概要
設計リソース
設計/統合ファイル
- Schematic
- Bill of Materials
- Gerber Files
- Allegro Files
- Assembly Drawing
評価用ボード
型番に"Z"が付いているものは、RoHS対応製品です。 本回路の評価には以下の評価用ボードが必要です。
- EVAL-CN0289-EB1Z ($85.60) Flexible, 4 mA-to-20 mA, Loop-Powered Pressure Sensor Transmitter with Voltage or Current Drive
機能と利点
- ループ駆動 4-20mA トランスミッタ
- 電圧または電流駆動
- 圧力センサー向けに最適化
参考資料
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MT-101: Decoupling Techniques2015/02/14PDF954 kB
-
MT-066: In-Amp Bridge Circuit Error Budget Analysis2015/02/14PDF35 kB
-
MT-035: Op Amp Inputs, Outputs, Single-Supply, and Rail-to-Rail Issues2015/02/14PDF115 kB
-
MT-087: Voltage References2009/04/09PDF229 kB
-
MT-031: データ・コンバータのグラウンディングと、「AGND」および「DGND」に関する疑問の解消2009/03/20PDF144 kB
-
MT-065: In-Amp Noise2009/02/03PDF38 kB
-
CN-0289: 電圧または電流駆動の柔軟性のある、4 mA~20 mA、ループ駆動圧力センサー・トランスミッタ2013/05/09PDF273 kB
回路機能とその特長
図1に示す回路は堅牢で柔軟性のあるループ駆動電流トランスミッタで、圧力センサーの差動電圧出力を4 mA~20 mAの電流出力に変換します。
ブリッジをベースにした多種の電圧または電流駆動の圧力センサー向けに設計が最適化されており、わずか4個のアクティブ・デバイスを使用し、全未調整誤差は1%未満です。12 V~36 Vの範囲のループ電源電圧を使用できます。
回路の入力はESDおよび電源レールを超える電圧に対して保護されており、工業用アプリケーションに最適です。
回路説明
このソリューションは圧力センサー測定用の4 mA~20 mAトランスミッタです。回路全体の電源がループから供給されます。回路にはセンサー励起ドライブ、センサー出力アンプおよび電圧/電流コンバータの3つの重要なステージがあります。
表1に示されているように、回路に必要な合計電流は1.82 mA (最大)です。したがって、利用可能な4 mAの最大ループ電流を超えることなく、最大2 mAのブリッジ駆動電流を必要とする圧力センサーを使用することができます。
部品 | 電流(mA) |
ADR02 | 0.80 |
ADA4091-2 | 0.50 |
AD8226 | 0.43 |
R5, R6 @ 10V | 0.05 |
R12 @ 5V |
0.04 |
合計 | 1.82 |
センサー励起ドライブ
選択された圧力センサーに従って、電圧ドライブまたは電流ドライブのどちらかが必要です。回路にはADA4091-2 (U2A)のアンプの1つが使用され、S1を切り替えて設定を選択し、どちらかのオプションをサポートします。S1によりどちらかのドライブが選択されます。
励起:電圧ドライブの設定
電圧ドライブの設定を図2に示します。S1はPCB上のVOLTAGE DRIVEとラベル表示された位置にしてあります。(CN0289設計サポートパッケージの回路レイアウトと回路図を参照してください。http://www.analog.com/CN0289-DesignSupport).
電圧駆動回路は、通常10 Vのブリッジ駆動電圧に設定されています。このモードでは、最小許容ブリッジ抵抗値は次のようになります。
ブリッジの抵抗値が5 kΩ未満の場合、R6を取り去ったバッファ設定を使って、駆動電圧を5 Vまで下げることができます。
次式を使って適当なR6を選択することにより、他の駆動電圧を得ることができます。
ここで
U2Aに十分なヘッドルームを与えるため、ループ電圧VLOOPをブリッジ駆動電圧より少なくとも0.2 V大きくするように注意します。
励起:電流ドライブの設定
PCB上でCURRENT DRIVEとラベル表示された位置にS1を動かして、図3に示されている電流ドライブの設定に回路を切り替えることができます。
電流駆動モードでは、2 mAの最大許容ブリッジ駆動電流の制限を守る必要があります。回路は、R4 = 2.49 kΩ、およびIDRIVE = 2 mAに設定されています。次式を使ってR4の値を選択することにより、IDRIVEの値を下げることができます。
それに伴う駆動電圧VDRIVEは次式を使って計算します。
U2A電源には0.2 Vのヘッドルームが必要です。したがって次のようになります。
図3に示されている値の場合、RBRIDGE = 3 kΩ、IDRIVE = 2 mA、VDRIVE = 11 V、 VLOOP ≥ 11.2 Vとなります。
回路にはADA4091-2オペアンプが選択されています。この理由は、消費電流が低く(250 μA/アンプ)、オフセット電圧が小さく(250 μV)、入力と出力がレールtoレールだからです。
ブリッジ出力の計装アンプと利得およびオフセット抵抗の選択
ブリッジの出力は、帯域幅が39.6 kHzの同相フィルタ(4.02 kΩ、1 nF)と、帯域幅が2 kHzの差動モード・フィルタ(8.04 kΩ, 10 nF)によってフィルタされます。
AD8226は利得誤差が小さく(0.1%、Bグレード)、オフセットが小さく(58 μV @ G = 50、Bグレード;112 μV @ G = 50、Aグレード)、非直線性が優れており(75 ppm = 0.0075%)、レールtoレール出力なので、最適な計装アンプです。
AD8226計装アンプは、利得設定抵抗R3 = 1.008 kΩを使って、100 mV FSの信号を50 倍の利得で5 Vに増幅します。利得GとR3の関係は次式で与えられます。
ここで、G = 50、R3 = 1008 Ω
出力ゼロ値のループ電流ILO = 4 mAの場合:
R10とR8の比が100:1なので、
上の2つの式を組み合わせると、
ILO = 4 mAのときAD8226の出力は0 Vなので、次式からオフセット抵抗R12を計算することができます。
VOUT = 5.00Vの場合、出力ループ電流はILH = 20 mAなので、以下のようになります。
R12を流れる電流は次式で与えられます。
R9を流れる電流は次式で与えられます。
したがって、R9の値は次式で計算することができます。
実際は、R3、R9、R12の計算値は入手可能な標準値ではないので、回路で使用される実際の値によって固定誤差が生じます。これらの誤差は以下のように計算することができます。抵抗R3、R9、R12によって生じる、%FSRとして測定された(ただし、FSR = 16 mA)利得誤差、オフセット誤差、および全誤差:
実際は、R3、R9、R12の計算値は入手可能な標準値ではないので、回路で使用される実際の値によって固定誤差が生じます。これらの誤差は以下のように計算することができます。
抵抗R3、R9、R12によって生じる、%FSRとして測定された(ただし、FSR = 16 mA)利得誤差、オフセット誤差、および全誤差:
フルスケール誤差= 利得誤差+ オフセット誤差
実際の回路では、最も近いEIA規格の0.1%抵抗器の値を選択する必要があるので、これまでの式で示したような固定利得誤差と固定オフセット誤差が生じます。2つの0.1%値を組み合せて計算値に近づけることは可能です。たとえば、0.1%抵抗を以下のように直列に組み合わせると計算値に非常に近くなります。
- R3 = 1 kΩ + 8.06 Ω = 1008.06 Ω (計算値= 1008 Ω)
- R9 = 30.9 kΩ + 655 Ω = 31.555k Ω (計算値= 31.56 kΩ)
- R12 = 124 kΩ + 2.26 kΩ = 126.26 Ω (計算値= 126.25 Ω).
これらの組み合わせを使って計算した誤差は以下のようになります。
- オフセット誤差= –0.008% FSR
- 利得誤差 = +0.010% FSR
- フルスケール誤差= +0.002% FSR
ただし、場合によっては、0.1%抵抗の標準的な値であっても抵抗器メーカーから入手できないことがあり、替わりのものが必要になることがあります。
たとえば、EVAL-CN0289-EB1Z ボードで供給される抵抗は以下のとおりです。
- R3 = 1000 Ω (計算値 = 1008 Ω)
- R9 = 31.6 kΩ (計算値 = 31.56 kΩ)
- R12 = 124 kΩ (計算値 = 126.25 kΩ)
ボードで与えられている値を使うと、抵抗値による誤差は以下のようになります。
- オフセット誤差 = +0.45% FSR
- 利得誤差 = +0.66% FSR
- フルスケール誤差 = +1.11% FSR
電圧リファレンス
5 Vリファレンスが使われています。その初期精度は0.1% (Aグレード)、0.06% (Bグレード)、電圧ノイズは10 μV p-pです。さらに、36Vまでの電源電圧で動作し、消費電流は最大1 mAなので、ループ駆動アプリケーションに最適です。
電圧/電流変換
4 mA~20 mAの出力は、信号成分(I9)とオフセット成分(I12)を合わせた電流をR10に発生させます。電流I10 = I9 + I12がR10の両端に発生させる電圧が、U2BとQ1を介してセンス抵抗R8に印加されます。R8を流れる電流はR10の電流の100倍です。したがって、ループ電流ILOOPは次にようになります。
R8 (10 Ω)とR10 (1 kΩ)の値は、許容誤差が0.1%のものを簡単に入手できるように選ばれています。
回路が正しく動作するには、回路電流ICIRCUITは最小ループ電流4 mAを常に下回る必要があります。さらに、PCBのグランドはどんな方法であれループのグランドに接続してはならず、PCBのグランドとセンサーはループのグランドに対して独立していなければなりません。
U2Bの出力によって制御されてループ電流を発生するバイポーラNPNトランジスタは、直線性誤差を最小に抑えるため、利得が少なくとも300あるものにします。また、ブレークダウン電圧が少なくとも50 Vあるものにします。
出力トランジスタQ1は、1.1 W @ 25°Cを消費できる50 V NPNパワー・トランジスタです。回路内のワーストケースの消費電力は、36 VのVCC電源で0 Ωのループ負荷抵抗に20 mAの出力電流が流れる場合です。これらの条件では、Q1の消費電力は0.68 Wです。
回路ボードを駆動する電源電圧VLOOPは、ループ電源VLOOP_SUPPLY、ループ負荷R7、およびループ電流ILOOPに依存します。これらの値相互の関係は次式で表されます。
回路が正しく動作するには、ADR02電圧リファレンスに十分なヘッドルームを与えるために電源電圧VLOOPを7 Vより大きくする必要があります。
したがって、
最大ループ電流が20 mA、R7 = 250 Ωの場合、
最小ループ電源電圧は、ブリッジ駆動回路の設定にも依存します。電圧駆動モードでVDRIVE = 10 Vのとき、U2Aに十分なヘッドルームを保つため、電源電圧VLOOPを10.2 Vより大きくする必要があります(図2参照)。
電流駆動モードでは、U2Aに十分なヘッドルームを保つため、電源電圧VLOOPを11.2 Vより大きくする必要があります(図3参照)。
ループ電源電圧は最大36 Vに制限されています。
アクテイブ部品の誤差解析
AD8226とADR02のAグレードとBグレードの場合の、システム内のアクティブ部品による最大誤差およびrss誤差を表2と表3に示します。ADA4091-2オペアンプは1つのグレード・レベルでだけ供給されることに注意してください。
誤差成分 |
誤差 |
後妻の値 |
誤差 %FSR |
AD8226-A ADR02-A ADA4091-2 AD8226-A |
Offset Offset Offset Gain |
112µV 0.10% 250µV 0.15% |
0.11% 0.02% 0.16% 0.15% |
RSS Offset RSS Gain RSS FS Error |
0.20% 0.15% 0.35% |
||
Max Offset Max Gain Max FS Error |
0.29% 0.15% 0.44% |
誤差成分 |
誤差 |
誤差の値 |
誤差 %FSR |
AD8226-B ADR02-B Offset ADA4091-2 Offset AD8226-B Gain |
Offset Offset Offset Gain |
58µV 0.06% 250µV 0.10% |
0.06% 0.01% 0.16% 0.10% |
RSS Gain RSS Offset RSS FS Error |
0.10% 0.17% 0.27% |
||
Max Offset Max Gain Max FS Error |
0.23% 0.10% 0.33% |
回路全体の精度
抵抗の許容誤差に起因する全誤差の妥当な近似値を得るには、クリティカルな各抵抗が全誤差に等しく影響を与えると仮定します。クリティカルな5つの抵抗は、R3、R8、R9、R10、R12です。0.1%抵抗で構成したときのワーストケースの許容誤差により、最大0.5%の全抵抗誤差が生じます。rss誤差を仮定すると、全rss誤差は0.1√5 = 0.224%となります。
抵抗のワーストケースの許容誤差0.5%を、前に求めたアクティブ部品(Aグレード)によるワーストケースの誤差に加算すると以下のようになります。
- オフセット誤差= 0.29% +0.5% = 0.79%
- 利得誤差 = 0.15% + 0.5% = 0.65%
- フルスケール誤差= 0.44% + 0.5% = 0.94%
これらの誤差は、理想的抵抗が選択され、誤差はそれらの許容誤差だけによると仮定しています。
回路の全誤差は1%以下ですが、さらに誤差を減らす必要があれば、オフセットや利得の調整機能を回路に追加します。オフセットは、ゼロ入力で4 mAの場合、R12を調整することによって較正することができます。次に、フルスケールは、フルスケール100 mVの入力に対してR9を変化させて調整することができます。オフセットの方を最初に較正すれば、2つの調整は独立におこなうことができます。
回路の実際の誤差データを図4に示します。全出力誤差(%FSR)は、理想的な出力電流と測定された出力電流の差をFSR (16 mA)で割り、それに100を掛けて計算されています。
0 mVと1 mVの間の入力の誤差はAD8226の出力段の飽和電圧によるもので、回路の負荷条件のにより20 mV~100 mVの範囲で変化しうることに注意してください。すべてのレールtoレール出力段は、飽和電圧(バイポーラ出力)またはオン抵抗(CMOS出力)のどちらかにより、電源レールに近づく能力が制限されます。
出力飽和電圧によって生じる誤差が問題であれば、適当な抵抗を+5 Vリファレンスからブリッジの出力の片側に接続することにより、ブリッジからの入力信号にオフセットを与えることができます。
バリエーション回路
この回路は示されている部品の値を使って、安定して正確に動作することが実証されています。他の電圧リファレンス、高精度オペアンプおよび計装アンプをこの設定で使用して、4 mA~20 mAのアナログ電流出力や、この回路の他の種々のアプリケーションを開発することができます。
ADA4091-4はクワッド・バージョンです。追加の高精度オペアンプが必要であれば、デュアル・チャンネルのADA4091-2の代替品として使うことができます。
低コストで電源電圧範囲の広いデュアル・チャンネルの計装アンプAD8426も、入力チャンネルが複数あるアプリケーションに使うことができます。
高精度、低電力、低ノイズ電圧のリファレンスADR4550は、低電圧電源アプリケーションでADR02と置き換えて使うことができます。
回路の評価とテスト
必要な装置
- EVAL-CN0289-EB1Z 評価用ボード
- Agilent E36311A デュアルDC電源または相当品
- Agilent 3458Aマルチメータまたは相当品
電流出力の測定
評価ボードの電流出力は図5に示す設定を使って測定されました。テスト条件は以下のとおりです。
- ループ電源:24 V
- ループ負荷:250 Ω
- RBRIDGE = 3 kΩ
- VDRIVE = 5 V
- VCM = 2.5 V
ブリッジ抵抗は計装アンプの両方の入力端子に接続され、センサー出力をシミュレーションします。
テスト・セットアップの設定とテスト
回路は図5のテスト・セットアップを使ってテストされました。
Agilent E36311Aデュアル電源を使って2.5 Vの同相電圧と0 mV~100 mVの差動入力電圧を発生させました。
Agilent 3458Aを使って評価ボードの実際のループ電流出力を測定しました。