AIアルゴリズムを使用した組み込みセンサー・プラットフォーム − ビッグ・データをローカルでスマート・データに変換

AIアルゴリズムを使用した組み込みセンサー・プラットフォーム − ビッグ・データをローカルでスマート・データに変換

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Dzianis Lukashevich - blue background

Dzianis Lukashevich

概要

インダストリ4.0のアプリケーションでは、膨大な量の複雑なデータ、いわゆるビッグ・データが発生します。センサー数が増加したことや、使用可能なデータ・ソースの数が一般的に増加したことによって、装置、システム、およびプロセスの実態を、これまで以上に詳細に把握することが求められます。その結果、自然の成り行きとして、バリュー・チェーン全体にわたって付加価値が生み出される可能性が高まります。しかし同時に、この可能性をいったいどのようにして引き出すことができるのか、という疑問が常に生じます。いずれにしろ、データ処理のためのシステムとアーキテクチャはますます複雑になっており、センサーとアクチュエータの数も増加の一途をたどっています。意味のある高品質で有益なデータ、すなわちスマート・データを使用してこそ、付随する経済的な可能性を開くことができます。

課題

評価、分析、構造化は後で行われるだろうと期待して、できる限りのデータを収集してクラウドに保存する、というやり方が依然として広く行われていますが、これはさほど効果的な方法ではありません。未使用のままのデータから付加価値を生み出す可能性、つまり、後でソリューションを見つけることは、より複雑でコストのかかる作業になります。より望ましい方法は、早い段階で概念的な検討を行い、そのアプリケーションにとってどの情報が重要で、データ・フローのどこでその情報を取り出すことができるかを判断することです(図1を参照)。比喩的に言えば、これは、データを精製すること、例えば、プロセス・チェーン全体のビッグ・データからスマート・データを作り出すことを意味します。アプリケーション・レベルでは、個々の処理ステップに関してはどのAIアルゴリズムが成功の可能性が高いかについて、既に判断を下すことが可能になっています。これは、使用可能なデータ、アプリケーション・タイプ、使用可能なセンサー方式、より低水準の物理プロセスに関する背景情報といった境界条件に依存します。

図1. 組み込みプラットフォーム、エッジ・プラットフォーム、およびクラウド・プラットフォームへのアルゴリズム・パイプラインの区分け。注:本稿は組み込みプラットフォームに焦点を当てています。

図1. 組み込みプラットフォーム、エッジ・プラットフォーム、およびクラウド・プラットフォームへのアルゴリズム・パイプラインの区分け。注:本稿は組み込みプラットフォームに焦点を当てています。

個々の処理ステップに関して言うと、センサー信号から本当の付加価値を生み出すには、データの正しい取り扱いと解釈が極めて重要です。アプリケーションによっては、離散的なセンサー・データを正しく解釈して必要な情報を取り出すのが難しい場合があります。多くの場合は、一時的な挙動が、必要な情報に対して何らかの役割を果たし、直接的な影響を及ぼすことがあります。更に、複数のセンサー間の依存関係を考慮しなければならないことも頻繁にあります。複雑なタスクの場合、単純な閾値と手動で決定したロジックだけでは、もはや不十分です。あるいは、そのようなロジックでは、変化していく環境条件に自動的に適応することはできません。

組み込みAI実装か、エッジAI実装か、あるいはクラウドAI実装か

個々のステップに必要なすべてのアルゴリズムを含む全体的なデータ処理チェーンは、最大限の付加価値が得られるように実装する必要があります。通常、実装はすべてのレベルで行われ、これには計算リソースが限られた小さいセンサーから、ゲートウェイやエッジ・コンピュータ、更には大規模なクラウド・コンピュータに至るまですべて含まれます。アルゴリズムの実装は1つのレベルだけで行うべきものでないことはここで明らかです。むしろほとんどの場合は、センサーにできるだけ近い位置でアルゴリズムを実装する方が有利です。そうすることにより、早い段階でデータが圧縮され、精選されたものとなるので、通信と保存のコストが削減されます。更に、不可欠な情報をデータから早期に抽出することで、より高い水準のグローバル・アルゴリズムを開発する場合に、複雑さが緩和されます。ほとんどの場合、ストリーミング分析分野のアルゴリズムも、データの不必要な保存と、それに伴う大量のデータ転送や保存コストの上昇を回避する上で有効です。これらのアルゴリズムは、各データ・ポイントを一度しか使用しません。例えば、必要なすべての情報が直接抽出され、データを保存する必要はありません。

状態基準保全のため組み込みプラットフォーム

Shiratech Solutions、Arrow、およびアナログ・デバイセズが提供するARM® Cortex®-M4Fプロセッサ・ベースのオープン組み込みプラットフォーム、iCOMOXは、超低消費電力の集積化マイクロコントローラ・システムで、パワー・マネージメント機能の他、データの収集/処理/制御/ネットワーク接続のためのアナログおよびデジタル・センサーや周辺デバイスを内蔵しています。これらすべての特長によって、このプラットフォームは、最先端のスマートAIアルゴリズムを使用したローカル・データ処理と早期のデータ選別に最適な選択肢となっています。

iCOMOXとは"intelligent condition monitoring box"(インテリジェント状態監視ボックス)を意味しており、振動、磁界、音響、および温度の分析に基づいて構造の健全性や装置の状態監視を行うための入力部として使用することができます。このプラットフォームは、必要に応じ別のセンサー方式によって補完することも可能です。例としては、大きな衝撃負荷や振動負荷が存在する環境下でも回転数を精密に測定する、アナログ・デバイセズのジャイロ・センサーが挙げられます(図2を参照)。iCOMOXに実装されたAI手法は、いわゆるマルチセンサー・データ・フュージョンを通じ、最新の状況をより正確に推定することを可能にします。このようにして、様々な動作状態や故障状態をより細かく、より高い確率で分類することができます。iCOMOXによるスマート信号処理を通じて、ビッグ・データはスマート・データとなり、エッジまたはクラウドへ送る必要があるのは、そのアプリケーションに関係するデータだけになります。

図2. iCOMOXのブロック図

図2. iCOMOXのブロック図

ワイヤレス通信に対しては、iCOMOXは、極めて高い信頼性と堅牢性を備えた、非常に消費電力の小さいソリューションを提供します。SmartMesh® IPネットワークは、データの収集と中継を行うワイヤレス・ノードからなる、高いスケーラビリティを備えた自己形成/最適化型のマルチホップ・メッシュで構成されます。ネットワーク管理者はネットワーク性能とセキュリティの監視と管理を行い、ホスト・アプリケーションとの間でデータを交換します。SmartMesh IPネットワークのインテリジェント・ルーティング機能は、接続品質、各パケット・トランザクションのスケジュール、および通信リンクにおけるマルチホップの回数を考慮して、個々のパケットのための最適パスを決定します。

特に、ワイヤレスのバッテリ駆動状態監視システムの場合は、組み込みAIが付加価値を余すところなく引き出す助けとなります。iCOMOXに組み込まれたAIアルゴリズムによるセンサー・データからスマート・データへのローカル変換により、データ・フローが減少し、更にその結果、未処理のセンサー・データをエッジやクラウドへ直接送信する場合に比べ消費電力が減少します。

アプリケーションの範囲

専用に開発されたAIアルゴリズムを含むiCOMOXには、装置、システム、構造、およびプロセスの監視分野で幅広い用途があり、その範囲は、異常の検出から、複雑な故障診断や障害除去の迅速な開始まで、多岐にわたります。iCOMOXは、内蔵のマイクロフォンや加速度センサー、磁界センサー、温度センサーを通じて、広範な産業用機器やシステムにおいて、例えば振動やノイズ、その他の動作状態を監視することを可能にします。プロセス状態、ベアリングやローターおよびステータの損傷、制御エレクトロニクスの故障などに加えて、例えばエレクトロニクスの損傷によるシステム挙動の未知の変化なども、AIによって検出することができます。特定の損傷に関する挙動モデルを利用できる場合は、それらの損傷を予測することも可能です。これを通じ、早い段階でメンテナンス作業を実施できるので、損傷による不必要な故障を回避することができます。予測モデルが存在しない場合でも、この組み込みプラットフォームは、その問題のエキスパートが装置の挙動を継続的に把握し、やがては予防メンテナンスのためにその装置の包括的モデルを導き出すのを支援することができます。更に、iCOMOXは、複雑な製造工程を最適化して、出来高向上と製品品質改善を実現するために使用することもできます。

スマート・センサー用の組み込みAIアルゴリズム

AIアルゴリズムによるデータ処理を使用して、複雑なセンサー・データの分析を自動的に行うことも可能です。これにより、データ処理チェーンに沿ったデータから、必要な情報と、それに伴う付加価値が自動的に得られます。アルゴリズムの選択は、多くの場合、そのアプリケーションに関する既存の知識に依存しています。広範なドメイン知識を利用できる場合、AIの果たす役割はより支援的なものとなり、使用するアルゴリズムもごく基本的なものとなります。専門的な知識がない場合、アルゴリズムはずっと複雑なものとなる傾向があります。多くの場合、ハードウェアを決定するのはアプリケーションであり、これを通じてアルゴリズムに関する制限も決定されます。

モデルの作成は常にAIアルゴリズムの一部を構成しますが、その方法は基本的に2つ存在します。すなわち、データ駆動型のアプローチとモデルベースのアプローチです。

データ駆動型アプローチを使用した異常検出

使用できるのがデータだけで、数式の形で記述できる背景情報がない場合は、いわゆるデータ駆動型のアプローチを選ぶ必要があります。これらのアルゴリズムは、必要な情報(スマート・データ)をセンサー・データ(ビッグ・データ)から直接抽出します。これらは、線形回帰、ニューラル・ネットワーク、ランダム・フォレスト、隠れマルコフ・モデルを含む、あらゆる範囲の機械学習法を包含しています。

iCOMOXのような組み込みプラットフォーム上に実装できるデータ駆動型アプローチの代表的なアルゴリズム・パイプラインは、3つの要素で構成されます(図3を参照)。すなわち、1)データの前処理、2)特徴抽出と次元縮小、3)実際の機械学習アルゴリズムです。

図3. 組み込みプラットフォーム用のデータ駆動型アプローチ

図3. 組み込みプラットフォーム用のデータ駆動型アプローチ

データの前処理段階では、下流側のアルゴリズム、特に機械学習アルゴリズムが、できるだけ短い計算時間内で最適なソリューションに収束していくような形で、データが処理されます。この際、足りないデータがある場合は、異なるセンサー・データ間の時間依存性と相互依存関係を考慮した上で、単純な補間法を使って補う必要があります。更に、データは、プリホワイトニング・アルゴリズムによって相互に独立したものとなるように修正されます。この結果、時系列やセンサー間の線形依存性はなくなります。主成分分析(PCA)、独立成分分析(ICA)、およびいわゆるホワイトニング・フィルタが、プリホワイトニングの代表的なアルゴリズムです。

特徴抽出においては、前処理したデータから特性(特徴とも言う)が導き出されます。処理チェーンのこの部分は、実際のアプリケーションによって大きく異なります。組み込みプラットフォームの計算能力には制約があるため、この段階ではまだ、様々な特徴を評価し特定の最適化基準を使って最良の特徴を見つけ出す、計算集約型の完全に自動化されたアルゴリズムを実装することはできません。これには遺伝的アルゴリズムも含まれます。代わりに、消費電力の小さいiCOMOXのような組み込みプラットフォームでは、特徴を抽出するために使用する方法を、個々のアプリケーションごとに手動で指定する必要があります。取り得る方法としては、データの周波数領域への変換(高速フーリエ変換)、未処理センサー・データへの対数の適用、加速度センサー・データまたはジャイロ・センサー・データの正規化、PCAによる最大固有ベクトルの特定、または未処理センサー・データへのその他の計算の実施などがあります。異なるセンサーに対しては、異なる特徴抽出アルゴリズムを選ぶこともできます。この場合は、すべてのセンサーのすべての関連する特徴を含む、大きい特徴ベクトルが得られます。

このベクトルの次数が一定のサイズを超える場合は、次数縮小アルゴリズムを通じて減らす必要があります。これは、単純に特定ウィンドウ内の最小値や最大値を取ることによって、あるいは、前述のPCAや自己組織化マップ(SOM)のようなより複雑なアルゴリズムを使用することによって、実現できます。

データの前処理と、それぞれのアプリケーションに関係する特徴の抽出が完了して初めて、最適な形で機械学習アルゴリズムを採用し、組み込みプラットフォーム上で様々な情報を抽出することが可能になります。特徴抽出の場合同様、機械学習アルゴリズムの選択は、それぞれの具体的なアプリケーションによって大きく異なります。計算能力が限られているので、最適な学習アルゴリズムを(例えば遺伝的アルゴリズムを介して)完全に自動化された方法で選択することも不可能です。ただし、トレーニング・フェーズを含めて、いくぶん複雑なニューラル・ネットワークであっても、iCOMOXのような組み込みプラットフォーム上に実装される場合があります。ここでの決定的な要因は、使用可能なメモリが制限されていることです。このため、機械学習アルゴリズムと、アルゴリズム・パイプライン全体に含まれる前述のすべてのアルゴリズムは、センサー・データを直接処理できるように変更する必要があります。これらのアルゴリズムがそれぞれのデータ・ポイントを使用する回数は、1回だけです。例えば、関係するすべての情報は直接抽出され、メモリを消費する大量のデータと、それに伴う大量のデータ転送および保存にかかるコストは発生しなくなります。このタイプの処理はストリーミング分析とも呼ばれます。

前述のアルゴリズム・パイプラインはiCOMOX上に実装されており、2つの異なるアプリケーション(ここではACモータの状態基準保全と工業用ロボットの軌跡監視)の異常検出について、評価が行われています。どちらのアプリケーションでもアルゴリズムは基本的に同じで、異なるのはパラメータ設定だけです。モータ監視では考慮される時間間隔が短く、軌跡監視では長くなっています。ハードウェアの制約のため、残りのアルゴリズム・パラメータについても異なる値が設定されています。入力データには、それぞれサンプリング・レート1kHzの加速度センサー・データとジャイロ・センサー・データが使われています。モータの状態監視では、音響的な異常を含めることによって異常検出精度を向上させるため、マイクロフォン・データも入力データとして使われています。組み込みプラットフォーム上でのローカル計算の結果を、図4と図5に示します。どちらの例でも、加速度センサーとジャイロ・センサーのデータ、ローカルで抽出した特徴、およびローカルで計算した異常指標が示されています。この指標は新しい信号挙動と共に急激に増加し、再発時にはずっと小さくなります。つまり、新たに検出される信号は、学習アルゴリズムによるモデルにおいて検討され、更新されます。

図4. 組み込みプラットフォームでのACモータの振動監視

図4. 組み込みプラットフォームでのACモータの振動監視

図5. 組み込みプラットフォームでの工業用ロボットの軌跡監視

図5. 組み込みプラットフォームでの工業用ロボットの軌跡監視

モデルベース・アプローチを使用した動的姿勢予測

もう1つのアプローチはこれとは根本的に異なり、センサー・データと必要な情報の間にある明示的な関係と、数式を使ったモデリングです。このアプローチでは、物理的背景情報またはシステム挙動を数学的に記述された形で利用できることが必要です。このようないわゆるモデルベース・アプローチでは、センサー・データとこの背景情報を組み合わせることで、より正確な結果を求め、必要な情報を得ます。このアプローチのよく知られている例としては、線形システム用のカルマン・フィルタ(KF)、アンセンテッド・カルマン・フィルタ(UKF)、拡張カルマン・フィルタ(EKF)、および非線形システム用のパーティクル・フィルタ(PF)などが挙げられます。フィルタの選択は、それぞれのアプリケーションに大きく依存します。

iCOMOXのような組み込みプラットフォーム上に実装できるモデルベース・アプローチの代表的なアルゴリズム・パイプラインは、3つの要素で構成されます(図6を参照)。すなわち、1)外れ値検出、2)予測ステップ、3)フィルタリング・ステップです。

図6. 組み込みプラットフォーム用のモデルベース・アプローチ

図6. 組み込みプラットフォーム用のモデルベース・アプローチ

外れ値の検出時、実際のシステム状態予測から大きく外れたセンサー・データは、部分的な重み付けがされるか、その後の処理から完全に除外されます。これを行うことで、より確実なデータ処理が実現されます。

予測ステップでは、現在のシステム状態が時間と共に更新されます。これは、未来のシステム状態の予測を記述する確率的システム・モデルを援用して行われます。この確率的システム・モデルは、多くの場合、未来のシステム状態が、現在のシステム状態とその他の入力パラメータや擾乱にどのように依存するかを記述する、確定的システム方程式から導かれます。ここで考える工業用ロボットの状態監視の例では、これは個々の多関節アームの動的方程式になります。この方程式の下では、アームは任意の時点で特定の方向にしか動作できません。

更にフィルタリング・ステップでは、予測されたシステム状態が、与えられた測定値によって処理され、それに基づいて状態予測が更新されます。システム方程式と同様の測定方程式が使われますが、これは、システム状態と測定の関係を式で記述することを可能にします。ここで考える位置予測においては、これは、加速度センサーおよびジャイロ・センサーのデータと、空間内のセンサーの正確な位置との関係になります。

データ駆動型アプローチとモデルベース・アプローチの組み合わせは、ある種のアプリケーションにおいては考え得ることで、また有利でもあります。例えば、モデルベース・アプローチの基本となるモデルのパラメータを、データ駆動型アプローチを通じて決定したり、それぞれの環境条件に動的に適応させたりすることができます。更に、モデルベース・アプローチから得たシステム状態を、データ駆動型アプローチの特徴ベクトルの一部とすることができます。ただし、これらはすべて、それぞれのアプリケーションに大きく依存します。

前述のアルゴリズム・パイプラインは、工業用ロボットのエンド・エフェクタの正確な動的姿勢予測用としてiCOMOX上に実装され、評価が行われています。入力データには、それぞれサンプリング・レート200Hzの加速度センサー・データとジャイロ・センサー・データが使われています。iCOMOXを工業用ロボットのエンド・エフェクタに取り付けて、その姿勢(位置と方向で構成)を決定しました。結果を図7に示します。図に示すように、直接計算では非常に速い応答が得られますが、ノイズが多く、外れ値もかなり見られます。IIRフィルタは実際に広く使われているもので、非常にスムーズな信号が得られますが、本当の姿勢を忠実に再現していません。これに対し、ここで示したアルゴリズムを使用した場合は非常にスムーズな信号が得られ、予測された姿勢は、極めて正確かつ動的に工業用ロボットのエンド・エフェクタの姿勢を再現しています。

図7. 組み込みプラットフォームでの正確な動的姿勢予測。実装されたアルゴリズムは、直接計算やIIRフィルタリングよりもはるかに良好な性能を示しています。

図7. 組み込みプラットフォームでの正確な動的姿勢予測。実装されたアルゴリズムは、直接計算やIIRフィルタリングよりもはるかに良好な性能を示しています。

まとめ

理想的には、対応するローカル・データ分析を通じて、どのセンサーがそれぞれのアプリケーションにとって重要で、どのアルゴリズムが適しているのかについても、AIアルゴリズムが自ら決定できる必要があります。これは、プラットフォームのスマート・スケーラビリティを意味します。ここで使用したAIアルゴリズムは、装置状態や構造健全性を監視する様々なアプリケーションに合わせて最小限の実装努力で拡張することが既に可能だとしても、現時点で個々のアプリケーションに最適なアルゴリズムを決定しなければならないのは、依然としてその問題のエキスパートです。

組み込みAIはデータの品質に関する決定を行う必要もあり、それが不適当な場合は、センサーおよび信号処理全体にとって最適な設定を見つけて、それを実行する必要があります。複数の異なるセンサー方式を混合して使用している場合は、AIアルゴリズムを使用することによって特定のセンサーと方法の弱点と欠点を補うことができます。これを通じて、データの品質とシステムの信頼性が向上します。あるセンサーが、それぞれのアプリケーションにはまったく関係しない、あるいはそれほど関係しないものとしてAIアルゴリズムによって分類された場合は、それに応じてそのデータ・フローを減らすことができます。

Shiratech Solutions、Arrow、およびアナログ・デバイセズが提供するオープン組み込みプラットフォーム、iCOMOXはArrowを通じて購入できます。iCOMOXには、無料のソフトウェア開発キットと、ハードウェアおよびソフトウェア向けの様々なサンプル・プロジェクトが含まれています。これらのサンプル・プロジェクトは、プロトタイプ作成時間を短縮して開発を促進し、オリジナルのアイディアを現実のものにします。マルチセンサー・データ・フュージョンと組み込みAIを使用することで、状態基準保全用のスマート・センサーで構成される、堅牢で信頼性の高いワイヤレス・メッシュ・ネットワークを作成することが可能です。iCOMOXは、ビッグ・データをローカルでスマート・データに変換します。