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評価用ボード

型番に"Z"が付いているものは、RoHS対応製品です。 本回路の評価には以下の評価用ボードが必要です。

  • EVAL-CN0370-PMDZ ($35.31) Low Noise LED Driver
  • EVAL-SDP-CB1Z ($116.52) Eval Control Board
  • SDP-PMD-IB1Z ($64.74) PMOD to SDP Interposer Board
在庫確認と購入

機能と利点

  • 単電源 LED 電流ドライバ
  • 16 ビット分解能
  • 積分非直線性および微分非直線性は ±1 LSB
  • 低ノイズ

回路機能とその特長

図 1 の回路はフル機能の単電源、低ノイズ LED 電流源ドライバで、16 ビット D/A コンバータ(DAC)で制御されます。このシステムは、20 mA のフルスケール出力電流に対して、±1 LSB の積分非直線性と微分非直線性を維持し、0.1 Hz ~ 10 Hz のノイズが 45 nA p-p 未満です。

先進の出力ドライバ・アンプは、ほとんどのレールtoレール入力のオペアンプに通常伴うクロスオーバー非直線性を除去します。16 ビット・システムの場合、この値は最大 4LSB ~ 5LSB になることがあります。

この業界最先端のソリューションは、LED の輝度レベルに重畳される 1/f ノイズが測定全体の精度に影響を与えるパルス・オキシメトリ(パルス酸素濃度測定)のアプリケーションに最適です。

使用している 3 つのアクティブ・デバイスの 5 V 単電源動作時の総消費電力は標準で 20 mW 未満です。

図 1. 直線性が ±1 LSB の 16 ビット LED 電流源ドライバ (簡略回路図: 全接続の一部およびデカップリングは省略されています)

 

回路説明

標準的なパルス・オキシメトリのアプリケーションでは、LED は高レベルの電流(例えば 3/4 スケール)から低レベルの電流(例えば 1/4 スケール)でパルス駆動します。一般に、これらのパルスのオン時間は約数百マイクロ秒です。オン時間中に LED の輝度レベルに重畳されるピークtoピークの 1/f ノイズは、測定全体の精度に影響を与えるため、最小限に抑える必要があります。

電圧リファレンス、DAC、DAC 出力バッファ、および電流源で構成される単電源のシグナル・チェーンを図 1 に示します。

DAC は 16 ビット、シリアル入力、電圧出力セグメント化 R-2R CMOS DAC の AD5542A です。次式で表されるように、DAC の出力電圧はリファレンス電圧に依存します。

CN0370-EQ1

ここで、
D は DAC レジスタにロードされる 10 進データ・ワード、N はビット数です。
N はビット数です。

リファレンスが 2.5 V で N = 16 の場合、上の式は次のように簡素化されます。

CN0370-EQ2

この式から、ミッドスケールで 1.25 V、フルスケールで 2.5 V の VOUT が得られます。

LSB サイズは 2.5 V/65,536 = 38.1µV です。

16 ビットでの 1 LSB はフルスケールの 0.0015%(15ppm)でもあります。

DAC のリファレンス・ピンは、ADA4500-2 でバッファされる 2.5 V の ADR4525 電圧リファレンスで駆動します。ADR4525 電圧リファレンスは、高精度、低ノイズ(1.25 µV p-p、0.1 Hz ~ 10 Hz)で安定したリファレンスを DAC に供給します。ADR4525 は、先進のコア・トポロジーを採用して高精度を実現し、業界最先端の温度安定性とノイズ性能を提供します。また、出力電圧温度係数が低く(最大 2 ppm/℃)、長期出力電圧ドリフトも小さいため、経時変化や温度変動に対してより高いシステム精度を維持します。ADR4525B の初期室温誤差は最大 ±0.02% で、16 ビットでは約 13 LSB です。

デュアルの ADA4500-2 を、DAC 出力バッファおよび電圧リファレンス・バッファとして選択しています。ADA4500-2 は、最大オフセット電圧が 120 µV、オフセット・ドリフトが 5.5 µV/℃ 未満、0.1 Hz ~ 10 Hz のノイズが 2 µV p-p、最大入力バイアス電流が 2 pA の高精度アンプです。先進のレールtoレール入力回路によってクロスオーバー歪みが除去されるため、DAC バッファに最適です。

一般的なレールtoレール入力のアンプでは、2 つの差動ペア(PNP と NPN、または PMOS と NMOS)を使ってレールtoレールの入力振幅を実現しています(チュートリアル MT-035 参照)。一方の差動ペアは入力コモンモード電圧の下側の範囲でアクティブになり、他方のペアは上限側でアクティブになります。このような従来の相補型デュアル差動ペア・トポロジーでは、一方の差動ペアから他方のペアに切り替える際にクロスオーバー歪みを生じます。アンプを DAC バッファとして使用する場合、オフセット電圧が変化すると非直線性を生じます。

ADA4500-2 は、入力回路内にチャージ・ポンプを内蔵することにより、2 番目の差動ペアを必要とせずに、レールtoレールの入力振幅を実現しています。したがって、このデバイスはクロスオーバー歪みを生じません。この単電源システムにクロスオーバー歪みのないアンプを使用することにより、広いダイナミック出力範囲を実現するとともに、入力コモンモード電圧範囲の全てにおいて直線性を維持します。ADA4500-2 の動作の詳細については、ADA4500-2 のデータシートを参照してください。

DAC の出力インピーダンスは一定(標準で 6.25 kΩ)で、コードの影響を受けません。したがって、誤差を最小限に抑えるため、出力バッファは高入力インピーダンスかつ低入力バイアス電流でなければなりません。入力インピーダンスが高く、室温での入力バイアス電流が最大 2 pA、全温度範囲での入力バイアス電流が最大 190 pA の ADA4500-2 は、出力バッファに適したデバイスです。この結果、6.25 kΩ の DAC インピーダンスを流れる入力バイアス電流によるワーストケースの誤差は 1.2 µV で、1 LSB よりはるかに小さな値です。

DAC の出力はバッファされ、パワー MOSFET(IRLMS2002TRPBF)の駆動に使用されます。MOSFET は、DAC の出力電圧を LED を駆動する電流に変換します。この回路の MOSFET は最大 6.5 A の電流を処理可能ですが、電流は EVAL-CN0370-PMDZ ボードの LED の最大定格電流である 20 mA に制限されます。このボードは、RLIMIT 抵抗を変更することによって LED へのフルスケール電流を容易に変更する機能を備えています。最大電流は次のように計算できます。

CN0370-EQ3

ジャンパの選択により、LED を PMOD 電圧(VPMOD)または外部電圧(VEXT)に接続することができます。

VPMOD = 3.3 V での動作時には MOSFET に対する十分なヘッドルームを確保するため、VEXT を選択する必要があります。例えば、VOUT = 2.5 V、VDS = 0.7 V、VLED = 0.7 V の場合、VEXT は 2.5 V + 0.7 V + 0.7 V = 3.9 V より高くなければなりません。

3.3 V 電源での動作を可能にする代替策は、フルスケール出力電圧を約 1.9 V に制限し、DAC 出力電圧の 76% だけを使用することです。1.9 V 出力で 20 mA のフルスケール出力電流を維持するには、RLIMIT 抵抗を約 95 Ω に変更する必要があります。.

AD5542A は 10 ピン MSOP または 10ピン LFCSP パッケージを採用しています。ADR4525 は 8 ピン SOIC パッケージを採用し、ADA4500-2 は 8 ピン MSOP パッケージまたは 8 ピン LFCSP パッケージを採用しています。


積分非直線性(INL)と微分非直線性(DNL)の測定

INL は、DAC の理想的な伝達関数からの実際の伝達関数の LSB 単位の偏差を表します。DNL は、実際のステップ・サイズと 1 LSB の理想値との差を表します。このシステム・ソリューションは、DNL と INL が ±1 LSB の 16 ビット分解能を実現します。この回路の DNL 性能を図 2 に、INL 性能を図 3 に示しま

図 2. 微分非直線性(DNL)

 

図 3. 積分非直線性(INL)

 

DNL と INL の測定では測定範囲の下限から 100 コード(約 4 mV)分を除いていることに注意してください。この理由は、MOSFET のリーク電流によって出力電圧がこの領域で非線形になるからです。

従来のレールtoレール入力段を備えたオペアンプを使用することによって生じる非直線性を図 4 に示します。このプロットは、アクティブな差動ペアを PNP ペアから NPN ペアに切り替えた時のクロスオーバー歪みを示しています。この領域での誤差は +4 LSB ~ −15 LSB の範囲で変化します。

図 4. 従来のレールtoレール入力段を備えた オペアンプ・バッファ使用時の DAC の非直線性

 


ノイズの測定

システム全体で対象とする 0.1 Hz ~ 10 Hz のノイズの VOUT での測定結果は 14 µV p-p 未満です。3 つの部品のノイズを 2 乗和平方根(RSS)で合算し、システム全体のノイズを推定することができます。0.1 Hz ~ 10 Hz の値は次のとおりです。

  • AD5542A: 0.134 μV p-p
  • ADR4525: 1.25 μV p-p
  • ADA4500-2(リファレンス・バッファ): 2 μV p-p
  • ADA4500-2(DAC バッファ): 2 μV p-p

これらの RSS 値は 3.1 µV p-p となります。

EVAL-SDP-CB1Z システム開発プラットフォーム(SDP)と SDP-PMD-IB1Z インターポーザ・ボードはセットアップから取り外されており、電源は 4.5 V バッテリから供給しています。

図 5. 10,000 の ゲインで 0.1 Hz ~ 10 Hz の ノイズを測定するテスト・セットアップ

 

入力を短絡したボックスのノイズ出力と EVAL-CN0370-PMDZ 回路を接続したノイズの測定結果は、それぞれ図 6 と図 7 に示すように、7.81 µV p-p と 9.6 µV p-p です。2 つのシステムのノイズには相関がないため、システム・ノイズは次式のように RSS で合算して計算します。

CN0370-EQ4

これに相当する LED 駆動時のノイズ電流は、20 mA のフルスケール電流に対して 5.58 µV ÷ 124 Ω = 45 nA となります。

図 6. ノイズ測定ボックスの入力を短絡したときの 出力ノイズの測定結果: 78.1 mV p-p (入力換算で 7.81 µV p-p)

 

図 7. EVAL-CN0370-PMDZ を接続したときの 出力ノイズの測定結果: 96 mV p-p (入力換算で 9.6 µV p-p)

 


ボード・レイアウト時の考慮事項

ボード上の電源とグラウンド・リターンのレイアウトを慎重に検討することが重要です。プリント回路ボードでは、アナログ部とデジタル部を分離する必要があります。複数のデバイスでアナログ・グランドをデジタル・グランドに接続する必要があるシステムでこの回路を使用する場合、1 点でのみ接続します。全ての部品への電源は、0.1 uF 以上のコンデンサでバイパスする必要があります。これらのバイパス・コンデンサは、物理的にデバイスのできるだけ近くに配置する必要があり、コンデンサは理想的にはデバイス真上に配置します。0.1uF のコンデンサは、セラミック・コンデンサなどの等価直列抵抗(ESR)と等価直列インダクタンス(ESL)が低いものを選択します。この 0.1 µF のコンデンサは、過渡電流のグラウンドへの低インピーダンス経路を提供します。また、電源ラインはできるだけ太いパターンにして低インピーダンスの電源経路を確保する必要があります。最大限の性能を得るため、正しいレイアウト、グラウンディング、デカップリング技術を使用します。(チュートリアル MT-031「データ・コンバータのグランディングと AGND/DGND の不可解さの解決」と、チュートリアル MT-101「デカップリング技術」を参照してください。)

レイアウト・ファイル、回路図、部品表などが完備された設計サポート・パッケージについては、www.analog.com/CN0370-DesignSupport をご覧ください。

バリエーション回路

低消費電力ソリューション(低速時)にするには、ADA4505-1/ADA4505-2/ADA4505-4 を出力バッファとして使用します。ADA4505-1/ADA4505-2/ADA4505-4 は、低入力バイアス電流のマイクロパワー、ゼロ・クロスオーバー歪アンプです。ADR441ADR421は、2.5 V リファレンスを供給するのに適しています。これらのデバイスは高精度、低ノイズで、最大 18V の入力電圧が可能です。

AD5063 は、バッファなしの 16 ビット電圧出力 DAC で、両電源のアプリケーションでのバイポーラ・モード動作が可能です。

回路の評価とテスト

この回路には、EVAL-CN0370-PMDZ 回路ボード、EVAL-SDP-CB1Z SDP ボード、および SDP-PMD-IB1Z インターポーザ・ボードが使用されています。SDP ボードとインターポーザ・ボードは 120 ピンの接続用コネクタを備えているので、回路のセットアップと回路性能の評価を短時間で行うことができます。EVAL-CN0370-PMDZ ボードは、PMOD コネクタ J3 を介して接続します。EVAL-CN0370-PMDZ には、この回路ノートで説明したように評価対象の回路が含まれています。SDP ボードとインターポーザ・ボードは、CN-0370 評価用ソフトウェアとともに使用し、EVAL-CN0370-PMDZ 回路ボードからデータをキャプチャします。ソフトウェア・ユーザー・ガイドについては、www.analog.com/wiki-CN0370 をご覧ください。


必要な装置


以下の装置が必要です。

  • USB ポート付き Windows® XP、Windows Vista(32 ビット)、または Windows 7(32 ビット)搭載PC
  • EVAL-CN0370-PMDZ 回路評価ボード
  • EVAL-SDP-CB1Z SDP ボード
  • SDP-PMD-IB1Z インターポーザ・ボード
  • CN-0370 評価用ソフトウェア (ftp://ftp.analog.com/pub/cftl/CN0370/ からダウンロード)
  • 電源: 6 V AC アダプタ (EVAL-CFTL-6V-PWRZ)
  • Agilent 34401A マルチメータまたは同等品
  • GPIB-USB ケーブル(回路の直線性測定時のみ必要)


評価開始にあたって


CN-0370 評価用ソフトウェアをダウンロードして PC にインストールします。


機能ブロック図


図 8 にテスト・セットアップの機能ブロック図を示します。

 

図 8. テスト・セットアップの機能ブロック図

 


セットアップ


SDP-PMD-IB1Z インターポーザ・ボードの 120 ピン・コネクタを EVAL-SDP-CB1Z SDP ボードの「CONA」と表示されたコネクタに接続します。120 ピン・コネクタの両端にある穴を利用し、ナイロン製の固定用部品を使って 2 枚のボードをしっかりと固定します。EVAL-CN0370-PMDZ を J3 の PMOD コネクタに接続します。

電源をオフにして、6 V AC アダプタ電源を J1 コネクタに接続します。SDP ボードに付属している USB ケーブルを PC の USB ポートに接続します。この時点では、USB ケーブルは SDP ボードのミニ USB コネクタに、まだ接続しないでください。


テスト


インターポーザ・ボードに電源を供給したら、PC からの USB ケーブルを SDP ボードのミニ USB コネクタに接続し、評価用ソフトウェアを起動します。EVAL-SDP-CB1Z システム開発プラットフォームが Windows の Device Manager に表示されていれば、このソフトウェアは EVAL-CN0370-PMDZ と通信を行います。

USB による通信が確立されると、SDP ボードを使って EVAL-CN0370-PMDZ 回路評価ボードにデータを書き込むことができます。

図 9 に、EVAL-CN0370-PMDZ 回路評価ボードの写真を示します。

テストのセットアップの詳細、およびデータ・キャプチャ用評価ソフトウェアの使用方法については、CN-0370 ソフトウェア・ユーザー・ガイドに記載されています。

SDP ボードについては、SDP ユーザー・ガイド(UG-277)を参照してください。

 

図 9. EVAL-CN0370-PMDZ 回路評価ボード