概要
設計リソース
設計/統合ファイル
• Schematic• Bill of Materials
• Gerber Files
• Layout Files (Allegro)
• Assembly Drawing 設計ファイルのダウンロード 1.31 M
評価用ボード
型番に"Z"が付いているものは、RoHS対応製品です。 本回路の評価には以下の評価用ボードが必要です。
- EVAL-ADICUP360 ($52.97) EVAL-ADICUP360
- EVAL-CN0397-ARDZ ($76.51) EVAL-CN0397-ARDZ
デバイス・ドライバ
コンポーネントのデジタル・インターフェースとを介して通信するために使用されるCコードやFPGAコードなどのソフトウェアです。
機能と利点
- 色光認識システム
- スマート農業アプリケーション
- 16ビット・デジタル化
- 低消費電力
- Arduino互換シールド・フォーマット
参考資料
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EVAL-CN0397-ARDZ Shield2018/10/16WIKI
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CN0397: スマート農業に向けた超低消費電力の光認識システム2016/10/18PDF266 K
回路機能とその特長
図1に示す回路では、異なる波長(赤色、緑色、青色)に対して高感度の3種類のフォトダイオードが使用されており、植物の光合成に有効な光スペクトルにわたって光強度レベルを測定できます。測定結果を使用すると、特定の植物の条件に合うように光源を最適化し、成長速度を高め、エネルギー損失を最小限に抑えることができます。
この回路には高精度の3つの電流/電圧変換段が使用されており、これらの変換段は3つの差動入力を備えた単電源、低消費電力、低ノイズの16ビット、シグマ・デルタ(Σ-Δ)A/Dコンバータ(ADC)を駆動します。
この回路では、すべての機械部品と光学部品をなくしたことで従来のアプローチからは外れていますが、電気部品のみを使用して同じ目的を達成しています。
回路の消費電力は10mW未満(代表値)であるため、バッテリ駆動の携帯機器分野におけるアプリケーションに最適です。
プリント回路基板(PCB)は、Arduino(アルドゥイーノ)互換のシールド・フォーム・ファクタで設計されており、迅速なプロトタイピングのために、EVAL-ADICUP360 Arduino互換プラットフォーム・ボードとインターフェースします。
回路説明
はじめに
植物は光の全可視スペクトルにわたって光合成を行いますが、図2 の光合成有効放射(PAR)曲線に示すように、その応答は赤色と青色の波長でより大きく、緑色の波長でより小さくなっています。
光の緑色のスペクトルは主に葉で反射されますが、赤色と青色のスペクトルは葉に吸収されて光合成に使用されます。このデータが得られると、植物で利用される波長と、植物が最速で成長するために最適化された光源について、光強度を測定するための光検出回路を設計することができます。
このアプリケーションで選択されたフォトダイオードは、植物が光合成を行う場合に吸収する青色と赤色の波長だけでなく、受光してもほとんど使用されない緑色と黄色の波長も取り込んで測定することができます。その結果、植物の照明システムの効率を最適化できます。
この回路は、Everlight Americas, Inc(3220 Commander Dr., Suite 100, Carrollton, TX 75006)のフォトダイオード・センサーを使用してテストされました。この回路は、センサーの特定の波長で光を測定することができます。このアプリケーションで使用されているフォトダイオードでは、ピーク感度が470nm(青色:CLS15-22C/L213B/TR8 ) 、550nm ( 緑色: CLS15-22C/L213G/TR8 ) 、および620nm ( 赤色: CLS15-22C/L213R/TR8)にあり、感度はそれらのピークから離れるにしたがって急勾配で減衰します。
このアプリケーションで使用されているフォトダイオードは、高シャント抵抗を持っており、光起電モード(ゼロ・バイアス)で動作するため、暗電流に起因する誤差が最小限に抑えられます。
電流から電圧への変換
このアプリケーションでは、バイアス電流が非常に低い適切なアンプを選択することが重要です。これは、フォトダイオードの出力は数百ピコアンペアという低い値になる可能性があり、大きな入力バイアス電流が流れると大きな誤差が生じるためです。
トランスインピーダンス・アンプとして使用されているAD8500は、1µA の最大電源電流を特長とする低消費電力で高精度のCMOS オペアンプです。AD8500 では、最大オフセット電圧が1mV で、代表的な入力バイアス電流が1pA となっています。したがって、AD8500 は消費電力が低く、入力バイアス電流が低いため、最適な選択になります。
AD8500 による3 つの電流/電圧変換器は、3.15V のコモンモード電圧で動作します。3.15Vのコモンモード電圧によって、ダイオードのカソードを互いに接続することができます。これは、Hamamatsu S7505-01 などのトリプル・ダイオード・パッケージの場合です。
3.15Vのコモンモード電圧を使用すると、ダイオード電流がゼロの場合に、AD8500 段の出力に0.15V のヘッドルームを確保できます。このため、光強度が増加し、ダイオード電流が増加するにつれて、AD8500 段の出力信号は3.15V からグラウンドに向かって振れます。
AD8500 の出力信号がフルスケール強度で常に+0.15V を上回るように、ゲイン抵抗R1、R2、およびR3 が選択されています。したがって、全体的なピークto ピーク出力振幅は次式と等しくなります。
0.15V~3.15V の振幅は、3.3V のリファレンス電圧で設定されるAD7798 ADC の範囲内になります。AD7798 がバッファ・モードで動作しているとき、入力範囲の両端で100mV 以上のヘッドルームが必要です。
各チャンネルの帰還抵抗は、同じレベルの光強度に対してフルスケール信号の振幅が最大になるように選択されています。抵抗値は、フォトダイオードの予想される最大出力電流と、フルスケール値のピークto ピーク信号振幅である3.0Vを使用して算出されています。
抵抗算出の詳細は、光強度から電流への変換とチャンネル・ゲインの選択のセクションを参照してください。
帰還コンデンサは、帯域幅を約1kHz に制限すると同時に、十分な位相余裕を確保できるように選択されています。トランスインピーダンス・アンプの安定性、帯域幅、およびノイズの詳細な分析については、Sensor Signal Conditioning の第5 章を参照してください。
回路の安定性と帯域幅は、アナログ・デバイセズのフォトダイオード・ウィザード設計ツールを使用して詳細に分析できます。
ADC 用の3.3V のリファレンスは、ADR3433 から供給されます。ADR3433 は、低ノイズ(0.1Hz~10Hz で25µV p-p)で、低消費電力、高精度(0.1%)のCMOS 電圧リファレンスです。このデバイスは動作電流(最大100µA)が低いため、低消費電力の装置での使用に適しています。
AD8502(AD8500 のデュアル・バージョン)はADR3433 の出力をバッファするためだけでなく、3.15Vのコモンモード電圧をバッファする目的にも使用されています。3.15Vのコモンモード電圧は、抵抗分圧器によって生成されます。
AD8502 は、アンプごとの最大電源電流が1µA で、最大オフセット電圧が3mV であるため、バッファに最適です。
アナログからデジタルへの変換
ADC には、AD7798(3つの差動入力付き、低消費電力、低ノイズ、フル機能の16ビットΣ-Δ ADC)が用いられています。ADCの出力コードは次式のようになります。
ここで、
AIN は、アナログ入力電圧、
N は、ビット数。GAIN は、計装アンプのゲイン、
VREFは、外付けリファレンス電圧値です。
リファレンスが3.3V で、GAIN = 1、N = 16 の場合、式は以下のように簡素化できます。
この式は、ミッドスケールで32,767 のコード、フルスケールで65,535 のコードを生成します。.
LSB サイズは、3.3V/65,536 = 50.35µV です。
16 ビットのときの1LSB は、フルスケールの0.0015%、つまり15ppm FS です。
3.15V のコモンモード電圧は、ADC の差動入力の正入力ピンを駆動し、ADC の内部バッファがオンになっているときに起こり得るすべてのヘッドルームの問題を回避します。
また、ADC の各入力チャンネルには、ノイズを低減するためにコモンモード・フィルタと差動モード・フィルタが実装されています。コモンモード・フィルタは、1kΩ/470pF の組み合わせで構成され、カットオフ周波数が340kHz となっています。差動モード・フィルタは、2kΩ/4.7nF の組み合わせで構成され、カットオフ周波数が17kHz となっています。
ノイズの測定
システムの有効分解能はノイズによって決まり、一般にノイズ・フリー・コード分解能によって表されます。
表1 に、ボード上のフォトダイオードに流れる電流がゼロのときとフルスケールのときのノイズ分布を示します。電流がゼロの場合、フォトダイオードには覆いをしました。各条件において、合計1000 サンプルを取得しました。
Channel | Light Intensity | Peak-to-Peak Noise (LSBs) | Noise Free Code Resolution (Bits) |
Red | Zero | 1 | 16.0 |
Red | Full Scale | 3 | 14.4 |
Blue |
Zero | 1 | 16.0 |
Blue | Full Scale | 3 | 14.4 |
Green | Zero | 1 | 16.0 |
Green | Full Scale | 3 | 14.4 |
ノイズ・フリー・コード分解能は、次式を使用して算出できます。
ここで、
Nは、ビット数です。
p-p Noiseは、ノイズ分布の幅です。
フルスケールのときに、テストからの最大ノイズ分布の幅は、3LSBです。式に値を代入すると、ノイズ・フリー・コード分解能は14.4ビットになります。ゼロのときのノイズは、1LSB未満です。
光強度から電流への変換とチャンネル・ゲインの選択
フォトダイオードの出力電流は、加えられた光強度に対してほぼ直線状になります。しかしながら、赤色、緑色、および青色のダイオードの相対的な感度が異なるため、各チャンネルのゲインは個別に決定して帰還抵抗を最適な値にする必要があります。
おおよそのゼロバイアス(短絡)出力電流は、光強度(照度)の関数として、フォトダイオードのデータシートから決定する必要があります。例えば、Everlightの赤色ダイオードCLS15-22C/L213R/TR8は、100luxで86nA、つまり、感度S = 86nA/100lux = 860pA/luxに仕様規定されています。したがって、帰還抵抗値RFBは、次式を使用して算出できます。
ここで、
VFSP-Pは、必要なピークtoピークのフルスケール出力電圧振幅(3.0V)、
Sは、データシートから読み取れるpA/lux単位の感度(Everlightの赤色ダイオードの場合は860pA/lux)、
INTMAXは、フルスケールでのlux単位の最大光強度です(直射日光では120,000lux)。
赤色ダイオードのパラメータを式に代入すると、RFB = 29,069Ωが得られ、最も近い標準値である28.7kΩが赤色チャンネルの帰還抵抗として回路内で使用されています。
同様の計算を行うと、緑色チャンネルではRFB値が33.2kΩになり、青色チャンネルではRFB値が61.9kΩになります。ADCコードCODEADCに対応するlux単位の光強度については、一般方程式として、現在、以下のように記述することができます。
ここで、
CODEADCは、ADCの出力コード、
Nは、ADCの分解能(16)、
VREFは、ADCのリファレンス電圧(3.3V)、
VFS-PPは、ダイオードの出力電流が最大のときの、オペアンプでのフルスケールのピークtoピーク出力振幅(3.0V)です。
カラー・プロファイルの測定
回路内のフォトダイオードが持っている470nm、550nm、および620nmの狭帯域フィルタについて、それらの応答を測定するために、様々な白色光源がテストされました。
図3に、30cmの距離にある3.5Wの白色LED源に対する応答を示します。図4に、30cmの距離にある10WのLEDフラッド光源に対する応答を示します。更に、図5に、35cmの距離にある50Wの白熱光源に対する応答を示します。
ボード・レイアウト時の考慮事項
フォトダイオードの高インピーダンスの電流経路は、リーク電流の影響を受けやすいため、シールドを考慮することが重要です。シールドを効果的に動作させるには、シールドを適切なリファレンス電位に接続する必要があります(アプリケーション・ノートAN-347シールディングとガーディングを参照)。
ボード上の電源とグラウンド・リターンのレイアウトを慎重に検討することが重要です。プリント回路基板は、アナログ部とデジタル部を分離する必要があります。複数のデバイス間でアナログ・グラウンドとデジタル・グラウンドを接続する必要があるシステムにおいて、この回路を使用する場合は、1点のみで接続する必要があります。すべての部品に対する電源には、0.1µF以上のコンデンサを使用してバイパスする必要があります。これらのバイパス・コンデンサは、デバイスに対して物理的にできるだけ近づけて配置する必要があり、コンデンサはデバイスのすぐ隣にあることが理想的です。0.1µFのコンデンサには、セラミック・コンデンサなど、等価直列抵抗(ESR)が低く、等価直列インダクタンス(ESL)が低いものを選択する必要があります。この0.1µFのコンデンサは、過渡電流に対してグラウンドへの低インピーダンス・パスになります。また、電源ラインをできる限り広いパターンにして、電源経路を低インピーダンスにする必要があります。最適な性能を実現するために、適切なレイアウト、グラウンディング、およびデカップリング技術を使用する必要があります(チュートリアルMT-031、データ・コンバータのグラウンディングと、「AGND」および「DGND」に関する疑問の解消、および、チュートリアルMT-101、Decoupling Techniquesを参照)。
回路図、レイアウト、部品表などの技術文書一式は、www.analog.com/CN0397-DesignSupportにあるCN-0397設計支援パッケージから入手できます。
バリエーション回路
EVAL-CN0397-ARDZボードには、EverlightのダイオードCLS15-22C/L213x/TR8が実装されています。ただし、ボード上には、HamamatsuのダイオードS7505-01用のフットプリントもあります。このダイオードには、3種類のダイオードすべてが1パッケージに収められ、カソードが内部で接続されています。
ボード上のEverlightのダイオードを他のダイオードと交換する場合は、個別のダイオード仕様に基づいて、帰還抵抗とコンデンサも交換する必要があります。帰還抵抗とコンデンサ用のハンダ・パッドを十分に広くすると、部品の付け替えが容易になります。
消費電力と引き換えにバイアス電流を低くする場合は、最大バイアス電流が1pAであるAD8617、AD8609、およびAD8641を使用してください。
AD7795(6チャンネル)とAD7708(8チャンネル/10チャンネル)も16ビットのΣ-Δ ADCです。これらのADCは低消費電力であり、光スペクトルをより高精度に分析するために、フォトダイオードのチャンネルを追加する必要がある場合に適しています。
回路の評価とテスト
この回路では、EVAL-CN0397-ARDZ回路ボードとEVAL-ADICUP360を使用しています。EVAL-CN0397-ARDZは、Arduino互換ピンを使用して、EVAL-ADICUP360ボードの上部に積み重ねられています。
必要な装置
以下の装置類が必要になります。
- USBポート付きWindows XP、Windows Vista(32ビット)、またはWindows 7(32ビット)搭載PC
- EVAL-CN0397-ARDZ回路評価用ボード
- EVAL-ADICUP360評価用プラットフォーム・ボード、または等価なArduinoインターフェース
- USB A-micro USBケーブル
- ADuCM360ソフトウェア(IDE)
- EVAL-CN0397-ARDZサンプル・コード(CN-0397ユーザ・ガイドを参照)
設計の開始にあたって
ツール・チェーン・セットアップ・ユーザ・ガイドに従って、サンプル・コードをADuCM360 IDEにロードします。
機能ブロック図
テスト・セットアップの機能ブロック図を図6に示します。
セットアップ
表2に示すように、Arduino互換ヘッダとこれに対応するヘッダを使用し、EVAL-CN0397-ARDZをEVAL-ADICUP360ボードの上部に取り付けることによって接続します。
EAVL-CN0397-ARDZ | EVAL-ADICU360 |
ICSP | SPI |
POWER | POWER |
ANALOG |
ADCL |
DIGI1 | PWMH |
DIGI2 | PWML |
次に、EVAL-ADICUP360のデバッグ・ポートとコンピュータのUSBポートの間をUSBケーブルで接続します。
テスト
サンプル・コードをビルドし、EVAL-ADICUP360とその上部に取り付けられたEVAL-CN0397-ARDZにロードすると、デバイスはPCと通信を行い、3つのチャンネルのそれぞれからの読み取り値が表示されます。この回路では、様々な距離にある異なる光源を使用し、各チャンネルからの読み取り値を観測することによって試験を行うことができます。
テスト・セットアップについての詳細、および、EVAL-ADICUP360とデータ・キャプチャ用のサンプル・コードの使用方法については、CN-0397ユーザ・ガイドを参照してください。
EVAL-ADICUP360ボードに関しては、EVAL-ADICUP360ツール・チェーン・セットアップ・ユーザ・ガイドを参照してください。
EVAL-CN0397-ARDZ評価用ボードの写真を図7に示します。