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閉じるハードウェアは、ソフトウェア定義型車両のバックボーン
人々はSiriに話しかけ、道順や天気を調べています。家ではAlexaが照明を付け、ユーザのお気に入りの音楽を流し、暖房や冷房をオンにしています。誰もがすっかりこの常時オンの世界に慣れてしまっています。そして今、このパーソナライズされたつながりを自動車でも経験することが期待されています。
没入型の車内テクノロジは、「あれば便利」から「マストハブ(必須)」へと大きく変化しました。実際、ある研究によると、ミレニアル世代の70%もの人々が技術やインフォテインメントを自動車購入時の重要な要素と考えています。
ソフトウェア定義型車両時代の到来
ソフトウェア定義型車両(大まかに定義するとソフトウェアを介して操作の大部分を管理する自動車)の構想は、このコンスーマの期待の変化をターゲットにしています。ソフトウェアが常にこの変化の最前線であり続ける一方、ハードウェアもこのソフトウェア定義型の未来を実現するバックボーンであり続けます。これからの100年、自動車は、今までよりも人中心の経験に基づく車両設計で定義されていくことでしょう。そして、自動車購入を検討する際には、運転席における没入型でパーソナライズされた車内エクスペリエンスに重点が置かれるようになるでしょう。
その上コンスーマは、自動車の寿命期間を通して、常に技術が最新かつアップグレード可能であることを期待しています。これには、モバイル機器やPCをアップグレードする際と同じように、シームレスな方法でソフトウェアをアップグレードする機能が必要です。
現在のパラダイム・シフトは、ユーザの好みに適応する自動車を中心にシフトしています。このシフトが車内テクノロジにどのような進化をもたらすのか、それは優れた技術者と提携し、この新たな技術を取り込むメーカーや相手先ブランド名製造業者(OEM)によって決まります。これらの技術はすべて、オーディオやビデオ、ディスプレイ、音声といった複雑なエコシステムに組み込まれ、自動車への新たな期待を生み出すのです。
100%に近い精度が求められる音声認識技術をはじめ、自動車のソフトウェア機能においては、安全性が何よりも重要視されます。また、音楽など安全性が不可欠ではないアプリケーションについてはクラウドで処理することも可能ですが、安全性が不可欠なアプリケーションは、クラウドではなくユーザのいる場所で処理する必要があります。
安全かつ没入型、パーソナライズされたオーバー・ジ・エア・アップデート
旧式のラップトップにメモリ・チップやマザーボード、更にはバッテリまで載せてソフトウェアの進化に合わせようとしていた昔日の家庭用コンピュータと同様、ソフトウェア定義型車両にも、アップグレードが可能な柔軟性を備えた強固なハードウェア基盤が必要です。
現代の自動車は既に安全性(ADAS:先進運転支援システム)や簡易性(音声認識ナビゲーション)に対するソフトウェアの進化を活用しています。更に、このような技術のソフトウェア・アップグレードは、自動車のインフォテインメントや故障診断にまで拡大しています。その上、携帯電話と同じくオーバー・ジ・エア(OTA)でアップデートできるため、ディーラーに赴く必要もありません。
ソフトウェア定義型車両の価値
利点:

適切なタイミングと利便性
ディーラーと対面でのリコール対応は必要ありません。自動車のOTAアップデートをイネーブルすれば、後はアップデートを待つだけです。アップデートは通常、夜間に行われます。

人件費の削減
ディーラーにとっては、OTAで解決できるリコールには人材が拘束されないため、人件費を削減できます(もちろん、機械のメンテナンスは今も実地で行う必要があります)。

未来に対応
アップデートを行った自動車は、年を経るごとに装備が充実するため、経時的な価値の下落が緩慢、場合によっては自動車の価値が上昇する可能性もあります。

安全性とコンプライアンス
コンプライアンスや安全に関する規則ならびに規格の変更に迅速に対応し、常に自動車を最新の状態に保つことができます。
課題:

メンテナンス
ディーラーや整備士へ出向く回数が減れば、検査の回数も減り、定期メンテナンスや必要なメンテナンスを勧める機会も少なくなります。

セキュリティ
個人情報を保護し、サイバー・セキュリティの脅威から守るため、OTAアップデートには高度なセキュリティが必要です。

ハードウェア要件
メーカーは、ソフトウェアの機能強化を実現するため、製造を最高級車(ハードウェア)のみに絞るのか決める必要があります。プレミアム自動車はいずれも、プレミアム機能へのアップグレードが可能なベーシック・モデルとして販売されています。
Morgan Stanleyのアナリストの考察によると、Teslaは、実際のハードウェアの販売よりも、ソフトウェアのサブスクリプションからより多くの収益を得ています。4
自動車を制御するのではなく、自動車を望むとおりに変化
複数のものがシームレスに機能し合い、まるで互いのために作られたような状態を表す古い言いまわしに「誂えたようにぴったり」というものがあります。今日の自動車におけるソフトウェアとパーソナライズにも同じことが言えます。
誰もが、レンタカーに乗ったらまずはシートやミラー、暖房あるいは冷房を調整し、ラジオやタッチ画面のプリセットを設定しなければならなかったという経験をしたことがあります。今後は更にAIや音声認識、顔認識などの技術が進み、個人の好みに合わせて自動車を手動で調整するという作業は大変時代遅れに思えるようになるでしょう。
自動車が人に合わせるのが理想的?
運転者が近づいてくるのを自動車が感知できたらどうなるでしょう。顔認識機能で運転者を認識し、運転者が自動車に乗り込んだら挨拶(「こんにちは、アンディ」)して、プリセットしたラジオと温度条件に設定します。更にもしかすると、イグニッションの始動音は、スタートレック:エンタープライズのような音かもしれません。つまり、自動車が各運転者の好みに合わせ、すべて自動かつシームレスに調整し、変化するということです。

様々な可能性に興味をそそられますが、どの機能もソフトウェア・プラットフォームの拡張に対応できる堅牢なハードウェア・インフラストラクチャがなくては実現できません。OEMやメーカーの多くが、ソフトウェアの機能がハードウェアの対応できる範囲を超えるとどうなるのかという難題に直面しています。今日のPCがハードウェアのマイナー・アップデートで対応できるように、ソフトウェア定義型車両も対応できなくてはなりません。
絶好の機会におけるバランス調整
自動車業界は、位置情報広告やアドオンのソフトウェア対応機能など、自動車販売後の売上につながる新たなビジネス・モデルおよび収益源を活用する絶好の機会を有しています。ただし、自動車メーカーは、自動車の継続的なソフトウェア・アップグレードに対する期待と、このアップグレード対応に必要な複雑で費用のかかるハードウェア設計とのバランスをとる必要があります。
データ量やコンピューティング要件の急激な増加に伴い、自動車のアーキテクチャを標準化、簡略化、合理化して自動車を製造する新たな時代が必要になります。更に、配線の複雑性や重量を減らすことにより、車両フリート全体に展開できるスケーラブルなプラットフォームが実現できます。
時代の変遷に伴い、新たなシステム・レベルのソリューション、および半導体ソリューションの必要性が高まっています。このソリューションにより、ケーブルの重量や配線の複雑性を軽減しながら、末端でのインテリジェンスの実現や、広帯域のセンサー・データのコンピューティング・ユニットへの送信が可能になります。ソフトウェアは自動車の機能のアップグレードを容易にしますが、ハードウェアは、ソフトウェアの展開に拡張性をもたらすバックボーンとして機能します。
ハッカーの夢であり、運転者の悪夢?
他のあらゆるソフトウェア関連の場合と同じく、実装計画にはサイバー・セキュリティを組み込む必要があります。特に速度80mphで疾走するハードウェア・デバイス上で動作するソフトウェアを扱う場合には、なおさら必要不可欠です。

ソフトウェア・エコシステムの急速な拡大に合わせ、自動車を攻撃から守るための様々な防御強化の方策が利用できるようになっています。まずは、OTAアップデートを行う前に、運転者の本人認証を行います。顔認証などのIDアクセス管理はこの分野において極めて有用であり、セキュリティを最重要視する金融業界においては標準的な手法です。他にも仮想化による隔離手法、携帯電話や電子メールを使用する二段階認証があり、どちらもアクセス制限に有効な方法であることが実証されています。
OTAアップデートが強力かつ便利な機能を提供し、運転者が自動車を長い間保持できるよう貢献する一方、自動車メーカーも、セキュリティ技術専門家が被害想定アプローチと称する、ハッカーを寄せ付けないためのアプローチを展開する必要があります。
ソフトウェア定義型車両におけるアナログ・デバイセズの役割

恐らく、ソフトウェア定義型車両の最たる例は、自動運転自動車でしょう。しかし、この自動運転自動車が普及するまでは、没入型かつパーソナライズされた、自由にカスタマイズ可能な自動車の時代が続くでしょう。アナログ・デバイセズは、この変革の時代における設計と実装において重要な役割を果たします。以下に役割の例を示します。
- OEMが展開する任意のオペレーティング・システムにも柔軟に適応できるよう、アナログ・デバイセズのハードウェアと連携して動作するソフトウェアを開発しています。更に、アナログ・デバイセズの包括的なツール一式は、選択からシミュレーション、最終的には生産ラインのデバッグまで、全工程を通して顧客のニーズに対応します。これらを組み合わせることで、ソフトウェア環境の変化におけるOEMの懸念を緩和し、市場投入までの時間を短縮することができます。
- アプリケーションを重視したアナログ・デバイセズのアルゴリズム開発は、アクティブ・ノイズ・キャンセレーション(ANC)、ロード・ノイズ・キャンセレーション(RNC)、および車内コミュニケーション(ICC)などに関する顧客の課題に対処します。ハードウェアに依存しないことにより、OEMはプラットフォーム全体へ容易に移植できるソフトウェア・ソリューションを追及することができます。
ソフトウェア定義型車両は、没入型かつカスタマイズ可能な車内エクスペリエンス技術により、更に市場を拡大させています。アナログ・デバイセズは、目標の実現に向けてティア1やOEMと共同で生産しつつ、ソフトウェア機能を更に追加して準備を整えています。
参考資料
1,2 Study: Americans spend 18 days in their car per year, forge close bonds with a vehicle(調査結果:自動車と強い絆を構築、米国人が車内で過ごす時間は毎年18日間に相当)(thecarconnection.com)
3 Evaluating Tech Features: Exploring Drivers’ Car Technology Habits and Preferences(技術機能の評価:運転者の技術機能に対する習慣と嗜好を調査)| CarMax
4 Software-Driven Business Models: The Future Of The Automotive Industry(ソフトウェア主導型ビジネス・モデル:自動車業界の未来)(forbes.com)