距離の測定と物体の検出を 実現するToFシステム

FA(ファクトリ・オートメーション)やロボティクス、物流などの分野では、距離の測定と物体の検出が重要になります。特に、安全性の確保という観点からは、特定の距離に位置する物体や人物を検出したり、それらから応答を得たりすることが必須です。例えば、作業者が危険な区域に入ったら、ロボット・アームを即座に停止するといった機能が求められるということです。

このような機能を実現するためのものとして注目されているのが、ToF(Time of Flight)技術です。同技術を採用したシステムの仕組みは、次のようなものになります(図1)。まず、レーザーなどの変調光源を使ってシステムから光を放射します。そして、1つ以上の物体で反射した光ビームをセンサーやカメラによって捉えます。光を放射してから反射光を受信するまでの時間Δtを測定すれば、その物体までの距離を求めることができます。Δtはカメラから物体までの距離の2倍(往復)に比例するからです。つまり、距離(深度)dの値は光速cを使って(c×Δt)/2と表すことができます。ToFシステムで使用するカメラを使えば、このような深度の情報に加えて、物体の2次元(2D)データを出力することができます。

図1. ToFによる測定原理

図1. ToFによる測定原理

ToFでは、物体全体のイメージ(画像)を一度に記録することができます。ラインごとのスキャン処理を行ったり、センサーと物体の間の相対モーションの情報を得たりする必要はありません。多くの場合、ToFはLIDAR(Light Detection and Ranging)技術の一種として扱われます。ただ、スキャン方式ではなく、フラッシュ方式をベースとするLIDARだと言えます。

上述したように、ToFでは光パルスの飛行時間を測定します。その方法は大きく2つに分類されます。1つは、CCD(Charge Coupled Device)技術を利用したパルス・モードです。もう1つは、CW(Continuous Wave)モードです。

光パルスの放射から反射パルスの受信までにかかる時間はパルス・モードで測定されます。一方、放射および受信した変調光パルスの間の位相差を測定する場合にはCWモードが使われます。どちらの動作モードにもメリットとデメリットがあります。多くの場合、パルス・モードでは、短い積分ウィンドウの間に高エネルギーで非常に短い光パルスをバースト状で放射します。そのため、このモードでは周辺光に対して高い堅牢性が得られます。このことから、パルス・モードは屋外で稼働するアプリケーションに適しています。一方のCWモードはより実装が容易です。なぜなら、立上がり/立下がりエッジが高速な短いパルスを放射することができる光源を必要としないからです。しかし、精度に対する要求が厳しい場合には、より周波数の高い変調信号が必要になり、実装が困難になる可能性があります。

ToFでは、一般的なピクセル・サイズによって高いチップ解像度を得ることができます。そのため、距離の測定だけでなく、物体やジェスチャーの認識も可能です。なお、測定可能な距離は数cm(10cm未満)から数m(15m未満)の範囲です。

残念ながら、すべての物体を同じレベルで検出できるわけではありません。計測を実施する状況や、物体の反射率、速度が測定結果に影響を及ぼすからです。また、測定結果は霧や強い直射日光といった環境要因によって変動することもあります。これについては周辺光の抑制機能が有効です。

現実のアプリケーションでは、3Dに対応するToFソリューションが求められることが少なくありません。そうしたシステムを短期間で実現できるように、アナログ・デバイセズなどの半導体メーカーは、完全な3D ToFシステムを提供しています(図2)。その種のシステムは、制御用の電子機器で利用しやすいように1つのユニットとして提供されます。そのユニットには、データ処理用の回路、レーザー・ドライバ、パワー・マネージメント・システム、ソフトウェア/ファームウェアなどが統合されています。追加する必要のある主要なコンポーネントはエミッタとディテクタだけです。エミッタは、周波数変調した光信号を放射する役割を果たします。ディテクタは反射信号の取得に使用します。

図2. ToFシステムのブロック図

図2. ToFシステムのブロック図

このようなシステムを構築したい場合には、「ADDI9036」のような製品が大いに役立ちます。同製品は、深度計算の機能を内蔵するアナログ・フロント・エンド(AFE)です。レーザー・ダイオード用のドライバ、分解能が12ビットのA/Dコンバータ、CCD/レーザー向けのタイミング信号を生成する高精度のクロック・ジェネレータを搭載しています。これらのコンポーネントを使用することで、深度のデータと画素のデータを生成するために、VGA対応のCCDセンサーから出力された未処理の画像データを処理する役割を担います。つまり、ADDI9036は、CCDを利用するToFシステム向けの完全なシグナル・プロセッサだと言えます。

アナログ・デバイセズは、設計パートナー企業と連携し、完成されたモジュールや開発プラットフォームを共同で提供しています。これらの評価用システムは、お客様が独自のアルゴリズムを開発するための環境を提供します。これらのモジュールやプラットフォームは、開発期間の短縮に大いに貢献するということです。産業分野や車載分野など、スピードが重視されるビジネス領域においては、特に大きな威力を発揮します。

参考資料

アナログ・デバイセズのTIME OF FLIGHTテクノロジーによる3Dイメージング」 Analog Devices、2020年

Thomas Brand

Thomas Brand

Thomas Brand。2015年、修士論文作成の一環で、ミュンヘンのアナログ・デバイセズでのキャリアを開始。卒業後、アナログ・デバイセズのトレイニー・プログラムを受講。2017年、フィールド・アプリケーション・エンジニアとなる。中央ヨーロッパの産業分野の大型顧客をサポートすると共に、工業用イーサネットの分野を専門とする。モースバッハ産学連携州立大学で電気工学を専攻後、コンスタンツ応用科学大学で国際セールスの修士課程を修了。