見当違いの節約法

質問:

設計上、コストとPCボードの スペースを節約しようとしています。 アンプの内部ESDダイオードを クランプ・ダイオードとして 使用することはできますか?

RAQ:  Issue 71

回答:

 これは設計上、入力信号が電源電圧を周期的に上回ることがあるので、アンプ内部のESD保護ダイオードを使用して信号をクランプしたいというご相談です。これはいいアイデアのように聞こえますが、実際はその逆です。ご多分にもれず、この設計者の方もお金とPCボード・スペースを節約したかったわけですが、節約すべき場所を間違えています。このようなソリューションでは、ヒューズのようにアンプをしょっちゅう交換しなければならず、結局は時間とコストを浪費するはめになってしまいます。

その未使用ピンをどうにかしなさい! それはなぜでしょうか?当社のアンプの場合、ESD保護ダイオードは、入力端子および出力端子と電源端子の間に接続されます。ESD保護ダイオードは、ESDイベントによって生じたエネルギーを、アンプを避けて電源レールに転送することによってアンプを保護します。ESD保護用ダイオードは、短時間だけ動作するように設計されています。ESDダイオードを連続的に動作させると、ダイオードやボンディング・ワイヤが損傷または破壊されますのでアンプが損傷してしまいます。たとえアンプが破壊されなかったとしても、ESDダイオードが連続的に作動することによって過熱し、アンプ性能を低下させたり余計な電力を消費したり、予期せぬ問題を引き起こすことがあります。

また、内部ESD保護用ダイオードをクランプとして使用することによる2番目の問題は、ダイオードが導通するには、アンプの入力電圧が電源レールを上回っていることです。これは、アンプ入力電圧の絶対最大定格電圧を超えていることになります。これは、RAQ #50「絶対最大定格とは何のことだ?」で取り上げたように、もうひとつの御法度です。必ず絶対最大定格値から余裕のある範囲で作動させるようにしてください。たとえわずかな時間であっても、絶対最大定格の近くで動作させると、ろくなことはありません。

アンプを保護する、より適切な方法は、電流制限用の抵抗を、外付けダイオードのセットを使って、アンプの推奨最大入力電圧よりも低い電源電圧に接続することです。

もうひとつの方法は、市場に出てからまだ日が浅いのですが、過入力電圧保護(OVP)機能を内蔵したアンプを使用することです。アナログ・デバイセズは、ADA4091-2ADA4092-4ADA4096-2など、OVP付きのアンプをいくつか提供しています。これらのオプションを使用することにより、長い目で見れば、アンプとその次段の回路をより安全かつ経済的に保護することができます。


著者

John Ardizzoni

John Ardizzoni

John Ardizzoniは、アナログ・デバイセズの高速リニア・グループの上級アプリケーション・エンジニアです。 マサチューセッツ州ノースアンドーバーのメリマック・カレッジでBSEE(電子工学士)を取得し、2002年にアナログ・デバイセズに入社しました。エレクトロニクス業界で30年以上のキャリアがあります。