要約
このアプリケーションノートは、LED (発光ダイオード)が汎用照明アプリケーションで演じる拡大しつつある役割について論じます。LED特性とそれ以外の照明技術を比較しています。また既存の照明システムに組み込むLEDランプの主要な設計チャレンジについても分析しています。
拡大しつつあるLED照明の役割
発光ダイオード(LED)は急速に進化を遂げている技術であり、多くの汎用的な照明アプリケーションで利用可能になりつつあります。通常、ソリッドステート照明(SSL)と呼ばれています。LED照明アプリケーションの最も適切な例としては、民生、産業、および住居の各環境における屋内使用や、街灯や駐車灯などの屋外使用、また建築・装飾照明(あらゆる色で発光する能力があるため最初にLEDが採用されたアプリケーション)などが挙げられます。
LEDは、建築照明に効果的なソリューションとして使われ始めてしばらくになりますが、現在、LEDは主流の汎用照明市場に浸透しつつあります。これは、以下に示すように、他の照明技術と比べてLEDがより優れた性能を持ち合わせた結果です。
- LEDは他の照明技術に比べてはるかに長寿命です。白熱電球が1,000時間~2,000時間、電球型蛍光灯(CFL)が約5,000時間~10,000時間であるのに対し、LEDは50,000時間の間、動作可能です。この際立って長い寿命のため、LEDは、ランプ交換に多大の人件費を要する、民生および産業用の多数の照明アプリケーションに最適です。
- LEDのエネルギー効率は白熱電球やハロゲンランプよりも優れており、ほとんどの場合、蛍光灯と同等です。さらにLEDのエネルギー効率は継続的に向上しており、現在、白色LED (WLED)のエネルギー効率は今後3年~4年の間で約50%向上すると予測されています。
- LEDは形状が小さい。LEDは、CFLが収まらないMR16やGU10ランプなど、ある特定のランプ形状に適合します。
- LEDは、適切なドライバを使用すれば調光可能です。アプリケーションが調光を必要とするとき、蛍光灯では技術的な限界があります。従来のLED設計にも同様の問題はありますが、マキシムの革新的なLEDドライバを使えば、トライアック調光器や立下りエッジ調光器にも適合可能です。
- LEDは極めて指向性の強い光を放射します。他の照明技術とは異なり、狭角反射ランプのように、極めて指向性の強い光を必要とするアプリケーションに適しています。
- LEDの能力は低温で向上します。蛍光灯の能力は低温で低下しますが、対照的にLEDは、冷蔵庫の照明など、周囲温度が低いアプリケーションに最適です。
- LEDは発光する色を変えるのが極めて簡単です。このため、RGBのLEDは、リアルタイムで光の色を変更する必要のある建築照明やムード照明などのアプリケーションに最適です。
LEDレトロフィットランプは、同じソケットの、白熱電球、ハロゲンランプ、または蛍光灯と置き換えるために開発されたものです。このLEDランプは既存の形状に一致し、既存のインフラストラクチャに適合する必要があります。
遠隔制御の照明用のLEDは、調光や発光色の変更において、より優れた柔軟性を発揮します。LEDランプは本来、デジタルシステムであるため、照明自動化のための通信を容易に統合することができます。ワイヤレス通信や電力線通信(PLC)の遠隔操作によって、電力消費が減り、運転コストやメンテナンスコストが低減され、新しいLEDアプリケーションが可能になります。
LEDレトロフィットランプ
多くの人が主張しているように、LEDレトロフィットランプ市場は今日のLED照明において最も急激な成長を遂げたアプリケーションであると考えられます。この急成長の理由は実際のところ極めて単純なことです。これらのランプは、電気インフラストラクチャ (ケーブル敷設、トランス、調光器、およびソケット)を新たに必要としないからであり、これはLED技術の大きな強みです。
マキシムは、レトロフィットランプ用の調光可能でちらつきのないLEDドライバソリューションを提供します。
LEDランプを既存のインフラストラクチャに装着する場合、設計者にとって以下の2つの要素が課題となります。
- 形状。レトロフィットランプは、以前の光源の形状に一致する必要があります。
- 電気的な適合性。レトロフィットランプは、既存の電気インフラストラクチャでちらつきを起こすことなく、正しく動作する必要があります。
既存の形状に一致
既存の形状では、レトロフィットランプに対して物理的制約(すなわち、ドライバ基板が十分に小さくなければならない)および熱的制約が加えられます。これらの制約は、交換ランプの設計(PAR、R、およびAなどの形状)に関する課題や、さらにはMR16やGU10のような小さな形状に関して特に克服が困難な課題をもっていました。このため、マキシムはMR16アプリケーション用にMOSFET内蔵のドライバIC (MAX16840)を提供しています。
レトロフィットの場合、サイズが重要ですが、熱的制約の問題はさらに重要な意味をもちます。LEDは可視光のみを放射します。つまり、他の技術のように赤外波長のエネルギーは放射しないということです。このように、LEDは白熱電球やハロゲンランプに比べてエネルギー効率は優れていますが、ランプ内の熱伝導によってはるかに多くの熱が放散されます。
熱放散もランプが生成することができる光の量に対する主な制約要因です。今日のレトロフィットランプのLED技術は、主流の市場で受け入れられる輝度レベルにかろうじて達している程度です。輝度の制約を打破すること、および熱設計を行うことが商業的に成功する製品設計のための必須要素となっています。
熱放散に必然的に伴う問題は、ドライバ基板の寿命です。多くの光を放射するには、ランプをかなり高温(+80℃~+100℃)で動作させる必要があります。このような高温では、ドライバ基板の寿命がランプ全体の動作を制限することになります。電解コンデンサは、高温で機能しなくなる最初の部品であるため、最大の課題となります。
マキシムの120V AC/230V ACおよび12V AC用のドライバソリューションはLEDのリップル電流の増加が許容範囲内であれば、電解コンデンサを使用しないというオプションを選択できます。顧客が電解コンデンサを使用することを選択した場合においても、マキシムのドライバソリューションは、フォルトトレランス機能を備えているため、電解コンデンサの劣化によってLEDのリップル電流は増大しますが、ランプは動作不良を起こしません。
電気インフラストラクチャとの適合性
レトロフィットLEDランプは、カットアングル(トライアックまたは立下りエッジ)調光器や電子トランスを搭載したインフラストラクチャで正しく動作する必要があります。
120V AC/230V ACラインを取り除くことで、ランプよりもトライアック調光器が重要になる可能性があります。トライアック調光器は、完全な抵抗負荷である白熱電球やハロゲンランプで正しく動作するように設計されています。しかし、レトロフィットLEDランプでは、LEDドライバは一般的に極めて非線形であり、完全な抵抗負荷ではありません。したがってこの入力ブリッジ整流器は、AC入力電圧が正と負のピークに達したとき、一般的に、短時間で大きなピーク電流を消費します。このLEDの動作によって、トライアック調光器は、必要な起動電流や保持電流が得られず、正しく動作しなくなります。結果として、調光器は稼動時に正常にオン/オフすることができなくなり、LEDランプの光はちらつきを生じます。
12V AC入力ランプの場合、電気インフラストラクチャはさらに複雑になります。電子トランスや立下りエッジ調光器がランプの入力に接続される可能性があるからです。この場合も、従来のブリッジ整流器とDC-DCコンバータのトポロジを使用する12V AC入力ランプドライバは、トランスと調光器との不整合によってちらつきを生じます。
マキシムの120V AC/230V ACと12V AC入力ランプ用のLEDソリューションでは、シングルステージ変換を使用しています。これらのソリューションは、調光を行ってもちらつきを生じないように、入力電流を整形することによって、トライアック調光器や立下りエッジ調光器および電気トランスとの整合性を保っています。この機能に対応するMR16ランプ用のソリューションは他にはありません。またPAR、R、およびAランプ用のソリューションはほとんどありません。さらに、これらのソリューションは90%以上のより優れた力率補正に対応し、外付け部品をほとんど必要としません。120V AC/230V AC入力ソリューションはMAX16841を使用しています。一方、12VACソリューションはMAX16840を採用しています。どちらの製品も評価用および量産用として利用可能です。
MR16とオフラインランプのブロック図。マキシムが推奨するソリューションの一覧については、japan.maximintegrated.com/lightingをご覧ください。