電流検出の常識

質問:

電流の測定をしなければならないのですが、どのアンプを使用すればよいのかわかりません。何から始めたらよいでしょうか?

RAQ: Issue 133

回答:

電流の測定は、アクチュエータの制御、テストおよび測定、センサー・コンディショニング、エネルギー計測など、膨大な数のアプリケーションに欠かせません。設計者は、アプリケーションに応じて回路に流れる電流を検出し、調整する最良の方法を知る必要があります1。問題は、複数の選択肢がある場合です。例えば、高精度の電流計測では、ディスクリートのオペアンプを使ってトランスインピーダンス・アンプを構成することも、多くの内蔵アンプの 1 つを使用することも可能です。それでは、特定のアプリケーションで電流を測定するのに最適なアンプはどれでしょう?

電流を対象の回路と直列に測定する必要があるのは明らかです。また、負荷をかけずに測定する必要があります。多くの場合、抵抗のような小さなシャント・デバイスは小さな電圧を生じ、先へ進む前に増幅やレベルシフトを必要とします。シャントの抵抗値は負荷を最小限に抑えるために(場合によっては消費電力を抑えるため)比較的小さくします。いずれにしても、低電圧を扱う課題が生じます。さらに、シャントは接地されないことがあり、その場合電圧を差動で測定し、本来のレベルから常時変化しているレベルまでシフトダウンさせる必要があります。アプリケーションによっては、電流レベルがアトアンペアから数アンペア以上まで何桁も変動する可能性があります。この選択プロセスを簡単にするために、選択肢とその使用例をいくつか見てみましょう。

シャントを電流パスに挿入し(図1 a)、オペアンプを使ってバッファや増幅を行うのがおそらく最も簡単な方法ですが、レベルはシフトさせません。この方法は、ローサイド電流検出に使用できます。負荷電圧は、シャント値を減らしてアンプのゲインを増やすだけで小さくできますが(図1 b)、多くの場合代価としてノイズが増加し、精度が低下します。負荷電圧をできるだけ小さくするより良い方法(とりわけ電流が少ない場合)は、トランスインピーダンス・アンプ回路(TIA)を使うことです。この回路は電流から電圧へのコンバータ(つまり I-V コンバータ)としても知られています。図 1cに、負荷電流を実質的にゼロに減らす2ために、オペアンプをシャントで取り巻くようにTIA を使用する方法を示します。この回路は、電流がオペアンプ出力の電流制限値(mA レンジが多い)を下回っている限り正しく動作します。負荷電圧が低く一定であるため、TIAは多くの場合、フォトダイオードなどのセンサーからの電流出力の測定に使用され、きわめて高精度な検出結果が得られます。測定したい電流が負荷のグラウンド側でない時など、TIA が実用に適していない場合があります。これは、ハイサイド電流検出やリモート・ループで電流を測定するケースです。計装アンプは、このような場合に使用できる、便利で高精度なデバイスです(図1 d)。4 mA ~20 mA のループ・レシーバ、エネルギー測定、センサー・インターフェースなど、多くの高精度の電流測定に広く利用されています。

RAQ: Issuw 133 Figure 1
図1. 電流検出トポロジー

一般的なアンプの電源電圧範囲を上回るコモンモード電圧の振幅にシャントを上乗せする場合がありますが、その場合システムは非常に高価になります(絶縁が必要になる場合もあります)。計装アンプとは異なり、ディファレンス・アンプと電流検出アンプのIC は、大きな転流するコモンモード電圧がある場合に電流を測定します。これらはコスト効率の良い堅牢な選択肢で、モーターやアクチュエータの制御において有効です。

電流検出のために新たな方法を採用する前に、上述の選択肢を検討し、オンラインの設計ツールとして Photodiode Wizard や計装アンプ用のダイヤモンド・プロット・ツールなどを是非ご検討ください。Photodiode Wizard は、センサーやケーブルの容量がわかっていれば(例えフォトダイオード用でなくても)、適切に補正した TIA の設計にも使用できます。また、ダイヤモンド・プロット・ツールは、シャントの動作範囲に基づいて計装アンプの動作範囲を即座に視覚的に表示できます。EngineerZone® にもアクセスして、他の実例をご参照ください。ここに挙げた選択肢によって、電流検出アプリケーションにおいて最適な解となるアンプを見つけられることを願っています。


1 漫画風のイラストについて説明すると、ベンジャミン・フランクリンの時代、彼が行なった有名な凧の実験の危険性に人々は気付いていませんでした。セントピーターズバーグ在住のある教授は、この実験を繰り返すうちに避雷針からの稲妻に額を打たれて即死しました。

出典: Hans Camenzind 著 Much Ado About Almost Nothing:
Man’s Encounter with the Electron
Booklocker.com 2007 年

2 つまり、アンプのオフセットと入力換算誤差を取り除くことはできないため、ほとんどゼロということです。


著者

Gustavo Castro

Gustavo Castro

Gustavo Castro は、アナログ・デバイセズの計測事業部門(マサチューセッツ州ウィルミントン)に所属するシステム・アプリケーション・エンジニアです。2011年に入社しました。それ以前は、National Instrumentsで10年間にわたり自動試験装置(ATE)で使用される高性能のデジタル・マルチメータや高精度のソース・メジャー・ユニットの設計に従事。高精度計測や電子計測を対象としたアナログ/ミックスド・シグナル/アルゴリズム設計の分野で、複数の特許を取得することに貢献しました。モンテレイ工科大学で電子システムに関する理学士号、ノースイースタン大学でマイクロシステムと材料に関する理学修士号を取得しています。