強力なシグナル・ジェネレータ出力段の設計

シグナル・ジェネレータは、時間と共に特徴的変化をするように定義された電気信号を生成します。このような信号がサイン波や矩形波、三角波のような単純な周期的波形を持つジェネレータを、ファンクション・ジェネレータと呼びます。このジェネレータは、多くの場合、電気回路やアセンブリの機能をチェックするために使用されます。定義された信号は入力に加えられ、出力において対応する測定装置(オシロスコープ等)に接続されます。これにより、ユーザによる評価が可能となります。これまで通常課題とされてきたのは、ジェネレータの出力段の設計でした。この記事では、電圧ゲイン・アンプ(VGA)と電流帰還型アンプ(CFA)を使用して、小型で安価な出力段を設計する方法を説明します。

標準的なシグナル・ジェネレータは、25mV~5V範囲の電圧を出力します。50Ω以上の負荷を駆動する場合は、出力段に強力なディスクリート部品や並列に接続した複数の部品を使用したり、高価なASICを使うのが一般的でした。内部的には、増幅レベルや減衰レベルを異なる値に切り替えることで出力レベルを調整できるように、多くの場合リレーが使われています。様々なゲインを設定するためにリレーを切り替えると、一定の範囲で不連続な動作が生じます。簡略化したブロック図を図1に示します。

図1 標準的なシグナル・ジェネレータ出力段の簡略ブロック図

図1 標準的なシグナル・ジェネレータ出力段の簡略ブロック図 

最近のアンプICを使用すれば、内部リレーを使用せずに負荷を直接駆動することが可能です。これによってジェネレータ出力の設計が簡素化され、複雑さが軽減し、コストが削減されます。2つの主要コンポーネントが強力な出力段を構成します。この出力段は、無段階で直線的微調整が可能な高速、高電圧、大電流の可変型アンプを実現します。

図2 VGAを使用したシグナル・ジェネレータ出力段の簡略ブロック図

図2 VGAを使用したシグナル・ジェネレータ出力段の簡略ブロック図

まず、VGAを通じて元の入力信号を増幅または減衰する必要があります。VGAの出力信号は、その入力信号とは関係なく、希望する振幅に設定することができます。例えばゲイン10で2Vの出力振幅VOUTを得るには、VGAの出力振幅を0.2Vにレギュレーションする必要があります。残念ながらVGAはゲイン範囲が限られているため、多くの場合これがボトルネックとなってしまいます。ゲイン範囲が45dBを超えることは極めて稀です。

低消費電力のVGAであるAD8338により、アナログ・デバイセズは0dB~80dBのプログラマブル・ゲイン範囲を実現しました。この結果、理想的な条件下ではリレーやスイッチ回路を追加することなく、シグナル・ジェネレータ用に0.5mV~5Vの出力振幅を無段階でプログラムすることができます。このように機械式の部品を省略できることから、不連続性を回避することができます。D/Aコンバータ(DAC)とダイレクト・デジタル合成(DDS)部品は差動出力を使用することが多いので、AD8338は完全差動インターフェースを備えています。更に、柔軟な入力段を介し、内部帰還ループを通じて入力電流に含まれる非対称成分を補償することができます。同時に、内部ノードは1.5Vに保持されます。通常の条件下では、1.5Vの最大入力信号は500Ωの入力抵抗で3mAの電流を発生させます。より大きな入力振幅、例えば15Vの場合は、より大きな抵抗を入力ピンに直接接続する必要があります。この抵抗の値は、同じ3mAの電流が流れるように決定します。

市販されている多くのシグナル・ジェネレータは、50Ωの負荷で250mW(24dBm)の最大有効出力を発生します(サイン波)。しかし多くの場合、この出力は、例えばHFアンプのテストや超音波パルスの生成に必要とされるような、より高い出力のアプリケーションには不十分です。このような理由から、電流帰還型アンプも使用されています。ADA4870は、±20Vの電源電圧で、出力側において17V振幅で1Aの駆動電流を出力できます。全負荷状態下で23MHzまでのサイン波を生成でき、汎用の任意波形発生器用に最適なフロント・エンド・ドライバとなっています。ADA4870は、出力信号スイングを最適化するためにゲイン10で構成されているので、必要な入力振幅は1.6Vです。しかし、ADA4870がグラウンド基準の入力を使用する一方、上流側のAD8338は差動出力なので、両デバイスの間に、差動からグラウンド基準に変換するための差動レシーバー・アンプを接続する必要があります。AD8130は270MHzのゲイン帯域幅積と1090V/µsのスルー・レートを備えているので、この用途に最適です。AD8338の出力は±1Vに制限されているので、AD8130の中間ゲインは1.6V/Vに設計する必要があります。全体的な回路構成を図3に示します。この回路は、振幅が22.4V(39dBm)で50Ω負荷時に20MHzの帯域幅を実現します。

図3 ディスクリート設計によるシグナル・ジェネレータ出力段の簡略回路図

図3 ディスクリート設計によるシグナル・ジェネレータ出力段の簡略回路図

高出力VGA(AD8338)と強力なCFA(ADA4870)、そして作動レシーバー・アンプ(AD8130)を組み合わせることで、コンパクトな高出力シグナル・ジェネレータの出力段を比較的容易に構築することができます。より高いシステム信頼性、長い動作寿命、低コスト化を実現するこの出力段は、従来のものと比べて格段に優れています。 

参考資料

Hunter, David. 「信号発生器の設計を変革する2つの新たなIC」アナログ・ダイアログ、2014年10月

Thomas Brand

Thomas Brand

Thomas Brand。2015年、修士論文作成の一環で、ミュンヘンのアナログ・デバイセズでのキャリアを開始。卒業後、アナログ・デバイセズのトレイニー・プログラムを受講。2017年、フィールド・アプリケーション・エンジニアとなる。中央ヨーロッパの産業分野の大型顧客をサポートすると共に、工業用イーサネットの分野を専門とする。モースバッハ産学連携州立大学で電気工学を専攻後、コンスタンツ応用科学大学で国際セールスの修士課程を修了。