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閉じる自動車のインキャビン・エクスペリエンスは、パーソナライズ、デジタル化、没入感の実現へ向かう
最新のモバイル・デバイスは、メインのユーザ・インターフェースとして洗練されたタッチスクリーンを備えています。それを使うことにより、エンターテインメント、情報、ナビゲーションに関連する一連の機能に簡単にアクセスすることができます。それらのデバイスは、5Gのネットワークを介し、インターネットに広い帯域幅で常時接続することを可能にします――。一見すると、これは最新のスマートフォンについて説明した文章のように見えます。しかし、これは最新の自動車におけるインキャビンのユーザ・エクスペリエンス(インキャビン・エクスペリエンス)について説明したものなのです。数ヵ月後、数年後に発売される自動車では、没入感の高い次世代のインキャビン・エクスペリエンスが提供されます。その様子を適切に表現したものが冒頭の文章です。従来、自動車メーカーが最新の車種を販売する際には、ドライビング・ダイナミクス、デザイン、快適性を強調していました。それらに並び、新たなインキャビン・エクスペリエンスを備えた自動車では、アプリ、ユーザ・インターフェース、オーディオ/ビデオ機能が重要なアピール・ポイントになります。
インキャビン・エクスペリエンスは、真のデジタル・エクスペリエンスへと変化を遂げました。車内のソフトウェア環境によって、ユーザ・エクスペリエンスの面では自宅やオフィスから車内へとシームレスに移動することができます。どこにいても同じ没入感でエンターテインメントを楽しみ、プロダクティビティ・ツールを使用し、コミュニケーションをとることが可能です。車内でも、サードパーティ製のアプリがスマートフォンの場合と同様に動作します。今日のインキャビン・エクスペリエンスでは、シームレスな接続性が正に手に届くところにあると言えます。
2026年までのインキャビンAIの市場1
上述したように、スマートフォンと自動車の世界が融合すれば、シームレスな環境が実現されます。ただ、両者には1つの違いがあります。スマートフォンは個人用の端末であり、ユーザは1人です。それに対し、自動車には複数のユーザ(搭乗者)が存在するケースが少なくありません。自動車の搭乗スペースは、複数のユーザによる共有空間である可能性が高いということです。それぞれの搭乗者は、音楽を聴く場合、それぞれに異なるプレイリストや再生用の設定を使用します。また、電話の連絡先リストに登録されている相手も異なります。つまり、各搭乗者は、車外と同じように車内でも自分用にパーソナライズされたデジタルの世界に没入したいと考えるということです。
車載技術を提供する企業にとっては、次のようなことが現時点での最大の課題になります。すなわち、デジタル化とパーソナライズ機能の提供をどのようにして同時に実現し、没入感を演出しながらも高い安全性が得られるインキャビン・エクスペリエンスを構築するのかということです。この課題に対し、アナログ・デバイセズは革新的かつ魅力にあふれた独自の解決策を提供します。
「未来の自動車では、インキャビン・エクスペリエンスは次の3つの概念に基づいて構築されます。1つ目は、地図、連絡先、メディアといったコンテンツのデジタル化を図ることです。2つ目は、ドライバーを含むユーザに対し、パーソナライズ機能とホーム環境を提供することです。3つ目は、没入感のあるインキャビン・エクスペリエンスを実現することです。そのインキャビン・エクスペリエンスには、車内のオーディオ品質や音声品質を高めるためのノイズ・キャンセル機能などの要素も含まれます。」Greg Henderson
オートモーティブ、通信、航空宇宙/防衛担当シニア・バイス・プレジデント | アナログ・デバイセズ
個々のユーザに応じたインキャビン・エクスペリエンス
技術の進化に伴い、各自の好みに応じて自動車のデジタル設定を行うための斬新かつ魅力的な手段が提供されるようになりました。最初に行われるのは、人物の特定です。例えば、ドライバーが運転席に乗り込むと、ドライバーの監視システムによって顔認証が実行され、運転する人物の特定が行われます。車内のその他の部分においても、ユーザを煩わせることなく人物を特定するために、音声認識や指紋認証などの手段が使用されます。
ユーザの認識が完了したら、シートの位置や車内の温度など、そのユーザ向けにパーソナライズされた快適な設定が適用されます。最新の自動車はネットワークに接続されたデジタル・デバイスです。そのため、コンテンツや情報の同期をシームレスに実現することができます。自動車のエンジンをかけると、オーディオ・システムはユーザが聴いていたポッドキャストの再生を自動的に終了し、自動車側のプレイリストに沿って音楽の再生を開始します。
スマートフォンと同様に、エンターテインメントやプロダクティビティに関する自動車側のアプリは、OTA(Over the Air)のアップデートによって継続的に更新されます。この機能はTeslaが最初に導入したものですが、近い将来、あらゆる自動車に搭載されていて当たり前の機能になると考えられます。OTAによるソフトウェアのアップデートは、ユーザがインストールしたネイティブ・アプリやサードパーティ製のアプリに対して実行されます。つまり、インキャビン・エクスペリエンスの基盤であるソフトウェア環境は、スマートフォンと同じようにパーソナライズされていくということです。
パーソナル・コンテンツに没入できる環境
自動車のデジタル環境によって、個々のユーザに応じたコンテンツのライブラリが提供されるようになったとします。その場合、車内にはそれらのコンテンツを再生するための空間が必要になります。従来、インフォテインメント分野のコンテンツについては、1人の搭乗者が選択したものを、すべての搭乗者が視聴しなければなりませんでした。オーディオ・システムで再生できるのは一曲だけで、ベートーベンとビヨンセを同時に再生することはできなかったのです。最新のインキャビン・エクスペリエンスでは、そうした状況に変化が訪れつつあります。
既に、高級車では各搭乗者向けに専用のディスプレイが用意されています。また、自動車メーカーは、搭乗者ごとにパーソナル・オーディオ・ゾーンを形成するための高度な技術を導入し始めています。その技術の概要は、ヘッドフォンで使われているのと似たノイズ・キャンセル技術を基盤として使用し、それを拡張して各搭乗者をオーディオ・バブルの中に配置できるようにするというものです。そのバブルの中では、搭乗者がそれぞれ好きな音楽を聴いたり、車内の他の人に迷惑をかけることなくビデオ通話を行ったりすることができます。
一般に、車載エンターテインメント機器は消費者が所有する最も高品位のHi-Fiシステムとして位置づけられるはずです。つまり、家庭内で使用するどの機器よりも品質が高いということです。意外かもしれませんが、オーディオ・システムの品質は、消費者にとって、どの自動車メーカーの車種を購入するのか決断する理由になり得ます。これは確かな事実です。パーソナライズされたオーディオが登場すると、車載Hi-Fiシステムの価値がより高くなる可能性があります。
パーソナル・デジタル・アシスタントとして進化する自動車
消費者は、パーソナル・デジタル・アシスタントに話しかけて自宅の環境やエンターテインメント機能を制御することにかなり慣れています。例えば、「Siri、いま何時?」、「Alexa、ロックのプレイリストを再生して」といった具合です。車内で音声による制御が行えれば、タッチスクリーンやボタンといった従来の入力技術を使う場合よりも利便性が高まります。また、ドライバーは運転中に目をそらすことなく操作が行えるようになるので、安全性も向上します。
車内でオーディオや空調システムをジェスチャによって制御できるようにすることも、ドライバーによる安全な操作につながります。没入感のあるインキャビン・エクスペリエンスを提供するというビジョンを具現化する際には、安全性、信頼性、効率を重視しつつ、操作に関する高度な技術と知識を組み合わせなければなりません。
アナログ・デバイセズは、既に自動車メーカーと連携し、上記のニーズを満たすために必要なMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)ベースのマイクを車両に配備する取り組みを支援しています。そのマイクは、ローカルで音声認識を行うためにソフトウェア・ベースのAI技術を適用したものです。また、音声による制御を実現するためのビームフォーミング機能も搭載しています。アナログ・デバイセズの先進的なノイズ・キャンセル・システムは、安全性に関わる音声を確実にドライバーに届けます。このシステムを採用すれば、路上のノイズを抑制してパーソナル・オーディオ・バブルを形成することが可能になります。アナログ・デバイセズの最新のノイズ・キャンセル技術は、加速度センサーをはじめとする各種のセンサーを基盤とし、マイク、デジタル・オーディオ・システム、高度なDSPを統合したものです。この技術がもたらす革新的な性能は、没入感を提供する新たなインキャビン・エクスペリエンスを背後で静かに支えます。
ビームフォーミングを活用した音声処理技術のデモをご覧ください
より多くの機能を、より少ない配線で
自動車では、ソフトウェアによって制御される機能の適用範囲が拡大しています。それに伴い、車内ではネットワークのノードの数とネットワークで伝送される信号の量が爆発的に増加しています。従来のネットワーク技術では、ノードや接続を追加するたびに車内に配線を追加する必要があります。結果として、車載コンポーネントの中でも、ケーブル・ハーネスは重量とコストがかさむ原因として位置づけられるようになりました。
アナログ・デバイセズは、A2B®(Automotive Audio Bus)という洗練されたバス・ネットワーク技術を提供しています。これを採用すれば、車内の配線を減らして軽量化を実現し、消費エネルギーを大幅に削減することが可能になります。また、自動車に関連するデータやエンターテインメント・システムに関連する情報を新たなワイヤレス・ネットワークでやり取りすれば、物理的なケーブルの重量とコストを完全に排除することもできます。
アナログ・デバイセズのGMSL(Gigabit Multimedia Serial Link)は、車載向けのSerDes(Serializer Deserializer)技術です。洗練された先進運転支援システム(ADAS:Advanced Driver Assistance System)やインフォテインメント機能を実現するには、様々なデータを大量にやり取りしなければなりません。GMSLは、そのために必要な広い帯域幅に対応可能です。また、高速なデータ・アグリゲーション、安全性に関するアプリケーション・データの完全性を維持する機能、車内の複数の画面に異なるコンテンツを表示可能なシステムを実現するための機能なども提供します。
一人一人の世界をつなぐ未来の自動車
未来の自動車では、上述したような高度なデジタル化が図られます。その実現に向けては、中断のない高速ネットワーク接続が不可欠な要素となります。このニーズに対応するために、アナログ・デバイセズはE2B(Ethernet to the Edge Bus)という技術を開発しています。これは、新たな車載イーサネット規格である10BASE-T1Sを活用し、エッジに配備されたセンサーやアクチュエータとイーサネットを接続するためのものです。E2Bを採用すれば、配線とECU(Electronic Control Unit)の台数を大幅に削減することができます。またE2Bは、新機能や拡張機能を利用できるようにするためにOTAのアップデートをサポートします。そのため、ゾーン・ベースのアーキテクチャへの移行が容易になります。
自動車業界は、安全性と信頼性を最も重要な事柄として扱っています。この考え方を尊重しつつ、スマートフォンを大いに参考にすることで、インキャビン・エクスペリエンスという新たなビジョンの具現化に向かっています。そうした自動車メーカーを支援するために、迅速なペースで開発作業が進められています。
References
1 In-Cabin Automotive AI Market - A Global and Regional Analysis: Focus on Product Types, Applications, and Country Assessment - Analysis and Forecast, 2020-2026(車載インキャビンAIの世界市場(2020-2026年):製品タイプ・用途・国別) (researchandmarkets.com)
2 How do we get consumers to love connected cars?(消費者にコネクテッド・カーを受け入れてもらうには?) | IoT Now News & Reports (iot-now.com)