高精度低消費電力のリモート検出のアイディア

以下に示すリモート検出例は、高信頼性、容易なネットワーク接続、極めて低い消費電力といった特長を備えています。これらの回路が対象とするのは、最小限のバッテリ・メンテナンスで信頼性の高い通信が求められる工業用の設定です。このソリューションは、低消費電力で高精度の増幅における最近の進歩と、同等の低消費電力性能を備えた信頼性の高いワイヤレス・メッシュ・ネットワーク機能とを組み合わせたものです。このソリューションを実現可能とするのが、最大動作電流2µA、ゼロドリフト、低入力バイアスのLTC2063アンプと、スリープ・モードでの消費電力が1.5µA未満のLTP5901-IPMです。これらのデバイスは消費電力が非常に小さいので、4インチ四方の銅電極と亜鉛電極、そしてレモンの果肉で作った電解液を使う、手製のバッテリで作動させることができます。

ワイヤレス・メッシュ

各種の工業設定において、ワイヤレス・ネットワーク上で測定し値を取り出すことに高速性が求められることは稀ですが、最長のバッテリ動作時間を実現するための低消費電力動作に加えて、高信頼性とセキュリティが求められることは珍しくありません。LTP5901-IPMは、802.15.4eワイヤレス・ネットワークのノード(SmartMesh® IP Mote)を形成します。このデバイスは、10ビットの0V~1.8V ADCとARM® Cortex®-M3 32ビット・マイクロプロセッサを内蔵しており、簡単なプログラミングで検出を行うことができます。このモートは、セキュリティ、信頼性、低消費電力、柔軟性、プログラマビリティといった特性を実現できるように設計されています。

4つの検出アプリケーション

全体として、以下のような回路の設計には難しい理論は不要でした。ただし、これらの設計は効率的で整えられており、特定のアプリケーションに合わせて適切に調整されています。設計が複雑である必要はなく、実際のところ、複雑な設計はコストや信頼性の点で問題となるおそれがあります。

各回路は入力部分にセンサーを配置しており、このセンサー出力を処理して出力電圧を生成します。これらの回路では、LTP5901-IPM 10ビットADCを入力として使用し、入力をマップして0V~1.8V範囲の大部分を取り込めるようにしています。

基本的なバッテリ電圧検出

図1は非反転、ユニティ・ゲインの負帰還オペアンプを使用した回路で、分圧された電圧を検出するための代表的な構成です。LTP5901の入力に関するADC範囲は0V~1.8Vです。R1とR2は最小限の自己消費電流でバッテリ電圧を分圧し、バッテリ寿命を延長することを可能にします。また、LTC2063の入力バイアス電流は十分に小さいので、このように抵抗値が大きくても、最終的な10ビットADCの精度に影響を及ぼすことはありません。LTC2063は最小限の電源電流しか消費せず、時間と温度に対するドリフトがないという利点を備えています。

図1. 単純なバッテリ電圧検出

図1. 単純なバッテリ電圧検出

電流検出

バッテリ電源を使用する絶縁型電子機器の利点は、どこにでもグラウンドを取れることです。ローカル・グラウンドに対して任意の位置に端子を配置できるので、汎用性を損なうことなく、最も都合の良い回路トポロジで電流を検出することができます。4mA~20mAの工業用ループなどに使われるユニポーラ電流の場合は、一般的なローサイド・トポロジを使い、ローカル・グラウンド基準で安全に検出を行うことができます。非常に小さな抵抗R2を電流が通過して、検出電圧を生成する様子を図2に示します。アンプのドリフトがなくオフセット電圧も非常に低いので、この入力電圧は極めて小さい値にすることができます。図に示す回路は、501mΩの検出抵抗によって生成される入力を101V/Vで増幅します。20mAにおけるVOUTは1.012Vです。ADCの1.8V範囲を最大限に使用するために、他の値を選ぶこともできます。

図2. 単純なバッテリ電圧検出

図2. 単純なバッテリ電圧検出

抵抗R4は比較的小さい値で、LTC2063の入力コンデンサの低インピーダンス・シャントの役割を果たします。結果として、大きいR1帰還抵抗と入力コンデンサの相互動作が安定性に影響することはありません。

構成された回路は0mA~35mAのテスト電流範囲に合わせて最適化されており、この電流範囲が0V~1.8VのADC範囲に対応しています。

放射照度計

図2の回路は、太陽電池の短絡電流を測定するために使用することもできます。シリコン系の太陽電池やその他の太陽電池を短絡電流モードで使用した場合、電流と放射照度の関係はほぼ直線になります。短絡電流は、電池電圧が0Vの時に太陽電池から流れる電流です。図3の回路は、最大電流時に太陽電池を正確に0Vに保つものではありませんが、十分な太陽光下での電流が20mAの場合でも電圧は10mVに過ぎません。このI-V曲線で、太陽電池電圧が10mVのレベルは実質的に短絡状態です。

図3. 短絡状態の太陽電池を使用する放射照度測定

図3. 短絡状態の太陽電池を使用する放射照度測定

代わりにトランスインピーダンス・アンプ(TIA)を使用することも考えられます。TIAを使用すれば、太陽電池の電圧を強制的に0Vにして電流を測定することができます。この種の回路で問題となる点は、放射照度範囲の全体にわたって、オペアンプが太陽電池の電流を供給することです。リモート検出回路の消費電力を最小限に抑えることが優先される場合、バッテリからオペアンプに流れる電流が20mAというのは、許容できる値ではありません。

電圧を0V付近に止める必要があることを考えると、小さい検出抵抗を使う必要があります。バッテリ駆動の低電圧検出回路を離れた位置に置いて使用する場合も、LTC2063のような高精度・低消費電力のアンプを使用することが推奨されます。

太陽電池の設置には様々な物理的レイアウトが使われますが、これらはいずれも、温度ドリフト測定値がゼロのワイヤレス・メッシュ・ネットワーキングを必要とします。幸い、短絡状態のシリコン・フォトダイオードは、温度に対して非常に高い安定性を備えています。LTC2063とLTP5901-IPMを使用し、シリコン太陽電池と組み合わせたシンプルで堅牢な設計は、気温条件が変動する大規模な設置場所全体を対象とした検出に最適なソリューションです。

熱電対による温度測定

熱電対の電圧は正にも負にもなる可能性があります。図4の回路は、マイクロパワー・リファレンスとマイクロパワー・アンプを組み合わせることによって、正負両方の極めて小さい電圧を検出します。幸い熱電対は、そのテスト対象デバイス(DUT)と電気的に絶縁されていれば、都合に合わせてどの電圧ドメインにでも置くことができます。図4の例では、 LT6656-1.25を使用することによって、熱電対を1.25Vにバイアスしています。この回路の出力は、小さい熱電対電圧を1.25Vのリファレンスの上に大きく増幅したものです。0V~1.8VというADC範囲は、この構成では妥当な目標です。約2000V/Vもの極めて高いゲインは、ゼロドリフト、低消費電力のアンプを使わなければ実現することはできないでしょう。

図4. 熱電対検出回路

図4. 熱電対検出回路

まとめ

消費電力の極めて小さい高精度のリモート検出は、確実に実現可能です。本稿に示す例から、低消費電力の高精度アンプを、プログラマブルなシステムオンチップのワイヤレス・メッシュ・ノードと組み合わせることが容易であることがわかります。

Aaron Schultz

Aaron Schultz

Aaron Schultz(aaron.schultz@analog.com)のこれまでのキャリアは多様で、システム・エンジニアリングの領域で、設計とアプリケーションに関する多くの役割を担ってきました。バッテリ管理、太陽光発電、調光用の LED 駆動回路、低電圧かつ大電流に対応する DC/DC 変換、高速の光ファイバ通信、先進的な DDR3 メモリの研究開発、カスタム・ツールの開発、妥当性検証、基本的なアナログ回路といった広範な分野を対象としています。ただ、こうしたキャリアの半分以上は電力変換に関する業務が占めており、その専門性はジェネラリストとしての特性にも価値を与えています。現在は、LPS事業部門でアプリケーション・エンジニアリング・マネージャを務めています。学歴としては、カーネギー・メロン大学(1993年)とマサチューセッツ工科大学(1995年)を卒業。趣味はジャズピアノの演奏です。