DN-270: LTC1840:I2Cファン制御によるシステムの連続冷却

はじめに

リニアテクノロジー社のLTC®1840は、連続稼動サーバおよび他のラック収納型ネットワーク機器や通信装置用のデュアル・ファン速度コントローラです。LTC1840は高度な制御機能と監視機能を備えており、これらの機能はI2CおよびSMBus互換の2線式シリアル・インタフェースを介してアクセスされます。2本のファン速度制御チャネルの他に、LTC1840はファン・タコメータとフォールト監視用ピン、9つのスレーブ・アドレス、および4本の汎用プログラマブルI/Oピンを備えており、16ピンSSOPパッケージで供給されます。ファン速度を調節して必要な冷却条件に瞬時に適応させるので、エネルギー効率を上げノイズを減らします。減速動作によって、ファンのベアリングの磨耗が少なく、ファンの寿命と信頼性が向上します。

LTC1840を使用したファン速度制御システムのブロック図を図1に示します。LTC1840には2個の電流DACが内蔵されており、ファン速度を完全に制御するのに使われます。個別に測定された電流により、スイッチング・レギュレータのファン駆動出力電圧が調節されます。シリアル・インタフェースのコマンドにしたがって電流IDACが増加すると、それにしたがってVOが増加します。1個のDACによって制御されるファンの数は、スイッチング・レギュレータの出力電力によってだけ制限されます。

図1.LTC1840によるファン速度制御のブロック図

図1.LTC1840によるファン速度制御のブロック図

LTC1840のTACHピンはタコメータ出力を備えたファンの速度を監視します。内部カウンタは、ファンのタコメータの立上がりエッジから次の立上がりエッジのあいだに、最大255までカウントします。カウンタの速度は、50kHzの内部発振器と除数(シリアル・インタフェースによって選択された2、4、8、または16)によって決定されます。ベアリングの磨耗のためファンの速度が低下したり、故障で停止すると、内部カウンタがオーバフローして、フォールト・レジスタ内の対応するビットが“L”に設定されます。この状態になるとシステム・コントローラが応答し、故障したファンを停止して保守担当者を呼び出します。

チップには4つの汎用入出力(GPIO)ピンがあり、個別に構成設定されています。これらはオープンドレインの出力として“H”または“L”に設定することができ、あるいは1.5Hzで脈動させることができます。LEDに適合させるため、出力のシンク電流の定格は10mAに設定されています。入力として構成されると、GPIOピンは、サーマル・スイッチ、プッシュ・ボタン、およびスイッチング・レギュレータとホットスワップコントローラのフォールト出力またはパワーグッド出力を監視することができます。状態が変化すると検出され、フォールト・レジスタ内にフラグが立てられます。

デバイスのアドレスとレジスタのアドレスを指定することにより、I2Cを介して内部のデータ・レジスタが読み出され、プログラミングされます。DACAとDACBの各レジスタは、100μAの電流出力を255段階のスケールで制御します。ユーザは、STATUSレジスタにより、TACHAとTACHBのフォールト・データをイネーブルし、内部カウンタの周波数の除数を設定することができます。内部カウント(これはタコメータの速度に反比例します)は、TACHAとTACHBの各レジスタに格納されます。マスクされないフォールトは即時ハードウェア警報としてFAULTピンを“H”にセットします。GPIOセットアップ・レジスタとGPIOデータ・レジスタにより、GPIOピンの構成設定、出力とフォールト状態の指定、および入力状態の読取りが行われます。

システムの連続冷却とタコメータの監視

LTC1840の機能を図2の回路に示します。各LTC1771高効率降圧レギュレータによって、4個までの12V、420mAのファンへの電力が供給されます。図示されているように、上側のLTC1771は休止状態の予備ファンによってバックアップされた1個のファンを駆動します。主ファンが故障した場合、GPIO3がLTC1771をターンオフすると同時にバックアップ・ファンを起動し、ファンは全速力で回転します。これらのファンは一度に1個だけ動作するので、タコメータの出力はOR結合されており、それらの速度を監視するには1つの入力(TACHA)だけで十分です。

図2.LTC1840による多様なファン動作の制御

図2.LTC1840による多様なファン動作の制御

下側のLTC1771によって2個のファンが並列に駆動され、交互にTACHBによって監視されます。これらのファンは同時に動作するので、それらのタコメータの出力はクワッドNANDゲートによって多重化されます。GPIO2は脈動モードで動作し、マルチプレクサへのクロックとして機能します。

その他の特長

複数のファン・コントローラを必要とするアプリケーションでは、LTC1840のスリーステート(“H”、“L”、接続なし)のアドレス・プログラミング入力によって、ユーザが選択可能な9つのスレーブ・アドレスがサポートされます。FAULT出力はシリアル・インタフェースをバイパスして、LTC1840によって検出された(タコメータの速度低下およびGPIOのロジックの状態変化を含む)フォールト状態を即座に通知します。

起動時にBLASTピンが“H”ならば、またはいつであっても“H”から“L”への遷移が生じると、DAC出力電流は即座にフルスケールへ強制され、チップはシリアル・バスからのコマンドを待ちます。さらに、BLASTが“H”にセットされると、LTC1840は内部監視タイマによってシステム・コントローラの故障に対して監視をおこないます。1分半以上デバイスがアクセスされないと、システムを確実に冷却するため両方のDAC出力がフルスケールに設定されます。

著者

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Dilian Reyes