概要

機能と利点

  • 温度モニタリング・ソリューション
  • 4mA~20mA コントローラ付きインターフェース
  • 統合プロセッサ付き24 ビット高精度コンバータ

回路機能とその特長

この回路は、4mA~20mAのホスト・コントローラとインターフェース可能なシンプルで高度に集積された温度モニタのソリューションを提供します。この回路は、デュアル24ビットΣ-Δ ADC、ARM7プロセッサ・コア、および4mA~20mAの帰還回路を制御するDAC/PWM機能を含む、回路機能の大部分をADuC7060/ADuC7061高精度アナログ・マイクロコントローラに組み込んでいるので、温度モニタリングに対して非常に低コストのソリューションを提供します。

ADuC7060/ADuC7061内部のADCやその他のアナログ回路の性能は、アナログ回路を内蔵した他社のマイクロコントローラよりも優れています。この回路ノートに示す回路は、ディスクリートのADCと独立したマイクロコントローラを使った場合に比べ、コスト効率、消費電力、基板面積において最も優れたソリューションになります。ADuC7060/ADuC7061は高度に集積化された低消費電力デバイスであるため、4mA~20mAのアプリケーションのループ電源で直接動作させることができます。ARM7のコアが640kHzで動作している場合、主ADCが作動して外部のRTD温度センサーを測定し、PWM回路が4mA~20mAの帰還回路を制御することで、回路全体の消費電流は、標準で3.15mAです。消費電力の詳細については「回路説明」のセクションで説明します。 

図1. 4mA~20mAのループをベースにした温度モニタ回路を制御するADuC7061(簡略回路図:全ての接続およびデカップングは示されていません。)

 

温度の測定と測定の間、さらに節電するためにADCとRTDの励起電流源をオフすることができます。

100ΩのPt(白金)RTDはEnercorpの#PCS11503.1です。回路全体では±1℃の仕様より良好です。このRTDの温度範囲は−50℃~+130℃です。RTDは1206サイズのパッケージで温度係数が0.385Ω/℃のものが採用されています。

ADuC7060/ADuC7061内部の主ADCには18ビットを超えるピークtoピーク・ノイズフリー・コード分解能があります。PWMベースのDAC出力の実効分解能は12ビットです。回路全体の性能は「回路説明」のセクションで説明します。

ADuC7061の外形寸法が小さい(5mm × 5mm 32-LFCSPパッケージ)ことで回路全体をきわめて小さいPCBに収容でき、さらにコストを抑えられます。

ここでは主に4mA~20mAのインターフェースの回路を中心に説明します。RTDセンサーとADCのインターフェースおよびRTD測定のリニアライゼーション技術の詳細については、アプリケーションノートAN-0970および回路ノートCN-0075を参照してください。 

回路説明

この回路は、ADP1720リニア・レギュレータ(可変バージョン)を介して給電されます。このレギュレータは、ADuC7060/ADuC706161、OP193オペアンプ、およびオプションのADR280リファレンス用のループの正電源を2.5Vに安定化します。

4mA~20mAの帰還回路は、主にADuC7060に内蔵された16ビットPWM(パルス幅変調器)によって制御されます。このPWMのデューティ・サイクルはソフトウェアで設定され、47.5ΩのRLOOP抵抗両端の電圧を制御し、次いでループ電流を設定します。RLOOPの上側をADuC7060のグラウンドに接続するように注意してください。RLOOPの下側はループのグラウンドに接続します。これにより、ADuC7060/ADuC7061、ADP1720、ADR280およびOP193による電流に、フィルタを通したPWM出力によって設定される電流を加えた電流がRLOOPに流れます。

VREFは1.2V高精度リファレンスADR280から供給されます。代わりに、ADuC7060/ADuC7061の内蔵DACを1.2Vリファレンスを供給するように設定することもできますが、内部DACをイネーブルすることによって余分な電力を消費します。 

R1とR2の接続点の電圧は次のように表されます。 

cn0145_equation1

VIN = 0のときフルスケール電流が流れ、その時点でVRLOOP = VREFとなります。したがって、フルスケール電流はVREF/RLOOP、つまり約24mAです。VIN = VREF/2の場合、電流は流れません。

OP193アンプのVINはインピーダンスが高いので、フィルタを通したPWM出力に負荷をかけません。このアンプの出力は約0.7Vしか変化しません。

両端、0mA~4mAと20mA~24mAの範囲の性能は重要ではないので、オペアンプは電源レール付近での優れた性能は必要とされません。

R1とR2の絶対値は重要ではありません。ただし、R1とR2が整合していることは重要です。

ADuC7060/ADuC7061のADC0の入力チャンネルを使って、VR12と表示されたポイントの電圧を測定できる点にも注目してください。このADCの測定値は、4mA~20mAの電流設定値を調整するためのPWM制御ソフトウェア用のフィードバックとして使用することができます。

ADuC7060/ADuC7061の主ADCはRTDの電圧を測定します。このRTDは内蔵の励起電流源IEXC0によって励起されます。節電のため励起電流は200µAに設定し、測定と測定の間はオフすることを推奨します。主ADCのフロントエンドの内部PGAは、16または32のゲインに設定します。RTD測定用のリファレンス・ソースは、内部リファレンスと5.62kΩの外部リファレンス抵抗のどちらにすることもできます。外付け抵抗を選択すると、さらに節電になります。RTDとADCのインターフェースおよびADC出力のリニアライゼーション技術の詳細については、アプリケーションノートAN-0970AN-0970および回路ノートCN-0075を参照してください。 

回路の電源に必要な条件は、モジュールの電源が4mA~20mAのループ電源から直接供給されるか、またはモジュールが個別に駆動される4線ループからアクティブに供給されるかによって決まります。この回路ノートでは温度モニタ・モジュールがループ駆動されることを想定しているため、モジュールの総消費電流は約3.6mAを超えないようにします。

低消費電力動作を可能にするため、内部POWCON0レジスタを設定することにより、ADuC7060/ADuC7061のコアの動作速度を遅くすることができます。これにより、10.28MHzの最高周波数を2~128までの2の倍数で割ることができます。今回のテストでは、16のクロック分周値を使用し、コア速度は640kHzとしました。主ADCはゲイン32でイネーブルされ、PWMもイネーブルされました。他の全ての周辺デバイスはディスエーブルされました。

使用した回路とテスト・セットアップにおけるIDD消費電流の内訳を表1に、各種周辺デバイスの電流を表2に示します。

表1. 温度モニタ回路の部品の標準IDD値
Component  IDD Value at 25°C IDD Value at 85°C
ADuC7060/ADuC7061
ADC0 On, Gain = 32, FADC = 100 Hz
CPU speed = 640 kHz
(POWCON0 = 0x7C)
PWM On. PWMCON1 = 0x100
External reference selected by ADC0.
All other peripherals off.
Note: Add excitation current value to
this figure. Typical value is 200 µA.
2.45 mA






0.2 mA
2.74 mA






0.2 mA
ADR280, 1.2 V Reference
12 µA 15 µA
ADP1720, 2.5 V Output Linear Regulator
200 µA 300 µA
OP193, Low Power Op Amp
15 µA
 25 µA
Remaining Circuitry 50 µA
50 µA
Total Current Less Excitation Current 2.73 mA
3.13 mA

図2のDNLのグラフは、重要な4mA~20mAの範囲の標準的な性能が0.6LSB以下であることを示しています。これらのテストは、PWM出力に2次フィルタを使って行われています。図1に示すように、2本の47kΩ抵抗と2個の100nFコンデンサが使用されています。

f2

 

PWMベースの出力の性能は、ADCを使って電圧ポイントVR12と回路のその他のポイントを測定することによって改善することができます。この帰還方法を使ってPWM出力を調整し、精度を向上させることができます。

PWM回路だけを使って出力電圧を0V~600mVの範囲に設定しているため、コード数が減少している点に注目してください。コード0より上は24mAより大きい値を表すので重要ではありません。

ADCの測定性能については、AN-970、CN-0075、およびADuC7060/ADuC7061データシートを参照してください。

表2. ADuC7060/ADuC7061の各種周辺要素の標準IDD値
Peripheral of ADuC7060/61 IDD Value, Typical, 25°C 
ARM7 Core @ 10.24 MHz
                          5.12 MHz
                          2.56 MHz
                          1.28 MHz
                          640 kHz
                          320 kHz
                          160 kHz
                          80 kHz
5.22 mA
4.04 mA
2.7 mA
2 mA
1.674 mA
1.5 mA
1.42 mA
1.38 mA
Primary ADC, G = 1
                       G = 4
                       G ≥ 128
30 µA
440 µA
630 µA
Auxiliary ADC
350 µA
DAC  330 µA 
PWM  340 µA 
SPI 40 µA 
UART 200 µA 

バリエーション回路

PWMの代わりに内蔵DACを使って同じ動作をさせることができます。その利点は、応答時間が短くなることと安価なソリューションになることです。この場合、リファレンスADR280は必要ありません。

OP193の代わりにOP90を使用することもできます。