降圧/昇圧/昇降圧が可能な多用途対応のLEDドライバ
はじめに
「LTM8042」はμModule®ファミリのLEDドライバです。電流量が最大1AのLEDに対応でき、3000:1の調光比を実現可能です。3V~30Vの入力電圧、250kHz~2MHzの広い周波数範囲で動作し、スキャナ、車載機器、アビオニクス(航空電子機器)の照明など、様々なアプリケーションに対応できます。
LTM8042を使えば、昇圧、降圧、昇降圧の3つのトポロジを容易に実現することができます。そのため、多様なアプリケーションの要件を満たすことが可能です。入力電圧が低く、LEDストリングの両端の電圧が高いケースでは、昇圧トポロジが必要になるでしょう。一方、入力電圧が高く、LEDストリングの電圧が低い場合には、降圧トポロジを使用することになるはずです。昇降圧トポロジは、入力電圧の範囲が広く、LEDストリングの電圧より低くも高くもなる可能性があるケースで使用されます。本稿では、3種のトポロジに対応するために、LTM8042を使用してどのような回路を構成すればよいのかを示します。
昇圧トポロジの実現方法
LEDドライバの使い方として最も一般的なのは、12Vの入力電圧VINから、それよりも高いLEDストリング用の電圧VFを生成する昇圧アプリケーションでしょう。LTM8042を使用する昇圧ソリューションでは、図1のような回路を構成します。この回路をブロック図として示したものが図2です。ご覧のように、入力電圧はBSTIN/BKLED-端子に印加します。また、LEDストリングのカソードはグラウンドに接続します。トランジスタQがオンのとき、インダクタLによって電流が増加します。Qがオフになると、Lの両端で電圧の極性が反転し、インダクタの電流が出力フィルタ用のコンデンサC2に流れ始めます。LEDによる調光は、PWM(Pulse Width Modulation)回路におけるデューティ・サイクルの調整と、LEDの平均電流の調整(抵抗RCTLによって設定)によって実現できます。コンデンサC1は、入力電圧用のフィルタとして機能します。
降圧トポロジの実現方法
降圧トポロジは、車載用や産業用の24Vの電源レールをはじめ、入力電圧が比較的高い場合に用いられます。図3は、入力電圧VINがLEDストリングの電圧VFより高い場合に使用する回路のブロック図です。入力電圧はBSTOUT/BKIN端子に印加し、LEDのカソードはBSTIN/BKLED-端子に接続します。トランジスタQがオンのとき、電流は入力からLEDストリングとインダクタLを通ってグラウンドに流れます。Qがオフになると、Lの両端の電圧は極性が逆になり、ダイオードDが順方向にバイアスされます。それにより、LEDのカソードが入力電圧のレベルよりも引き下げられ、LEDストリングの電流が所望の値に達します。このトポロジにおいて、C5は出力フィルタとして機能します。
昇降圧トポロジの実現方法
商用電源、バッテリ、太陽電池といった多くのアプリケーションでは、入力電圧は広い範囲で変化します。こうした状況には、図4に示すような昇降圧トポロジによって対応可能です。入力電圧とLEDのカソードは、BSTIN/BKLED-端子に接続します。トランジスタQがオンのとき、電流はインダクタLで増加します。QがオフになるとLの両端の電圧は極性が反転します。電圧が入力レベルより高くなると同時に、ダイオードDは順方向にバイアスされます。PWM回路はLEDとC5に流れる電流を所望の値を維持し、C2は出力フィルタとして機能します。VINは、LEDストリングの電圧VFより高くても低くても構いません。
各トポロジにおける効率の評価結果
上記3種のトポロジについて、同じLEDストリング、出力電流、スイッチング周波数という条件で評価を実施しました。テストには、LTM8042を実装したデモ用ボード「DC1511」を使用しました。バイアスでの消費電力が3つの設定で同じであることを確認するために、VCCには同じ値(図1に示した12V)を供給しました。なお、ほとんどの場合、VCCピンはVINに接続することができます。このようにして効率を測定した結果を図5に示しました。3種のトポロジはすべてLTspice®向けにモデル化されています。LTM8042に関連するシミュレーション用のファイルは、データシートで確認することができます。
まとめ
LTM8042は、広い入力電圧範囲で動作する多用途対応のLEDドライバです。高い効率で、LEDストリングに最大1Aの電流を供給することができます。昇圧、降圧、昇降圧のトポロジ向けに容易に構成できるため、多様なアプリケーションのニーズを満たすことが可能です。