質問:
可動体や回転体の位置の測定に最も適しているのは、どのような種類のセンサーですか?
回答:
「ADA4570」などのAMRセンサーを試してみてください。
可動体や回転体の位置は、様々な方法で測定できます。代表的なものとしては、光学式エンコーダ、ホール・センサー、レゾルバを使う方法が挙げられます。また、磁気抵抗効果をベースとした磁気センサー(磁界センサー)を使用する方法もよく使われます。より詳しく言えば、GMR(Giant Magnetoresistive:巨大磁気抵抗)、TMR(Tunnel Magnetoresistive:トンネル磁気抵抗)、AMR(Anisotropic Magnetoresistive:異方向性磁気抵抗)といった磁気抵抗効果を利用する磁気センサーが使われています。本稿では、最後に挙げたAMR効果を利用するセンサーについて詳しく解説します。
ADA4570は、アナログ・デバイセズが提供するAMRセンサーです。この製品は、電気抵抗の値が磁界の向きに依存するという強磁性材料の性質を利用します。これについては、以下の式で表すことができます。
ここで、αは磁界の向きと電流の向きの間の角度を表します。この性質は、1851年頃に、ケルビン卿という通称で知られるWilliam Thomson氏によって発見されました。
線形変位の測定において、センサーの最適な応答を得るには、センサーを磁石と同一平面上に配置し、センサーの中心と磁石の中心の位置を合わせます。AMRセンサーはN極とS極を識別することができないので、磁石の位置は変えられません。
一般に、回転体の位置を測定する方法としては、オフシャフト測定またはエンドオブシャフト測定が使用されます(図1)。オフシャフト測定において、センサーからは各極の絶対情報が正弦信号/余弦信号として繰り返し出力されます。例えば、図1(中央)のようにN極とS極から成る磁石が4対存在する場合には、45°という結果が得られます。
図1(右)に示したエンドオブシャフト測定では、回転する双極子磁石の下にセンサーを配置します。この場合、N極とS極によって、磁石中央の上部に均一の磁界が形成されます。センサーは、磁界と測定の対象物が同一平面上になるように配置します。典型的なアプリケーションとしては、ローターの位置の測定や、ブラシレスDCモータの制御が挙げられます。180°の角度に対応するAMRセンサーの場合、モータの極数は2の偶数倍でなければなりません。極数が2の奇数倍である場合には、360°の情報が必要になります。モータの制御に使われる従来型のホール・センサーと比べ、AMRセンサーであるADA4570(または「ADA4571」)ではより高い精度が得られます。また、トルク・リップルを抑えつつ、モータの位置に依存することなく、起動後やアイドル状態の後でも正確な絶対位置情報を出力することが可能です。
アナログ・デバイセズのAMRセンサーの場合、一方が他方に対して45°回転した状態になっている2つのホイートストン・ブリッジを使って角度を測定します(図2)。正弦関数と余 弦関数によって角度が 計算され、センサー(ADA4570)に対する0°~180°の向きが示されます(以下参照)。
AMRセンサーでは、電気的な角度と機械的な角度は区別されます。AMRセンサーの動作原理と、上述したホイートストン・ブリッジの間の45°という角度に基づき、上の式によって180°の機械的回転における絶対角度が測定されます。電気的な周期は、双極子磁石が360°回転する間に2回繰り返されます。AMRセンサーは飽和状態で動作するので、絶対磁界強度は、特定の最小磁界強度には依存しません。そのため、強力な磁石と共に使用できる堅牢なシステムを構成することができます。
光学センサーやホール・センサー、レゾルバは、いずれも位置の測定に適したソリューションです。ただ、磁気センサーも洗練されたソリューションの1つです。実際、磁気センサーは精度が高く堅牢性に優れているので、多くのアプリケーションで利用されています。アナログ・デバイセズはそうしたアプリケーション向けに、様々な磁気センサー製品を提供しています。AMRセンサーとしては、ADA4570、ADA4571に加え、冗長性が求められるケースに対応可能な「ADA4571-2」も用意しています。AMRセンサーについて詳しく知りたい方は、稿末に示した参考資料をぜひお役立てください。
参考資料
Robert Guyol「AN-1314 アプリケーション・ノート:AMR角度センサー」Analog Devices、2014年10月
Enda Nicholl「安全性を最重視するモータ・アプリケーション向けのデュアルAMR角度センサー」Analog Dialogue、Vol. 53、No. 4、2019年11月