未使用ピン

質問:

接地がアナログに関する問題の最たる原因とすると、次に大きな問題は何でしょうか?

RAQ:  Issue 123

回答:

IC の未使用端子の誤接続です。

この RAQ を書く前に私はオクトーバーフェストの元祖である、ミュンヘンの世界最大のオクトーバーフェスト1で週末を過ごしました。バイエルン・ビールは非常においしいのですが、ビールのためだけに行ったわけではなく、ドイツの友人や元同僚に会いに行ったのです。我々の多くはアナログ・アプリケーションの専門家や元専門家なので、ビールとブラスバンドを聴きながらの会話は、当時の仕事で経験した意外な問題に及びました。IC の未使用端子の誤処理に関する問題は驚くべき数だったので、RAQ Issue 32、Issue 463、Issue 704、Issue 1195ですでに取り上げていますが、(オクトーバーフェストに再度訪れたのと同様に)再度検討する必要性を感じました。

問題の 1 つは、同じメーカーのデータシートでさえ標準化が欠如していることから生じます。IC のピン配置図には、”NC” と示されている端子が 1 本以上あるのが普通です。”NC”には 2 つの異なる意味を持つことがあり、しかもどちらの意味を指すのかデータシートに説明がない場合がよくあります。より一般的な意味は、IC チップからそのピンへの接続は無いということです。この場合は接地するのが最適ですが、PCB のその部分を通る別のトラックをそこに接続したとしても、ほとんどの場合害はありません。

しかし、NC のもう1つの意味として、製造時に較正や試験のために使用される内部接続に端子が接続されていることを意味する場合があり、これは決して珍しいことではありません。この場合、通常使用ではどこにも接続してはいけません。端子に ”IC”(internal connection: 内部接続)と示されている場合は、まず例外なくこのことを指します。このようなピンに接続すると誤作動の原因となったり、さらにはデバイスが破壊されることさえあります。NC の意味がデータシートに記載されていない場合、そうしたピンは未接続にしておくか、あるいはメーカーの製品担当エンジニアに問い合わせて明確にする必要があります。

一般的に、次のような場合は未使用入力をオープンのままにしておくべきではありません。

  • デジタル回路には多くの場合、その動作を設定するのに使用され、永久に論理 0 または論理 1 に接続される入力があります。そうした入力はその論理状態が変更されることは決してありませんが、使用されていないわけではないので、デバイスの動作要件に従って接続する必要があります。本当の意味での未使用のロジック入力とは、その論理状態が、必要とされる特定のアプリケーションに影響を及ぼさないものです。これらは固定の論理 0 または論理 1 の電位に接続すべきもので、フロート状態にしておくべきではありません6。未使用の論理入力に内部のプルアップまたはプルダウンの抵抗/電流がある場合は、そのピンに接続する必要はありません。ただし、そのピンが静電気や RF 電界に曝される可能性がある場合は、外部でそれぞれ VDD または VSS へ接続しておくほうが賢明です7
  • 未使用のアナログ信号入力は通常、DC 電位に接続する必要がありますが、ときにはコンデンサによって AC にのみ接地しなければならない場合もあります̶ RTFDS8。多くの場合、このDC 電位は電源またはグラウンドにすることができますが、RAQ Issue 463 で詳細に説明されている理由で、アンプ入力にはしばしば異なる処置が必要です。RAQ Issue 32 でその理由が説明されているように、アナログスイッチやマルチプレクサへの未使用のアナログ信号の接続は決してフロート状態にしてはならず、常にグラウンドやその他の使いやすい電位に接続しておく必要があります。

未使用の電圧出力が終端を必要とすることは稀で、通常はフロート状態にしておくことができますが、アンプによってはその出力(バッファ付き電圧リファレンスの出力を含む)が容量性負荷がない、あるいは非常に稀ですが、抵抗性負荷がないと発振することがあります。このような発振はシステムの他の部分の動作を阻害することがあるので、適切なコンデンサや抵抗を使用して防止する必要があります。

未使用の電流出力は多くの場合、電源またはグラウンドへのプルアップ(またはプルダウン)を接続して、回路の他の部分の誤動作を防止する必要があります。実際、キルヒホッフの法則によれば、電流は必ずどこかへ流れなければならず、消え去ることは有り得ません。このプルアップ/プルダウンは一般には短絡回路ですが、時にはIC チップ内ではなく、抵抗で電力が消費されるようにしなければならないことがあります。

これまで述べたすべてのアドバイスで最も伝えたいことは、IC の特定の端子がアプリケーションで使用されていなくとも、その機能を理解することが必要だ、ということです。その機能とは、どれだけの電位がそこに存在するか(または存在すべきか)、どれだけの電流がそこへ(またはそこから)流れるか(または流れなければならないか)、静電気や RF の影響をどれだけ受けやすいか、何らかの容量性または抵抗性の負荷を必要とするか、といったことです。つまり、これまでに何度も述べてきたように、「助けとなるデータシートを読め」8、そしてそれが伝えることを実行せよ、ということになります。


1 オクトーバーフェスト 2015

2 Bryant, James 著「重要なディテールの分離(あるいは人魚と酢漬けのニシンの昼食)」 珍問/難問集、第 3号

3 Bryant, James著「未使用のオペアンプをどうすりゃいいのか?」珍問/難問集、第 46 号

4 Bryant, James著「その未使用ピンをどうにかしなさい!」 珍問/難問集、第 70 号

5 Castro, Gustavo著「我が道を行く鄕士と謎めいたパッド」 珍問/難問集、第 119 号

6 ごくまれにデジタル回路は、論理 0、論理 1、オープン回路の3 状態をとる「トライステート」入力を備えています。こうした場合には、未使用ピンはオープン回路にしておかなければならないことがありますが、できればそうしない方がよいでしょう。RTFDS。

7 内部プルダウン付き端子をプルアップすること(またはその逆)は許されますし、そうしなければならない場合もありますが、そうすると(わずかですが)システムの消費電流が増加します。

8 Bryant, James著「買主の危険負担に気をつけて!」 珍問/難問集、第 4 号

Bryant, James著「Some Thoughts on the Connection of Unused Pins.

Bryant, James著「How to Make Sense of a Data Sheet.



著者

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James Bryant

James Bryantは、1982 年から2009 年までアナログ・デバイセズの欧州地区アプリケーション・マネージャを担当し、つねに面白いプロジェクトを探求しています。 リーズ大学で物理学と哲学の学位を取得し、さらにC.Eng.、Eur.Eng.、MIEE、FBISの資格があります。エンジニアリングに情熱を傾けるかたわら、アマチュア無線家でもあり、コールサインG4CLFを持っています。