リニアディジタルポテンショメータの対数応用

リニアディジタルポテンショメータの対数応用

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要約

ディジタルポテンショメータ(ディジタルポットまたはデジポット)は音量制御アプリケーションにおいて広く使用されています。オーディオアプリケーションの場合は、音量減衰は、対数スケールを使用して、人間の聴力を忠実に模倣する必要があります。一部の設計では、簡素な低コストのリニアポテンショメータを対数テーパポテンショメータ(対数ポット)の代わりに使用することができます。このアプリケーションノートでは、小型で低コストの高分解能デジポットを使って、対数テーパアプリケーションでリニアポテンショメータを実装する方法について詳述します。

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はじめに

その弾力性、小型サイズ、および使いやすさのために、ディジタルポテンショメータは、特に音量制御アプリケーションにおいてメカ式ポテンショメータの置換え製品として広く受け入れられています。このようなオーディオアプリケーションでは、リニアテーパポットの代わりに対数テーパポットを使用することが通常推奨されています。その理由は、人間の耳は音の対数減衰をリニア減衰として認識するためです。ただし、このアプリケーションノートが示すように、高分解能リニアポテンショメータを使って音量制御を実装することもできます。以下の解析は、リニアディジタルポットを対数ポットとして使用する方法を紹介しています(図1)。

Figure 1.  This family of digital pots is configured in a standard manner, as they include a connection to both the high end and the low end of the resistor string, as well as a wiper connection that moves among the resistor string's tap points.
図1. このディジタルポットファミリは、抵抗ストリングのタップポイント間を移動するワイパ接続のほかに、抵抗ストリングのハイエンドおよびローエンドへの接続も備え、標準的な方法で構成されています。

対数ポットとしてのリニアデジポットの使用方法

簡単な数学とリニアテーパディジタルポテンショメータの基本的な理解を通じて、リニアテーパポットから対数テーパポットを実現することができます。ポテンショメータは基本的に分圧器であるため、VINがRHに印加される場合、その出力電圧(VOUT)を入力VINに印加される電圧によって記述することができます。次式を使って、この関係を表すことができます。

VOUT = VIN(RW-L / RH-L)(式1)

ここで、RW-Lはワイパ(W)と抵抗ストリングのローエンド(L)間の抵抗、RH-Lは抵抗ストリングの全抵抗です。

デシベル単位での任意の信号の減衰量を次式によって求めることができます。

減衰量(dB) = 20 * log(VOUT / VIN)(式2)

式1のVOUTの値を式2に代入すると、次式が得られます。

減衰量(dB) = 20 * log[VIN(RW-L / RH-L)/VIN] = 20 * log(RW-L / RH-L)(式3)

図2は、これらの抵抗は、タップ位置(RW-L)とタップの総数(RH-L)で表すことができることを示しています。

Figure 2. Linear-potentiometer tap points are located at equal resistor segments along the entire resistor string.
図2. リニアポテンショメータのタップポイントは、抵抗ストリング全体に沿って均等な抵抗セグメントで配置されます。

したがって、タップ位置(RW-L)は、以下のように表すことができます。

RW-L = (Total_Taps - x) * R(式4)

ここで、x = 1, 2, 3...Total_Taps.

最初のタップポイント(最小減衰量)には抵抗ストリングの抵抗がないため、総抵抗は、RH-L = (Total_Taps - 1) * Rとして表すことができます。ここで、減衰式は以下の形になります。

減衰量(dB) = 20 * log[(Total_Taps - x) / (Total_Taps - 1)](式5)

ここで、x ≠ Total_Taps。x = Total_Tapsの場合は、減衰量は~∞に近づきます。

結論

上記の手順は、リニアテーパディジタルポテンショメータを対数テーパポテンショメータに変換する方法について詳述しています。この変換は、高分解能のリニアポット(128タップ以上)の場合は最適に機能します。その理由は、128タップポイントを下回るリニアポットの場合は、対数分解能が大幅に制限されるためです。また、ESD保護や、スイッチとして使用されるパストランジスタの非線形抵抗などの他の内部構造のため、精度がエンドポイントで低下する場合もあります。以下のソースコードは、希望する減衰量をタップ位置に変換するだけでなく(図3)、希望するタップ位置を対応する減衰量に変換します(図4)。

Figure 3. This source code converts desired attenuation to tap position.
図3. このソースコードは、希望する減衰量をタップ位置に変換します。

Figure 4. This source code converts desired tap position to the corresponding attenuation.
図4. このソースコードは、希望するタップ位置を対応する減衰量に変換します。

同様の記事が、EE Times誌の2005年4月4日号に掲載されています。