広い入力電圧範囲から電圧を安定化し、98.5%の効率で100W以上のバッテリを充電する60V、4スイッチ同期整流式昇降圧コントローラ

LT3791-1は、1つのインダクタを使用して最大98.5%の効率で定電圧および定電流の両方を安定化する4スイッチの同期整流式昇降圧DC/DCコンバータです。このデバイスは100Wを十分に超える電力を供給可能で、60Vの入力電圧定格および出力電圧定格を備えているので、昇圧と降圧の両方の変換が必要なときに最適なDC/DC電圧レギュレータおよびバッテリ・チャージャです。このデバイスは、電圧、電力、および効率が高い以外に、短絡保護、外部クロックに同期するためのSYNCピン、外部のSYNCピンを駆動するか、並列動作を行うためのCLKOUTピン、OVLO(過電圧ロックアウト)、SHORT出力フラグ、バッテリ・チャージャ用のC/10検出と出力フラグ、不連続導通モードと連続導通モードを切り替えるためのCCMピンを備えています。DCM(不連続導通モード)を内蔵しているので、軽負荷での効率が向上し、逆電流が好ましくない場合は防止できます。

120W、24V/5A出力の昇降圧電圧レギュレータ

図1に示す昇降圧コンバータは、負荷の範囲が0A~5Aでは最大98.5%の効率で24Vを安定化します(図2)。このデバイスは12V~58Vの入力電圧範囲で動作します。調整可能な低電圧ロックアウトおよび過電圧ロックアウトにより、回路を保護します。このデバイスは、短絡保護回路と、出力に短絡が生じていることを示すSHORT出力フラグを備えています。軽負荷時に消費電力が最小となるDCM動作と、逆電流保護機能も備えています。ROUT は、短絡と過負荷のいずれの状況でも出力電流を制限し、このアプリケーションを堅牢なものにします。

図1.120W、24V/5A出力の昇降圧電圧レギュレータは、12V~58Vの入力電圧で動作します。

図1.120W、24V/5A出力の昇降圧電圧レギュレータは、12V~58Vの入力電圧で動作します。

図2.図1の24Vコンバータの効率およびワーストケースの熱特性結果

図2.図1の24Vコンバータの効率およびワーストケースの熱特性結果

図3に示す14V/10Aの電圧レギュレータは、若干異なる手法を採用しています。このレギュレータは軽負荷時のEMIを最小にするため、0A~10Aの負荷電流範囲全体を通じてCCMで動作します。それでもなお非常に効率的です。ROUTを短絡に置き換えた場合でも、この回路は短絡保護機能を維持します。メイン・スイッチの検出抵抗RSWは、ROUTよりも高い電流レベルで短絡電流を制限しますが、短絡時は一時中断モードによってデバイスの消費電力が制限されるので、短絡時の部品の温度上昇が低く維持されます。DCMが必要ない場合はROUTが不要になることがあり、ROUTを除去すると回路の効率はわずかに増加します。10Aから0Aへの遷移時に発生する出力電圧トランジェントを制限するため、OVLOピンは出力に接続します。これにより、2つの出力コンデンサとスイッチM3およびM4は過電圧から保護されます。

図3.入力電圧が9V~36Vの140W(14V/10A)のCCM昇降圧電圧レギュレータは、トランジェント保護のため出力OVLOを備えています。

図3.入力電圧が9V~36Vの140W(14V/10A)のCCM昇降圧電圧レギュレータは、トランジェント保護のため出力OVLOを備えています。

CLKOUTとSYNCを使用して大電力を得る並列コンバータ

LT3791-1にはCLKOUT出力があり、これを使用すると、位相が180°ずれた状態で他のコンバータを自身のクロックに同期させることができます。一方のコンバータのCLKOUTピンを他方のコンバータのSYNC入力ピンに接続することにより、最大出力電力は2倍になる上に出力リップルは減少します。

2つのLT3791-1を並列に動作させることによって形成される24V/10Aのレギュレータを図4に示します。2つの並列回路を使用することにより、VIN が最も低いときのMOSFET M3およびM7の場合、いずれか一方のディスクリート部品で観測される最大温度上昇はわずか28°Cです。図4の上側のコンバータ(マスタ)は、下側のコンバータ(スレーブ)によって供給される電流レベルを要求します。マスタのISMON出力は、マスタが供給している電流量を示し、ISMONピンをスレーブのCTRL 入力ピンに接続することにより、スレーブはマスタに追従するよう強制されます。CTRLの入力レベルをISMONの出力レベルに整合させるために必要な単純な200mVのレベル・シフトを得るため、オペアンプが1つ必要です。マスタ・コンバータは定電圧レギュレーション状態で動作するのに対して、スレーブ・コンバータは定電流レギュレーション状態で動作しています。スレーブの出力電圧はわずかに高く(28V)設定されているので、スレーブがマスタに追従できるように、スレーブの電圧帰還ループはレギュレーション状態になっていません。

図4.240Wアプリケーションでの並列接続のLT3791-1

図4.240Wアプリケーションでの並列接続のLT3791-1

100W超/2.5A昇降圧型の36V SLAバッテリ・チャージャ

LT3791-1は、定電圧と定電流の両方を制御できます。スーパーキャパシタやバッテリなど、大型の容量性負荷は、その終端電圧(一定の電圧レギュレーションが必要になる電圧点)に達するまで、定電流での充電が必要です。LT3791-1はこの要件を容易に満たします。一例として、図5に示す昇降圧コンバータは、9V~58Vの入力電圧から生成した44V/2.5A DCの出力で36V/12Ah のSLAバッテリを充電します。DCM動作は、出力負荷が過充電された場合にバッテリ電流が逆方向に流れないようにして、大量の負方向電流から回路を保護します。

図5.SLAバッテリ・チャージャ

図5.SLAバッテリ・チャージャ

一部のバッテリ・チャージャ・アプリケーションでは、終端電圧に達して充電電流が次第に減少すると、充電電圧とは異なるスタンバイ電圧またはフロート電圧レギュレーション・レベルが必要になります。LT3791-1のC/10検出レベルがこの機能を提供します。図3の回路では、バッテリが満充電に近づくと、C/10機能により、バッテリ電圧は充電中(44V)からフロート(41V)に低下します。その後、負荷の増加によってバッテリ電圧が低下すると、チャージャは電圧帰還ループによって充電状態である44Vに戻ります。

LT3791-1 は、広範な組成と容量を持つバッテリを、さまざまな入力電源から、それらの電圧関係に関係なく充電するように調整できます。さらに、マイクロコントローラを使用して、太陽電池パネルから充電する最大出力追従制御(MPPT)チャージャを作成できます。出力診断ピンであるISMONピンとIVINMONピン、および電流制御ピンであるCTRLピンにより、大電力太陽電池パネル・バッテリ・チャージャを簡単に作成できます。.

DCMによる効率の向上と逆電流の防止

LT3791-1は、連続導通モード(CCM)と不連続導通モード(DCM)の両方を備えています。CCMとDCMの違いを図6に示します。モードを選択するには、CCMピンをINTVCCピンまたはC/10ピンに接続すれば済みます。CCMでは、軽負荷時にスイッチングが連続し、インダクタ電流は正負いずれの方向にも流れます。CCMで負荷がない場合のインダクタ電流は正負両方向となるので、DCMの場合より消費電力は大きくなりますが、DCMに伴うスイッチ・ノードのリンギングは取り除かれます。

図6.低ノイズ化するための連続導通モード(CCM)と軽負荷時の効率を向上するための不連続導通モード(DCM)の概要

図6.低ノイズ化するための連続導通モード(CCM)と軽負荷時の効率を向上するための不連続導通モード(DCM)の概要

DCMを選択した場合、設定された最大出力電流の約10%より負荷が減少するまでコンバータはCCMのままです。LT3791-1 が軽負荷でDCM動作に入ると、M4のTG2ドライバは“L”のまま推移するので、M4はスイッチとしてではなくキャッチ・ダイオードとして動作するようになります。これにより、逆方向の動作電流(負のインダクタ電流)が防止され、軽負荷時の電力損失が最小限に抑えられます。

図7.48Vアプリケーション

図7.48Vアプリケーション

まとめ

LT3791-1 同期整流式昇降圧コントローラは、さまざまな負荷に対して、最大98.5%の効率で100Wを超える電力を供給します。このデバイスは入力電圧範囲が4.7V~60V、出力電圧範囲が0V~60Vと広いので、強力で多用途であり、短絡保護機能を内蔵しているので、潜在的に危険な環境での堅牢な解決策となります。CCM動作およびDCM動作は、効率を最高にする場合や軽負荷時にノイズが最も少ない動作にする場合に役立ちます。制御ループが複数あるので、定電圧、定電流、またはその両方を制御するのに最適です。この機能豊富なデバイスは、他の回路構成ではうまくいかない昇降圧要件を容易に満たします。

著者

Keith Szolusha

Keith Szolusha

Keith Szolushaは、アナログ・デバイセズ(Linear Technologyから転籍)のLEDドライバ・アプリケーション・マネージャとしてカリフォルニア州ミルピタスで業務に従事しています。マサチューセッツ州ケンブリッジにあるマサチューセッツ工科大学で技術論文の執筆に集中し、1997年に電気工学の学士号、1998年に同修士号を取得しました。