デザインノート546:はじめに
PCIeカードなどの標準的なシステム基板の上面は、FPGA/ASIC/マイクロプロセッサ、トランシーバ、コネクタ、メモリIC、およびDC/DCレギュレータが高密度に実装されているのに対して、裏面はあまり使用されていません。これは、上面と裏面の高さ制限に大きな違いがある場合に生じる一般的な副作用です。つまり、基板の仕様上、上面に実装するデバイスは数cmに達してもかまわないのに対して、裏面に実装するパッケージは2.3mm未満に制限される場合があるからです。通常は上面に置かれる機能、例えばDC/DCレギュレータ回路などの部品を薄くして、裏側に移動できるとしたらどうでしょう。上面のスペースが広がることを前提に、上面の実装スペースをメモリの拡張や基板の機能向上に利用することができます。
LTM4622は、デュアル2.5A(またはシングル2相5A)出力の降圧μModule®(マイクロモジュール)レギュレータで、6.25mm × 6.25mm × 1.82mmの超薄型LGAパッケージに収容されています。その高さは、1206ケース・サイズのコンデンサを半田付けしたときの高さに近く、きわめて低いので、PCB裏面での実装が可能になり、基板上面のスペースを解放します。このデバイスは外形が薄いので、組み込みコンピューティング・システムでのPCIeや先進のメザニン・カードによって要求されるような要求の厳しい高さ制限に適合することができます。
面積が0.5cm2未満のシンプルな実装領域に収まる柔軟なデュアル電源
LTM4622は、入力電圧範囲が3.6V~20Vと広く、3.3Vの入力電源で動作する場合、最小3.1Vで動作するよう構成できます。このデバイスは、小型のマルチレール・ソリューションの2つの電圧を安定化します。このソリューションでは、各出力が最大2.5A(ピーク値は3A)を供給可能であり、各出力は0.6V~5.5Vの電圧を、入力、負荷、および温度の全範囲にわたって、全DC出力電圧の最大誤差範囲である±1.5%以内に正確に安定化することができます。出力電流が最大5Aと多い場合は、出力をそのまま接続して電流を分担します。
LTM4622は、わずか3つのセラミック・コンデンサと2つの抵抗でソリューションが完成し、その実装面積は片面PCBでは1cm2未満、両面PCBでは0.5cm2未満です。
標準的なデュアル出力アプリケーションでのLTM4622回路を図1に示し、小型のソリューション・サイズを図示します。12V入力で動作する回路での効率および電力損失を図2に示します。
信頼できる高性能レギュレーション
LTM4622は、オン時間制御の電流モード・アーキテクチャを備えており、広い電圧範囲にわたって高速トランジェント応答とループ安定性が得られます。このデバイスは、短絡、過電圧、および過熱保護回路を内蔵しており、モノリシック出力電圧のランピングとトラッキング、ソフトスタート、出力をプリバイアス状態で起動する機能を保証します。入力電源のスルーレートに制限はありません。
図1の回路の1.5V出力レールでの高速トランジェント性能とプリバイアス起動性能を図3および4に示します。
並列動作による大電流アプリケーションへの対応
LTM4622の電流モード・アーキテクチャにより、高い信頼性でサイクルごとに電流をモニタできるので、デバイスの2つの出力を並列に接続して、最大5Aの負荷電流に対応できます。
2相電流分担になるよう構成し、5V入力から3.3V/5A出力(16.5W)を発生する場合のLTM4622の熱性能および電流分担性能を図5および6に示します。
鏡像配置によるPCBの小型化かつ大電力化
LTM4622のピン配置は左右対称に構成されています。したがって、2つのLTM4622を並列接続して最大10A出力に対応する大電流アプリケーションでは、一方のデバイスをPCBの上面に実装し、もう一方のデバイスを底面に鏡像配置して、PCB面積を最小限に抑えつつ、出力電力および電力密度を増加させることができます。
まとめ
LTM4622は超薄型なので、PCBの裏面、あるいは上面の限られたスペースに取り付けるシングルレールおよびマルチレール・アプリケーション向けの高性能レギュレータとして動作させることができます。このデバイスは、その広い動作電圧範囲、機能、および小型ソリューション・サイズにより、柔軟性が高く堅牢なソリューションになります。