質問:
当社は長年アナログ・デバイセズの部品を使ったシステムを製造しています。先日購買部門が、委託販売されている安価な代替デバイスを他社から購入したところ、それを使ったシステムがすべて動作不良となってしまいました。代替デバイスのデータシートの仕様はすべてアナログ・デバイセズ製品と同じで、テストでは十分仕様の範囲内でした。何が起こっているのでしょうか?
回答:
システムの動作が、アナログ・デバイセズ製品のデータシートに記載のない特性に依存しており、セカンド・ソースではこの特性が異なるためです。
これはIC やアクティブ・デバイスに限らず、すべての部品に当てはまります。状況は全く異なりますが、私はカレーや香辛料を使う料理の辛さを調節するために台所にホットソースを 1瓶用意しているのですが、いつものブランドが手に入らなかったので、同じスコビル値の別のブランドを購入しました(つまり、データシートの仕様は同じでした)。このセカンド・ソースがひどいもので、確かに辛さは同じでしたが、効き始めるのが遅く(口に入れたときは辛くないようでも、数秒経つと舌がヒリヒリするほど辛味が増すので、辛さの判断を早くし過ぎるとソースを入れ過ぎる可能性があります)、いつものソースは辛さを加えるだけですが、セカンド・ソースには辛さとともに苦味もあり、丁寧に準備した料理の味が台無しになってしまいました。もちろん、電子部品の味は関係ありませんが、規定されていない他のパラメータが重要なことがあります。
御社がアナログ・デバイセズ製品を使い続ければすべてうまくいくと申し上げたいし、おそらくその通りだろうと思うのですが、極めて重要なのは購買部門とシステム設計者とが緊密に連携することです。したがって、コストやその他の理由で部品の変更が提案された場合は、新しい部品に確実に互換性があることを確認するための評価を行います。このような評価では、机上演習やシミュレーションの他にハードウェア・テストを行う必要があります。これは、デバイスのすべての特性をシミュレーションできるモデルがないので、演習時間を短縮するために、重要でないと考える構造を意図的に簡略化します。短い論文はもちろん、大きな書物でも、生じ得るすべての問題を検討することは不可能ですが、トラブルの予想に関する原則は単純です。理想的でない部品がどのように動作したら回路に誤動作が生じる可能性があるかを自問し、それをチェックすることです。
私がここ何年かに直面した問題をいくつか挙げてみます。起こりうる問題を漏れなく示すというより、考え方を示します。
- デバイスの未使用ピンについてRAQ Issue 1231で検討しました ̶ オリジナルの製品では未接続のピンをセカンド・ソース製品では内部接続して使用しているものがありました。
- オペアンプの入力には、差動電圧が大きくても高インピーダンスのものもあれば、負帰還で(したがって、小さい差動電圧 VIN で)使用すると高インピーダンスであっても、差動電圧 VIN が 600 mV を超えると、入力の保護回路により ZIN が大幅に減少するものもあります。
- 従来回路を改良した最新のセカンド・ソースは、より高速の IC 製造プロセスを採用している可能性があり、予想以上に帯域幅が広くなり、電位が不安定となり、広帯域のノイズを生じることがあります。
- また、高速ロジック・プロセスにより、(先行製品では影響を与えることがなかった)ns レベルのグリッチの影響を受けやすくなる場合があります。
- 10 nF、50 V のセラミック・コンデンサは、同じ容量の安価なフォイル・コンデンサよりはるかにインダクタンス(したがって、高周波インピーダンス)が小さい場合があります。
- さらに、メーカー 2 社の標準(Cat-5)のイーサネット・ケーブルでさえ損失とクロストークに大きな差があるため、システムによっては一方しか機能しない場合があります。
よく考え、ハードウェアをテスト、再テストし、常にマーフィーの法則 2 を忘れないことです。
1 RAQ Issue 123: James Bryant 著「未使用ピン」