柔軟なデュアル出力の6フェーズ降圧コントローラが90.0%の効率で12V~1.0V/200Aコア電源を駆動

通信、サーバー、計算などでの高性能システムに使われるASIC、FPGA、プロセッサには、12Vまたは中間バスから直接1.0V(またはそれ以下)の電圧を生成できるコア電源が必要であり、その最大負荷電流は200Aを超えることもあります。これらの電源には、効率と性能に関する厳しい仕様を、多くの場合比較的小さいPCBフットプリントで、満たすことが求められます。6フェーズ、デュアル出力の降圧コントローラであるLTC7852/LTC7852-1は、これらの電源用に高性能で柔軟なソリューションを実現します。

LTC7852/LTC7852-1は、高い効率が得られるように設計されています。LTC7852の各フェーズは内蔵ゲート・ドライバを使う代わりにPWM出力を生成し、この出力が、パワー・ブロック、DrMOS、または外部ゲート・ドライバおよびディスクリートMOSFETとのインターフェースを取ります。DrMOSデバイスは、ゲート・ドライバとMOSFETを1つのパッケージにまとめることによって、全体として小さいソリューション・サイズと高い効率を実現します。通常、これらのデバイスは12V入力電圧用に設計されます。外付けのゲート・ドライバとMOSFETは、良好な熱性能を実現します。また、より高い入力電圧で動作させることができます。LTC7852のサブmΩ DCR検出アーキテクチャは、わずか0.2mΩのDCR値で正確な電流検出を実現します。これにより、導通損失が大幅に減少します。LTC7852-1は、特に、固有の電流検出信号を提供するDrMOSデバイスと連携して機能するように設計されています。

各出力は差動で検出され、範囲は0.5V~2.0V(2.0Vの制限はLTC7852のみに適用)で、総合レギュレーション精度は±0.5%です。LTC7852とLTC7852-1は入力電圧ではなく外部5V電源からバイアスされているので、コンバータの入力電圧範囲がICによって制限されることはありません。そのスイッチング周波数範囲は250kHz~1.25MHzで、40nsの最小オン時間が高い降圧比を実現します。

2つの出力のフェーズ構成を3+3、4+2、および5+1のいずれにするかは、PHCFGピンで選択できます。3+3構成では、6フェーズ・コンバータ用に2つの出力を並列にすることができます。最大負荷電流は240Aです。2つの3フェーズ・コントローラまたは3つの2フェーズ・コントローラではなく1つの6フェーズ・コントローラを使用すれば、設計とレイアウトが大幅に簡素化されます。また、わずか2つのコントローラで最大12フェーズの動作を実現できます。

LTC7852は5mm × 6mmのGQFNパッケージを、LTC7852-1は4mm × 5mmのQFNパッケージを採用しています。

6フェーズの高効率コア電源

6フェーズ、1.0V/200AのLTC7852コンバータを図1に示します。このコンバータは、400kHzのスイッチング周波数と12Vの入力で動作します。各フェーズの電力段は、5mm × 5mmのDrMOSと、DCRが0.325mΩ(代表値)の0.25µHフェライト・インダクタで構成されています。この場合の全負荷時効率は90.0%です(図2)。全負荷、空気流量200LFMの場合、室温におけるホット・スポット温度は78ºCです(図3)。緊密な電流分担により、インダクタ間の温度差は6ºC未満です。

図1. FDMF5820DC DrMosを使用した6フェーズ1.0V/200A LTC7852コンバータの回路図(FSWITCH = 400kHz)

図1. FDMF5820DC DrMosを使用した6フェーズ1.0V/200A LTC7852コンバータの回路図(FSWITCH = 400kHz)

図2. 図1に示す回路の効率のプロット(VIN = 7V、10V、12V、14V)

図2. 図1に示す回路の効率のプロット(VIN = 7V、10V、12V、14V)

図3. 図1に示す回路の熱画像(VIN = 12V、全負荷、周囲温度24ºC、空気流量200LFM)

図3. 図1に示す回路の熱画像(VIN = 12V、全負荷、周囲温度24ºC、空気流量200LFM)

サブmΩ DCR検出

LTC7852は、電流検出信号のS/N比を改善するために、独自のピーク電流モード・サブmΩ DCR検出アーキテクチャを採用しています。インダクタに取り付けたDCR検出フィルタは、増幅されたAC信号をSNSPピンとSNSNピンに提供します。1つめのフィルタにカスケード接続されたもう1つのフィルタは、SNSPピンとSNSAVGピンにDC信号を提供します。LTC7852はこのDC信号を増幅してAC信号に加え、信号を再生します。再生された信号はオリジナルを5倍したものになります。これが、0.2mΩという低いDCR値でもクリーンで安定した動作を可能にします。

出力電流のモニタリングと過電流保護

LTC7852のIMON1ピンとIMON2ピンは、それぞれに対応するチャンネルの負荷電流に比例した信号を生成します。これらのピンは、V1P5ピンを基準とします。この信号は、電源モニタまたはADCおよびマイクロコントローラによる負荷検出に使用できます。

サイクルごとの電流制限は、ピーク電流モード・アーキテクチャに固有の利点です。ヒカップ・モードによる電流制限は、追加的な保護機能を提供します。32サイクルを超えて過電流による異常状態が続くと、コンバータは、ソフト・スタート・コンデンサによって設定される時間が経過するまでスイッチングを停止します。この時間が経過すると、ソフト・スタートでスイッチングが再開されます。図4に示すように、異常発生時のコンバータは比較的短い周期でスイッチングを行います。このため、MOSFETとインダクタに加わる熱的ストレスは非常に小さな値となります。

図4. ヒカップ・モードの過電流保護と回復動作

図4. ヒカップ・モードの過電流保護と回復動作

まとめ

LTC7852/LTC7852-1は高性能の柔軟な6フェーズ・デュアル出力降圧コントローラで、DrMOS、パワー・ブロック、または外部ゲート・ドライバとMOSFETを使用して、高効率、高信頼性の電源を実現することを意図したデバイスです。特長としては、サブmΩ DCR検出(LTC7852)、選択可能なフェーズ構成、総合レギュレーション精度±0.5%の0.5Vリファレンス、差動出力検出、250kHz~1.25MHzのスイッチング周波数範囲、およびヒカップ・モード電流制限保護などが挙げられます。

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Mike Shriver

アナログ・デバイセズのシニア・アプリケーション・エンジニア。リニアテクノロジー(現在はアナログ・デバイセズの一部門)で17年以上の経験を有し、パワー・アプリケーションを担当。リニアテクノロジー入社前には、Artesyn TechnologiesとBest Power Technologyに勤務。

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Yingyi Yan

カリフォルニア州サンタ・クララに勤務するシニアIC設計エンジニア。主に、スイッチング・コンバータ製品や集積化電力段製品用コントローラの研究開発を担当。パワー製品のアプリケーション・エンジニアとして2013年にリニアテクノロジー(現在はアナログ・デバイセズの一部門)に入社。2013年にバージニア工科大学のパワー・エレクトロニクス・システム・センターで博士号を取得。