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Jan-Hein Broeders
Jan-Hein Broeders,

Healthcare Business Development Manager

著者について
Jan-Hein Broeders
Jan-Hein Broeders。アナログ・デバイセズのEMEAヘルスケア・ビジネス開発マネージャ。ヘルスケア産業界と緊密に連携し、市場をリードするアナログ・デバイセズのリニア・コンバータ技術とデータ・コンバータ技術やデジタル信号処理製品、電力用製品をベースに業界の現在および将来の要求をソリューションに反映させる業務に従事しています。アナログ・フィールド・アプリケーション・エンジニアとして半導体業界で働き始めて20年以上、2008年からはヘルスケア・ビジネス部門で現職を務めています。オランダのスヘルトーヘンボス大学で電気工学士の学位を取得しました。
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1μAの差が重要なヘルスケア向けウェアラブル・デバイスの設計


複数のパラメータの測定、正確な値の取得、長いバッテリ寿命――。これらは、ウェアラブルなヘルスケア・デバイスにとって非常に重要な要素です。

電子式の歩数計が初めて発売されたのは10年以上前のことです。それ以降、ヘルスケアの分野では多くの変化が起きました。当初、歩数計で行われるのは、正に歩数の計測だけでした。数十年間にわたる研究の結果、1日に1万歩歩けば、カロリーの摂取量と消費量のバランスがとれることがわかりました。その間に、ウェアラブル・デバイスには、心拍数、心拍変動、体温、皮膚コンダクタンスなどを測定する機能が追加されていきました。当初、ウェアラブル・デバイスはスポーツやウェルネスのためのものでした。それが現在では、医療分野やヘルスケア分野でも広く使用されるようになりました。それに伴い、測定精度やバッテリの寿命がより一層重視されるようになりました。バッテリを1回充電することで、より長く動作するデバイスを開発できれば、ユーザに選んでもらえる可能性が高まります。

本稿では、ヘルスケア分野で使われるウェアラブル・デバイス向けに開発された新世代の製品について説明します。それらの製品を使用する際に、システムの信頼性を高め、電力効率を向上させるためのヒントや秘訣も紹介することにします。

PPGによる心拍数の測定

健康について考える場合、身体の中で特に注視しなければならない器官としては心臓が挙げられます。心臓は人体というシステムのエンジンだと考えることができます。心臓が正常に機能していない場合、健康面で深刻な問題が起きる可能性があります。そのため、心機能を監視するのは優先すべき重要事項だと言えるのです。また、1分間あたりの拍動数をカウントすればそれで良いというものではありません。心拍を詳細にチェックしなければならない理由はいくつもあります。また、活動の関数という観点で心拍を監視すれば、心臓の挙動に基づくかなりの量の情報を得ることができます。身体がより多くの活動を必要としている場合には、心拍数が上昇し、栄養分や酸素を含んだ血液がより多くの細胞に運ばれるはずです。心拍数が高い状態が続いたり、心拍数が急激に変化したりするのはよいことではありません。このような観点から見ると、心拍は心房細動などの心疾患に対応する指標になり得ます。

監視すべきパラメータは心拍数だけではありません。例えば、心拍変動(HRV:Heart Rate Variability)も重要な指標の1つです。リラックスした状態において、1分間あたりの心拍数は一定ではありません。おそらく、ほとんど方は、心拍数が1分間に±3回程度の範囲でわずかに変動することを経験的にご存じなのではないでしょうか。逆に言うと、このレベルの変動は、リラックスしていることを表す指標になります。一方、ストレスを受けたり、驚いたりした瞬間には、体内のアドレナリンの濃度が上昇します。その際、心臓は非常に単調な心拍数で鼓動し始めます。このような理由から、心拍変動も監視すべきパラメータの1つだと言えるのです。

旧来、心臓の信号を取得するためには心電図(ECG:Electrocardiogram)が使われていました。つまり、生体電位を測定する方法が主流だったということです。しかし、この機能をウェアラブル・デバイスに組み込むのは容易ではありません。

現在では、心拍数の測定については、生体電位を取得する方法ではなく、光学的な原理を利用する方法が広まっています。その種の技術はかなり前から存在しており、光電式容積脈波記録法(PPG:Photoplethysmography)と呼ばれています。PPGは、主に血液中の酸素飽和度(SPO2)を測定するシステムで使用されてきました。SPO2の測定では、波長が異なる2つの光を放射して、身体の特定の部位(通常は指か耳たぶ)を透過させます。それによって、ヘモグロビンの総量に対する酸化ヘモグロビンの割合を測定することが可能になります。この技術を使えば、SPO2だけでなく心拍数も測定できます。手首に装着するタイプの小型デバイスをはじめ、ウェアラブル・デバイスでは心拍数を測定するためにPPGがよく使用されています。また、生体電位の測定とは異なり、1つの測定個所で心拍数を取得できる点もPPGの特徴の1つです。アナログ・デバイセズは、そうしたアプリケーション向けに設計された光学サブシステム「ADPD174」を提供しています(図1)。

Figure 1. ADPD174, optical 6.5 mm × 2.8 mm system in a single package.
図1. ADPD174の外観。6.5mm×2.8mmの単一パッケージに実装された光学サブシステムです。

反射型 vs. 透過型

通常、SPO2は指や耳たぶにクリップを付けて測定します。身体の部位を介して光を送り、その反対側でフォトダイオードを使って光の信号を取得します。この透過型の手法は、身体で吸収されなかった光の量を受信光として測定するというものです。この手法は、消費する電力量に対する信号の質という面ではクラス最高のレベルのものだと言えます。しかし、快適さが重視されるウェアラブル・デバイスに透過型の測定手法を持たせるのは容易ではありません。そのため、ウェアラブル・デバイスでは、透過型の測定方法ではなく、反射型の測定方法がよく使用されています。反射型の測定システムでは、身体の組織の表面に光を照射します。その一部は赤血球で吸収されますが、残りは反射して組織の表面に戻ってきます。その反射光をフォト・センサーで測定するのです。反射型のシステムでは、最大60dBも減衰した信号を取得する必要があります。そのため、送受信用のシグナル・チェーンでは、電気的な側面と光学的な側面の両方について十分に注意を払わなければなりません。

電子的な課題、機械的な課題

心臓の拍動中には、血液の流れや量が変化します。そのため、反射型の測定方法では、受信する反射光の量にばらつきが生じます。また、PPGによる測定に使用する光の波長としては、測定の種類などに応じて異なる値が選択されることがあります。以下では、心拍数とその変動の測定に限定して話を進めることにします。それらの測定に必要な光の波長は、測定を行う身体の位置や、相対的な灌流レベル、身体の組織の温度、組織の色調によっても異なります。一般に、手首に装着するタイプのデバイスでは、皮膚表面の直下にある静脈や毛細血管から脈動の成分を取得します。手首の最表面には動脈が存在しないからです。この種のアプリケーションでは、緑色の光を使うことによって最良の受信状態が得られます。上腕、こめかみ、外耳道など、血流が十分な場所で測定を行う場合には、赤色光または赤外光の方が適しています。それらの光の方が、組織のより深くまで入り込むからです。ウェアラブル・デバイスでは、バッテリの容量やサイズが常に問題になります。そうしたアプリケーションでは、赤色LEDや赤外光LEDを使用すると、順方向電圧が小さいことから更なるメリットが得られます。例えば、コイン電池を使用するアプリケーションの場合、赤色LEDや赤外光LEDを選択すれば、電池の電圧によってそれらのLEDを直接駆動することができます。

赤色LEDや赤外光LEDと比べると、緑色LEDの順方向電圧はより高い値を示します。そのため、緑色LEDを駆動するには昇圧コンバータを追加しなければなりません。そうすると、システム全体の消費電力に悪影響が及ぶことになります。図2に、各色のLEDの順方向電圧と電流の関係を示しました。緑色LEDが必要な場合には、例えば昇降圧コンバータ「ADP2503」を使うとよいでしょう。そうすれば、2.3Vという低い入力電圧を基にして、最大5.5Vまでの順方向電圧に対応することができます。

Figure 2. Required LED forward voltage vs. LED current.
図2. LEDの順方向電圧と電流の関係

センサーの位置やLEDの色などに関するトレードオフについての検討が終わったら、次のステップとして、最も適切な光学ソリューションを選択します。アナログ・フロント・エンド(AFE)については、多くの選択肢があります。ディスクリート構成でも構いませんし、完全なICを使用しても構いません。また、フォト・センサーとLEDにも多様な選択肢があります。選択肢が多いということは、どれを使用するか決定するまでには相応の努力を要するということにつながります。では、設計時の労力を最小限に抑えて、製品を市場に投入するまでの時間を短縮するには、どうすればよいのでしょうか。その答えになるものとして、アナログ・デバイセズは、反射型の光学測定に適用可能な完全統合型の光学サブシステム(モジュール)を開発しました。それが、先ほど少し触れたADPD174です。この製品は、光学測定を行うために必要なあらゆるものを備えています。図3に示したのは、そのブロック図です。このモジュールのサイズはわずか6.5mm×2.8mmなので、ウェアラブル・デバイスにとって非常に魅力的な選択肢になります。

Figure 3. Block diagram of the ADPD174 optical subsystem.
図3. ADPD174のブロック図

ADPD174は、大きな1個のフォトダイオード、2個の緑色LED、1個の赤外線LEDを備えています。各種の処理を担うのは、ミックスド・シグナル型のASICです。そのASICは、アナログ信号処理用のブロック、逐次比較型のA/Dコンバータ(SAR ADC)、デジタル信号処理用のブロック、I2Cに対応する通信インターフェース、自由にプログラムできる3個のLED用電流源を搭載しています。

このシステムでは、LEDを駆動して光を照射し、それに対応する反射光を、面積が1.2mm2のフォトダイオードを使って測定します。ウェアラブル・デバイスでPPGベースの測定を行う場合、周辺光や身体の動きによって生じるアーティファクトといった干渉を低減することが最大の課題になります。特に、周辺光は測定結果に非常に大きな影響を及ぼす可能性があります。太陽光を遮断するのはそれほど難しいことではありません。しかし、蛍光灯や省エネ型のランプからの光にはAC成分が含まれており、それらをキャンセルするのは容易ではありません。ADPD174は、周辺光を除去するための2段構成の機能を備えています。まずフォト・センサーと入力アンプの後段には、バンドパス・フィルタが配置されています。その後段に配置されている同期型の復調器は、DC~100kHzの周辺光や干渉光を除去するためにクラス最高の性能を提供します。ADCの分解能は14ビットですが、最大255のパルス値を備えているので、トータルで20ビットの測定値を取得することが可能です。分解能は、複数のサンプルを累計することによって27ビットまで高めることができます。

ADPD174は、独立した2つのタイム・スロットで動作します。例えば、波長の異なる2つの光を個別に測定し、その結果を順に出力するといったことが行えます。各タイム・スロットでは、LEDの励起、光信号の取得、データ処理といった一連の処理が実行されます。

3個の電流源は、それぞれに接続されたLEDを最大250mAの電流で駆動します。先進的な方法によってLEDのパルス発光を制御することで、平均消費電力を少なく抑えられるようになっています。システムの消費電力を削減できれば、バッテリの寿命延伸に貢献できます。

LEDの駆動用回路は優れた特徴を備えています。それは、状況に応じて電流を動的に増減できるというものです。受信した光信号のS/N比に影響を及ぼす可能性がある要因は、いくつも存在します。その例としては、肌の色やセンサーと皮膚の間の体毛などが挙げられます。これらは、受信側の感度に影響を及ぼします。ADPD174では、LEDの励起に関する構成を非常に簡単に実施できます。そのため、自動適応型のシステムを構築することが可能です。タイミングと同期に関する処理は、すべてAFEで行われます。そのため、システムが備えるマイクロプロセッサに、それらに関するオーバーヘッドが加わることはありません。ADPD174を採用した場合、通常の状態であれば、信頼性の高い心拍数の監視デバイスを約1mWの消費電力で稼働させられます。適切な動作ポイントを見つけるために、ADPD174では、LEDの最大ピーク電流を設定できるだけでなく、トランスインピーダンス・アンプ(TIA)のゲインを調整することが可能になっています。LEDの電流とTIAのゲインを最適化したら、LEDのパルス数を増やして、より多くの信号を取得することができます。なお、LEDのピーク電流を増やせば、それに比例してS/N比も向上します。一方、パルス数をn倍に増やしても、S/N比は√n倍までしか改善しないことには注意が必要です。

心拍数の測定に使用するデバイスでは、それを使う人によって最適な設定が大きく異なります。それぞれに異なる肌の色だけでなく、デバイスを身体に設置する位置、温度、血流なども、信号の強度に影響を与えるからです。光学フロント・エンドにおいて、消費電力の内訳は大きく2つに分けることができます。1つは、入力アンプ段、ADC、デジタル・ステート・マシンで消費される電力です。その値は、ADCのサンプリング・レートに依存して大きく変化します。もう1つは、LEDで消費される電力です。こちらは、人の肌の色やセンサーの設置位置に応じて変化します。肌の色が濃い場合や、血流が非常に少ない場所にセンサーを設置した場合には、より多くの電流をLEDに流す必要があります。LEDを流れる平均電流は、LEDを駆動するパルスの幅、パルスの数、ADCのサンプリング時間によって変化します。その値は、LEDを流れる最大電流にパルス幅とパルス数を掛けることで決まります。平均電流は1つのタイム・スロットに対応づけられ、新たなサンプル・データを取得するたびに繰り返し発生します。なお、パルス幅は、1マイクロ秒まで狭くすることができます。

手首で心拍数を良好に測定するには、幅が1マイクロ秒の2つのパルスを使用する場合、LEDのピーク電流として約125mAが必要になります。サンプリング周波数が100Hzであることを考慮すると、LEDの平均駆動電流は25μAです。一方、AFEでは平均250μAの電流が消費されます。両者を加算すると、光学フロント・エンド全体としては275μAの電流を消費することになります(電源電圧が3Vの場合の電力は825μW)。

その他の機械的な課題

先述したように、光学系を設計する際には周辺光の干渉が重要な課題になります。ただ、反射型の測定に対応する光学系には、克服すべきもう1つの大きな課題があります。それは、内部光害(ILP:Internal Light Pollution)と呼ばれるものです。完璧に設計されたシステムであれば、LEDからの光はすべて組織に照射され、そこで反射した光だけがフォト・センサーで捕捉されるはずです。しかし実際には、LED光がハウジングの透明な窓で反射して、フォト・センサーに直接戻ってくることがあります。図4では、これを緑色の矢印で示しています。

Figure 4. Explanation of internal light pollution.
図4. ILPの影響

ILPの影響はDCオフセットとして現れ、信号のAC成分に制限が加わります。その度合いは変調指数(MI:Modulation Index)として知られます。MIは、ILPについて考える際、関心を持つべき唯一の事柄だと言うこともできます。ILPは、窓までの距離を離すことによって解決可能です。しかし、大量生産される製品にその方法を適用するのは非常に困難です。また相応のコストもかかります。このILPの問題に対する解決策となるのがADPD174です。ADPD174は、ILPの影響を低減するために特別に設計されたハウジングを備えています。そのため、ハウジングの窓までの距離を離す必要はありません。図5は、ADPD174におけるILPの低減効果について示したものです。その効果の度合いを、LEDを流れる電流の関数として前世代の製品と比較して示しています。市場には他にもディスクリート構成のソリューションやICを使用したソリューションが存在します。それらのソリューションと比較すると、ILPの低減効果という面でADPD174は大きな長所を備えていると言えます。

Figure 5. ADPD174 ILP impact vs. its predecessor.
図5. ADPD174におけるILPの低減効果。前世代品との比較を示しています。

システムの全消費電力

光学系では、光の干渉に加え、身体の動きによって生じる干渉もキャンセルしなければなりません。身体の動きがあると、ウェアラブル・デバイス全体の性能に影響が及びます。身体の動きは、組織への機械的な接続/接触に変化を及ぼす可能性があります。その結果、光学的な信号の取得結果に誤差が生じるのです。この問題を解決するには、デバイスの動きを測定し、干渉の影響を補正する必要があります。この問題には、アナログ・デバイセズが提供する超低消費電力の3軸MEMSセンサー「ADXL362」を使用することで対応できます。同センサーは、分解能が12ビットのSAR ADCを内蔵しています。その1LSBが1mgに相当します。また、SPI(Serial Peripheral Interface)を介した通信も行えます。同センサーの消費電力はADCのサンプリング・レートに比例しますが、1軸あたり100Hzの出力データ・レートの場合でわずか1.8μAの電流しか消費しません。また、パッケージは3mm×3mmと小型です。現在は、サイズ(実装面積)を1/4に縮小すべく、ADxL362の新世代品の開発を進めています。

足りないものは「接着剤」

ここまで、心拍数や心拍変動の監視に使用するウェアラブル・デバイスを実現するために必要なセンサーについて説明してきました。そうしたデバイスの構築に必要で、まだ触れていない要素としては、システムの心臓部となるコントローラが挙げられます。そのコントローラは、使用するすべてのセンサーを接続し、必要なソフトウェア・アルゴリズムを実行して、その結果を保存、視覚化、転送する役割を果たします。このようなニーズに対応可能なものが、Cortex®-M3をベースとする「ADuCM3027」、「ADuCM3029」です。これらの製品は、消費電力が極めて少ないミックスド・シグナル型のマイクロコントローラです。その消費電流は38μA/MHz未満に抑えられています。クロックの最高周波数は26MHzであり、表1に示す4種のパワー・モードで動作します。

表1. ADuCM3027/ADuCM3029のパワー・モード
ADuCM3027/29 パワー・モード
アクティブ・モード:38μA/MHz未満(すべてのアナログ回路、デジタル回路が動作)
Flexiモード:11.5μA/MHz未満(アナログ回路はアクティブ、コアはクロック・ゲーティング、MCUは停止)
休止モード:900nA未満(RTCは動作、ウェイクアップ割り込みはアクティブ、SRAMは保持)
シャットダウン・モード:60nA未満(アナログ回路とデジタル回路はディープ・スリープ、ウェイクアップ割り込みだけアクティブ)


ADuCM3027/ADuCM3029が備えるミックスド・シグナル対応のフロント・エンドは、分解能が12ビットのSAR ADC、リファレンス・バッファ、温度センサーから成ります。また、両製品は128kB/256kBのフラッシュ・メモリ、4kBのキャッシュ・メモリ、64kBのSRAMを内蔵しています。権限のないユーザにより、外部インターフェースを介してデバイス内部の情報が読み取られることがないよう、いくつもの保護機構が適用されています。このことは、自社が開発したコードやアルゴリズムを保護しなければならないデバイス・メーカーにとって重要な意味を持ちます。ADuCM3027/ADuCM3029は1.8V~3.6Vの単一電源で動作しますが、その内部では、内蔵LDO(低ドロップ・アウト)レギュレータまたはより効率の高いスイッチド・キャパシタ方式の降圧コンバータによって1.2Vのコア用電圧が生成されます。

測定結果をホスト・プロセッサにワイヤレスでアップロードしようとすると、かなりの電力を消費してしまいます。そこで、測定結果に前処理を適用することで、転送しなければならないデータの量を減らせるようになっています。その結果、消費電力を削減することが可能になります。

自己学習が可能なヘルスケア・デバイス

ここまでに説明したとおり、アナログ・デバイセズは、性能の向上と消費電力の削減に向けてセンサーやミックスド・シグナル・システムで構成されるソリューションの開発に注力しています。各種のICやサブシステムを活用することにより、ヘルスケア、スポーツ、ウェルネスの市場に向けて、コイン電池1つで長時間にわたる動作が可能なデバイスを構築することができます。この分野で常に課題になるのは、十分な性能を備えたシステムを、可能な限り少ない消費電力で実現するということです。この課題に対しては、自動適応アルゴリズムを使用して全体的な性能を高め、消費電力の面で最適なシステムの動作ポイントを見いだすことが解決策になります。デバイスを使用する際、設定を少し変更することで、消費電力に応じた最適なS/N比を得ることができます。その結果、心拍数の測定精度を高めることが可能になります。

詳細についてはwww.analog.com/jpをご覧ください。