コンデンサ・バンクは、ノイズをフィルタリングするために用いられ、また、高速負荷過渡応答に対するエネルギー貯蔵庫の役割を果たします。DC/DCコンバータの安定性をモデル化するためには、コンデンサ・バンクのESRが必要です。1種類のコンデンサが複数並列化されているのであれば、簡単にモデル化できます。しかし、多くの種類のコンデンサが並列構成で使用されている場合は、難しくなります。LTspiceを用いれば、コンデンサ・バンクの特性を評価し重要なパラメータを抽出することができます。LTpowerCADツールを利用して安定性の解析を行う場合、これは大変便利です。
例
下に示す図では5種類のコンデンサが並列に配置されています。 安定性を解析するには、これを1個のコンデンサとしてモデル化する必要があります。
シミュレーションを実行すると、インピーダンスは下図のようにプロットできます。 これは単に電源電圧を電源電流で割ったもの、つまりV(n001)/I(V1)です。
カーソル測定ツールを使用すると、ネットワークの自己共振周波数は243kHz、インピーダンスの振幅は-49.65dBです。注意すべき重要な点は、自己共振時には、容量性リアクタンスと誘導性リアクタンスの虚部インピーダンスが打ち消し合い、LCネットワークのESRが唯一のインピーダンスになることです。インピーダンスをΩ単位で解くと、ESRは3.29mΩになります。
計算の簡単な説明:
20log(x) = –49.65
log(x) = –2.4825
x = 0.00329
このインピーダンス手法からわかることがこの他に2つあります。下に示すグラフは、2つのコンデンサの電流、I(C3)およびI(C4)を周波数の関数として示したものです。視覚的に明確ですが、定量化の手助けにもなります。4.7µFのセラミックコンデンサのインピーダンスは2.3MHzまでの低抵抗ですが、330µFのコンデンサは2.3MHzでは誘導性で、4.7µFのコンデンサに比べエネルギー伝達のインピーダンスは高くなっています。
まとめ
LTspiceを使用し並列コンデンサ・バンクの自己共振特性を評価することで、等価ESRを簡単に求めることができます。LTspiceは、問題を定義するための簡単なフォーマットを提供する強力なツールであり、また、複雑な問題を簡単に解析できる直感的にわかりやすいグラフィカル・ソリューションです。