要約
ビデオシステムの究極の品質尺度は、大部分最終的な画像の視覚によって決まります。しかし、品質を判断する客観的な測定方法を持つことも有益です。ビデオのすべての電気的測定の中で微分利得(dG)および微分位相(dP)は多くの場合、システムの品質を決定するために最良です。このアプリケーションノートは読者がdG/dPの測定値とそのビデオ画像品質に及ぼす影響の関係を理解するのに役立ちます。
はじめに
コンポジットビデオ信号(CVBS)を扱うシステムで良好なビデオ性能を維持するために、2つの重要なパラメータが他のパラメータより、際立っています。それは微分利得と微分位相であり、通常dGおよびdPと短縮されます。このCVBS信号はクロミナンス(カラー)情報と輝度信号(明るさ)を結合して、1つの良く知られたコンポジットビデオ信号とします。このビデオ信号のコンポジット形式は通常の放送TVとして配信されるRF信号を変調するために使われる標準信号であり、必要とする帯域幅の成形にとって重要です。それに加えて、CVBSはベースバンドビデオにとっても単純な1線接続を可能とします。
微分利得と微分位相
微分利得はルミナンスが変化する場合の色飽和度の変動を%で表したものです。微分位相はルミナンスが変化する場合の色合い(色位相)の変動です。理想的なシステムでは、明るさが変化しても色はその飽和度も色合いも変化させてはなりません。したがって、dGおよびdPの値は理想的にはゼロです。しかし、現実のシステムではdGとdPの値はゼロでなく、小さい値ほど良いことになります。dGの測定単位はパーセント(%)で、dPの測定単位は°です。
標準のスタジオ品質ビデオのdG/dP値は、おのおの、0.001%/0.001°~0.2%/0.2°の範囲です。民生用品質ビデオではこれらの数字はおのおのdG/dPに対して通常0.5%/0.5°~5%/5°の範囲です。スタジオ品質値はこれに相当する民生用の値よりも相当に小さい値ですが、これは標準的なスタジオ放送信号は多くのさまざまな連続するビデオ信号処理ステップにさらされ、各ステップが誤差に寄与するためです。したがって、設計目標は累積誤差が放送システムの全体性能を制限しないことです。
図1. 標準的な微分利得および微分位相のための試験信号
微分利得と微分位相は通常、図1に示す変調された5ステップの階段信号を用いて測定します。微分利得はVpp1のVpp2に対する比として100%を乗算して定義されます。微分位相はこれらのカラーバースト位相と比較して、これらのカラーステップのピークトゥピークの位相変動の差として定義されます。
Tektronics VM700のような今日のモダンなビデオ試験装置を使うと、これらのパラメータがボタンを押すだけで測定可能です。しかし、これらのパラメータの影響を視覚化することは極めて重要です。そのような効果を示すプレゼンテーションを以下に行います。
dGが大きい場合のビデオシステムの視覚効果
図2の画像は赤い色の5段の階段信号をシミュレートしています。ルミナンスレベルが暗から明へ変化するにつれて、輝度が変化しても色の飽和度が一定のままであることが望ましいと言えます。もっと簡単にいうと、輝度が変化してもカラーの量は一定にあって欲しい訳です。これは図2の上の部分に示されています。この図で分かるように輝度が最高レベルの右側の最後のカラムに明るい赤色が見えます。しかし、ルミナンスが最高の場所の色飽和度が変化すると、正しくない色飽和が起こります。これはこの図の下の部分の最後のカラムが「色あせた」赤になっていることで分かります。
図2. 微分利得の視覚効果
dPが大きい場合のビデオシステムの視覚効果
微分利得と同じように、ルミナンスレベルが暗から明に変化するとき、位相が一定に留まることが望ましいと言えます。これは図3の上の部分に示されています。位相が変化すると色合いが変化することに注意してください。しかし、ルミナンスが最高の場合に色合い(位相)が変化すると、正しくない色飽和が起こります。ここで、下側の最後のカラムの「赤」は望ましい赤ではなく、橙色のように見えます。
図3. 微分利得の視覚効果
結論
上の例では20%の微分利得誤差と19°の微分位相誤差を用いて、画像に及ぼすこれらの誤差の視覚的影響を劇的に示しています。ほとんどのビデオシステムでは誤差はこれらの値よりもずっと小さくなっています。しかし、小さい誤差であっても画像のビデオ品質が悪化することを理解することは重要です。これは通常のビデオ教材では特に顕著です。したがって、ビデオシステムの設計者にとってdGおよびdPパラメータに注意を払い、それらを可能な限り小さくすることが極めて重要です。意図したカラーがすべて正しく再生されると、ビデオ画像は生き生きしていて楽しいものになります。