スピード違反にご用心

質問:

複数のチャンネルをマルチプレクサで切り替えた時、アンプが正常に動作しません。何が原因ですか?

RAQ:  Issue 113

回答:

一部の人たち(特にエンジニア)は、スピード違反に異議を唱える1つの方法は、レーダー装置の校正証明書を要求することだと言います。校正期限が過ぎていたら、運転者をとがめることはできないというわけです。これが誰にでも有効かどうかはともかく(装置が最近校正されたばかりかもしれません)、スピード違反で切符を切られないようにする最も確実な方法は制限速度を守ることです。しかし、もしあなたが速度を超過していることに気づかなかったとしたら? これは言い訳に過ぎず、通常は通用しません。

同じことがアンプにも起こる可能性があります。アプリケーションによっては、アンプ入力が超高速過渡電圧の信号源に接続されていることをエンジニアが忘れていることがあります。図1のような電圧フォロワ(または計装アンプ)でバッファされたマルチプレクサを例にとってみましょう。入力信号は静的で、ノイズ帯域幅を狭くするため、あるいはRF干渉を小さくするためにRC回路でフィルタ処理されているとします。アンプは遷移と遷移の間で出力が安定するためには十分高速でなければならないので、アンプの選定にはスルーレートと帯域幅を考慮しなければなりません。しかし、ラボでの結果は期待通りにはいきません:アンプ出力の動作は遅く、長いセトリング・テールのある異常な波形となります。セトリング・タイムは仕様とはかけ離れた値となります。何が問題なのでしょうか?

RAQ:  Issue 113 Figure 1
図1. マルチプレクサ入力付き電圧フォロワ

いろいろ悪い事が起こりそうです。しかし、基本的に、チャンネルが切り替わる時にアンプ入力が過負荷の状態になっていきます。出力の動きが入力より遅い(少なくとも入力よりも前に動かない)場合、2つの入力間に大きな電圧差が生じます。その結果、入力トランジスタが飽和する、入力バイアス電流が大きくなる、内部の保護ダイオードが順方向バイアスになる、その他にも好ましくない結果を生じる可能性があります。このチャンネル切替えに対する実際の応答は、入力方式、プロセス技術、内蔵保護回路によって異なり、過渡電圧の速度、隣接チャンネル間の電圧差によっても異なります。過負荷状態に対するアンプの応答に加え、増加した入力バイアス電流(マルチプレクサとオペアンプの間の寄生容量に流れるだけの場合でも)が、マルチプレクサの入力側のコンデンサを充電または放電します。元の電圧レベルを変えてしまうこの変動は、信号源とコンデンサの間に接続している抵抗を通してのみ元の電圧に戻ります。この時もしフィルタの時定数が大きい場合は、アンプの出力側に長いセトリング・テールが生じます。

信号源に応じて問題を解決する方法はいくつかあります。低コストでの解決策は、高速な信号源(この場合はマルチプレクサ)に接続されている任意の入力と直列に抵抗を追加することです。この抵抗は、過渡電圧中に信号源から見たインピーダンスを増加させ、入力が飽和するのを防ぐ役割を果たします。DAC出力、あるいはアンプがマイクロコントローラまたはFPGAからの矩形波を整える目的で使用される場合、簡単なRCがエッジの速度を下げて、アンプを正常な状態に保つ役割を果たすことがあります。いずれの場合も最善の解決策を特定するために解析作業が少し必要ですが、とにかく過渡電圧状態に注意してください。また、改めて申し上げますが、問題を回避する最善の方法は速度を落とすことです。

Gustavo Castro

Gustavo Castro

Gustavo Castroマサチューセッツ州ウィルミントンの高精度シグナル・コンディショニング・グループに所属するアプリケーション・エンジニアです。2011年1月のアナログ・デバイセズ入社以前は、10年間デジタル・マルチメータやDCソースなどの精密計測機器設計に従事していました。2000年にメキシコのモンテレイ工科大学で電子工学の学士号を取得しました。これまで2件の特許を取得しています。