概要

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  • Schematic
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評価用ボード

型番に"Z"が付いているものは、RoHS対応製品です。 本回路の評価には以下の評価用ボードが必要です。

  • ADL6010-EVALZ ($615.25) ADL6010 Evaluation Board
  • EVAL-AD7091RSDZ ($72.60) AD7091R Evaluation Board
  • EVAL-SDP-CB1Z ($116.52) Eval Control Board
在庫確認と購入

デバイス・ドライバ

コンポーネントのデジタル・インターフェースとを介して通信するために使用されるCコードやFPGAコードなどのソフトウェアです。

AD7091R GitHub no-OS Driver Source Code

IIO Single Channel Serial ADC Linux Driver

機能と利点

  • 40GHzパワー・メーター
  • 45dBのダイナミック・レンジ
  • 低消費電力

回路機能とその特長

図1に示す回路は範囲が45dBの高精度40GHzマイクロ波パワー・メーターで、必要なコンポーネントは2つだけです。RF検出器は、アナログ直線化回路が後に続くショットキー・ダイオードを使用する革新的な検出セルを備えています。低消費電力の12ビット1MSPS A/Dコンバータ(ADC)は、シリアル・ペリフェラル・インターフェース(SPI)ポートにデジタル出力を送ります。

測定実行前に、測定対象となる特定のRF周波数で簡単な校正ルーチンが実行されます。その後、測定モードでシステムを動作させることができます。測定モードでは、CN-0366評価用ソフトウェアが、検出器の入力に加えられる校正済みのRF入力電力をdBm単位で表示します。

この回路の総消費電力は5V単電源使用時で9mW未満です。

図1. マイクロ波パワー・メーターの簡略回路図
(全接続の一部およびデカップリングは省略されています)

 

回路説明

図1に示す回路は、ADL6010 RFおよびマイクロ波パワー検出器を使用して、AC波形を、入力波形の振幅に合わせてスケーリングした出力電圧に変換します。出力電圧は電圧に対して線形で、勾配の単位はV/Vrmsです。ADL6010は、最大帯域幅40MHzのRF信号のエンベロープを取り出すことができます。ただし、ほとんどのパワー・メーター・アプリケーションの出力電圧は、入力波形の振幅を表わす安定したDC値です。

AD7091R 12ビット1MSPS ADCは、検出器出力のサンプリングを行います。そのデータはデータ・キャプチャ・ボードによって処理され、さらに処理と解析を行うためにPCへ送られます。ADCには内部2.5Vリファレンス電圧があり、これはフルスケール電圧を設定するために使用できます。より大きいフルスケール電圧が必要な場合は、内部リファレンスをオーバーライドすることができます。

出力電圧は入力波形の周波数によって変化するので、システムには校正が必要です。変調信号を測定する時は補正係数も必要です。計算には、シンプルなグラフィカル・ユーザ・インターフェースを備えたPCベースのソフトウェアを使用することができます(CN-0366評価用ソフトウェア)。


パワー検出器

ADL6010は、500MHz~43.5GHzで動作する45dBのエンベロープ検出器です。電圧に対して線形な勾配は約5.9V/Vrmsで、50Ωシステムにおける絶対検出器入力範囲は-30dBm~+15dBmまたは-43dBV~+2dBVです。検出セルは、8個のショットキー・ダイオードを使用した独自のダイオード・アレイを使用しており、このアレイは、rms入力電圧振幅を基準とした場合に全体的スケーリング・ファクタ(または伝達ゲイン)公称値が×5.9の線形電圧計を形成する、新型のリニアライザ回路に接続されています。出力平均化コンデンサを備えたADL6010は、エンベロープが変化する信号を検出できますが、同じ入力電力に対する出力電圧の変化を補正するために、補正係数を使用する必要があります。出力電圧とrms入力電圧の関係は次式で表されます。

CN0366_Image1

ここで、

VOUTはVOUTピンの電圧、
Slopeは10GHzで約5.9V/Vrms、
VRFINはrms入力電圧、
Interceptはデータ延長時にデータとy軸が交差する位置の値です。

ADL6010の機能ブロック図を図2に示します。

図2. ADL6010 RF/マイクロ波検出器の機能ブロック図

 

周波数に伴う伝達関数の変化を図3に示します。1GHzと40GHzの出力には、約300mVの電圧差があります。全周波数範囲にわたる温度変動は±0.5dB未満です。図4と図5は、それぞれ10GHzと40GHzにおける温度別の特性変化を示しています。

図3. 500MHz~43.5GHzにおける周波数別の伝達関数

 

図4. 10GHzにおける温度別の伝達関数と誤差

 

図5. 40GHzにおける温度別の伝達関数と誤差

 


A/Dコンバータ

AD7091Rは12ビット1MSPSのADCで、入力電圧範囲は0V~VREFです。リファレンス電圧は、内部2.5Vリファレンスか、内部リファレンスをオーバーライドする外部リファレンスによって供給されます。外部リファレンスは5Vとすることができます。2.5Vフルスケール電圧(VREF = 2.5 V)の場合のLSBの大きさは次のようになります。

CN0366_Image2

ADL6010の出力電圧は約25mV~4Vなので、内部2.5Vリファレンスを使用する時は、減衰約1.6の200Ω/340Ω抵抗分圧器により信号振幅を下げて、常にAD7091Rの範囲内となるようにします。


データ解析

ADCによってサンプリングされるデータを取り込むには、EVAL-SDP-CB1Zシステム・デモンストレーション・プラットフォーム(SDP)ボードを、AD7091R評価ボード制御ソフトウェアをベースにしたソフトウェアと組み合わせて使用します。このソフトウェアには、パワー・メーターの読み出しおよび校正用のオプションがあります。パワー・メーターの表示は、ADL6010の入力に加わる電力を示します。ADL6010とAD7091Rで正確な電力測定を行うには、レベルの異なる2つの既知の入力電力をADL6010の入力に加えて、それぞれに対応する出力のADCコードを読み取ります。これら4つの値はグラフ上で2つのポイントを表します。これらの値は、後で校正手順に使用するために保存しておく必要があります。これら2つのポイントを以下に示します。

  • ポイント1:(VLOW, CODELOW
  • ポイント2:(VHIGH, CODEHIGH

これら2つのポイントから勾配と切片が得られ、特定の動作周波数でシステムを校正するために使用することができます。

ソフトウェアのパワー・レベル表示画面を図6に示します。

図6. CN-0366評価用ソフトウェアの表示画面

 


システムの伝達関数

検出器入力からADC出力までのシステムの勾配と切片は、次式で表されます。

CN0366_Image3

ここで、

SlopeSYSはシステムの勾配、
CODEHIGHCODELOWは、それぞれADCのハイレベル・コード出力とローレベル・コード出力、
VHIGHVLOWは、それぞれハイレベルRF電圧とローレベルRF電圧、
INTSYSはシステムの切片です。

システム全体の伝達関数は次式で表されます。

CN0366_Image4

ここで、VINは入力RF信号のrms電圧です。

これをVINについて解きます。

CN0366_Image5

したがって、dBmで表した電力PINは次のようになります。

CN0366_Image6

入力インピーダンスが50Ωの場合、この式は次のように整理できます。

CN0366_Image7


ユーザ校正アルゴリズム

CN-0366評価用ソフトウェアは、特定の動作周波数でワンタイム校正を行います。校正は、図6に示すウィンドウのCalibrationタブを使用して行います。校正ルーチンは以下の通りです。

  1. RF電力をハイレベル(VHIGH)に設定します。
  2. ADCからのコード(CODEHIGH)を測定します。
  3. RF電力をローレベル(VLOW)に設定します。
  4. ADCからのコード(CODELOW)を測定します。
  5. システムの勾配を計算します(単位はコード数/V)。
  6. システムの切片を計算します(単位はコード数)。
  7. 勾配と切片を校正係数として保存します。
  8. 任意の入力RF電力でADCコードを測定します。
  9. コード、勾配、切片を使用して入力電力を計算します。


ADCを含む全シグナル・チェーンの測定結果

測定は、CN-0366評価用ソフトウェアを使用して複数の周波数で行いました。各周波数では、測定実施前に校正を行っています。その結果を図7、図8、および図9に示します。図7では、誤差の校正電力レベルへの依存性に注意してください。適切な校正レベルを選ぶには、ある程度の試行錯誤が必要です。

図7から図9は、測定入力電力とADL6010の入力に実際に加えられた電力、および両者の誤差を示しています。 データは0℃、25℃、70℃の各温度で測定され、1GHz、10GHz、20GHz、および30GHzの各周波数に対する結果が図10、図11、図12、図13に示されています。 いくつかの測定値は、平均化機能を持たない初期バージョンのソフトウェアを使用して得られたものなので、低入力電力レベル側に大きなリップルが見られます。

図7. 1GHzでさまざまな3点校正を行った場合の
印加電力と測定電力/誤差の関係

 

図8. さまざまな周波数における印加電力と測定電力の関係

 

図9. さまざまな周波数における印加電力と
測定電力誤差の関係

 

図10. 1GHzにおける温度別の印加電力と
測定電力/誤差の関係

 

図11. 10GHzにおける温度別の印加電力と
測定電力/誤差の関係

 

図12. 20GHzにおける温度別の印加電力と
測定電力/誤差の関係

 

図13. 30GHzにおける温度別の印加電力と
測定電力/誤差の関係

 


式の概要

以下に、CN-0366の式の概要と、パワー・メーター回路の機能を理解する手掛かりとなる追加的な式を示します。

ADL6010の伝達関数は次式で表されます。

CN0366_Image8

ここで、

VOUTは検出器のDC出力電圧、
SlopeDETはV/Vrmsで示した検出器のゲイン/勾配、
VINは入力RF信号のrms電圧、
INTDETはV単位で表した検出器の切片です。

これをVINについて解きます。

CN0366_Image9

ADCの伝達関数は次式で与えられます(ADL6010でドライブした場合)。

CODE = VOUT/LSB
LSB = VREF/4096

ここで、

CODE はADCの出力コードで0~4096の無次元数、
VREFはADCのフルスケール・リファレンス電圧で、単位はV、
LSBはADCにより識別可能な最小量子化電圧で、単位はV/ステップまたはV/ビットです。

これをVOUTについて解きます。

VOUT = CODE × LSB

これを前出のVINの式に代入すると次式が得られます。

CN0366_Image10

すべての式を参照して入力電力の式に戻ると、次式が得られます。

CN0366_Image11

ここで、RはADL6010のRFINピンのインピーダンスです。

電力の式にVINを代入すると次式が得られます。

CN0366_Image12

この式を整理すると次式が得られます。

CN0366_Image13

この式はADL6010検出器出力の勾配と切片に関する式で、システム内の相互関係を明らかにするという概念的な目的に有効です。ただし、実際的な目的のためには、システム全体の勾配と切片という観点に基づくシステムの伝達関数が必要です。この場合、勾配の単位はコード数/Vで、切片の単位はコード数です。最終的な伝達関数は次のように導くことができます。

システムの勾配(slopeSYS)とシステムの切片(INTSYS)に基づくシステムの伝達関数の導出は、式2から始まります。この式は、検出器の勾配(slopeDET)と切片(INTDET)に基づいて入力電力を導きます。この導出は、以下に示すように、VINの式(式2)の分子と分母の両方に1/LSBを乗じることによって行われます。

CN0366_Image14

VINに関するこの式を式2に代入すると、式1が得られます。

INTDETの単位はV、SlopeDETの単位はV/Vrms、LSBの単位はV/コード数です。1/LSBを乗じるとINTDETが等価ADCコードに、検出器勾配がコード数/Vrms単位のシステム勾配に変換され、次の関係が得られます。

INTSYS = INTDET/LSB
Slopesys = SlopeDET/LSB

CN-0366回路用の回路図、レイアウト図、ガーバーファイル、部品表を含むすべての設計ファイルのセットは、CN-0366 Design Support Packageに含まれています。

バリエーション回路

パワー・モニタリングおよびVGAアプリケーションにおける一般的な手法では、図14に示すように、一定の電力をカプラーによって伝送ラインから取り出し、その信号をRF/マイクロ波検出器へ送ります。

 

図14. カプラーを使用した一般的なパワー・メーター・アプリケーション

 

このセットアップを校正する時も、前に説明した校正ルーチンは変りません。カプラーと伝送ラインの損失は校正されて、勾配および切片の式に組み込まれます。システムの勾配と切片の計算時には、カプラーの入力に加えられる電圧レベルを使用してください。検出器への入力電圧とADC出力コードを使用した場合のシステムの勾配と切片は、以下の通りです。

CN0366_Image15

ここで、

VHIGHVLOWは、それぞれ入力検出器に加えるハイレベル電圧とローレベル電圧です(図14ではともにVINとして表示)。CODEHIGHCODELOWは、ADCのハイレベル出力とローレベル出力です。

カプラー入力に既知の電圧(図14ではVCOUPLERとして表示)を加えた場合、カプラー入力と検出器入力間の一般的な関係は次式で表されます。

VIN = VCOUPLER × Voltage Loss

ここで、Voltage Lossは分数形式で表される一定の減衰係数です。

たとえば、カプラー入力から検出器入力までの間の20dBの電圧損失は、1/10の電圧損失係数に相当します。

検出器入力の代わりにカプラー入力の電圧レベルを使用する場合、カプラーと伝送ラインの損失を含む新しいシステム勾配の式は次のようになります。

CN0366_Image16

ここで、VHIGHVLOWは、それぞれカプラー入力におけるハイレベル側とローレベル側の校正電圧です。

同じ式を、検出器入力電圧とカプラーおよび伝送ラインの損失について表すと、次のようになります。

CN0366_Image17

損失10dBのカプラーを使用するシステムの1GHzと5GHzにおける伝達関数を図15に示します。

 

図15. 10dBのカプラーを使用したシステムの1GHzと5GHzにおける
印加電力と測定電力/誤差の関係

 

回路の評価とテスト

必要な装置


CN-0366に示す評価を行うには、以下の装置類が必要です。

  1. ADL6010-EVALZ評価ボード
  2. EVAL-AD7091RSDZ評価ボード
  3. EVAL-SDP-CB1Z SDPボード
  4. Agilent E8257Dシグナル・ジェネレータ
  5. Agilent 34410Aデジタル・マルチメータ
  6. USBケーブル(EVAL-SDP-CB1Zに付属)でSDPボードに接続したWindows® 7搭載PC
  7. ADL6010-EVALZボード用5V電源
  8. EVAL-AD7091RSDZ評価ボード用の9V ACアダプタ(EVAL-AD7091RSDZ に付属)EVAL-SDP-CB1Zの電源はEVAL-AD7091RSDZのレギュレータから供給されます。
  9. CN-0366評価用ソフトウェア


評価開始にあたって


図1に示す回路を実装するには、ADL6010-EVALZ評価ボードとEVAL-AD7091RSDZ評価ボードに、以下の変更とリンク設定を行ってください。

ADL6010-EVALZのR1を200Ω抵抗(0402サイズ)に置き換えます。

EVAL-AD7091RSDZのR1を0Ω抵抗(0603サイズ)に、C13を340Ω抵抗(0603サイズ)に置き換えます。また、EVAL-AD7091RSDZのリンク設定において、Position CにLK1を、Position CにLK2を設定し、LK3とLK4をオープンのままにします。

 

図16. RFおよびマイクロ波パワー・メーターのテスト用機能ブロック図

 


機能ブロック図


受信チェーンのテストに使用したテスト・セットアップの機能ブロック図を図16に示します。


セットアップとテスト


マイクロ波パワー・メーターのセットアップとテストは、以下のステップに従って行います。

  1. すべてのテスト装置のスイッチをオンにして、使用可能な状態になるまで待ちます。
  2. ADL6010-EVALZ評価ボードの入力を、Agilentのシグナル・ジェネレータに接続します(バレル・コネクタでシグナル・ジェネレータと評価ボードを直接接続することを推奨)。
  3. ADL6010-EVALZ評価ボードの出力を、EVAL-AD7091RSDZ評価ボードの入力に接続します。
  4. EVAL-SDP-CB1Z SDPボードを、EVAL-AD7091RSDZ評価ボードに接続します。
  5. SDPボード付属のUSBケーブルを使って、SDPボードをPCに接続します。
  6. SDP制御ボードに接続されたPCに、CN-0366評価用ソフトウェアをダウンロードしてインストールします。
  7. ソフトウェアのインストールが正常に終了したら、実行可能ファイルを実行します。
  8. シグナル・ジェネレータのスイッチを入れて、ADL6010の動作限界内の電力と周波数に設定します。
  9. 正確な電力指示値を得るために、ソフトウェアの校正ルーチンを実行します。
  10. 以上で、ソフトウェアのGUIが、ADL6010の入力に加わる正確な電力を計算して表示します。