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Hand touching car's wide screen displaying video call and map.
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Chandlee Harrell,

標準化技術担当シニア・ディレクタ

アナログ・デバイセズ

著者について
Chandlee Harrell
Chandlee Harrellは、ソフトウェア・デファインド・ビークル(SDV)への移行が加速するなか、アナログ・デバイセズにおいて車載技術の標準化とそれに関連するシステム設計についての戦略を推進しています。コンピューティング、ビデオ、ネットワーク・システムに関する技術に精通しています。ブラウン大学で電気工学の学士号、スタンフォード大学で電気工学/コンピュータ科学に関する修士号を取得しました。
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OpenGMSL™ - 独自技術の優位性からエコシステムによるイノベーションへ

August 26, 2026


主なポイント

  • アーキテクチャとしての接続性:AIを利用する車両において、ビデオ・データ用の高速なコネクティビティは単なる1つの機能ではなく、システム・レベルのアーキテクチャに求められる中核的な要件へと進化しています。
  • 規模の拡大を可能にするオープン・スタンダード:独自技術を採用して断片化したプラットフォームは、コストを増大させ、イノベーションの遅延を招く原因になります。一方、オープン・スタンダードの技術を採用すれば、リスクの低減を図れます。それだけでなく、エコシステム全体の相互運用性を迅速に確保することが可能になります。
  • 独自技術の優位性ではなく、共通の基盤を重視:アナログ・デバイセズは、GMSLをオープン化する決断を下しました。それにより、以前は競争上の強みであったGMSLが、業界全体でより多様かつ迅速なイノベーションを可能にするプラットフォームへと変貌しました。
  • 車載分野の枠を超えて拡大するリーダーシップ:OpenGMSLのフレームワークは、ロボット、医療用画像診断装置、航空宇宙分野のシステムなどへと用途を拡げています。OpenGMSLは、ビジョンを中心とするアーキテクチャにおいて普遍的な標準技術として確立されつつあります。

 

自動車の分野では変革のペースが加速しています。また、新たな市場や周辺の市場も急速に存在感を増してきました。更に、イノベーションの波が自動運転車に向けて急速に押し寄せています。その過程で、自動運転車は、より高度な演算処理を必要とするものになりました。AIを利用し、ソフトウェア・デファインドで、クラウドに接続されることが当たり前になったからです。

自動車に搭載されるセンサーやディスプレイの数は急速に増加しています。また、帯域幅の拡大も急速に進んでいます。それに伴い、車両のアーキテクチャでは、ゾーン化と集中化が進むようになりました。結果として、デタミニスティックでリアルタイム対応のコネクティビティに対する需要が高まっています。ソフトウェア・デファインド・ビークル(SDV:Software Defined Vehicles)が進化するなかでは、エッジのインテリジェンス、集中型のコンピューティング、クラウドのリソースが連携し、AIを活用したセンシング、制御、継続的なソフトウェアの更新をサポートすることが極めて重要です。そのための基盤として、スケーラブルでセキュアかつ堅牢なデータ転送の機能が必要になります。

上述したことは、自動車業界に限って見られる傾向ではありません。ロボット、産業用オートメーション、ヘルスケア、航空宇宙などの分野にも、同じようなトレンドが存在します。いずれの分野でも、機器の自律性が高まり、ビジョン技術を中心としたシステムの普及が進んでいます。それに伴い、スケーラブルなコンピューティング、コネクティビティ、相互運用性に対するニーズも高まっています。

コネクティビティは、このような変化を支える重要な基盤です。もはや単なる技術的な課題にとどまるものではなく、システムのスケーラビリティを左右する要因になっています。

自動車は、よりソフトウェア・デファインドなものになりつつあります。それに伴い制約になるのは、性能ではありません。スケーラビリティです。業界全体が前進するために必要なのは共通の基盤です。リーダーシップとは、その基盤の定義に貢献することを意味します。

エコシステムの連携を主導する

アナログ・デバイセズは、実績のあるギガビット・マルチメディア・シリアル・リンク(Gigabit Multimedia Serial Link:GMSL™)技術を、OpenGMSLというオープン・スタンダード(標準規格)として公開しました。GMSLは、ビデオ・データに関する独自のコネクティビティ技術です。これを展開することで、当社は優位性を確保してきました。しかし、当社はエコシステム全体がイノベーションを図れるようにするための共通の基盤としてGMSLを活用できるようにすべきだと考えました。このような意図的な方向転換によって、GMSLを標準技術として利用できるようにしたのです。

当社は、この転換が重要であることを早期に認識していました。インターフェースのレベルで競争を続けるのではなく、そのあり方を再構築する一助になるよう意図的な動きを見せたのです。それによって、システム・レベルのコネクティビティに対するよりスケーラブルなアプローチを実現しました。

GMSLは、既に広く普及している技術です。世界中で30社以上の自動車メーカーがこの技術を採用しています。各社は、先進運転支援システム(ADAS:Advanced Driver Assistance Systems)や安全システム、インフォテインメント・システムなどにGMSLを適用しています。現在では、10億を超える高速ビデオ・リンクが自動車に実装されています。将来を見据えると、課題になるのは機能ではありません。各社が異なる技術/規格を採用することによって、分断が生じることが大きな問題になるのです。

システムの複雑さが増すにつれ、コネクティビティのプラットフォームが断片化することに起因する問題が生じています。それは、開発、妥当性確認、再利用、クロスプラットフォームの統合にかかるコストが増大していることです。オープン・スタンダードへ移行すれば、コスト効率が向上します。また、製品を市場に投入するまでの期間が短縮されます。加えて、リスクを低減することが可能になります。更に、相互運用性が向上し、エコシステムをより迅速に拡大できるようになります。

GMSLの標準化に向けて、アナログ・デバイセズはOpenGMSL Association(OGA)の設立に貢献しました。その目的は、コネクティビティ用の共通基盤を構築し、エコシステム全体での相互運用性を実現することです。それにより、自動車メーカーやそのパートナー企業は、システム・レベルの差別化、ソフトウェア・デファインドな機能の開発、ユーザ・エクスペリエンスの改善に注力できるようになります。

OpenGMSLを軸にすることで、様々な形の連携が急速に広がっています。それにより、統合に関する障壁が低くなり、プログラム全体における実装の一貫性が高まります。また、以下に示すような相乗効果も得られます。

  • プラットフォームを迅速に決定できる
  • 様々なアーキテクチャにおけるスケーラビリティが向上する
  • 導入における一貫性が高まる
  • 業界全体として供給耐性が強化される
  • エコシステム全体が貢献することにより、イノベーションが拡大する

イノベーションは、エコシステムが連携しているときに拡大します。OGAの役割は、パートナー各社が個々に同じ統合上の問題に取り組むのではなく、共に迅速に前進するための基盤を築くことにあります。

OGAの役割

Purple stylized 'OG' logo with white 'open GMSL text.OGAは、アナログ・デバイセズとエコシステムを構成するパートナー企業が主導して設立した業界団体です。画期的なGMSL技術を、ビデオ/データの高速伝送に対応するグローバルなオープン・スタンダードとして確立することを目指しています。OGAは、独自規格による分断を解消し、相互運用が可能な共通の基盤を構築することで、イノベーションを加速させるというビジョンを掲げています。OpenGMSLの対象になるのは車載分野だけではありません。産業用機器、ロボット、ヘルスケア機器といった新興の分野にも展開することが可能です。

市場に急速に浸透するOpenGMSL

上述したように、アナログ・デバイセズとパートナー企業はOGAを設立しました。その目的は、OpenGMSLを、次世代の車両を対象としたコネクティビティの基盤を定義するオープン・スタンダードとして確立することです。それからわずか1年の間に、OpenGMSLのエコシステムは形成の段階から導入の段階へと急速に歩みを進めました。

OGAの1年目のハイライト - 仕様の策定から実装まで

ここでは、過去1年間(2025年~2026年)におけるOGAの取り組みの進捗状況を紹介します。以下に示す成果を見れば、構想の具現化と量産化に向けた準備に意図的に重点を置いてきたことがわかります。

  • OGAには50社以上が加入。自動車に関するエコシステムの主要な企業が参画しています。
  • GMSL2/GMSL3との後方互換性を備える「OpenGMSL Specification v3.0」をリリース。自動車業界全体で、既に幅広く確立されているGMSLのエコシステムを直ちに活用できるようになりました。
  • 複数の半導体ベンダーがOpenGMSLを採用した製品を積極的に開発。それにより、同技術のオープン性が実証されました。また、複数のベンダーが実際に参画できることが示されました。
  • 「CES」において、マルチベンダーの製品間の相互運用性を公開実証。OpenGMSLは単に紙の上で定義された規格ではなく、複数のベンダーが実際に相互運用できるエコシステムが形成されていることが明確になりました。
  • VESA(Video Electronics Standards Association)およびJASPAR(Japan Automotive Software Platform and Architecture)との正式な連携体制を確立。各種標準化団体の枠を超えて連携が拡がっています。
  • コンプライアンス・テストの仕様(CTS:Compliance Test Specification)を策定中。OpenGMSLの採用が拡大するにつれ、一貫性と再現性を備えた状態で相互運用性を確保するための基盤が築かれつつあります。

 

上記のマイルストーンは、仕様策定の段階から、関係各社が積極的に参画して実際に導入する段階へと移行していることを表しています。そのなかで、共通のモデルが実際のシステム設計に影響を与え始めています。また、エコシステムが共通の方向に収斂することで、選択肢を評価する段階から、実装の規模を拡大しつつシステム・レベルの差別化を図る段階への移行が促されます。

現在OGAに加入している企業

Logos of Promoters, Contributors, and Adopters companies.

自律型システムやビジョン駆動型システムの基盤に

自動車業界では、AIを利用するSDVやレベル5(L5)の完全自動運転車に向けた変革が加速しています。そうしたなか、統合に不可欠な基盤としてのコネクティビティの役割は急速に増大し続けています。L5の完全自動運転車の実現を目指す上では、ハイブリッド型のアーキテクチャの必要性が高まります。つまり、エッジのAI、集中型のマルチモーダル処理、クラウド・ベースのトレーニング、演算処理/データに関して増大し続ける要件を、統合されたインテリジェントなフレームワークに組み込むことが求められるということです。

こうした変革は、自動車の分野にとどまらず急速に広がりつつあります。例えば、ヒューマノイド(人型ロボット)や産業用ロボット、医療用画像診断装置、航空宇宙向けのシステムなどにも大きな変化が生じています。それぞれの分野で、ビジョン/AIを中心としたアーキテクチャは、より複雑化すると共に、各要素がより密接に相互接続されるようになっています。それぞれのシステムには、次世代の自動車用プラットフォームを特徴づけるのと同じ特性が求められます。その特性とは、帯域幅、相互運用性、スケーラビリティです。イノベーションの波のなかで、各システムのアーキテクチャでは、ここまでに説明したような変化に対応できるコネクティビティ技術が採用される方向へ向かっていくでしょう。

システムが更にビジョンやAIによって駆動するようになっていくなかで、コネクティビティに関する課題は、単なるリンク・レベルのものではなく、アーキテクチャ・レベルの要件に変化します。車両の神経系とも言えるネットワークに求められる要件を満たさなければなりません。

イノベーションに向けたコミットメント

アナログ・デバイセズは、エコシステムを構成する幅広いコミュニティと連携しながら、コネクティビティ用のプラットフォームを進化させるべく引き続き尽力していきます。例えば、機能の拡充、帯域幅の拡大、時刻同期の精度の向上、堅牢性の改善、診断機能とOTA(Over-the-Air/無線)アップデート機能の強化を通じ、システムの継続的な革新を後押ししていきます。

アナログ・デバイセズは、以下の事柄を実現できるよう注力しています。

  • ビジョン/AIを中心とするスケーラブルなアーキテクチャ
  • リアルタイム対応かつ同期のとれた状態でのシステムの運用
  • 複数のプラットフォームのシームレスな統合

それに加え、新たなニーズや将来的なニーズに対応するために、プラットフォームの進化/強化を迅速に実現することを目指しています。

 

Four people examining a holographic car model on a transparent screen.

規模の拡大に伴うリーダーシップの再定義

OGAの設立から1年が経過しました。現在のOGAは、オープン・スタンダードの確立という段階をはるかに超え、自動車のコネクティビティの未来を形作る中心的な存在になっています。

当初、OGAは断片化への対応を図るために取り組みを進めていました。しかし、現在ではプラットフォームの定義のあり方にも影響を与えつつあります。それだけでなく、エコシステムの連携方法、ソリューションの導入方法、イノベーションの拡大方法にも影響を及ぼしています。アナログ・デバイセズは、この変革の先駆けとなったことを誇りに思っています。自動車業界だけでなく他の様々な業界にもわたって、OpenGMSLのエコシステムを拡大すべく引き続き尽力していきます。