コモン・モード信号について理解する

コモン・モード信号について理解する

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要約

コモン・モード信号は、どのようにして発生するのでしょうか。また、それを抑制するにはどうすればよいのでしょう。これらの問いに答えるためには、一般的なケーブルにおけるシールドとグランドの相互作用について理解しておかなければなりません。本稿では、コモン・モード信号の定義、一般的なケーブル構成、シールド付き/シールドなしのケーブルの特徴、代表的な接地(グラウンディング)方法などについて説明します。それを通してコモン・モード信号の発生原因と抑制方法を明らかにします。

本稿では、主にRS-485/RS-422に対応するケーブルと信号に重点を置いて解説を進めます。ただ、その内容は、電話/オーディオ/ビデオ/コンピュータ・ネットワークで扱う信号にも当てはまります。

なお、EDNの2003年4月17日号にも、本稿と同様の記事が掲載されています。

コモン・モード信号の定義

ローカル・コモンまたはローカル・グランドを基準にする場合、コモン・モード信号は2線式ケーブルの両方のラインに同じ位相、同じ振幅で現れます。2本のラインのうち1本がローカル・コモンに接続されている場合、コモン・モード信号は生じません。コモン・モード電圧は、技術的には平衡回路の各導体からローカル・コモン/ローカル・グランドまでの電圧のベクトル和の1/2になります。この種の信号は、以下に挙げる要因のうち1つ、または複数が原因となって発生します。

  • 両方のラインに均等に結合する放射信号
  • ドライバ回路で発生する信号コモンからのオフセット
  • 送信場所と受信場所のグランドの電位差

これらの詳細については、後述します。その前に、まずは様々なケーブルの構成、信号の接地に関する慣例、シールドの接地方法について理解する必要があります。

一般的なデータ伝送システム

データ伝送システムを使用する目的は、ある場所から別の場所へデータを送信することです。2つの場所が1つのボックス/筐体の内部にあっても、筐体内のボックスとボックスであっても、建物や特定のエリア内の2つの筐体の間であっても、建物と建物であっても目的に変わりはありません。図1は、RS-485によって信号を伝送する場合の状況を表したものです。各建物に対しては、異なる電源回路から給電しています。

図1. 一般的なデータ伝送システム。このシステムでは、遠く離れた2つの建物の間でデータをやり取りします。また、この図には、単相配電システムにおいてグランド・ポイントの間に発生するアース電流も示してあります。同様の電流は、3相のY結線システムでも発生します。

図1. 一般的なデータ伝送システム。このシステムでは、遠く離れた2つの建物の間でデータをやり取りします。また、この図には、単相配電システムにおいてグランド・ポイントの間に発生するアース電流も示してあります。同様の電流は、3相のY結線システムでも発生します。

電力の引き込みポイントで、地中に埋められたアース棒に電力契約者のニュートラル線を接続するケースを考えます。その場合、電力線のニュートラル・ポイントが安全なグランドとして確立されます。建物内のすべてのコンセントと設置された機器に対しては、裸線または緑色の被覆線によって、その点が安全なグランド基準として与えられます。産業用のシャーシ・フレームは、シャーシの電力入力ポイントで安全なグランドに接続されます。そして、そこがフレーム・グランドになります。

多くの場合、回路のコモンは、シャーシの1個所以上に接続されます。ただ、実際にはシャーシごとに単一のグランド・ポイントを設けるのが最適な方法です。場合によっては、回路のコモンをフレームのグランドから絶縁することもあります。配電システムでは、安全なグランド線を介して機械の巻線からケースに対してリーク電流が流れます。より一般的には、リーク電流はACの1次側または2次側のニュートラル電流に起因してグランドとアースの間に流れます。こうしたリーク電流により、ニュートラル・ポイントとフレーム・グランドの間には電位差が生じる可能性があります。

グランドの電位差の値は、数Vから数十Vまで様々です。最も大きな電位差は、単相/3相のY結線の配電システムに現れます。その場合、アースを流れるニュートラル電流の比率は、1次回路を流れるニュートラル電流全体の10%~70%になることがあります。通常、グランド・ポイントの間の電圧を測定すると0.2VRMS~5VRMSとなります。一方、遠く離れたグランドの間では、(まれにですが)65VRMSに達することがあります。

ケーブルとノイズ

ノイズの信号は、次のようなことが原因となってケーブルに現れます。

  • 近くの電界の容量結合(E)
  • 近くの磁界の誘導結合(M)
  • 空間内の無線信号の電磁結合(EM)
  • 意図的な伝導あるいは意図せぬ回路パスを介した伝導(C)

結合した信号は 、各ラインに直列に追加された信号として現れます(図2)。表2は、ケーブル内の潜在的なノイズ源の種類と原因についてまとめたものです。ツイスト・ペア・ラインは、結合した信号を均等に遮断するので、入射信号はコモン・モード信号として現れます。各ラインとローカル・コモンの間のインピーダンスが等しい場合、ツイスト・ペア・ラインは平衡状態にあるとされます。

図2. 伝送ケーブルの構成。想定されるノイズ源の場所も示してあります。

図2. 伝送ケーブルの構成。想定されるノイズ源の場所も示してあります。

表1. ケーブルの種類と用途
種類 電気的なリターン経路 代表的な用途
単線ライン アースまたはフレーム 初期の電話や電信の信号伝送回路、自動車の配電
シールド付きの単線ケーブル シールド シールド付きの単線マイクロフォン・ケーブルや、ビデオ信号/RF信号用の同軸ケーブル
シールドのないパラレル・ペア ペアの第2ワイヤ 信号の伝送、ACの配電
シールドのないツイスト・ペア(UTP) ペアの第2ワイヤ 単線の電話、信号の伝送、データ用のケーブル
シールド付きのツイスト・ペア(STP) ペアの第2ワイヤ 平衡型のマイクロフォン・ケーブル、2軸のRFケーブル、シールド付きのデータ伝送用ケーブル
シールドのないマルチツイスト・ペア ペアの第2ワイヤ 26ペアの電話ケーブル、EIA/TIAのカテゴリ1~6に該当する4ペアのケーブル
シールド付きのマルチツイスト・ペア ペアの第2ワイヤ インターコム用のケーブル、EIA/TIAのカテゴリ5/クラスDまたはカテゴリ7に該当するケーブル
表2. 各ケーブル構成におけるノイズ源
種類 en1 en2 en3 en4 備考
単線ライン、アース/フレームへのリターン 放射によるE、EM、M アース電流 受信回路は、負荷においてen1とen2の和に対して不感でなければならない
シールド付きの単線ケーブル 放射ノイズ/伝導ノイズが、メインの導体のシールドされていない部分に加わる場合、またはケーブルの端で信号源のコモンとグランド・ポイントの間に現れる場合 放射によるE、EM、シールドの長さに応じたM シールドの両端が接地されている場合に外部のグランド・パスに流れる電流によって伝導 銅製のシールドは誘導性結合ノイズに対しては効果がない。誘導性結合が存在しない場合と、信号源から負荷までのシールドが完全である場合、信号源と負荷において回路のコモンにグランド・ポイントが直接接続されている場合には、en1は問題にはならない
シールドのないパラレル・ペア 放射によるE、EM、M 放射によるE、EM、M en1とen2は、各ラインが平行で間隔が狭い場合には部分的に相殺される
シールドのないツイスト・ペア(UTP)、またはシールドのないマルチツイスト・ペア 放射によるE、EM、M 放射によるE、EM、M ツイスト線では、en1とen2の振幅と位相が等しくなる。受信回路ではコモン・モード電圧を除去する必要がある。
シールド付きのツイスト・ペア(STP)、またはシールド付きのマルチツイスト・ペア 放射によるM 放射によるM 放射によるE、EM、シールドの長さに応じたM シールドの両端が接地されている場合に外部のグランド・パスを流れる電流による伝導 en3もen4も信号パスには現れない。但し、シールドの両端が接地されている場合、循環電流が発生する可能性がある。en1とen2が存在する場合、受信回路ではコモン・モード電圧を除去する必要がある

回路とシールドの接地

ここでは、回路とシールドの接地についてまとめることにします。

アースへのリターンを伴う単線: 信号コモンのラインは、アース(フレーム)へのリターン・パスによって信号源と負荷でアースに接続されます。回路のコモンもアース(フレーム・グランド)に接続する必要があります。

シールド付きの単線: 信号の電流は常にシールドを流れます。そのため、回路のコモンへの接続は、信号源と負荷の両方で行う必要があります。表3は、様々な条件におけるシールドとグランドの接続についてまとめたものです。

表3. シールド付きの単線ケーブルにおけるシールドの接地
状況 シールドの接地個所 条件
信号源がフローティング
負荷側のみ 信号源はバッテリ駆動であるか、マイクロフォンなどの無給電のトランスデューサ。但し、マイクロフォンのケースがシールドに接続されていることもある。
負荷がフローティング 信号源側のみ バッテリ駆動の機器のように、負荷が絶縁されている。このようなラインは、離れた場所にある接地されていない負荷に信号を送信するために使用されることがある。その例としては、絶縁されたグランド・プレーンを備えるアンテナが挙げられる
信号源と負荷が接地されている 両端 信号源と負荷のグランドは電圧が等しい。そうでない場合、シールド内の循環電流が信号パスのノイズ源になる。二重接地は、単一のシャーシ内または筐体内で使用する。共通/等電位のフレーム・グランドを共有しているか、フレーム・グランドを全く持たない複数の筐体間でも二重接地を使用する。その使用例としては、ホーム・エンターテイメント・システム内のオーディオ・ケーブルやビデオ・ケーブルが挙げられる

2線式のパラレル・ライン:各導体は同じ量の信号電流を伝送しますが、その方向は逆になります。表4は、様々な条件におけるラインとグランドの接続についてまとめたものです。

表4. 2線式のパラレル・ケーブルにおけるラインの接地
状況 シールドの接地個所 条件
信号源がフローティング 負荷側のみ 信号源はバッテリ駆動
負荷がフローティング 信号源側のみ 信号源が電子的で、負荷が受動素子であるか電子的ではない(ヘッドフォンやスピーカなど)。ユーザの建物に電力を供給するAC配電システムで見られる
信号源と負荷が接地されている
両端 RS-232などを採用した電子的な信号伝送システム。但し、RS-232では一般的にツイスト・ペア・ケーブルを使用することに注意
信号源と負荷がフローティング 両端とも接地しない トランス結合の信号伝送システム(ドアのベルのような呼び出しシステム)で見られる。そうしたシステムは、存在する可能性がある低レベルのノイズ信号の影響を受けにくいことが多い

シールドのないツイスト・ペア: 駆動回路や受信回路には、ローカル・コモンまたはフレーム・グランドへの接続が存在する可能性があります。しかし、伝送ライン自体をフレーム・グランドに接続する必要はありませんし、それは望ましいことではありません。差動モードまたは平衡な信号源(RS-422やRS-485に対応するシールドのないデータ伝送回路など)は、離れた場所にデータ信号を伝送します。その場合、信号源と負荷回路はどちらもローカル・グランドまたはローカル・コモンを基準にしています。トランス結合を使用するアプリケーションの例としては、10/100BASE-Tに対応するイーサネット・ケーブルなどが挙げられます。

シールド付きのツイスト・ペア: シールド付きのペア線のシールドを接地します。そうすると、シールドによって遮断された不要な信号やノイズがシャントされます。シールドの一般的な材料としては、銅やアルミが使用されます。それらによって内部の導体をシールドすれば、容量結合/電磁結合の信号の影響が及ばないようにすることができます。ただ、誘導結合する信号に対しては、シールドの効果を得ることはできません。

シールド付きのペア線によって平衡信号を伝送する場合、シールドの一端(通常は受信端)をグランドに接続します。送信場所のグランドが、受信場所のものとは異なるノイズ信号を伝送する場合に、シールドの両端を接地していたとします。その場合、シールドに沿って電流が流れます。2つの接地場所の間に大きな電位差がない場合には、両端で接地しても構いません。この構成は、RS-422/RS-485対応のデータ伝送回路などにシールドを適用する場合に使用されます。RS-485 Application Guidelines(RS-485のアプリケーション・ガイドライン)では、ケーブルの片端または両端で、直接またはヒューズ抵抗器を介してアースにシールドを接続することを求めています。

信号モードの定義

電気信号をケーブルで伝送する場合、その形態はノーマル・モード、ディファレンシャル・モード、コモン・モードに分類されます。以下、それぞれについて説明します。

  • ノーマル・モード: ノーマル・モードの信号とは、ペア・ワイヤの間、またはアース/シャーシ/シールドを基準とする(またはそれらをリターン・パスとする)単一のワイヤに現れる(コモン・モード以外の)すべての種類の信号のことです。ノーマル・モードの信号は、平衡/非平衡の伝送パスにおける2本のワイヤの間で読み取られます(平衡型の2線式のパスでは、1本のワイヤは正に駆動され、もう1本のワイヤは同じ大きさで負に駆動されます。どちらのラインも、回路のコモンに対して電圧レベルが同一になる静止状態または無信号状態を基準とします)。
  • ディファレンシャル・モード:ディファレンシャル・モードの信号は、接地されていないケーブル構成のペア・ワイヤに差動的に現れます。
  • コモン・モード:コモン・モードの信号は、アース/シールド/ローカル・コモンに接続されていない2線式ケーブルの両方のラインに(ローカルの回路のコモンに対して)等しく現れます。例外もありますが、これは受信回路で除去しなければならない不要な信号です。コモン・モード電圧(VCM)は、数学的には、以下のようにローカル・グランド/ローカル・コモンに対する2つの信号を平均したものとして表されます。

    数式 1

ここで図3をご覧ください。これは、2.5Vのコモン・モードの信号に3Vのディファレンシャル・モードの信号が重畳している状態を表しています。DCオフセットは、単一の電源を使用するディファレンシャル・モードのデータ伝送に特有のものです。コモン・モード電圧は、AC、DC、またはACとDCが組み合わされたものとして現れます(図3は、最も単純な例として、AC成分を含まないDCのコモン・モード電圧を表しています)。

図3. コモン・モードの信号とディファレンシャル・モードの信号の例。例えば、RS-485に対応する一般的なトランスミッタでは、コモン・モードのDCオフセット電圧が生じます。

図3. コモン・モードの信号とディファレンシャル・モードの信号の例。例えば、RS-485に対応する一般的なトランスミッタでは、コモン・モードのDCオフセット電圧が生じます。

ケーブルが長い場合(RS-485のデータ・ケーブルなど)、送信元の信号のコモンまたはグランドの電位は、受信場所のそれらの電位とは異なる可能性があります。RS-485の仕様では、駆動用の回路のコモンをフレーム・グランドに直接接続するか、100Ωの抵抗を介して接続するよう規定しています(図4)。

Figure 4. Three types of common-mode signal (eGD, eLC, and EOS) can be present in a 2-wire data-transmission system.

図4. 2線式のデータ伝送システム。3種類のコモン・モードの信号(eGD、eLC、EOS)が存在する可能性があります。

信号コモンでは、コモン・モード電圧は、グランドの電位差/ドライバのオフセット電圧/トランスミッタとレシーバーの間の信号パスに沿って長さ方向に結合したノイズ電圧のベクトル和に等しいと考えることができます。つまり、以下の式が成り立つということです。

数式 2

コモン・モード信号の発生原因

図4には、eGD、eLC、EOSという3つのコモン・モード電圧の発生源が示してあります。それぞれについてまとめると、以下のようになります。

  • 通常、eOSは、単一電源で動作する差動モードのドライバによって発生するDCオフセットです。
  • eGDは、送信場所と受信場所のグランド電位の差を表すノイズ信号です。通常、eGDは、電源ラインの周波数の基本波を含むAC信号になります。場合によっては複数の高調波も含まれることがあります。
  • eLCは、外部の発生源からの容量結合/電磁結合/誘導結合によって、両方の伝送ラインに均等に生じる長さ方向の結合ノイズ信号です。

コモン・モード信号を最小限に抑える

eOSは、差動モードのドライバを平衡型の電源で駆動すれば、非常に小さく抑えられます。場合によっては、ゼロにすることも可能です。それに対し、eGDを最小限に抑えるには、送信場所と受信場所の間の距離を比較的短く保つしかありません。そして、eLCは、シールド付きのツイスト・ペア線を使用することで最小限に抑えられます。ケーブル内で発生するノイズは、しっかりと撚り合わされた2本のワイヤに均等に現れます。これが成り立たない場合、外乱の電界に対するラインの非対称性によって、ノーマル・モードの信号が生じることになります。

対称性は負荷側にも求められます。つまり、ツイスト・ペア線の両方のラインの抵抗性/容量性の負荷インピーダンスを一致させる必要があります。誘導結合による信号を防ぐには、磁気シールドを使用する以外に方法はありません(信号電流を伝送するワイヤは、すべて磁気放射の発生源になることに注意してください)。

コモン・モード信号の抑制

コモン・モード信号VCMは、受信回路で除去する必要があります。これは、次のようなケースではそれほど難しいことではありません。すなわち、受信回路が受動部品(ヘッドフォンやスピーカ)である場合、トランス結合されている場合、絶縁型電源/バッテリで駆動される場合、送信回路のコモンを基準として一切使用しない場合(容量性または抵抗性の接続)です。ここで説明した構成は、本質的にコモン・モード信号の影響を受けにくいものだと言えます。それに対し、送信回路のコモンを基準として使用する受信回路は、VCMの範囲全体を受け入れられるように設計しなければなりません。そのような設計には、同相モード除去(CMR)性能に優れる差動型のレシーバーが必須です。VCMの振幅が比較的小さい場合には、CMRの高いレシーバーだけで十分に対応できる可能性があります。

CMRの高いレシーバー

CMRの高いすべてのレシーバーは、図5に示すような構造を採用しています。つまり、何らかの形式の差動ペアか、3つのオペアンプで構成された計装アンプが使われているということです。各アンプは、VCMが制限された状態で差動入力を受け取ります。VCMの許容範囲は、電源電圧よりもやや低い値までになります。この種の回路は、アナログ信号もデジタル信号も処理できます。

図5. CMRの高いレシーバーの構成要素。これらの差動アンプ回路によって、優れたCMR性能が実現されます。

図5. CMRの高いレシーバーの構成要素。これらの差動アンプ回路によって、優れたCMR性能が実現されます。

VCMがレシーバーのコモン・モード範囲を超える場合には、絶縁を適用する必要があります。その場合、トランス結合による絶縁型の電源に加え、次のうちいずれかの回路を併用することになります。

  • 光学的結合を使用する回路
  • 容量結合を使用する差動回路
  • 誘導結合を使用する回路
  • 抵抗結合を使用する差動回路

これら4種の回路の構成を図6に示しました。これらの回路であれば、VCMの値が高くても、絶縁バリアを越えて信号を伝送できます。通常、各手法は、トランス結合による絶縁型の電源の使用を前提にしています。絶縁電圧の上限は、選択したトランスと絶縁方法に応じて決まります。トランス結合、光学的結合、容量結合の手法であれば、2500V以上の絶縁に対応できます。抵抗結合を使用する場合、絶縁電圧は通常50V~100Vに制限されます。

図6. 絶縁に使用する回路。これらの絶縁手法を採用することで、高いCMRを得ることが可能になります。

図6. 絶縁に使用する回路。これらの絶縁手法を採用することで、高いCMRを得ることが可能になります。

抵抗結合を使用する場合、抵抗ベースの減衰器を介してデータ用の信号を伝送することになります。それにより、データ用の信号とコモン・モード信号の両方が減衰します。抵抗による絶縁を採用した場合、その減衰量によって、受信回路が対応できるVCMが制限されることになります。一方で、減衰したデータ信号も確実に検出できるようにしなければなりません。

図6に示した例では、様々な絶縁型ドライバを使用し、様々な方法によって絶縁型電源の要件に対処します。誘導結合型のデバイスの場合、電源については恐らく何の対応も図られていないでしょう。そのため、外付けの絶縁型電源が必要になります。容量結合型のデバイスの中には、トランス・ドライバを搭載しているものがあります。その場合にも、外付けのトランスが必要です。「MAX3157」、「MAX3250」の両トランシーバーICは、絶縁型の電源を搭載しています。これらを使用する場合、チャージポンプ用に低背型のセラミック・コンデンサを外付けします。それに対し、「MAX1480E 」ファミリの製品は、トランスを含む完全な絶縁型電源を内蔵しています。

コモン・モード信号の発生源と同信号の大きさを把握すれば、ケーブルの種類と絶縁技術を適切に選択することができます。外乱信号の大きさを測定/計算し、システムの全体的な要件を満たす部品を選択すればよいということです。