性能を向上させ、
さらに応用範囲を広げた
MEMS加速度センサー

Uptime の記事「Condition Monitoring and MEMS Accelerometers:What You Need to Know(コンディション・モニタリングと MEMS 加速度センサー: 知っておくべきこと)」では、コンディション・モニタリング・アプリケーションに最適な技術として微小電気機械システム(MEMS)加速度センサーの特性が紹介されていました。この記事では、MEMS 技術の進歩と性能レベルを示すデータを市販のモニタリング用圧電(PZT)加速度センサーと比較し、検証しています。

MEMS プロセス技術への投資と設計の革新により、MEMS の性能は大きく向上し、広範なコンディション・モニタリング・アプリケーションに適した選択肢になりました。現在では、最適化されたMEMS 構造とプロセス技術により、最大 50 kHz の共振周波数、25 μg √Hz 以下のノイズ密度の加速度センサーが実現可能になっています。シグナル・コンディショニングを綿密に設計することで、これらの新しい加速度センサーの低ブラウンノイズを十分に生かすことができます。

図 1. 新しい高周波加速度センサーのノイズ・スペクトル密度図

性能と比較データ

最新の MEMS 加速度センサーがコンディション・モニタリング・アプリケーションに適切かどうかを評価するため、市販のモニタリング用 PZT加速度センサーと一緒に測定を行いました。2 つのセンサーの質量が同等で、入力される振動が同じになるように、MEMS センサーを PZTセンサーの筐体に接着しました。MEMS 加速度センサーの単電源アナログ出力は、PZT センサーと同じデータロガーのアナログ入力チャンネルに直接入力しました。実験では、アクイジション・システムとしてデータ・アクイジション機器(DAQ)を使用しました。

モーターの軸ずれのシミュレーション

振動を元にしたコンディション・モニタリングで実際に利用される状況を、振動試験装置上で既知の振動を再現することで、デバイスの比較を行いました。この例では、5100 rpm(85 Hz)で動作するガス・タービンと3000 rpm(50 Hz)の同期発電機の軸ずれの振動レベルを模擬しています。ランダムな振動試験モードを使用して振動システムを設定し、発生した振幅と周波数の関係を調べました。2 つのデバイスの対象周波数での振幅の測定結果は表 1 の通りです。

表 1. モーターの位置ずれのシミュレーション設定値

Tone (#) Frequency (Hz) Level(s) g pk
1 50.00 0.400
2 85.00 0.400
3 100.00 0.250
4 170.00 0.250

図 2 は、共振周波数が 21 kHz の MEMS 加速度センサーと 25 kHzの PZT センサーで測定された周波数スペクトルを示しています。1 Hzから 1 kHz の帯域での MEMS 加速度センサーの 2 乗平均平方根(rms)出力は、PZT 加速度センサーよりも約 30 mg(1.7%)高くなっています。

図 2. PZT 加速度センサー(上)と MEMS 加速度センサー(下)のノイズ密度スペクトル。MEMS 加速度センサーの低周波数応答が大きく異なる以外、10 kHz までの結果はほぼ同じ

PZT デバイスと異なり、MEMS デバイスの周波数応答は 1/f @0.1 Hzと低く、風力タービンなどの周波数が非常に低い機器に対応します
(飽和からの回復も短時間になります)。振動試験機の周波数応答が非常に低い周波数でロールオフしたことから、テスト治具を軽く叩いて、その応答について 2 つのデバイスをテストしました。次に、記録された実時間応答の測定結果を周波数領域に変換しました。それを図 3 に示します。MEMS 加速度センサーが、DC までの応答を記録できていることに着目してください。

図 3. 2 つの加速度センサーを軽く叩いた時の応答の比較

まとめ

アナログ出力で DAQ を直接駆動する MEMS の性能は、PZT センサーと同等の優秀な性能を実現しました。MEMS 加速度センサーは、新しいコンディション・モニタリング製品の出力チャンネルを再構築するための有力な候補として利用できます。特に、ワイヤレス・スマート・センサーなど、+5 V 単電源で動作する半導体部品をベースとする全く新しいコンセプトが可能になります。

一見すると第 1 世代の加速度センサーは、高い共振周波数(22kHz)と、±70 g、±250 g、±500 g という高いフル・スケール・レンジ(FSR)により、このようなアプリケーションに適しているように思われましたが、残念なことにノイズ・レベルが 4 mg√Hz と高いため、ほとんどのコンディション・モニタリング・アプリケーションに対応できません。今回の比較で使用した第 2 世代のデバイスは、ノイズが第 1 世代の 100 分の 1 に減少し、電力は 40% に削減されています。表 2 に、2 つの MEMS 加速度センサーの性能比較を示しますが、性能の向上がよく分かります。

表 2. コンディション・モニタリング用 MEMS 加速度センサーの第 1 世代と第 2 世代の主な仕様の比較

  1st Generation Accelerometer 2nd Generation Accelerometer
FSR ±70 g to ±500 g ±50 g to ±100 g
F0 22 kHz 21 kHz
Supply Current 2.5 mA 1.0 mA
Self Test Yes Yes
Temperature Range –40°C to +125°C –40°C to +125°C
Package 5 mm × 5 mm, 8-lead LCC 5 mm × 5 mm,
32-lead LFCSP
Noise Density 4 mg √Hz <30 μg √Hz

シグナル・コンディショニング・エレクトロニクスの専門知識の融合と高分解能の MEMS 加速度センサーの開発により、コンディション・モニタリング・アプリケーションの実用化に対応できる性能を実現しました。物理ノイズが低く、高性能、低ノイズ、安定性の高いシグナル・プロセッシング設計技術を利用した高周波 MEMS 加速度センサーは、今日の PZT ベースのコンディション・モニタリング・センサーに匹敵する性能を提供できなかった従来のMEMSの大きな問題を解決します。

参考資料

Randall, Robert B. Vibration-Based Condition Monitoring. Hoboken: John Wiley & Sons, 2011.

謝辞

この記事のデータを提供してくれたアナログ・デバイセズの Juan Chong に深く感謝します。

著者

Ed Spence

Ed Spence

Ed Spence は、アナログ・デバイセズの高性能慣性技術グループの高性能加速度センサー担当マーケティング・マネージャーです。アナログ・デバイセズは、高性能慣性センサー(加速度センサー、ジャイロ・センサーなど)や、慣性測定ユニット(IMU)などの高度に統合化されたソリューションを設計、製造しています。