LTC3890(デュアル出力)および LTC3891(シングル出力)降圧DC/DCコントローラは、4V ~ 60Vを直接入力できます。この広い入力範囲は、シングル・バッテリまたはダブル・バッテリの自動車環境の入力電圧に対応しており、通常は負荷遮断時にデバイスを保護するために必要なスナバや電圧抑制回路が不要になります。この電圧範囲は、48Vの通信アプリケーションも含まれます。入力電圧と出力電圧の間に絶縁が不要な場合、高価で大きなトランスによるコンバータを、LTC3890または LTC3891で置き換えることができます。トランスによるソリューションと比較すると、LTC3890または LTC3891降圧コンバータは、効率を高め、電源ラインの電力損失を低減し、レイアウトを簡素化して、部品点数を大幅に削減します。
高効率 2フェーズ・コンバータが 12V/25A を生成
12V/25Aを供給するLTC3890による2フェーズ・シングル出力の降圧コンバータ構成を図1に示します。このコンバータは、LTC3890デバイスを追加して電源フェーズを増やすことにより、出力電流を最大75Aまで増やすことができます。低出力電流向けには、シングル・フェーズのLTC3891を使用することができます。2フェーズ・コンバータを実現するには、単にLTC3890の各チャンネルのピン(つまり、FB1とFB2、TRACK/SS1とTRACK/SS2、RUN1とRUN2、ITH1とITH2)を互いに接続するだけです。
ITHピンは互いに接続しますが、配線から生じる可能性のあるノイズを削減するために、 各ピンは個別の47pFコンデンサで終端します。約150kHzの比較的低いスイッチング周波数と10µHの比較的大きなインダクタンスを使って、高入力電圧時のスイッチング損失を低減します。入力電圧が高いときには、デバイスおよび内部ゲート・ドライバをバイアスするのに伴う損失を低減するため、出力電圧をEXTVCCピンに供給します。
回路の性能
空冷せずに測定した効率を図2に示します。効率のピークは負荷範囲の中央で98%近くで、25Aの最大負荷で96%まで低下します。Burst Mode動作での無負荷時の平均入力電流と入力電圧を図3に示します。この電流の値は0.5mA未満です。VIN = 20VでVOUT = 12V/25A(300W)のときの空冷なしでの基板の温度分布を図4に示します。
部品の選択
インダクタの選択は以下の2つの値によって決まります。1つは実効電流値(IRMS)で、もう1つは飽和電流(IPK)です。
ここで、fはスイッチング周波数、kは位相間の電流のバラツキによって決まる係数です。 LTC3890によるコンバータでは、許容誤差が1%の電流検出抵抗を想定すると、k = 1.08になります。
パワーMOSFETと入力/出力コンデンサの選択については、LTC3890のデータシートを参照してください。注意して頂きたいのは、標準的な内部VCC電圧、すなわちMOSFETのゲート電圧が5.1Vですので、設計にはロジック・レベルMOSFETを使用する必要があることです。
まとめ
LTC3890によるデュアル出力/同期整流式降圧コンバータは、高入力電圧/大出力電流の自動車および通信用アプリケーション向けでシングル出力/デュアル・フェーズ・コンバータとして容易に構成できます。