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View from inside a car showing a driver and passenger surrounded by a digital visualization of sound waves
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自動車内で没入感のあるキャビン・エクスペリエンスを実現するBoseのプレミアム・オーディオ

「車で休暇の目的地へと向かう道中は、そこに到着した後と同じくらい楽しい(getting there is half the fun)」というフレーズを誰もが耳にしたことがあるはずです。とはいえ、子どもたちの口げんか、助手席の不機嫌な同乗者、数珠つなぎの交通渋滞などを加味すれば、必ずしもそうとは言えないかもしれません。

Boseは、純正プレミアム・サウンド・システムの業界を牽引するパイオニア企業です。同社は、自動車走行中に生じる不快感のすべてを解消できるわけではないものの、ある1つの問題を劇的に改善する高度な技術を開発しました。その問題とはロード・ノイズです。

Boseは、アナログ・デバイセズとの連携とその先進的な車載オーディオ技術によって、ロード・ノイズの制御(ロード・ノイズ・コントロール)の実現と、よりくつろげて没入感のあるキャビン・エクスペリエンスの提供に貢献しています。

Boseは、1960年代から高品質のオーディオ製品を提供していることを誇りとしています。アナログ・デバイセズは、数十年間にわたりBoseと連携しながら、同社の民生向け製品ポートフォリオの中で最も象徴的な製品の一部を対象として、カスタムICや信号処理技術を提供してきました。

両社のパートナーシップは現在も続いています。Boseは、業界トップクラスのロード・ノイズ・コントロール技術である「QuietComfort® Road Noise Control」をはじめとする車載サウンド・システムの設計にアナログ・デバイセズの画期的な技術を採用することで、車室内でのプレミアムかつ没入感のあるオーディオ体験を実現しています。

Headshot of Remco Terwal
「Boseの車載向けソリューションの拠り所である音響性能の実現は、アナログ・デバイセズの技術に支えられてきました。将来的には両社のコラボレーションによって、車内での卓越した音楽再生という領域の先に進めるようになるでしょう。その結果、ロード・ノイズ・コントロールや電気自動車(EV)のサウンド改善、Bose SeatCentric®テクノロジーに基づくリスニング体験に関する課題を解決できるようになるはずです。」

Remco Terwal氏

車載向け先進開発担当 | Bose

本事例の概要

顧客企業の概要

Boseは、1964年にAmar Bose氏(博士)によって設立された世界的な企業。プレミアムなオーディオ体験を革新し、家庭やモバイル、自動車環境での音楽の聴き方を変革することで広く知られている。

目標

Boseの定評のある音響性能とノイズ・キャンセリング機能を活用することにより、自動車業界の中で最も品質が高く、最もパーソナライズされた没入感のあるキャビン・エクスペリエンスを提供できるようにする。

課題

ロード・ノイズ・コントロールのような複雑なオーディオ・アプリケーションでは、リアルタイム性(低レイテンシ)に関する要件に対応可能な技術的ソリューションが必要になる。そのソリューションは、様々なマイク、コントローラ、加速度センサー、スピーカを接続可能で、より簡素かつ軽量なものでなければならない。

アナログ・デバイセズのソリューション

アナログ・デバイセズの車載オーディオ・バス技術であるA2BとSHARC® DSP(Digital Signal Processing)を組み合わせることにより、レイテンシが低く、電力効率が高く、スケーラブルなオーディオ性能を実現する。

「自動車内での没入感のあるサウンド」という理念のためのコラボレーション

Diagram illustrating a car's road noise cancellation system

一般的な自動車が平坦な道を走行する場合、通常は約70dBの騒音が発生します1。一方、凹凸のある道では、タイヤの空洞内部からの騒音とエンジンのうなり音によって、その数値が更に高くなる可能性があります。自動車メーカーは、そうした不快な音を抑制するために、車内の防音に役立ついくつかの手法を採用してきました。

例えば、道路、タイヤ、シャーシからは周波数の低い騒音が生じます。それらを低減するために、従来は厚い防音材、下塗り、重いシャーシ部品などが使用されていました。しかし、Boseによると、そうした機械的な方法を採用すると、車体の重量が大幅に増大してしまうと言います。車体の重量が増大すれば、燃費やEVの航続距離などにネガティブな影響が及びます。

それに対し、Boseのロード・ノイズ・コントロール・システムでは、アナログ・デバイセズのDSP技術を活用しています。そのシステムでは、A2Bを介して接続された加速度センサーとマイクを使用することで、車室内の不要なノイズを検出します。システムはそれらのデータを迅速に処理し、ノイズを相殺するための信号を生成します。その信号は、車両のスピーカから、ロード・ノイズに正確に対応する形で出力されます。その結果、自動車メーカーの仕様に適合する形で、ロード・ノイズが効果的に相殺されます。Bose独自のアルゴリズムとアナログ・デバイセズの高度な信号処理技術を融合することにより、より静かで、より没入感のあるキャビン・エクスペリエンスを確実に得ることができます。内燃機関を使用する自動車では、タイヤや道路からのノイズがエンジン音によって覆い隠されていました。それに対し、EVではそのようなエンジン音が発生しません。そのため、Boseとアナログ・デバイセズの技術の融合は、EVにおいて特に大きな効果を発揮します。

調和のとれたオーディオに対する熱意

アナログ・デバイセズは、Boseとのオープンかつ協調的な関係を通じ、Boseが多様な顧客層のために解決しようとしている具体的な課題について理解していました。また、アナログ・デバイセズは、新世代のオーディオ・プロセッサを開発するたびにBoseに助言を求めています。それによって得られた貴重な情報を活かし、アナログ・デバイセズの技術やアーキテクチャがBoseの将来的なニーズに完全かつ確実に位置づくようにしているのです。このような特別なパートナーシップによって、両社の共創が生み出され、アナログ・デバイセズはより良い製品を生み出すことができます。それは転じて、市場全体に利益をもたらすと言えるでしょう。

車室内でのクラス最高のオーディオ体験を実現する道の途上で、新たに生まれた車両全体のコンピューティング・ソリューションに課題があることにアナログ・デバイセズは気付きました。そのソリューションでは、ロード・ノイズ・キャンセリングといった複雑なオーディオ・アプリケーションに求められるリアルタイム性(低レイテンシ)に対処することが難しかったのです。Boseがアナログ・デバイセズのSHARCオーディオ・プロセッサとA2Bに目を向けた理由はそこにあります。それらを採用することにより、Active Sound Management(ASM)のポートフォリオ全体を網羅する高性能のオーディオ・ソリューションの実現を目指すことにしたのです。

Boseにメリットをもたらしたアナログ・デバイセズの技術

技術 SHARC DSP A2B(車載オーディオ・バス)
機能 レイテンシを解決すべきオーディオ・アプリケーションに焦点を絞ったデタミニスティックでスケーラブルな処理。大容量の内蔵メモリ、フィルタ用のアクセラレータ、オーディオ用途に特化したペリフェラル・セットにより、ロード・ノイズ・コントロールとパーソナル・オーディオ・ゾーンの実現を強力にサポートします。 A2Bは、広帯域幅、双方向、マルチチャンネルのデジタル・オーディオ・バス技術です。この技術を導入すれば、シールドのない1本のツイスト・ペア・ケーブルによって、高品質のオーディオ信号、制御信号、クロック信号、電力を伝送できます。また、そのバスには、車両内の様々なマイク、コントローラ、加速度センサーを接続することが可能です。
メリット クリック音やポップ音など、リスニング体験にネガティブな影響を及ぼす不快なオーディオ・アーティファクトを排除できます。 レイテンシがデタミニスティックかつ小さいので、オールデジタルのロード・ノイズ・キャンセリングを実現できます。従来のアナログ手法と比べて配線が大幅に簡素化されるので、ハーネスの重量が軽減されます。

よりパーソナライズされたオーディオ体験を実現するBose SeatCentric

Visualization of car seats with individualized audio zones
高度なノイズ・キャンセル技術とビームフォーミング技術により、 車内の誰もが自分だけの音響空間を手にすることができます。

Bose SeatCentricテクノロジーを利用すれば、車室内にいる誰もが、他の人が何を聴いているのかに依らず、自分だけのリスニング体験を得ることができます。例えば、父親が仕事の電話を受けたり、カーナビの指示に耳を傾けたりする必要があったとしましょう。その際、他の家族全員が自分の選んだ音量で音楽を聴いていても、父親は電話やカーナビからの音声を聞き取ることができます。そうしたことはすべて、座席ごとに調整することが可能です。また、後部座席の音はアクティブにキャンセルすることができます。そのため、後部座席に座っている人は、居眠りをしたり、持ち込んだ機器が発する音声を聴いたりできますが、後者の場合でも前部座席に座っている人に影響が及ぶことはありません。こうしたことはすべて、Bose SeatCentricテクノロジーによって実現されます。想像してみてください。長距離にわたる自動車での家族旅行の間、互いに邪魔し合うことなく、それぞれが好きなときに好きな音を聴くことができるのです。

Bose SeatCentricテクノロジーでは、パーソナライズされたエクスペリエンスを提供するというビジョンが掲げられています。そのビジョンの実現においても、レイテンシの小さいオーディオを実現するアナログ・デバイセズの基盤技術(A2BとSHARCオーディオ・プロセッサ)が不可欠な要素となっています。

成功がもたらす甘い音 - 高度なオーディオ・アプリケーションのための高度な処理能力

Happy family of three enjoying a car ride, with parents smiling in the front seats and a child smiling in the back seat.

車載オーディオ向けの高度なアルゴリズムやソフトウェアに対するニーズは高まっています。それに促される形で、A2Bに対応するオーディオ・バスに対しても、より多くのチャンネル数/ノード数やより広い帯域幅が求められるようになっています。Boseは、アナログ・デバイセズの高度なパワー・マネージメント技術、プロセッシング技術、コネクティビティ技術を利用することで、そうした課題に対処し、革新的で没入感のあるオーディオ・ソリューションを提供し続ける構えでいます。Boseとアナログ・デバイセズの綿密かつ協調的なパートナーシップは、イノベーションにおけるリーダーシップを維持する上で、また未来の世代のためにオーディオのブレークスルーを実現する上でも極めて重要な役割を果たしています。

参考資料

1 Driver Knowledge Tests: Choosing a Quiet Car and How Cabin Noise Affects Your Concentration(ドライバーの知識のテスト - 静かな車の選択と車室内の騒音が集中力に与える影響)