要約
このアプリケーションノートでは、無線周波数プランに使用するExcelスプレッドシートについて説明します。このスプレッドシートはダウンロードして利用可能で、セルラとPCS電話機の設計に対応しています。ここに挙げる例は、IS-136 TDMA無線機の設計用です。受信IFと送信IFの周波数の差は45MHzにしています。これによって、単一のRX IFと単一のTX IFをセルラとPCSの両方の動作で使用できるようになります。稼動中のソフトウェアのスクリーンショットを用いて、このソフトウェアの使用方法を説明しています。
追加情報
あらゆる無線周波数(RF)のトラシーバの設計において最も重要なステップの1つは、周波数プランの正しい選択です。周波数プランの実行においても基礎となるのは、ミキサ動作に関する、よく知られた以下の公式です。fsp = m × frf ± n × flo¹fspは、スプリアス出力周波数です。
frfは、RF信号です。
floは、LOすなわち局部発振器の周波数です。
現代のマルチバンドのセルラ電話では、単純と思われる事柄でもかなり複雑な問題を伴います。設計者は、以下の問題を解決するための最適なソリューションを考える必要があります。
- 性能の問題:適切な中間周波数(IF)を決定し、帯域内スプリアス信号(特にレシーバの自動ミューティングを起こす可能性のあるもの)を排除する
- コストの問題:IFフィルタの数を最小限にする
- TDMAシステムの性能の問題:ハーフIF (オフセット)問題を軽減する
- 設計の実現性とコストの問題:主要な電圧制御発振器(VCO)の周波数振幅を確定する
このアプリケーションノートで用意したExcel スプレッドシートは、理解しやすく使いやすいツールです。これはシングル及びマルチバンドトランシーバの周波数プランに使用します。本来、このスプレッドシートはセルラとPCSの電話アプリケーション用に考案したものです。セルラやPCSのチャネル番号を入力すると、スプレッドシートは入力されたレシーバIFに基づいて、トランスミッタ出力、レシーバ入力、主要な局部発振器の周波数、及びトランスミッタIFを自動的に計算します。同時に、任意の数のプランを検討することも可能です。デフォルトのスプレッドシートの例では、3つのレシーバIFを評価しています。このスプレッドシートには、IS-136 TDMA無線機の設計という別の目的もありました。この理由のため、PCSバンド内でRX IFとTX IFの差を45MHzに選択しました。このソリューションは、セルラバンドとPCSバンドの両方に単一のRX IFと単一のTX IFを使用することで、ハードウェアのコストを大幅に削減しています。
このスプレッドシートを利用するにあたって、いくつかの留意点を以下に示します(図1を参照)。
- 紫色のセルに1か2を入力して、LOがハイサイドかローサイドを選択します。
- 黄色のセルに1、2、3のいずれかを入力して、その下のセルの中からRX IF周波数を選択します。これらの周波数は、必要に応じて手動で変更することができます。
- 青色のセルを使用して、評価する周波数チャネルを入力します。
- RXまたはTX帯域内にスプリアス応答があれば、そのスプリアスの周波数が自動的に赤色で強調表示されます。
- 無効なチャネル番号を入力すると「Ch# Error」と表示されます。
図1. 周波数プランスプレッドシートは、黄色、紫色、及び青色のセルに適切な値を入力することで操作します。
2つ目の表である「VCOプラン」では、評価した周波数プランにおいて、VCOにどれだけの周波数範囲が必要であるかを調べます。図2にこのサンプルを示します。この表は、セルラバンドでの稼動時に、VCO出力上で2分周を使用することを基本にしていることに留意してください。
図2. VCOの最大同調範囲の計算
参考資料
- Bullock, Scott, Transceiver System Design for Digital Communications, Tucker, GA.:Noble Publishing, 1995, section 3.16.1, pp. 124-128.