デジタル・ポテンショメータと機械式ポテンショメータの比較:最高のシステム性能を実現するための設計に関する重要な考慮事項

この資料では、デジタル・ポテンショメータを他のコンポーネントと併用して最高のシステム性能を実現する方法について、各用途での重要な考慮事項と仕様を中心に説明します。デジタル・ポテンショメータをオペアンプなどの他のコンポーネントと組み合わせて、柔軟性の高い多目的システムを作成するときに考慮すべき設計に関する重要な事項と仕様について説明します。また、従来のポテンショメータと比較した場合のデジタル・ポテンショメータのメリットとデメリットについても説明します。例えば、デジタル・ポテンショメータをオペアンプで帰還抵抗として使用することで、入力信号の振幅に応じてオペアンプのゲインを変化させることができます。

デジタル・ポテンショメータは、デジタル制御の可変抵抗で、機能的に同等な機械式ポテンショメータの代替品として使用できます。デジタル・ポテンショメータは、機械式ポテンショメータに匹敵する機能を備えています。また、さまざまな設計用途向けに、デジタル・ポテンショメータの卓越した仕様、信頼性、および再現性を発揮します。ポテンショメータは、デバイスの抵抗を変えることで電圧や電流を調整するために使用できます。オペアンプなどの他のコンポーネントと併用すれば、可変レベルやゲインの設定にも使用できます。デジタル・ポテンショメータなどの可変コンポーネントを使用することで、柔軟かつ多機能なシステムを設計できます。例えば、オペアンプ内でデジタル・ポテンショメータを帰還抵抗として使用すれば、入力信号の振幅に応じてオペアンプのゲインを変化させることができます。これにより、コンポーネント数を減らすことができ(複数のオペアンプなど)、システムによって動作可能な入力信号のタイプを最大限に増やし、PCBを小型化することができます。デジタル・ポテンショメータは小型でありながら、さまざまな機能を備えています。

デジタル・ポテンショメータと機械式ポテンショメータの比較

デジタル・ポテンショメータと機械式ポテンショメータは、機能的に類似しているため、多くのアプリケーションで互換性があります。どちらも調整可能で、幅広いエンド to エンド抵抗を提供し、ユーザーによる調整可能な抵抗の要件を満たします。デジタル・ポテンショメータに対する機械式ポテンショメータのメリットとして、高電圧、大電流容量、大消費電力への耐性が挙げられます。ただし、機械式ポテンショメータは、その設計上、時間の経過とともに性能が変化したり、信頼性に問題が生じます。衝撃や振動に敏感で、酸化、経時変化、摩耗によって機械式ワイパー(可変部分)の接触抵抗が変化することがあります。これにより、機械式ポテンショメータの耐用期間が短くなります。デジタル・ポテンショメータは、いくつかの CMOS トランスミッション・ゲートで構成されています(図 1 を参照)。デジタル・ポテンショメータには機械素子が存在しないため、衝撃、摩耗、経時変化、および接触に関する問題は発生しません。

図 1. デジタル・ポテンショメータの内部構造。

デジタル・ポテンショメータ使用時の考慮事項

これはあらゆるコンポーネントにあてはまることですが、アプリケーションに適切なコンポーネントを選択する際に考慮すべき点がいくつかあります。各仕様がどの程度重要であるかは、最終的な用途と他のシステム考慮事項によって決まります。

表 1. デジタル・ポテンショメータ選択時の重要な考慮事項

入力信号の電圧 最大電流および最大電力 エンドto エンド抵抗 許容誤差および温度係数 分解能/チャンネル密度
直線性 パワーアップ メモリ インターフェース サイズ

これらの考慮事項を理解するには、特定のアプリケーションでデジタル・ポテンショメータを選択する際に、それらの事項にどのような影響があるか確認することが重要です。このため、ここではデジタル・ポテンショメータを選択する際に重要となる 2 つの用途について詳細に説明します。

デジタル・ポテンショメータが一般的に使用されるアプリケーションは次のとおりです。

  • DC/AC 信号用減衰器
  • オペアンプのゲイン調整

デジタル・ポテンショメータを減衰器として使用する方法

デジタル・ポテンショメータを使用して、単純な低分解能の D/Aコンバータ(DAC)をエミュレートできます。図 2 に、このセットアップと、よく使用される用語を示します。RAB として定義されたエンドto エンド抵抗は、端子 A と B 間の抵抗です。RAW とRWB は、ワイパーと端子間の抵抗を表しています。伝達関数も図2 に示しています。

 

図 2. 低分解能 DAC としてのデジタル・ポテンショメータ。

このセットアップの場合、デジタル・ポテンショメータを選択する際に考慮すべき主なパラメータは 3 つあります。これらのパラメータは、電源電圧の範囲、デジタル・ポテンショメータの分解能、および直線性です。

電源電圧1 と分解能2 は重要な考慮事項です。これらの仕様により、デジタル・ポテンショメータから流すことができる入力範囲と、得られる抵抗レベルの数が決まります。デジタル・ポテンショメータの直線性は、積分非直線性(INL)とデジタル非直線性(DNL)を使用して DAC と同じように仕様規定されています。INL は、ゼロ・スケールからフル・スケールを結ぶ理想的な直線と実際のデジタル・ポテンショメータを比較した際の最大偏差を表します。DNLは、逐次コードの出力値と理想的な伝達関数の差異を表します。

AC アプリケーションの場合も、DC 電源と同じパラメータ(電源電圧範囲、分解能、直線性)があてはまります。全高調波歪み(THD)と帯域幅も考慮すべき主な要素です。

可変ゲイン・オペアンプの作成でデジタル・ポテンショメータを使用する方法

デジタル・ポテンショメータは、オペアンプのゲインを変化させるのに非常に便利です。デジタル・ポテンショメータを使用して、ゲイン比 Rb/Ra を設定して正確に変化させることができます。ゲイン制御を使用するアプリケーションとして、ボリューム制御、センサー・キャリブレーション、LCD 画面のコントラスト/輝度調整があります。ただし、構成時に考慮する必要があるデジタル・ポテンショメータの特性がいくつかあります。

デジタル・ポテンショメータをポテンショメータ・モードで使用する場合、抵抗がゼロ・スケールからフル・スケールに増大する際のデジタル・ポテンショメータの伝達関数に注意する必要があります。RAW 間の抵抗が増加し、RBW 間の抵抗が減少すると、対数伝達関数が生成されます。対数伝達関数は、人の聴覚および視覚応答に適しています(図 3(a))。

 

アプリケーションで線形応答が必要な場合は、デジタル・ポテンショメータをレオスタット(可変抵抗器)モード(図 3(b))、バーニア DAC 構成(図 3(c))、または AD5144 などの ADI digiPOT+ ファミリ製品固有の機能であるリニア・ゲイン設定モード(図 3(d))で使用して、デジタル・ポテンショメータを直線化することができます。

図 3. ポテンショメータの構成。

ディスクリート抵抗を使用したレオスタット・モード

デジタル・ポテンショメータをレオスタット・モードで使用して、ディスクリート抵抗に直列接続することで、出力を直線化できます(図 3(b))。これは単純な設計ですが、システムの精度を維持するには設計上考慮すべき点があります。

機械式ポテンショメータとデジタル・ポテンショメータには抵抗許容誤差があり、その理由はそれぞれ異なります。機械式ポテンショメータの場合、再現性の高い値を得ることは困難であるため、許容誤差は変化します。デジタル・ポテンショメータの場合、製造工程による許容誤差はありますが、再現性は機械式ポテンショメータよりも大幅に優れています。

ディスクリート表面実装抵抗のオフセットはわずか 1 % ですが、デジタル・ポテンショメータによってはエンド to エンド抵抗の許容誤差が 20 % のものもあります。特に、誤差を補償するのにモニタリングが実用的ではないオープン・ループ・アプリケーションで、この不整合により分解能が低くなって重大な問題となることがあります。モニタリングが可能な場合、デジタル・ポテンショメータが備えている柔軟性を利用して、単純なキャリブレーション・ルーチンを実行してデジタル・ポテンショメータのワイパー位置を調整したり、オフセットを調整することができます。

アナログ・デバイセズのデジタル・ポテンショメータのポートフォリオは、最も厳しい精度と正確さのニーズに応えられるように許容誤差が 20 % ~ 1 % に仕様規定されています。AD5258AD5259 などの一部のデジタル・ポテンショメータでは、出荷時に許容誤差を測定していて、生産時に抵抗をマッチングさせることができるように、ユーザー・アクセス可能なメモリに結果を保存しています。

リニア・ゲイン設定モード

最後の方法は、アナログ・デバイセズ の digiPOT+ ポートフォリオ独自のリニア・ゲイン設定モードです。図 3(d) に、実装された特許取得済みのアーキテクチャによってどのように各ストリング(RAW および RWB)の値を個別にプログラミングできるようになるかを示します。このモードを使用することで、一方のストリング(RWB)の出力を固定して、もう一方のストリング(RAW)を設定することで、リニア出力が可能になります。この動作は、レオスタット・モードのデジタル・ポテンショメータとディスクリート抵抗を使用する場合とほぼ同じです。ただし、並列抵抗または直列抵抗の組み合わせを接続することなく、全体の許容誤差は 1 % 未満になります。

これは抵抗の誤差によるもので、どちらの抵抗ストリング・アレイでも一般的であり、無視することができます。図 4 に、2 つの抵抗間の不整合誤差を示します。高いコードでは不整合誤差が小さいことがわかります。この不整合はクォータ・スケールよりも低いコードで ±1 % 以上に増加します。これは内蔵 CMOS スイッチの抵抗の影響によって追加される誤差によるもので、無視することはできません。

図 4. 10 k 抵抗の不整合誤差。

アプリケーションにとってメモリが重要である理由

デジタル・ポテンショメータを使用して回路でレベルを設定したり、センサーやゲイン設定をキャリブレーションする場合、正確で迅速な設定を行うためにはデジタル・ポテンショメータのパワーアップ状態が重要になります。ユーザーが希望する状態でデバイスをパワーアップできるように、さまざまなタイプのデジタル・ポテンショメータが用意されています。デジタル・ポテンショメータには、2 つのタイプがあります。

  • 不揮発—ユーザーが選択したワイパー位置を保存する内蔵メモリを備えていて、パワーアップ時にその位置に設定されます。
  • 揮発—プログラマブル・メモリはありません。その代わりに、部品の構成に応じてゼロ・スケール、ミッド・スケール、またはフル・スケールのワイパー位置でパワーアップします。詳細については製品のデータシートを参照してください。

不揮発デジタル・ポテンショメータには、さらに以下のオプションがあります。

  • EEPROM
  • 1 回書き込み型(OTP)
  • 再書き込み可能型(MTP)

さまざまなメモリ・オプションにより、特定のシステムに合わせてデジタル・ポテンショメータを選択できます。例えば、絶えず調整が必要なシステムの場合は、揮発性デジタル・ポテンショメータを使用します。出荷時のテストでのキャリブレーションのみが必要なシステムの場合は、OTP ポテンショメータを使用します。EEPROM デジタル・ポテンショメータを使用すれば、最後のワイパー位置を維持してパワーアップ時にデジタル・ポテンショメータが最後の状態に戻ります。また、パワーアップ後に必要に応じて調整できます。

まとめ

前述したように、デジタル・ポテンショメータを使用して、使いやすく調整可能なシグナル・チェーンを作成したり、機械式ポテンショメータを置き換えたり、仕様を高めたり、信頼性を向上させたり、PCB スペースを節約することができます。ここで説明している事項を考慮することで、機能を向上させたり、システム設計要件を軽減することができます。

脚注

1 デジタルポテンショメータの端子を介して送信される信号は、最大および最小電源電圧に制限されます。 信号が電源を超えると、内部ESD保護ダイオードが信号をクランプします。 AC信号の場合、信号は単一電源範囲内に維持されるようにバイアスするか、またはデュアル電源デジタルポテンショメータを考慮することができます。

2 DACと同様に、解像度はワイパー位置の数を指します。一般的な数字の中には、128や256などがあり、1024以上になることがあります。

著者

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David Rice / Joseph Creech

David Rice は、アナログ・デバイセズのリムリックでリニア/高精度テクノロジ・グループの digiPOT を担当しているアプリケーション・エンジニアです。2012 年にコーク工科大学でエンベデッド・システム・エンジニアリングの修士号を取得した後、アナログ・デバイセズに入社しました。

Joseph Creech は、2005 年にユニバーシティ・カレッジ・コークで学士号を取得し、2013 年にリムリック大学で経営学の修士号を取得しています。2005 年に入社して以来、さまざまな製品ライン、アプリケーション、および評価部門で勤務してきました。現在では、digiPOT ポートフォリオのマーケティング・エンジニアを務めています。