質問:
ノイズ・ゲインと信号ゲインの違いは何でしょうか?
回答:
RAQ 56「アンプ、減衰器、それとも両方?」の締めくくりに説明しましたが、信号ゲイン(SG)を維持したままノイズ・ゲイン(NG)をコントロールすることができます。 オペアンプ理論の簡単なおさらいをすると、オペアンプには信号ゲインとノイズ・ゲインという2種類のゲインが関係しています。信号ゲインはアンプの構成に依存しています。非反転オペアンプ構成の場合信号ゲインの式はG = (RF /RG) + 1となり、反転構成の場合はG = –RF/RGとなります。このどちらの構成でもノイズ・ゲインは同じであり、非反転ゲインのNG = (RF /RG) + 1という式が成立します。
回路のアンプの安定性は、信号ゲインではなくノイズ・ゲインによって決まります。現代のアンプのほとんどはユニティ・ゲインで安定動作しますが、特殊用途のアンプにはそうでないものがあります。非補償型オペアンプは、標準的なユニティ・ゲイン安定オペアンプに比べると、ノイズ電圧が小さく帯域幅が広いという独自の利点があります。そこで、どういう場合にノイズ・ゲインを操作しなければならないのかという点が問題になります。
ノイズ・ゲインの操作は、さまざまなアプリケーションで役に立ちます。たとえば、非補償型アンプの特長をいろいろ活用する場合は、安定動作をする最小ゲインよりも小さいゲインでアンプを使用したいことがあります。普通はこれではうまくいきません。しかし、ノイズ・ゲインを操作することによって、アンプを「騙して」高ゲインで動作していると思わせることができます。無理やり高ノイズ・ゲインにするもう一つの大きな利点は、容量性負荷を安定的に駆動するアンプ能力を改善できることです。 ノイズ・ゲインを操作するには、一般的に抵抗を追加する必要があり、場合によってはコンデンサの追加が必要なこともあります。反転入力と非反転入力の間に抵抗を追加したり、反転入力とグラウンド間に直列RC回路を追加したり、入力またはゲイン抵抗と並列に部品を追加したりするなど、ごく簡単にできます。ここで詳しく説明するわけにいきませんが、下記の参考文献をご覧になればいかに簡単かお分かりになるでしょう。
ノイズ・ゲインを操作する利点は信じられないくらいすばらしいと思われるかもしれません。しかし、もちろん多くの例にもれず、この場合にもいくつかトレードオフがあります。この方法に伴うトレードオフには出力ノイズとオフセット電圧が増大するという2つがあります。それでも、高ノイズ・ゲインを「無理やり」設定する方法がいつか役に立てば、あなたのオペアンプ設計の技にひとつ強力な武器が加わることになるでしょう。