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A woman in sports bra and shorts moving and holding Prevayl Sensor
A woman in sports bra and shorts moving and holding Prevayl Sensor

 

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Prevaylの生体認証スマート・ウェアラブル・デバイス「SmartWearTM」、フィットネスの分野に革新をもたらす


運動能力の向上を目指すアスリートや健康状態の改善(フィットネス)に取り組む多くの人々は、歩数やバイタル・サインなどを追跡するためにいくつかの機器を併用しています。ただ、トラッカ、アプリ、スマート・ウォッチなどによってモニタリングを実施したとしても、得られたデータを保存しているだけでは意味はありません。それでは、有用なインサイト(知見)やパフォーマンス(運動量や運動能力)の改善に関する情報が活用されないままになってしまうからです。

Prevaylは、次世代の生体認証スマート・ウェアラブル・デバイスの分野におけるパイオニアです。同社の特徴は、パッケージの小さいデバイスとして、優れた生体測定技術を提供している点にあります。それらのデバイスがフィットネス向けトレーニングの指針となったり、ユーザの運動能力を向上させたりすることをビジョンとして掲げています。また、より安全でよりパーソナライズされた効果的なワークアウトを実現することも目指しています。 

Prevaylのスタイリッシュな生体認証スマート・ウェアラブル・デバイスは、スポーツ・ウェアの中に小型のセンサーを埋め込む形で実現されます。そのセンサーにより、心拍数や呼吸数に基づいて、身体の回復の度合いや運動の準備の状態などを高精度かつリアルタイムにモニタリングします。同社の目標は、センサーによってデータを連続的に収集することにより、実用的なインサイトを抽出することでした。ただ、実際に製品を開発しようとした際、Prevaylは大きな課題に直面することになりました。というのも、小型のフォーム・ファクタによって、電源の供給機能やモニタリング機能に加え、他のどのウェアラブル・デバイスよりも多くのデータ・ポイント(1秒あたり最大1000個)に対する処理機能を実現しなければならなかったからです。

この課題に対処するために、Prevaylは、データ変換、信号処理、パワー・マネージメントの分野のリーディング・カンパニーであるアナログ・デバイセズに支援を求めました。アナログ・デバイセズは、臨床グレードのセンシング技術に加え、現実世界の事象を基に生活の変革に役立つインサイトを生成するための専門知識を有しているからです。

Prevaylの概要

事業内容

Prevaylは、フィットネスやパフォーマンスの限界を押し上げる次世代の生体認証スマート・ウェアラブル・デバイスの事業展開を目指している。同社のデータ・サイエンティストと服飾デザイナから成るチームは、そのデバイスに関連するコネクテッド・エコシステムを構築した。

目標

個人の運動能力や健康状態の全体像を完全に把握できるようにすることを目指す。これを実現するために、より安全で効果的なトレーニングを行うための指針となる実用的なインサイトをリアルタイムに提供できるようにする。

課題

複数のデバイスを併用する必要性を排除する。そのために、リアルタイム性を備え、サンプル・レートが高く、消費電力が少なく、臨床的に正確で、一元化されたソリューションをコンパクトな形状で実現する。また、取得したすべてのデータを集約し、シンプルなUI(ユーザ・インターフェース)で表示/処理できるようにする。

ソリューション

IC製品として、心電図(ECG)の測定に対応するアナログ・フロント・エンドIC「MAX30001」、温度センサーの「MAX30208」、高度なバッテリ管理用PMIC(Power Management IC)である「ADP5360」を採用する。それらを、エレガントなデザインのコネクテッド・ワードローブと組み合わせる。

Michael John Lynch
「当社とアナログ・デバイセズの相乗的な関係は、当社のコンセプトが生まれた瞬間に始まりました。」

Michael John Lynch 氏

Prevayl 未来担当バイス・プレジデント

すべての始まり

フィットネス分野の市場規模は数十億米ドルのレベルに達しています。2019年、Prevaylはその市場に向けたウェアラブルな生体認証デバイスであるSmartWearの開発に着手しました。スタートアップ企業である同社は、データに関するエキスパート、服飾デザイナ、生地に関する研究者などを擁しています。しかし、同社が掲げるビジョンを実現するためには、エレクトロニクスに関する課題を解消する必要がありました。最終的な製品を完成させるには、消費電力を抑えつつ、高度な機能と高い精度を提供する小型のデバイスを実現しなければならないからです。具体的には、切手ほどの大きさのセンサー・パックにすべての回路を収め、1回の充電によって最長7日間にわたり動作を持続させる必要がありました。つまり、Prevaylは、デバイスのSWaP(サイズ、重量、消費電力)に関する課題に直面していたということです。同社としては、そのようなことを可能にする技術を調達し、システムを構築する必要がありました。

上記の課題を解決するために、Prevaylはエレクトロニクスに関するサポートを提供してくれるパートナー企業を探すことにしました。その結果、同社が選択したのがアナログ・デバイセズです。Prevaylは、アナログ・デバイセズが擁する関連分野の専門家やフィールド・アプリケーション・エンジニア(FAE)とのミーティングを重ねました。その内容を踏まえ、アナログ・デバイセズの技術者らは、Prevaylの目標について議論し、技術的な課題についての検討を行いました。その結果として、バイタル・サイン・モニタリング(VSM)技術に対応する広範な製品群の中からPrevaylの要件に合致するものを選択/提示しました。それらの製品の中で、特にPrevaylが注目したのは臨床グレードのECG向けアクイジション・システムであるMAX30001です。このICを使えば、消費電力を抑えつつ、高いサンプル・レートで心臓の電気的な活動に関する情報を取得/記録することができます。

Prevaylで未来担当バイス・プレジデントを務めるMichael John Lynch氏は「当社は、まだ設計途上の段階にあったアナログ・デバイセズのECG用ICについて検討を行いました。アナログ・デバイセズは、その検討の結果をフィードバックする機会を与えてくれました」と述べています。一方、アナログ・デバイセズでシニア・アカウント・マネージャを務めるRichard Wardは「当社はPrevaylからの提案のうちいくつかを製品開発に取り入れました。それにより、ICの設計を改善することができました」と語ります。両社の連携を通じ、Prevaylは次のような知見を得ました。すなわち、ICの機能をどのように活用すれば、完璧なアルゴリズムを開発できるのかを理解することができました。また、どのようにすれば、実装スペースの問題から容量に制約のあるバッテリの動作時間を延ばせるのかということも把握できました。 

なぜ、ECGはフィットネスのトレーニングに欠かせないのか?
ECGを取得する際には、心臓の拍動の速さ、拍動のリズム(一定か不規則か)に加え、心臓の様々な部分を通過する電気的インパルスの強さとタイミングが記録されます。それにより、ストレスやエクササイズに対する心臓の反応を評価し、ワークアウトの限界レベル(安全を確保できる範囲)について判断を下すことが可能になります。 

加えて、Prevaylはデジタル温度センサーとしてアナログ・デバイセズのMAX30208も採用することにしました。同ICは、±0.1°Cという高い精度を達成します。その消費電力とサイズを踏まえると、同ICは卓越した性能を提供する製品だと言えます。更に、同社はバッテリ管理用のPMICであるADP5360も採用しました。このICは、過充電/過放電に対する保護機能などを備える高度な製品です。

小さなセンサーに適用された強力な技術

Animation-x3-Prevayl
Prevaylが開発したトレーニング・ウェアの胸部近くには、アンダーバンドが織り込まれます。そして胸部の隠しポケットには、アンダーバンドの電極と接触する形で、金属パッドを備える小型センサーが収められています。

Prevaylは、生体認証スマート・ウェアラブル・デバイス向けに革新的なソリューションを開発しました。同社は「Prevayl Sensor」を開発しただけでなく、トレーニング・ウェアに織り込めるスマート・アンダーバンド(帯状の電極)を生み出しました。それらにより、トレーニング・ウェアを着用した人の心臓を対象とし、臨床グレードのECGの測定値を直接取得することが可能になりました。このようなアンダーバンドを開発したことから、フィットネスのトレーニング中に動きを制限したり妨げたりする邪魔なワイヤ、ケーブル、ストラップ類が不要になります。また、胸腔から心臓の電気的な活動に対応する信号を直接測定することにより、正確な生体測定値とパフォーマンスに関するデータをリアルタイムに取得することが可能になります。センサーと電極をそのような位置に配置した上で、アナログ・デバイセズのECG技術を活用することにより、心臓の動きに関する信号を直接測定できるようになったということです。それに対し、手首に装着するスマート・ウォッチなどでは、間接的な方法でそうした測定を行います。それと比べると、Prevaylのトレーニング・ウェアでは、直接的な測定によってはるかに高い精度が実現されます。特に、激しいトレーニングを行っている際にも高い精度が得られる点は大きな差別化要因になります。

Adam Crofts
「アナログ・デバイセズの現場の技術者チームは、当社に適切なサポートを提供してくれました。そのおかげで、当社はトレーニング・ウェアを主体とした開発とエレクトロニクスの統合に集中できました。しかも、開発時間を短縮し、早期に製品を市場投入することが可能になりました。」

Adam Crofts 氏

Prevayl 最高経営責任者(CEO)

よりスマートなワークアウトへの3つのアプローチ

Step-1-Prevayl
1. スマート・アンダーバンドによって強化されたPrevaylのSmartWear(トレーニング・ウェア)
Step-2-Prevayl
2. データの収集を実現するPrevayl Sensor(隠しポケットに収容)
Step-3-Prevayl
3. パフォーマンスを確認するためのPrevayl App

Prevaylは、取得したすべての生体データを集約し、使いやすいスマートフォン用アプリに表示することが可能な一元化されたソリューションを提供します。それにより、フィットネスとパフォーマンスの全体像を把握することができます。トレーナや医療分野の専門家といった第三者に対してそれらのデータを送信し、内容を確認してもらうことも可能です。

Display-Prevayl
Prevayl Appの表示画面。リアルタイムの監視結果と、すべての生体測定データをリアルタイムでリモート監視した際の結果が表示されています。

Prevaylは、ヘルス・モニタリングを高い精度で行うための手段を提供します。それにより、心拍数、心拍変動、トレーニングの負荷といった指標の測定値を取得することが可能になります。同社の技術を利用すれば、医療分野の専門家の助けを借りることなくECGを測定できます。また、運動能力を高めるためのトレーニングの指針が示されます。

リアルタイム対応のインサイト・エンジン

A man in gym with real-time data overlay
A woman playing tennis with real-time data overlay
A man on running track with real-time data overlay

Prevaylのデータ・サイエンティストやデータ・アナリストらは、インサイト・エンジンの開発に取り組みました。その先進的な技術と反応の速いアルゴリズムにより、ユーザは自分の健康状態やフィットネスについてより正確かつ明確に把握することができます。インサイトについては、いくつかの便利な機能が提供されます。その一例がBodyCheckです。これは、運動する準備が整っているか否かを判断するために設計された回復テストの機能です。また、FitnessCheckは、ユーザが自分の健康状態とフィットネスのレベルについてより詳細に把握するために利用できる心血管フィットネス・テストの機能です。更に、より安全で効果的なワークアウトを行うために、セッション中の負荷の累積値をリアルタイムに測定するBody Loadという機能も提供されています。

Prevaylの今後の展開

Prevaylは2022年にSmartWearを発売しました。この製品は、臨床グレードのECGによって強化された世界初のパフォーマンス測定用のトレーニング・ウェア(ウェアラブル・デバイス)です。精度の高さの面では、他の追随を許しません。また、生体測定分野のパイオニアであるPrevaylは、スマート・ウェアに関する完全なエコシステムを構築しています。それにより、ソリューションとしての価値を備える衣類向けに機能性を備える繊維や専門技術を駆使した布地が提供されています。

Prevaylの最高経営責任者(CEO)を務めるAdam Croftsは、「アナログ・デバイセズは高度な技術とVSMに関する専門知識を有しています。それらを提供してもらうことで、当社は競合他社に対する優位性を得ることができました。現在は、その優位性が当社の強みになるように活用を進めています。アナログ・デバイセズの臨床グレードのチップセットと消費電力の削減に対する取り組みは大きなメリットを生み出します。その恩恵を享受することにより、当社はスマート・ウェアについての再定義を行いました。また、将来に向けて、その定義内容に即した製品を構築することができました」と述べています。

4年間にわたる開発作業を経て、Prevaylは1つの製品を実現しました。それだけにとどまらず、ウェアラブル技術のエコシステムを構築することにも成功しました。同社の革新的な技術は、どのような衣料にも組み込むことができます。それにより、特定の問題を効果的に解決することが可能なカスタムのソリューションを生み出すことが可能になります。なお、この技術については徹底的な検証が行われ、最高のレベルで技術を保護するために特許も取得済みです。今やフィットネスに限らず、防衛、ヘルスケア、作業服など様々な業界のブランドがPrevaylの技術を利用して、変化の先頭に立つことができるようになったのです。

Prevaylは、戦略的パートナーシップを通じてウェアラブル技術の再定義を行い、それを進化させることに成功しました。同社は、その技術を、コネクテッド・エコシステムのコンポーネント(特許を取得済み)としてライセンス供与します。それを活用すれば、パートナー企業は、作業服、ユニフォーム、スポーツ・ウェアなどを対象とし、独自のラインナップのコネクテッド・ウェアラブル・デバイスを開発することができます。Prevaylのコマーシャル・ディレクタを務めるAlex Crimmens氏は、「今後、当社は非常に高い先見性を持つブランドとの提携を進めます。それにより、アイデアに命を吹き込むだけでなく、現実の製品を市場に投入することを目指します。当社と提携先企業は、ウェアラブル技術の可能性を拡大し、人々の健康、ウェルネス、パフォーマンスを高める製品を市場に提供していきます」と述べています。