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Surgical robot operating on a patient.
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Harsha Devaraj(博士),

システム・アプリケーション/ヘルスケア担当シニア・エンジニア

アナログ・デバイセズ

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Ben Ferrara,

システム・アプリケーション/ヘルスケア担当スタッフ・エンジニア

アナログ・デバイセズ

著者について
Harsha Devaraj(博士)
Harsha Devarajは、アナログ・デバイセズのヘルスケア事業部門で半導体技術を外科用機器に応用する業務に従事しています。術中外科センシングの分野で5年以上の経験を蓄積。患者の転帰を改善すべく臨床トランスレーショナル・リサーチに情熱を注いでいます。ダートマス大学でエンジニアリング・サービスに関する博士号を取得しました。
Ben Ferrara
Ben Ferraraは、アナログ・デバイセズのヘルスケア事業部門で半導体技術を外科用機器に応用する業務に従事しています。15年以上にわたり、電子システムの設計に従事。ノースイースタン大学で電気工学の学士号を取得しました。
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外科インテリジェンスを支える安全でスマートな小型の手術器具、先進的な半導体が必須の要素に

August 20, 2026


主なポイント

  • 医療分野では、先進的な半導体によるセンシングと、それによって取得したリアルタイムのデータの活用が進んでいます。その結果、手術の精度を決める要因は、個人のスキルからシステムの能力へと移行しつつあります。
  • 小型の電源とモーション・コントロール・システムは、侵襲性を最小限に抑えた手術の普及を促進します。その結果、合併症の抑制、回復期間の短縮、治療費の削減を図ることが可能になります。
  • 機器のネットワーク接続が進むと、ハードウェアをベースとする認証や真正性を検証可能なサプライ・チェーンが重要な要素になります。それらは、規制当局から信頼を得たりブランドを保護したりするための基盤になるからです。

 

人類は、1万年も前から外科手術を行っていました。例えば、てんかんの患者の頭部に穴を開けるという一見残酷な方法で治療が試みられていたことがわかっています1。

今日では、患者への接し方が改善され、高度な医療技術に対する理解が深まり、かつてないほど高い成功率で疾患を治療できるようになりました。その一方で、医療の分野では需要の増加や人材不足に起因する問題が山積しており、世界各地で医療制度が圧力にさらされています。また、安全な外科治療を受けられない人の数は世界全体で推定50億人にも上っています2。このような背景から、医療業界は半導体のレベルで生じつつある静かな革命に注目し始めました。

先進的なエレクトロニクスにより、手術は個々の外科医のスキルだけに依存する形から、拡張知能を活用する形に変わりつつあります。それにより、多くの医療現場で一貫性のある治療の成果が得られるようになっています。

生物学と技術が交わる領域で求められるのは、高い精度

現代の外科分野は根本的な課題に直面しています。外科インテリジェンスに関する技術は、かつてないほど進歩しました。例えば、侵襲性を最小限に抑えた手術や、ロボットによる支援、画像を利用したガイダンスなどが新たに導入されつつあります。それらを実現するためには、より多くのデータ、より高度なリアルタイム処理、より強固なフェイルセーフの機能が必要になります。しかも、それらすべてをより狭いスペースに詰め込まなければならないのです。

深部組織に治療を施すケースについて考えてみましょう。従来の手法では、視覚や触覚、組織の抵抗感からフィードバックを得ていましたが、ペンほどの大きさのポートを通じて同様の治療を施すとなると、そうしたフィードバックはいずれも弱まるか失われてしまいます。しかし、患者の安全を確保するためには、あらゆる動きを監視し、検証し、記録しなければなりません。また、医療業界には、高度な外科医療を提供する施設と同等の品質基準を満たしつつ、より迅速な処置を行うことが求められています。

上記の課題は、人材面の問題が加わることで更に深刻になります。世界的に手術の需要が高まるなか、様々な医療施設で多様なチームが対応する場合でも、常に確実な治療の成果を上げなければなりません。かつて、手技の面でのばらつきは、人間の専門技能に本質的に伴うものとして容認されていました。しかし、大規模に医療を提供している現在では、そうしたばらつきは、外科医療全体にとってのリスクになり得ます。そのため、熟練の医師による判断の精度と適応性を維持しつつ、工学的に設計されたシステムの一貫性と安全性を防御策として組み入れることが、新たな課題となっています。では、どうすればそのような課題を解決できるでしょうか。

半導体の革新がもたらす外科インテリジェンス

ここまでに取り上げてきたようなジレンマの解決策は、次のようなものになります。すなわち、手術用の器具を受動的かつ機械的なツールから、センシングとアクチュエーションの機能を備えたインテリジェントなシステムへと変革するのです。そのようなシステムは、最先端の半導体技術によって実現されます。それにより、必然的に変革が進むことになります。つまり、個々の外科医のスキルだけに頼る状態から、外科分野で拡張知能を活用する形に移行することが可能になるということです。この変革の中核を成すのは、手術器具の先端に収まるほど小さなセンサーです。

技術 特徴 機能 メリット
加速度センサー、ジャイロ・スコープ、慣性計測ユニット(IMU) MEMSベースのモーション・センサー/姿勢センサー 姿勢や動きの検出、ジェスチャの認識。輸送中の損傷の特定 無菌/非接触での制御が可能。損傷した機器の使用の防止。冗長性のある位置確認による安全性の向上
インピーダンス・センサー 電気的な接触に基づく組織の解析 電気的特性によって、組織の種類をリアルタイムで識別 外科医に対し、組織の状態に関するフィードバック情報を即座に提供。病変マージン(切除縁)の特定。重要な組織への接近の検出
絶対位置エンコーディング(ロボット・システム) 電源がない状態でも位置のデータを保持 電源喪失時でも角度/回転位置を高い精度で追跡 搬送、保管、起動、停電の際にも高精度のモーション・コントロールを実現。キャリブレーションの再実行は不要
力/圧力センサー 触覚のフィードバック用の測定システム 遠隔手術システムにおける触覚の測定と再現 外科医が繊細な組織に対して遠隔操作で適切な力を加えることが可能。過剰な力による組織の損傷を防止
高分解能のA/Dコンバータ(ADC) 同時サンプリング機能を備える16~24ビットのADC センサーからの信号を極めて高い精度でリアルタイムにデジタル化 手術に不可欠なごくわずかな変化の捕捉。クローズド・ループ制御の実現。重要なデータの取りこぼしの防止
電気的絶縁 患者とシステムの間に5kVrmsの絶縁バリアを設ける 電気的な障害から患者を保護。信号品質を維持 患者の安全に関する基本的な要件。感電のリスクを排除。規制/規格への準拠
小型の電源モジュール スイッチング・コントローラ、インダクタ、受動部品をmmサイズのパッケージに統合 発熱や電磁干渉(EMI)を抑えつつ、最小限のスペースで効率的に電力を供給 機器の小型化。基板面積の削減。限られたスペースで多機能化を実現。信頼性を向上
暗号化によるハードウェアの認証 暗号鍵の保存、デジタル署名の検証 機器の認証、使用サイクルの追跡、キャリブレーション・データの保存 患者を偽造機器から保護。適切な保守間隔の確保。真正性を検証可能なサプライ・チェーンの構築。機器のライフサイクル管理の実現

質の高い外科医療を、より多くの人に

Doctor in white coat shows tablet to smiling older patient.

先進的な半導体によって実現される外科インテリジェンスは、手術室の枠を超えて拡がっていきます。例えば、回復期間の短縮、合併症の発生率の低減、医療サービスが行き届いていない地域への質の高い医療の提供などにも貢献します。自動化技術は外科医に取って代わるのではなく、外科医の能力を補完するものになります。それにより、外科医は機械的な確認作業ではなく、臨床上の判断に集中できるようになります。そして、医療における一貫性は理想ではなく前提となり、質の高い外科医療をより広く提供できるようになります。

医療業界は、かつてないほどの需要の増大と外科医療へのアクセスを巡る課題に直面しています。そうしたなか、高度なセンシング、インテリジェントな処理、高精度のモーション・コントロールは、単なる技術の漸進的な進歩を超える意味を持っています。このことは、手術器具の役割そのものを根本から捉え直すことにつながります。つまり、手術器具は熟練の外科医が使用する単なる道具ではなくなります。より安全でより一貫性が高く、より多くの人が利用できる外科医療を世界中で実現するためのインテリジェントなパートナーへと進化していくのです。

参考資料

1 S. Collado-Vazquez、J. M. Carrillo「Cranial Trepanation in The Egyptian(エジプト人の頭蓋穿孔術)」2014年
2 Lancet Commission on Global Surgery「Global Surgery 2030: Evidence and Solutions for Achieving Health, Welfare, and Economic Development(グローバル・サージェリー2030 - 健康、福祉、経済発展の達成に向けたエビデンスと解決策)」2015年