵しています。既存のソリューションでこの機能を実現するには、通常は±10V より大きな電源が必要です。
電流入力は0mA~24mA の入力範囲に対応します。回路の入力インピーダンスは250Ω(うち60ΩがAD4111 の内部抵抗)で、全ての入力は絶縁されたグラウンドを基準としています。AD5700-1 HART 準拠モデムがAD4111 と連携して動作するには、電流入力に250Ωの入力インピーダンスが必要です。
回路のアナログ・フロント・エンド(AD4111 とAD5700-1)は、ADuM5411 とADuM3151 を介して処理側から絶縁されるため、トランスベースのディスクリート・ソリューションに比べて基板面積を大幅に削減できます。
CN-0414 ボードは、工業用オートメーション・システムで標準の9.5V~36V のDC 電源から電力を供給されるため、既存システムの増強時に簡単に追加することができます。
アナログ出力ボード
図4 に示すCN-0418 は、ダイナミック消費電力制御機能を備えるAD5755-1 D/A コンバータ(DAC)をベースとする4 チャンネル電圧および電流出力ボードです。
この回路は、4mA~20mA の電流出力とユニポーラまたはバイポーラ電圧出力(± 10V) を供給します。このボードはAD5700-1 HART モデムも搭載し、HART 接続機能を備えるフル機能のアナログ出力ソリューションを提供します。苛酷な産業環境に配置されるアプリケーションに重要な、外部トランジェント保護回路も内蔵されています。
電流出力と電圧出力は別々のピンで提供されますが、一度にアクティブになるのはいずれか一方だけなので、両方の出力ピンを一緒に接続して、1 つの端子に接続することができます。アナログ出力は短絡とオープン・サーキットに対して保護されます。
AD5755-1 はDC/DC 昇圧コンバータ回路を使用したダイナミック消費電力制御機能を内蔵しており、電流出力モードでの消費電力を削減できます。
AD5755-1 には4 つの出力チャンネルのそれぞれに1 本、合計4本のCHART ピンがあります。HART 信号はこれらのピンに結合することができ、対応する出力に現れます(その出力がイネーブルされている場合)。
RS-485 トランシーバー・ボード
図5 に示すCN-0416 は、複数のシステムまたはノード間の(特に長距離の)データ伝送の実施を簡単にする、絶縁型および非絶縁型RS-485 トランシーバー・ボードです。
この回路は、絶縁型の通信にはADM2682E RS-485 トランシーバーを使用し、非絶縁型のRS-485 通信にはLTC2865 を使用します。いずれの通信も、全二重動作か半二重動作か、伝送ラインをオープンにするか終端するかを設定することができます。
この回路にはオンボードのRJ-45 ジャックがあり、一般的なCAT5 イーサネット・ケーブルをノードの高速物理配線に使用することができます。終端抵抗は、デフォルトではCAT5 ケーブルの特性インピーダンスである100Ω に設定されますが、標準RS-485 ケーブルのインピーダンスである120Ω をサポートするように設定することもできます。
ADM2682E は最大16Mbps のデータ・レートに対応し、調整済みの差動電圧閾値を持つフェイルセーフ・レシーバー入力を差動入力の+側に備えています。ADM2682E は、iCoupler データ・チャンネルを使用して5kV の信号絶縁を提供し、isoPower 内蔵DC/DC コンバータを使用して5kV の電源絶縁を提供します。
LTC2865 は最大20Mbps のデータ・レートに対応し、完全フェイルセーフ・レシーバー入力を備えています。内部ウィンドウ・コンパレータがフェイルセーフ条件を判定するので、差動入力電圧閾値を調整する必要はありません。
HART 互換フィールド・デバイスの配線
HART ネットワーク
HART デバイスは、ポイントto ポイントとマルチドロップの2種類のネットワーク構成のいずれかで動作することができます。
ポイントto ポイント・モードでは、4mA~20mA の信号を使用して1 つのプロセス変数を伝達し、その他のプロセス変数、設定パラメータ、その他のデバイス・データはHART プロトコルを使用してデジタル信号で伝送されます。4mA~20mA のアナログ信号はHART 信号の影響を受けないので、制御用に使用することができます。HART プロトコルにより、操作、コミッショニング、保守管理、および診断目的で使用できる、二次的な変数やその他のデータにアクセスすることができます。
Modbus プロトコル
EVAL-ADICUP3029 上で実行されるソフトウェアにより、産業用通信の事実上のオープン標準規格であるModbus プロトコルが実装されます。Modbus にはデータの完全性を確保するCRCエラー検出機能があり、個々のノードとのデータ交換の堅牢な手段を提供します。オープン標準規格であるModbus には、様々なプラットフォーム(特にWindows®、Linux®、組込みプラットフォームなど)を対象とする、多数のオープン・ソースおよび商用のModbus ソフトウェア・ライブラリが提供されています。
このソフトウェアには簡単なコマンド・ライン・インターフェース(CLI)モードもあり、ホスト上で追加のソフトウェアを使用せずに、シリアル端子から手動でシステムを検証することができます。
ハードウェアとソフトウェアのスタック
PLC/DCS ノード・システムのソフトウェアとハードウェアのスタックを図7 に示します。
PLC/DCS ハードウェアの設定後、通常は言語(C、Python、MATLAB など) とホスト・プラットフォーム(Linux 、Windows、組込みなど)に従って適切なModbus ライブラリを選択します。次に簡単なテスト・アプリケーションを作成し、アナログ・パラメータとHART パラメータをModbus レジスタのアドレスと値に変換できるようにする必要があります。
CN-0435 ユーザ・ガイドに、このアプリケーションのModbusレジスタ・マップの詳しい説明が記載されています。Modbus 仕様へのコンプライアンスは、オープン・ソースのModbus デバッガを使って確認します。
オープン・ソースのModbus ライブラリを基盤とするトップレベル・アプリケーションのサンプルもいくつか提供されます。これには以下のものがあります。
- システム構成の検出:全てのModbus ノードとディスプレイの構成をクエリーします。
- 出力保持レジスタの読出しまたは書込み:検出された全てのボードから、出力保持レジスタの状態を確認または変更します。
- アナログ入力レジスタの読出し:検出された全てのボードから、入力レジスタの状態を確認します。
- アナログ・データの読出し:1 つのアナログ入力または全てのアナログ入力を読み出し、データをコンソールに表示します。
- アナログ・データの書込み:アナログ出力を書き込んで電圧または電流を生成します。
- アナログ・エコー:アナログ電圧または電流をアナログ入力ボードから読み出し、同じアナログ電圧または電流をアナログ出力ボードに書き込みます。
バリエーション回路
CN-0435 ソフトウェアは、ローカル処理を行わずにアナログ入力値の読出しとアナログ出力値の書込みを実行します。このソフトウェアを拡張して、障害の監視と応答、クローズド・ループPID 制御ループなどの機能を追加できます。これにより、これらの機能をホスト・コンピュータからオフロードし、通信バスの帯域幅を節約できます。
Raspberry Pi を小型で低価格のソリューションとして使用できます。Raspberry Pi には有線または無線イーサネット接続機能があり、EVAL-ADICUP3029 のUSB-UART に直接接続できます。
現在使用されている最も一般的なModbus のバージョンは、Modbus ASCII、Modbus RTU、およびModbus TCP です。全てのModbus メッセージは同じフォーマットで送信されます。Modbus の3 つのタイプの違いは、メッセージのコード化の方法だけです。
Modbus によって接続できるデバイスの数は、 物理層とデータ・プロトコルによって決まります。RS-485 物理層とModbus RTU またはModbus ASCII データ・プロトコルを使用した場合、アドレス指定可能なノードの最大数は32 です。イーサネット物理層とModbus TCP データ・プロトコルを使用した場合、247ノードをアドレス指定することができます。
デバイスのアドレスは0 から247 までの数で指定されます。アドレス0 に送信されたメッセージ(ブロードキャスト・メッセージ)は全てのスレーブが受信しますが、1 から247 までの数は特定のデバイスのアドレスです。
CN-0414 とCN-0418 はArduino フォーム・ファクタを採用しているため、PROFINET (Process Field Net) 、PROFIBUS(Process Field Bus)、EtherCAT(Ethernet for Control Automation Technology)、EtherNet/IP、Modbus Plus などの幅広いオートメーション・プロトコルをサポートする開発プラットフォームとの互換性が確保されます。
回路の評価とテスト
以下のセクションでは、リファレンス・デモの開始にあたって必要な装置と一般的な手順の概要を説明します。CN-0435 ソフトウェアのCLI オプションを使用して、DCS システムの構築と基本機能のテストを実行できます。詳細な手順と補足情報については、Distributed Control System (DCS) Demo Wiki User Guideを参照してください。
必要な装置
以下の装置類が必要になります。
- USB ポート付きでWindows 7(32 ビット)以降を搭載のPC
- シリアル端末プログラム(Tera Term、Putty など)
- 各ノードにつき1 個以上のEVAL-CN0414-ARDZ 回路評価用ボードまたはEVAL-CN0418-ARDZ 回路評価用ボード、あるいはその両方
- Modbus インターフェース用の1 個以上のEVAL-CN0416-ARDZ 回路評価用ボードと、各ノードにつき1 個ずつのEVAL-CN0416-ARDZ ボード
- 1 個のADALM-UARTJTAG 評価用ボードと追加のEVALCN0416-ARDZ ボード(または他の半二重RS-485 アダプタ)
- 各ノードにつき1 個のEVAL-ADICUP3029 評価用ボード
- Micro USB ケーブル
- RS-485 インターフェース用の1本のRJ-45 ケーブルと、各ノードにつき1本ずつのRJ-45 ケーブル
- PLC システム・ソフトウェアまたは予め作成されたHEXファイル
- 1A、24V のDC 電源
設計の開始にあたって
以下に示すのは、基本的なセットアップ手順です。
1. USB ケーブルをEVAL-ADICUP3029 からPC に接続し、ファームウェアを各使用ボードに書き込みます。
2. ハードウェアを設定します。Distributed Control System(DCS) Demo Wiki User Guide に従います。各ボードのジャンパとスイッチが正しく設定されていることを確認します。オプションにより、アナログ入力ボードにセンサーまたは信号源を接続し、アナログ出力ボードにアクチュエータまたはマルチメータを接続します。
3. ノードごとに以下の順でプラットフォームをスタックし、各ボードを互いに重ね合わせてシールドします。
- EVAL-CN0416-ARDZ(一番上)
- EVAL-CN0414-ARDZ またはEVAL-CN0418-ARDZ(オプション)
- EVAL-CN0414-ARDZ またはEVAL-CN0418-ARDZ(オプション)
- EVAL-CN0414-ARDZ またはEVAL-CN0418-ARDZ(オプション)
- EVAL-CN0414-ARDZ またはEVAL-CN0418-ARDZ(オプション)
- EVAL-ADICUP3029(一番下)
4. 各ノードとRS-485 アダプタ(ADALM-UARTJTAG およびEVAL-CN0416-ARDZ を使用可能)の間にRJ-45 ケーブルを接続します。
5. RS-485 アダプタをホストに接続します。 6. 3029_Reset ボタンを押すか、システムの電源を入れ直します。 詳細については、Distributed Control System (DCS) Demo WikiUser Guide を参照してください。