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閉じるインテリジェントな神経システムで、よりレジリエントなソフトウェア・デファインド・ビークルを実現
消費者は、生活全般にわたって高度にパーソナライズされたエクスペリエンス(体験、環境)を求めるようになりました。代表的な例としてはスマートフォンやホーム・エンターテインメント・システムが挙げられますが、それらと同じくらいエクスペリエンスに関するニーズが高まっているものがあります。それは自動車です。車室内のエクスペリエンスや機能性は、ソフトウェア・デファインド型(software-defined)の技術によって実現されます。実際、自動車業界はその種の技術を活用することで、より没入感にあふれ、安全で、操作性の高い空間を生み出すキャビン・エクスペリエンスを提供する方向へと進んでいます。そうした技術が登場したことで、どのようにして価値を創造して提供するのか、また成功を得るためにはどのような戦略的パートナーシップが必要になるのかということが、根本的に再定義されつつあります。
消費者は、オーディオ・システム、音声による操作に対応するインフォテインメント・システム、先進運転支援システム(ADAS:Advanced Driver Assistance System)といった自動車の機能に引き付けられます。それがどのような機能であっても、課題になるのは費用対効果の高いコスト構造で消費者の期待に迅速に応えることです。賢明な自動車メーカーは、今日の自動車において、洗練された半導体ソリューションを中心とした電気設計上の課題を解消することが重要であることを認識しています。
今後、重要な意味を持つ要素はいくつもあります。例えば、インテリジェントなエッジや堅牢な接続性、効率的なパワー・マネージメント、ソフトウェアの一元化、OTA(Over-the-Air)による機能の更新などです。これらに対応可能な電気/電子アーキテクチャを実現するためには、半導体技術プロバイダがシステム・レベルの視点を備えておく必要があります。
新時代の幕開け - ソフトウェア・デファインド・ビークル
「恐らく、ソフトウェア・デファインド・ビークルは、私たちがいつか所有することになるものの中で最も技術的に進化した機器になるでしょう。現在、自動車のエコシステムは拡大し続けています。新たなプレーヤは、消費者に成果をもたらすことを目的とし、かつては想像できなかったような方法で協業しています。そうしたメガトレンドによって、私たちは新たな時代に導かれつつあります。」Yasmine King
オートモーティブ・キャビン・エクスペリエンス担当バイス・プレジデント | アナログ・デバイセズ
共通性を維持しつつ、独自性を創出
ソフトウェア・デファインド・ビークルに用いられる新たな技術によって、車内のエクスペリエンスは進化しつつあります。例えば、搭乗者への適応、キャビン環境のパーソナライズ、安全性の強化、性能の最適化が実現されるといった具合です。そうしたイノベーションによって、自動車メーカーは進化した固有のキャビン・エクスペリエンスを(OTAによるアップデートを通じて)提供できるようになります。その結果、ブランドに対するロイヤルティや信頼が育まれる上に、自動車を所有することを通じたエクスペリエンス(オーナーシップ・エクスペリエンス)が向上されます。自動車メーカーが高精度の技術を活用すれば、消費者の嗜好に関する深い洞察を得られるようになります。それらの洞察は、戦略的なイノベーションの推進に役立つほか、自動車の購入者との長期的な関係を強化することを後押しします。
一方で、製品への新たな技術の導入を加速させつつ、消費者の期待に最善な形で応えるにはどのようなアプローチが最善なのでしょうか。その答えの1つは、自動車メーカーが標準化されたスケーラブルな半導体プラットフォームを活用できるようにすることが挙げられます。そうしたプラットフォームは、開発の加速、コストの管理、ブランドの継続的な差別化に役立つはずです。また、自動車メーカーは、そのようなスケーラブルなプラットフォームを活用することで、ソフトウェアのコードをより有効に再利用したり、競争力を維持したりできるようになります。
「今後、自動車のハードウェアについては、アーキテクチャの汎用性を高めていかなければなりません。つまり、スマートフォンのようにプログラマブルなものにする必要があるということです。その主な目的は、自動車メーカーが製品やサービスの差別化を図れるようにすることです。そのためには、柔軟性の高いコネクティビティ技術を提供して、あらゆる機能があらゆるデータを利用できるようにしなければなりません。そうすれば、ソフトウェア開発者は、機能安全、セキュリティ、規制への準拠を実現しつつ、アプリケーション開発において最大限の自由を確保することが可能になります。その結果、自動車メーカーは差別化を図るための能力を得ることができます。」Geir Ostrem
オートモーティブ・キャビン・エクスペリエンス担当技術フェロー | アナログ・デバイセズ
自動車向けのインテリジェントな神経システムを実現する
ソフトウェア・デファインド・ビークルは、2030年までに約200Gbpsのレートでデータ(主にビデオ・データ)を生成するようになると予想されます1。それらのデータを車両のエッジに搭載されたセンサー間で、あるいは高性能な車載コンピュータ/ストレージまで、更にはディスプレイやアクチュエータまで伝送するためには、有線の高速データ・リンクが必要になります。自動車メーカーが顧客のドライビング・エクスペリエンスとオーナーシップ・エクスペリエンスを高めるようにするには、そうした高速なデータ・リンクに高い演算能力とAIを組み合わせなくてはなりません。
一方、エッジ処理によって、センサーが集中型のクラウド・コンピューティング・システムに頼ることなく、ローカルでリアルタイムの判断を下せるようになれば、データ伝送に関する問題が緩和されます。そのようなインテリジェントなエッジにより、自動車メーカーは高精度かつリアルタイムのインテリジェンスを用いて、顧客のドライビング・エクスペリエンスとオーナーシップ・エクスペリエンスを高められるようになります。
より優れたソフトウェア・デファインド・ビークルを実現するためには、何が必要になるのでしょうか。ここまでに述べたことを踏まえれば、アーキテクチャを簡素化し、インテリジェントなエッジを実現し、プラットフォームの価値を高め、電力効率を改善する必要があるはずです。これらを実現するためには、半導体企業がシステム・レベルの設計に対処しなければなりません。アナログ・デバイセズの場合、人間の神経系を模したインテリジェントな神経システム(nervous system)を開発しています。これを活用すれば、様々なサブシステムを接続して複雑さを増大させることなく、シームレスな相互運用性とリアルタイムの適応性を実現することができます。つまり、ソフトウェア・デファインド・ビークルにおいて、データを迅速に収集/分析することが可能になります。その結果、情報に基づく迅速な意思決定を行い、性能と安全性を最適化し、変化する状況に適応できるようになります。
自動車業界では、ドメイン・コントローラと特定機能向けのコントローラを、集中管理型のクロスドメイン・コンピューティング・ユニットに統合するようになっています。それに伴い、ソフトウェアが一元化され、OTAによる頻繁なアップデートに対応できるようになりました。結果として、車両の保証に関するコストが抑えられ、ユーザ・エクスペリエンスを高められるようになってきています。クロスドメインのゾーン・コントローラは、配線の大幅な削減を可能にします。ただ、データ・フローを改善し、様々なサブシステムのシームレスな制御を実現するためには、より高度なネットワーク技術が必要です。また、車内のソフトウェアやハードウェア・コンポーネントの設計/統合/管理の方法を見直さなければなりません。
インテリジェントな神経システムがもたらす3つの能力
構成
ここで言う構成(configure)とは、効率的な運用とタイムリーな意思決定を実現するために、システム間のシームレスな通信を確保するということを意味します。例えば、ADASについては次のような状況が想定できます。すなわち、霧が立ち込める中で、センサーによって物体を検知し、アルゴリズムによってそのデータを分析して、車両から警告を発しながら、物体を避けるためのブレーキ/ハンドル操作の準備を行うといった具合です。安全性と性能を確保するためには、カメラから意思決定用のアルゴリズム、応答を実行するメカニズムまで、あらゆるコンポーネントが連携して動作する必要があります。
合成
ここで言う合成(synthesize)では、複数のセンサーで取得したデータを集約/融合/処理する車両の能力に焦点を絞ります。つまり、インテリジェントなエッジにより、包括的なデータ分析の結果に基づいて、反射的なレベルの迅速な意思決定を行えるようにするということです。ここで、交通量の多い都市環境を走行する自動車を想像してみてください。その車は、状況の認識能力と意思決定の能力を強化したものでなければなりません。そのためには、GPSやV2X(Vehicle to X)によるインプットに加え、カメラ、LIDAR、レーダーといった車載センサーからのデータを統合する必要があります。また、合成は、音声コマンドなどを用いた人間による操作を解釈し、車両のインテリジェンスと応答性を向上させる役割も果たします。それにより、車両がただリアクティブなだけでなく、プロアクティブであることが保証されます。
調整
最後のステップは調整(coordinate)です。これはソフトウェア・デファインド・ビークルのインテリジェントな神経システムを1つにつなぐ上で要になるものです。様々なハードウェア・プラットフォームを調整することで、洞察を可能にし、スケーラビリティをサポートし、エコシステムの統合を促進します。調整は、ハードウェアとソフトウェアのすべての要素が調和して機能し、車両が様々な条件下で効率的かつ安全に動作することも保証します。
デジタル・コックピットのインテリジェントなエッジの最適化
構成、合成、調整の3つの能力を確立したら、自動車の技術的な変革に向けたビジョンを実現するために行うべきことがあります。それが、インテリジェントなエッジの最適化です。今日の自動車は、その基盤を形成する3つの主要なネットワーク(音声、視覚、車体制御)に依存しています。更に、ケーブルや配線を簡素化し、製造工程を合理化しながら、信頼性と保守性を高めるというニーズも存在します。
音声ネットワークについては、低コストの配線によってリアルタイム機能を実現するための伝送機能が構築されています。車体の制御については、マイクロコントローラとエッジのソフトウェアを排除すれば、コストが削減されると共にアーキテクチャが簡素化され、ソフトウェア・デファインドの機能にアクセスしやすくなります。このアプローチは、サイバーセキュリティの強化にもつながります。つまり、搭乗者のプライバシーと安全を守ることに役立ちます。
視覚と知覚に対応するためのネットワークについては、配線用のハーネスを簡素化しなければなりません。それだけでなく、カメラ、レーダー、LIDARから得られるデータの増加に対処するために、より帯域幅の広いソリューションが必須になります。
アナログ・デバイセズは、業界を牽引する技術ソリューションのポートフォリオによって、上述した機能を実現します。
「ロード・ノイズ・キャンセル、空間オーディオ、音声制御といった高度なオーディオ/音響アプリケーションでは、2030年までにオーディオ処理の量は2.5倍に増大し、スピーカとマイクの数は2倍になると見込まれています。同様に、車載エレクトロニクスの数も45%増加すると予想されています。重要なのは、レイテンシの小さい接続性を実現し、関連するハードウェアの複雑さ、消費電力、コストを抑えることです。そのためには、ECU(電子制御ユニット)を中央のコンピュータに統合し、10BASE-T1S対応のイーサネットをベースとするゾーン・コントローラとネットワークで接続できるようにする必要があります。」Andrew Lanfear
車載キャビン・エクスペリエンス、車載オーディオ/ネットワーク担当ゼネラル・マネージャ | アナログ・デバイセズ
ソフトウェア・デファインド・ビークルへの移行を後押しする各種の規制ソフトウェア・デファインド・ビークルによる変革を加速させる上では、政府系の規制も重要な役割を果たします。例えば、世界中で厳格な安全基準が義務づけられたとしたら、インテリジェンスなエッジは必須の要件になるでしょう。安全基準の義務づけにより、機能性に対する要件は厳しくなります。それについては、ソフトウェア・デファインドの機能によって対応することが最善の策になります。具体的な規制の例としては、以下のようなものが挙げられます。
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「現在の自動車に搭載されているレベル3のADASでは、12台以上のカメラと複数のレーダーを使用しています。また、今日の高級車ラインだと4台以上のディスプレイを搭載していることも少なくありません。より洗練された安全機能、自動運転機能、インフォテインメント・システムを実現するためには、それらの台数はますます増えていくでしょう。この自動車の変革期においては、配線とソフトウェアのオーバーヘッドを最小限に抑えつつ、カメラや知覚センサーで取得したデータを伝送するための信頼性の高い接続性を実現することが不可欠です。」Bala Mayampurath
車載ビデオ/データ・ソリューション担当バイス・プレジデント | アナログ・デバイセズ
ソフトウェア・デファインド・ビークルの核心は「自動車を所有する喜び」
モビリティの未来を再定義するためには、調和のとれたエコシステムを構築しなければならないのは明らかです。そうした調和の核心は、自動車を所有する喜びを実現することです。アナログ・デバイセズは、パーソナライゼーション、価値の向上、エコシステムの触媒作用を通じて、そのような喜びを増幅させることを目指しています。
アナログ・デバイセズが加わっているエコシステムは、単なるコンポーネントの集合体ではありません。消費者の行動に関する貴重な洞察を得られるようにしてくれるダイナミックなプラットフォームです。その種の洞察は、お客様と長期的な関係を築きながら、お客様のニーズの変化に適応したり、それを満たすために進化することに役立ちます。このエコシステムは、標準化された半導体プラットフォームや自動車用の神経システムを具現化する上で重要な役割を果たします。それらがもたらすアジリティを活用し、エコシステム全体で共創(コ・クリエーション)を進めることにより、新たな機能や能力を素早く市場に投入しつつ、持続可能性を確保することが可能になります。
参考資料
1 Analog Devices internal estimates(アナログ・デバイセズによる予測)
2 NIH; Real-time driver monitoring system with facial landmark-based eye closure detection and head pose recognition(リアルタイム対応のドライバー監視システム、顔の特徴に基づく閉眼検出と頭部の姿勢認識が可能に)
3 United Treaty Collection(国連条約集)
4 Congress.gov: H.R.3164 - Hot Cars Act of 2021(ホット・カー法 2021年)
5 Alliance for Automotive Innovation; FCC Greenlights Major Safety Tech: Alerts Drivers When Kids Left in Hot Cars」(FCCが主要な安全技術を認可、高温の車内に子供が置き去りになっていることをドライバーに警告)