FETドライバ、DrMOS、パワー・ブロックと連携動作し、マイクロプロセッサの近くにフレキシブルな配置を実現する電源

マイクロプロセッサは、電圧が低いほど一層多くの電流が必要になるため、電源を可能な限り負荷の近くに配置して、伝導損失を最小限に抑えることが重要になります。これにより、特に複数の電力段を使用する場合に、負荷の近くの基板スペースが貴重になります。また、DC/DCコントローラを大電流経路から離して配置することも重要ですが、MOSFETゲート・ドライバがコントローラ・パッケージ内にある場合は、ゲート・パターンも短くしておく必要があるため、この配置は難しくなることがあります。外付けのパワー・トレーン・デバイスまたはディスクリートNチャンネルMOSFETと、関連するゲート・ドライバを使用することが最善策になる場合もあります。

LTC3860は、デュアル出力の降圧DC/DCコントローラで、DrMOSやパワー・ブロックなどのドライバまたはパワー・トレーン・デバイスと連携動作するように設計されており、PolyPhase®の効果により柔軟な配置が可能になります。図1に示すように、最大で12段まで並列接続して出力電流を増加させ、位相を逆位相にして入出力フィルタリングを最小限に抑えることができます。PolyPhase構成では、出力電圧(VOUT)とグラウンド端子の両方とも単一の差動アンプを用いて監視されるため、ビア、パターン経路、インターコネクトを介したIR損失の発生時にも、厳密なレギュレーションが可能になります。レギュレーションの厳密さは、600mVリファレンスの精度(0~85ºCのジャンクション温度で±0.75%)によって更に高くなります。

図1. LTC3860を用いた12相降圧コンバータのピン間相互接続。

図1. LTC3860を用いた12相降圧コンバータのピン間相互接続。

電圧モード動作により、安定したスイッチング波形を維持しながら、位相あたりの電流を最大30Aにすることができます。電流モード・コンバータでは、エラー・アンプの出力側の電圧が山または谷のスイッチ電流を制御するため、スイッチ電流を常時監視する必要があります。100mV以下の典型的なセンス電圧と、1mΩ以下の抵抗を備えた電流センス素子では、ノイズの混入が常に問題となります。対照的に、LTC3860では、VOUTで差動検知されたエラー電圧を、1Vのオーダーの鋸歯状ランプと比較します。このランプがデューティ・サイクルを制御します。エラー電圧が大きいほど、各相の上部スイッチがオン状態にある時間が長くなります。

集積ドライバMOSFET(DrMOS)を用いた2相単出力レギュレータ

Intelは、高電力密度、高いスイッチング周波数での効率向上、コントローラと電源装置間の相互運用性に対するニーズがあるとして、同社のマイクロプロセッサに電力供給する降圧DC/DCコンバータで用いられる集積ドライバMOSFET(DrMOS)に関する一連の技術仕様を発表しています。レイアウトがコンパクトなため、浮遊インダクタンスによる効率損失が低減します。数社のメーカーから準拠デバイスが出ています。これらのデバイスは、500kHz以上(好ましくは1MHz)で動作し、5~16Vの入力から約1Vで位相あたり25Aを供給し、ピン配置が確定された8mm×8mmまたは6mm×6mmのパッケージを使用することが求められています。これらのデバイスはPWM入力ができる必要があります。PWM入力は、入力がハイまたはローの時に、上部および下部のMOSFETを交互にオン/オフするのに使用されます。PWMピンをフローティング状態にするか、DrMOSのDISBピンをローにプルダウンして、両方のMOSFETをオフ(スリーステート)にできることが必須です。外付けインダクタが必要になります。

LTC3860は、DrMOS準拠デバイスと互換性のあるPWM信号を供給します。例えば、FairchildのFDMF8704 DrMOSの動作仕様は、位相あたり25Aで1MHzまでとなっており、LTC3860は、200kHz~1.2MHzのスイッチング周波数についてプログラムが可能です。LTC3860のハイ・コマンドとロー・コマンドは、FDMF8704により、それぞれ、上部MOSFETオンと下部MOSFETオンの信号に変換されます。このDrMOSはPWMピンのスリーステート信号を認識しませんが、DISBピンがローにプルダウンされると、MOSFETが両方ともオフになります。LTC3860のPWMENは、PWMがハイまたはローの時は常に、オープン・ドレインを通してハイにプルアップします。PWMがスリーステートの場合、外部抵抗がPWMENピンをローにプルダウンします。このため、ここでは、LTC3860のPWMENピンをDrMOSのDISBピンに接続することによって、電力段のスリーステート動作が実現されます。

図2は、各電力段でFDMF8704を用いて、1V、50Aコンバータを構成する2相単出力コンバータの回路図です。スイッチング周波数は、CLKINをローに、FREQをハイにして600kHzを選択します。2つのチャンネルの動作は位相が180ºずれているため、実効周波数は1.2MHzです。

図2. 各電力段でFDMF8704を用いて、オール・セラミックの出力コンデンサを備えた1V、50Aコンバータを構成する2相単出力コンバータ。

図2. 各電力段でFDMF8704を用いて、オール・セラミックの出力コンデンサを備えた1V、50Aコンバータを構成する2相単出力コンバータ。

クロック・サイクル間の待ち時間の減少により、高いスイッチング周波数が可能となるため、過渡応答が改善されます。オール・セラミックの出力コンデンサがあることで、安定した動作が可能になり、ESRが低いため、出力リップルが最小限に抑えられます。図3に、大きな負荷ステップに対するコンバータの過渡応答を示します。

図3. 図2のコンバータの負荷過渡応答。

図3. 図2のコンバータの負荷過渡応答。

電圧モード・コンバータの一般的な短所は、電力容量増加のために組み合わせた時に、うまく連携動作しないことです。これらのコンバータは通常、オンボード・オペアンプの出力をループ補償ノードとして使用します。これらの出力は低インピーダンスのため、単に接続させても、各電力段からの電流を均衡させることはできません。位相ごとに外部回路が必要になります。

LTC3860は内部電流を共有しており、位相を同期させるには、単純なピン構成と、IAVGピンに外付けコンデンサが1つ必要になるだけです。IAVGピンは、全相の瞬時平均電流に対応した電荷を蓄えます。スレーブ・チャンネルのFBピンはINTVCCに接続され、1つの差動アンプがマスターのFBピンの前に配置され、各TRACK/SS、COMP、出力は他のFBピンに接続されています。これで、電力段の均衡がアクティブにとれました。1つのパワー・グッド・インジケータPGOOD1が、低電圧および過電圧イベントを知らせます。

位相間の最大電流センスのミスマッチは、同じIC上または異なるIC上のチャンネル間で±2mVです。これは、特に電流センス素子が十分にマッチングされている場合、PolyPhaseアプリケーションにおけるチャンネル間の電流共有が厳密であることを意味しています。ここで、Würth 744355019インダクタのDC抵抗は、20ºCで±10%の公差を有するよう仕様規定されています。図4aおよび図4bに、インダクタ電流レベルが負荷過渡応答時に密接に追従することを示します。

図4. 図2のコンバータは、負荷過渡状態の両エッジで安定した電流分配を示しています。(a)立上がりエッジ、(b)立下がりエッジ。

図4. 図2のコンバータは、負荷過渡状態の両エッジで安定した電流分配を示しています。(a)立上がりエッジ、(b)立下がりエッジ。

差動アンプは、出力電圧のリモート・センシングを可能にします。VSNSPとVSNSNは負荷点でVOUTとPGNDに接続されています。これらのピン間の電位は、ユニティ・ゲインでVSNSOUTとSGND間の電位に変換されます。VSNSOUTは、マスター・チャンネルのFBにつながるフィードバック系統に接続されています。この構成により、電源グラウンドとSGNDの間に電圧オフセットをもたらすことが多い基板間相互接続損失によるエラーを克服できます。この1V出力の場合、無負荷VOUTと全負荷VOUTの差は、一般的にわずか1mVです。

効率を重視する場合

基板スペースを最小化することよりも効率を優先する場合、比較的低いスイッチング周波数でLTC3860を動作させると、スイッチング損失が減少します。一方、同期MOSFETを追加すると、特に低いデューティ・サイクルでコンバータが動作する場合、伝導損失が減少します。DrMOSパッケージには、メインMOSFETが1つと同期MOSFETが1つ搭載されているため、ディスクリートFETおよびドライバを使用すると有益です。パワフルなLTC4449ドライバは、このタスクに最適なものです。

LTC4449は、同期型DC/DCコンバータ内の上部および下部MOSFETを駆動するように設計されています。LTC3860のVLOGICはLTC4449のVCCと同じ電位にあるため、LTC4449は、LTC3860電源に比例した閾値で、ハイ、ローおよびスリーステート入力を受け入れます。LTC3860のVCCの範囲は3V~5.5Vで、低電圧ロックアウト(UVLO)の閾値(2.9V立下がり、3.0V立上がり)より下がると、LTC3860の両方のチャンネルが無効になります。UVLOによりドライバの動作が確保されるのは、VCCが安全なレベルにある場合のみです。

最大効率を得るため、LTC4449の上部ゲートのプルアップ時間とプルダウン時間は、それぞれ8nsと7nsです。下部ゲートのプルアップ時間とプルダウン時間は、3000pFの負荷があるため、それぞれ7nsと4nsです。適応型シュートスルー保護により、デッド・タイムが電力損失の回避に対して十分短いながら、交差伝導が発生するほどには短くないことを確保できます。ドライバの提供形態は2mm×3mmの薄型DFNパッケージです。

図5に、LTC4449とディスクリートMOSFETを用いた単一チャンネル、400kHz、単相コンバータの回路図を示します。図6では、効率の向上を、同じ周波数で同じ受動部品を用いて動作するDrMOSソリューションと比較しています。

図5. LTC3860は、LTC4449を用いてディスクリートMOSFETを駆動できます。同期MOSFETを追加して、効率の向上を行います。

図5. LTC3860は、LTC4449を用いてディスクリートMOSFETを駆動できます。同期MOSFETを追加して、効率の向上を行います。

図6. 図5の回路は、効率の向上を、一般的なDrMOSソリューションと比較しています。妥協が必要なのは基板スペースです。DrMOSの占有面積は36mm2または64mm2で、ドライバと3つのMOSFETの占有面積は101mm2です(部品を接続するパターンは除く)。

図6. 図5の回路は、効率の向上を、一般的なDrMOSソリューションと比較しています。妥協が必要なのは基板スペースです。DrMOSの占有面積は36mm2または64mm2で、ドライバと3つのMOSFETの占有面積は101mm2です(部品を接続するパターンは除く)。

ディスクリートMOSFETには、DrMOSの要求電圧(16V)より高い入力電圧性能も備わっています。LTC3860のVINSNSピンは、メインMOSFETのドレインで電源に接続されており、最大24Vまで対応可能です。この結果、LTC3860アプリケーションは、様々なメーカーから多数入手可能な30V MOSFETのメリットを活用できます。

400kHzの動作は、FREQおよびCLKINピンをローに接続して設定されます。250kHz~1.25MHzの他のスイッチング周波数は、FREQとグラウンドの間に抵抗を1つ接続することでプログラムしたり、外部信号源と同期したりすることができます。同期信号の中断が生じた場合、抵抗で設定された周波数との間で滑らかな遷移が行われます。同期には、外付けのPLLフィルタ部品は不要です。

VINSNSピンは、入力電圧を監視し、フィードバック・ループのバイパスによって、VINに逆比例するようにデューティ・サイクルを即座に調整します。この機能には2つのメリットがあります。1組の補正値がVINの範囲全体にわたって機能することと、図7に示すように、ライン・トランジェント中にVOUTの偏差が最小限に抑えられることです。

図7. LTC3860は、そのVINSNSピンを介して、ライン・フィード・フォワード補償を行い、VINが一定でない場合にVOUTの定常的変動および動的変動を防止します。

図7. LTC3860は、そのVINSNSピンを介して、ライン・フィード・フォワード補償を行い、VINが一定でない場合にVOUTの定常的変動および動的変動を防止します。

ILIMピンにより、電流限界の設定が可能になります。このピンは、外部抵抗を介して20µAを供給し、電流限界に比例した電圧を供給します。電流限界に達すると、LTC3860は、PWM出力をスリーステートにして、ソフトスタート・タイマーをリセットし、32,768(=215)スイッチング・サイクルだけ待機してから再起動します(図8)。

図8. LTC3860の短絡挙動。

図8. LTC3860の短絡挙動。

LTC3860には、起動して出力にプリバイアスをかける機能があります。TRACK/SS電圧がFBの電圧よりも低い場合、LTC3860はスイッチングしません(昇圧コンデンサに蓄電し続けるリフレッシュ・パルスを除く)。TRACK/SS電圧がFBの電圧を超えるとスイッチングが始まりますが、インダクタ電流は出力が変動範囲に達するまで反転できず、変動範囲に達すると連続導通モードが始まります。このため、出力の上昇は緩やかになります(図9)。

図9. ディスクリートMOSFETアプリケーション向けの、起動して出力にプリバイアスをかける機能。

図9. ディスクリートMOSFETアプリケーション向けの、起動して出力にプリバイアスをかける機能。

シンプルさが要求される場合

設計者は、電力段部品を選択する代わりに、小さなプリント基板上に電力段全体が組み込まれたものを規定することができます。これはパワー・ブロックと呼ばれるもので、MOSFET、MOSFETドライバ、インダクタ、最小入出力コンデンサが搭載されます。電気的・機械的接続は、メイン基板上に表面実装されるスタンドオフ(隔離絶縁体)を介して行われます。

温度センシングやインダクタのDCRセンシングにも接続部が備わっています。これらは通常、12V入力で動作し、400~500kHzでスイッチングし、20~40Aを供給します。DrMOSとは異なり、パワー・ブロックは標準的なフットプリントを占有しません。

デルタ・パワー・ブロックと組み合わせたLTC3860を図10に示します。この大電流、400kHz、2相アプリケーションは、その出力で45Aを供給できます。各チャンネルは、他のチャンネルに対して位相が180ºずれて動作するため、実効スイッチング周波数は2倍になり、入出力コンデンサへのストレスは最小限に抑えられます。パワー・ブロックの物理的寸法はおよそ、縦1.0インチ×横0.5インチ×高さ0.5インチで、ソリューション・サイズの小型化を実現しています。オンボードMOSFETには上面ヒートシンクが備わっており、55ºC以下で200LFM(Linear Feet per Minute)のエアフローが必要です。

図10. 電力段に45Aデルタ・パワー・ブロックを用いた2相単出力コンバータ。

図10. 電力段に45Aデルタ・パワー・ブロックを用いた2相単出力コンバータ。

この汎用コントローラを用いたいくつかのオプション

ここで紹介するアプリケーションでは、インダクタでの降下を用いて、電流分担と電流限界を検出します。電力損失のわずかな増加が許容可能な場合、インダクタと直列にディスクリート検出抵抗を使用すると、より高い精度を得ることができます。このアプリケーションの出力電圧は1.xの範囲内にあります。0.6V(リファレンス電圧)程度の低い出力も、4V(差動アンプの最大出力電圧)程度の高い出力も可能で、リファレンス電圧精度は動作温度範囲–40~125ºCで±1%です。

ここで示したアプリケーションで用いられているデフォルトの2msのソフトスタートの代わりに、調整可能なソフトスタート(2ms以上)とトラッキングも各出力で可能です。ソフトスタート時間を長くしたい場合は、TRACK/SSからグラウンドまでに10nF以上の容量を追加します。0.6Vより低いDC電圧でピンを駆動すると、トラッキングが可能になります。出力は、内部リファレンス電圧600mV、TRACK/SSピンの電圧、そのチャンネルの内部ソフトスタート・ランプ電圧のうち、最低電圧に調整されます。

まとめ

LTC3860は、オンボード電流分担と並行して最大12相をサポートする電圧モード降圧コントローラです。このデバイスは、DrMOS、パワー・ブロックまたはディスクリートMOSFET、LTC4449ドライバと共に使用できます。LTC3860は、オンボードMOSFETドライバの代わりにPWM出力を有するため、重要な大電流経路からは距離を置いて基板スペースを占有できます。その用途には、大電流配電および産業システム、ならびにテレコム、DSP、ASIC電源などがあります。LTC3860は、32ピン、5mm×5mmのQFNパッケージを採用しています。

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Theo Phillips