効率が95% で低ノイズ動作の15V、2.5A モノリシック昇降圧DC/DC コンバータ

消費電力の大きいポータブル機器や産業用計測器では、多くの場合、増大し続ける処理能力を満たすために、マルチセル・バッテリや大容量バッテリが必要です。電圧範囲が広く高効率の昇降圧DC/DC コンバータは、バッテリの稼働時間を長くして複数の入力電源を扱うための理想的な解決策です。LTC3112 は、2.2V~ 15V の入力に対応する2.5A の昇降圧コンバータです。入力電圧範囲が広いので、1 本から3 本までのリチウムイオン電池、鉛蓄電池、スーパーキャパシタ、USB ケーブル、AC アダプタなど、さまざまな電源から、2.5V ~ 14V の範囲の電圧に変換できます。

LTC3112 は、最新世代の昇降圧PWM 制御方式を特長としており、降圧動作と昇圧動作が切り替わるときに発生するジッタを、最小限に抑えることができます。電流制限、過電圧保護、サーマル・シャットダウン、短絡保護などの保護機能により、過酷な環境で堅牢な動作を実現します。

部品サイズまたは変換効率が重要なアプリケーションでは、LTC3112 のデフォルトのスイッチング周波数である750kHz を要求に応じて300kHz ~ 1.5MHz の範囲で同期させることができます。出力電流を制御または測定する必要がある設計では、出力電流モニタ・ピンを使用できます。選択可能なBurst Mode® 動作により、装置がスタンバイモードのときの動作寿命が長くなります。

図1 に示すLTC3112 ベースのコンバータは、12Vの出力で30Wの電力を発生できます。ソリューションの占有面積は200mm2 未満です。同様な電力レベルでは、コントローラ・ベースの昇降圧コンバータや複雑なデュアル・インダクタSEPICコンバータでは、このような大きさにおさめることは到底不可能です。主な外付け部品は、入力および出力のフィルタ・コンデンサとパワー・インダクタに限られています。LTC3112 は、熱特性が改善された4mm × 5mm の16ピンDFN パッケージまたは20ピンTSSOPパッケージで供給されます。

図1.LTC3112ベースの30Wソリューション

図1.LTC3112ベースの30Wソリューション

複数の入力電源による動作

LTC3112 は動作電圧範囲が広いので、複数の電力源から給電できます。LTC4412 PowerPathコントローラ(TSOT-23 パッケージ)が、2 つの入力電源のうち損失の低い方を選択するアプリケーションを図2 に示します。LTC4412 は、選択されているP チャネルMOSFET 両端の20mVの順方向電圧を維持して、損失を最小限に保ちます。この回路では、1 本のリチウムイオン電池と12VのACアダプタのうち、電圧の高い方をLTC3112 の入力に接続するよう、LTC4412 が自動的に切り替えます。

図2.LTC3112コンバータに給電する最も高い電圧の入力を選択するLTC4412 PowerPathコントローラ

図2.LTC3112コンバータに給電する最も高い電圧の入力を選択するLTC4412 PowerPathコントローラ

2 つの電力源に対する効率カーブを図3 に示します。いずれの入力の場合も、90%より高いピーク効率が実現されます。標準のスリープ電流が50µAのBurst Mode 動作(破線)では、20 倍を超える負荷電流範囲にわたって高い効率を維持しています。

図3.1本のリチウムイオン電池(3.6V)またはACアダプタ(12V)を入力とする5V出力の効率

図3.1本のリチウムイオン電池(3.6V)またはACアダプタ(12V)を入力とする5V出力の効率

VINピンとFBピンの間に接続されているフィードフォワード回路網(図2 のCFF、RFF)により、ACアダプタの電圧が印加された場合のトランジェント応答が改善されます。フィードフォワード回路網の値は、まず、VIN が3.6V から12V に遷移したときのCOMPピンでの電圧変化を測定することで選定します。COMPピンでは380mVの変化が観測されたので、VIN およびRFF の最適値は次のように計算できます。

数式1

VOUT のレギュレーションは、出力コンデンサが47µF(図4)で負荷が500mAの場合、15µs の遷移時間中、300mV つまり6% 以内に維持されます。VIN の立ち下がりエッジは約10 倍低速なので、さらに小さい過渡変動になります。

図4.3.6Vから12Vへの入力ステップと結果として得られるVOUTトランジェント

図4.3.6Vから12Vへの入力ステップと結果として得られるVOUTトランジェント

図2 の補償部品を使用した場合の3.6V入力、5V 出力の負荷ステップ応答を図5 に示します。この場合、出力コンデンサが47µF のVOUTでは、250mA から1Aへの負荷ステップに対して、わずか250mVの過渡変動という結果になります。入力電圧と出力電流負荷ステップの両方について、優れた応答を得るために、LTC3112 のループ応答をどのように設定できるかを図4 および図5 に示します。

図5.250mAから1Aへの負荷ステップと結果として得られるVOUTトランジェント

図5.250mAから1Aへの負荷ステップと結果として得られるVOUTトランジェント

5V バックアップ電源

一部のデータベース・システムでは、1 次電源が故障した場合、データをバックアップするための時間が必要です。必要なエネルギーを供給するために、多くの場合、スーパーキャパシタが使用されます。LTC3112 は入力電圧範囲が広く、降圧と昇圧の両方に対応できるので、図6 に示すようなアプリケーションに最適です。

図6.VIN = 2.2Vまで動作する5Vレールのバックアップ電源

図6.VIN = 2.2Vまで動作する5Vレールのバックアップ電源

この回路では、1 次電源が供給されている間に、合計22mF のスーパーキャパシタが15Vに充電されます。ESR の小さい電解コンデンサまたはセラミック・コンデンサを並列に接続して、VIN のリップルを最小限に抑えます。この例では、VCCピンが5V 出力から逆駆動されるので、LTC3112 のゲートドライバーは、15V から2.2V までの入力電圧で効率的に動作することができます。入力に供給されるエネルギーは、次式によって得られます。

数式2

バックアップの結果を図7 に示します。VINとGND 間の分圧抵抗を介してRUNピンを駆動することにより、VOUT をきれいに立ち下げることができます。この例では、250mAの定電流が負荷としてLTC3112 から流れるので、VIN のコンデンサがレギュレーションを維持できるのは1.7 秒となり、平均の変換効率は、スーパーキャパシタの損失を含めて88% になります。

数式3
図7.電源をバックアップ中のスーパーキャパシタの放電性能

図7.電源をバックアップ中のスーパーキャパシタの放電性能

前述の例は、スーパーキャパシタの電圧定格と、バックアップに必要なエネルギーに応じて簡単に調整できます。IOUTピン(図6)をA/Dコンバータによってモニタすることにより、バックアップ中の負荷電流を測定できます。設計での重要な検討事項は、昇降圧コンバータの最大出力電流能力です。図8 に示すように、VIN >> VOUT の場合、LTC3112 は最大4Aの負荷電流を供給できます。コンバータが降圧モードから昇圧モードに移行すると、それに応じて最大負荷電流は減少します。

図8.VOUT = 5VでVCCに逆給電した回路での最大出力電流とVIN

図8.VOUT = 5VでVCCに逆給電した回路での最大出力電流とVIN

まとめ

LTC3112 は、広い入力電圧範囲または出力電圧範囲を必要とするさまざまなアプリケーションで、低ノイズの昇降圧変換を行います。LTC3112 は、小型で大電流を供給できるので、処理能力の向上したポータブル機器に最適です。ソリューション・サイズや変換効率は、50mΩ のNチャネルMOSFETスイッチや熱特性が改善されたパッケージの恩恵を受けています。稼働時間を長くするため、Burst Modeでの低い静止電流により、数桁にわたる負荷電流範囲で高い効率を維持しています。同期したスイッチング周波数、設定可能な出力電圧、負荷電流モニタ、外部ループ補償などの機能により、LTC3112 は、アプリケーションの要求に合わせて調整できます。

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Eddy Wells