MAX22000とMAX14914Aを使用して、PLC向けの構成可能な入出力システムを構築する

MAX22000とMAX14914Aを使用して、PLC向けの構成可能な入出力システムを構築する

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要約

本稿では、構成(コンフィギュレーション)が可能なアナログI/O製品「MAX22000」について詳細に説明します。また、同製品とデジタルI/O製品の「MAX14914A」を組み合わせる方法も紹介します。回路の構成については、一般的な産業用のアナログ・モードを例にとることにします。

はじめに

従来、PLC(Programmable Logic Controller)では、信号の入出力には機能が固定のI/Oカード(アナログ入力、アナログ出力、デジタル入力、デジタル出力)が使われてきました。ただ、そのことから、いくつかの課題が生じていました。例えば、マーシャリング・キャビネットの配線が必要になる、配備/導入に時間がかかる、将来的に現場で更新を行う際の柔軟性に欠けるといった具合です。PLCやPAC(Programmable Automation Controller)、データ・アクイジション・システムなどに、モジュール方式がもたらす柔軟性を取り入れるにはどうすればよいでしょうか。そのためには、MAX22000MAX14914Aといった構成が可能なI/O製品(IC)を採用すればよいでしょう。それにより、各種のシステムにおいて、同じポートによってアナログまたはデジタル、入力または出力の機能を実現できるようになります。その結果、手作業の配線によるマーシャリングを電子的なマーシャリングに置き換えることができます。また、システムの動作中にソフトウェアによって構成が行えるという大きなメリットが得られます。加えて、I/Oカードのポート密度を高めることが可能になります。

アナログ/デジタルの構成が可能なI/O製品

MAX22000は、産業グレードのアナログI/O製品です。動作中にソフトウェアによって構成を行うことが可能であり、電圧モードまたは電流モードを選択することができます。一方、MAX14914Aは、産業グレードのデジタルI/O製品です。汎用のI/Oを実現するアプリケーションにおいて、MAX22000を補完できるように設計されています。図1は、両製品を使用して実現可能な様々なI/Oモードについて説明するためのものです。ここでは、2/3/4線式の動作モードに対応可能な業界標準の4端子コネクタを利用する場合の例を示しています。両ICを組み合わせれば、同じ端子によってアナログ/デジタルの入出力に対応することができます。具体的には、表1に示した様々な信号の種類/範囲に対応することが可能です。

図1. 動作中にソフトウェアによる構成を実現できるI/O

図1. 動作中にソフトウェアによる構成を実現できるI/O

産業分野で用いられる信号

表1は、産業分野で一般的に使用される信号の種類、値、インピーダンスの制限値についてまとめたものです。PLC向けの規格であるIEC 61131-2に基づいています。

表1. 産業分野で一般的に使用される信号
I/Oの種類 信号の範囲 インピーダンスの制限値 MAX22000/MAX14914Aの対応範囲
アナログ入力 ±10V ≥ 10kΩ ±10V*
0V~10V ≥ 10kΩ 0V~10V
1V~5V ≥ 5kΩ -5V~5V
4mA~20mA ≤ 300kΩ ±20mA
アナログ出力 ±10V ≥ 1kΩ ± 0V
0V~10V ≥ 1kΩ 0V~10V
1V~5V ≥ 500Ω -5V~5V
4mA~20mA ≤ 600Ω ± 20mA
デジタル入力 タイプ1、タイプ3または タイプ2の電流シンク 24V、タイプ1、タイプ3では 状態1におけるIHが最小2mA タイプ1、タイプ3、または タイプ2としてピンを選択可能
デジタル出力 電流源 タイプ1、状態1における定格電流は1A 24VDCで最大1Aの負荷、ハイサイドまたはプッシュプルのオプション
MAX22000は、±12.5V、24mAといったように、公称範囲を25%上回る値をサポートします。

MAX22000の概要

MAX22000は、産業グレードのアナログI/O製品です。その特徴は、動作中にSPI(Serial Peripheral Interface)を介して構成や制御を行える点にあります。このICは、図2に示すような回路ブロックによって構成されています。まず、アナログ出力を実現するためには、分解能が18ビットのD/Aコンバータ(DAC)を使用します。一方、アナログ入力に対応するためには、分解能が24ビットのデルタ・シグマ型A/Dコンバータ(ADC)を用います。それらに加え、シグナル・コンディショニング用の回路ブロックも内蔵しています。そのため、あらゆるアナログ入出力信号に容易に対応することができます。様々なビルディング・ブロックやI/Oモード、使用例については、「MAX22000 - Software Configurable Universal Analog I/O」を参照してください。

図2. アナログI/Oとして機能するMAX22000

図2. アナログI/Oとして機能するMAX22000

MAX22000が内蔵する18ビットのDACと24ビットのデルタ・シグマADCは、セトリング時間が短いことを特徴とします。それらによって、図3に示す4象限のアプリケーションに対応可能なアナログI/O機能を実現します。つまり、正負両方の電圧を出力することが可能であることに加え、電圧が正である場合も負である場合も電流をシンク/ソースすることができます。精度が高く柔軟性に優れることから、PLC、PAC、データ・アクイジション・カード、プロセス制御システムといったアプリケーションに適しています。

図3. 4象限の電圧/電流アプリケーション

図3. 4象限の電圧/電流アプリケーション

正確度、精度、応答時間

MAX22000が備える18ビットのDACと24ビットのADCは、ゲインやオフセットなどを含めて非常に高い精度を達成しています。室温での精度としては、最も厳しい条件の場合でも0.02%という値が得られます。また、リファレンスの温度ドリフト(単位はppm/°C)が小さく、内蔵コンポーネントについては高いレベルでマッチングが実現されています。そのため、MAX22000は、広い動作温度範囲にわたって高い性能/精度を発揮しなければならないシステムに最適です。正確度と精度が高く、応答が高速であることから、自動化されたプロセスにおいて迅速な意思決定を行うことができます。つまり、堅牢性と信頼性に優れる高品質のソリューションを構築することが可能です。

MAX14914Aの概要

一般的なPLCカードは、独立したI/Oカードが提供する数多くのデジタルI/Oポートを備えています。ただ、それは最適化されたソリューションだとは言えません。そうした独立した物理ポートを使用すると、多くのスペースを消費してしまい、設計が複雑になり、消費電力が多くなるからです。より優れたソリューションを採用すべきであることは言うまでもないでしょう。MAX14914Aを採用すれば、より柔軟性の高いデジタルI/O機能を利用できるようになります(図4)。

図4. MAX14914Aが提供する柔軟性の高いデジタルI/O

図4. MAX14914Aが提供する柔軟性の高いデジタルI/O

MAX14914Aの特徴は、様々な種類のアクチュエータに対応して出力の種類(プッシュプルまたはハイサイド)を選択できる点にあります。外部回路を変更することなく、ソフトウェアによって構成を実現できます。3種類の信号閾値レベルに対応したデジタル入力モードを利用することが可能です。

構成可能なI/O製品を組み合わせる

デジタルI/OとアナログI/Oで1つのノードを共有し、様々な入出力を実現するケースについて考えます。その場合の主な課題は、デジタル・ピンがハイ・インピーダンスであっても、そのリーク電流が高精度のアナログ測定にとっての誤差源になる可能性があることです。この課題に対応するために、アナログ・デバイセズは、広く使われているデジタルI/O製品の改訂版としてMAX14914Aを開発しました。同製品は、この種のアプリケーションにおいて、リーク電流を非常に少なく抑えつつ、MAX22000と共にシームレスに動作させることができます。図5に示したのは、同じ端子を共有する形でMAX22000とMAX14914Aを組み合わせた例です。このように両製品を組み合わせれば、リーク電流を最小限に抑えることができます。

図5. MAX22000とMAX14914Aを組み合わせた例。リーク電流を最小限に抑えることができます。

図5. MAX22000とMAX14914Aを組み合わせた例。リーク電流を最小限に抑えることができます。

図6、図7に、MAX14914Aの出力リーク電流の評価結果を示しました。アナログI/Oを使用する際、端子に入出力されるリーク電流が存在すると、性能に悪影響が及びます。ロジック電源入力がDGNDのレベルである場合、0V~10Vに対するリーク電流は無視できます。電圧が0V~-10Vである場合、デバイスの動作電源のGNDノードよりも十分に低いことになり、MAX14914Aは両方の条件でリーク電流を100μA未満に抑えつつ低い電圧に耐えることが可能です。VL(ロジック電源入力)をDGNDに接続した場合、図7に示すように、出力電圧が負であればリーク電流の量は1/2に減少します。それに対し、出力電圧が正である場合にはリーク電流は1/100に減少します。なお、出力電圧が負の場合、キャリブレーションによってリーク電流の線形性を補正することでシステムの精度を高めることができます。

図6. MAX14914Aの出力リーク電流。V<sub>L</sub>がハイ(5V)の場合の結果です。

図6. MAX14914Aの出力リーク電流。VLがハイ(5V)の場合の結果です。

図7. MAX14914Aの出力リーク電流。V<sub>L</sub>がロー(GND)の場合の結果です。

図7. MAX14914Aの出力リーク電流。VLがロー(GND)の場合の結果です。

MAX22000とMAX14914Aは、アナログ・デバイセズの高電圧プロセス技術を採用しています。そのため、両者を組み合わせた場合には、外付けの保護用デバイスを使用することなくシームレスな動作を実現できます。つまり、保護用デバイスの追加によって生じるリーク電流によって、システムの性能が低下することはありません。信頼性を維持しつつ、完全な状態で性能を保つことが可能です。

評価キットによる汎用I/Oの実装とテスト

MAX22000の評価キットは、同IC単体の評価と、同ICをMAX14914Aと組み合わせた場合の評価に必要なハードウェアとソフトウェアを提供します。この評価キットは、PC上で動作するGUI(Graphical User Interface)を使用し、USBポートを介して制御することができます。

このGUIでは、「Configurable IO」タブを使用することにより、すべての動作モードを選択できるようになっています(図8)。その際には、MAX22000とMAX14914Aが使用する信号パスが明るい色で表示されます。図8は、デジタル入力モードを選択した場合の例です。MAX22000のGIOピンを使用して、デジタル入力動作に対応するようにMAX14914Aを構成し、入力の状態を読み取る方法が示されています。

図8. MAX22000の評価キットのGUI。MAX22000とMAX14914の構成を行っています。

図8. MAX22000の評価キットのGUI。MAX22000とMAX14914の構成を行っています。

この評価キットを使用すれば、様々な動作モードを対象とし、全温度範囲にわたって性能を評価することができます(その結果は後ほど紹介します)。以下で説明する各動作モードの構成は、評価キットのGUIに表示されるブロック図に対して操作を行うことで実現できます。

温度に対する性能

汎用のI/Oを実現したい場合、アナログI/Oについては、全温度範囲でFSR誤差を±0.1%未満に抑えなければなりません。ここでいう誤差とは、システム・レベルの全誤差源の影響を含むトータルの誤差のことを意味します。そのためには、様々な条件下における誤差について精査する必要があります。以下では、各モードの性能の概要を示します。


1. アナログ入力電圧モード(±12.5V)


図9に示したのは、MAX22000とMAX14914Aを組み合わせてアナログ入力電圧に対応するように構成した例です。

図9. アナログ入力電圧モードの構成例

図9. アナログ入力電圧モードの構成例

評価の方法としては、高精度のキャリブレータからの電圧を1番端子と4番端子に印加します。この例では、AI3を使用してアナログ入力のアクイジションを行います。図10に示したのは、様々な温度における誤差(%FSR)の評価結果です。ご覧のように、±0.015%FSRの範囲内に収まっていることがわかります。

図10. アナログ入力電圧モードにおける誤差(%FSR)。3種の温度に対する評価結果です。

図10. アナログ入力電圧モードにおける誤差(%FSR)。3種の温度に対する評価結果です。

多くのアプリケーションでは、端子の入力電圧はセンサーによって生成されることになります。この構成では、端子におけるリーク電流が抑えられるので、性能に影響が及ぶことはありません。


2. アナログ出力電圧モード(±10V)


図11に示したのはアナログ出力電圧モードの構成例です。この場合、DACの出力がAOPとAONから出力されます(以下、AOP/AON出力と表記)。AI3の入力は、1番端子で測定された電圧をDACにフィードバックします。それにより、1kΩ~100kΩの抵抗負荷における所望の電圧が維持されます。

図11. アナログ出力電圧モードの構成例

図11. アナログ出力電圧モードの構成例

キャリブレーションは、無負荷の条件と1kΩ負荷の条件で実施します。1番端子におけるリーク電流は、負荷の値が大きい(100kΩ)場合に最大の誤差を生じさせると予想されます。ただ、その誤差は、AI3を介してアナログ出力部の内部回路にフィードバックされる定電圧によって補正されます。そのため、端子では所望の設定電圧が一定値として維持され、システムの性能に大きな変化が生じることはありません。

図12は、キャリブレーションの実行後に1kΩの負荷を付加したことによって生じる偏差/誤差を表しています。ゲイン誤差は±0.005%FSR以内に抑えられています。図13に示したプロットは、1kΩの負荷で最も厳しい条件を考慮した場合の評価結果です。ご覧のように、AOP/AON出力に対する負荷の影響が現れています。このプロットは、アナログ出力電圧モードにおける構成可能なI/Oの性能を表します。負荷が1kΩの場合でも、各温度における誤差が±0.015%FSR以内に収まることがわかります。

図12. 異なるアナログ出力電圧に対する誤差(%FSR)。無負荷でキャリブレーションを実行した場合の結果です。

図12. 異なるアナログ出力電圧に対する誤差(%FSR)。無負荷でキャリブレーションを実行した場合の結果です。

図13. 異なるアナログ出力電圧に対する誤差(%FSR)。1kΩの負荷、異なる温度という条件で評価した結果です。

図13. 異なるアナログ出力電圧に対する誤差(%FSR)。1kΩの負荷、異なる温度という条件で評価した結果です。

3. アナログ出力電流モード(±20mA)


アナログ出力電流モードのソース/シンクの動作は、AOP/AON出力によって実現されます。AI1とAI2の両入力は、高精度の抵抗を使って検出された電流をDACにフィードバックします。それにより、数Ωから500Ωの抵抗性負荷に対して所望の電流を供給することができます(図14)。キャリブレーションは5Ωの負荷という条件で実行します。ここでは、500Ωの負荷という最も厳しい条件を想定して評価を行いました。

図14. アナログ出力電流モードの構成例

図14. アナログ出力電流モードの構成例

電流ループのアプリケーションで想定される負荷の値は250Ωですが、最大で500Ωになる可能性もあります。500Ωの負荷に±20mAの電流が流れると、±10Vの電圧が発生します。そのため、-20mA~0mAの範囲では、リーク電流の値が正側に比べて悪化します。図15に、出力電流が±20mAの範囲にある場合の誤差の評価結果を示しました。ご覧のように、負のループ電流における誤差は、全温度範囲で0.13%FSRの範囲に収まっています。一方、ループ電流が正の場合にはリーク電流は無視できるため、図16、図17に示すように高い性能が得られます。図16には、500Ωの負荷が存在する場合の誤差の評価結果です。図17を見ると、様々な温度に変更しても誤差は0.03%FSR以内に収まることがわかります。

図15. ±20mAの出力電流に対するトータルの誤差(%FSR)

図15. ±20mAの出力電流に対するトータルの誤差(%FSR)

図16. 負荷の値が異なる場合のアナログ出力電流に対する誤差(%FSR)。キャリブレーションは負荷が5Ωという条件で実施しています。

図16. 負荷の値が異なる場合のアナログ出力電流に対する誤差(%FSR)。キャリブレーションは負荷が5Ωという条件で実施しています。

図17. 正のループ電流におけるアナログ電流出力の誤差(%FSR)。500Ωの負荷、異なる温度という条件で評価を実施しました。

図17. 正のループ電流におけるアナログ電流出力の誤差(%FSR)。500Ωの負荷、異なる温度という条件で評価を実施しました。

通常、電流ループの負荷は、産業用プロセスを現場の様々な要件に対応させたり、時間が経過したりすることに伴って変化していきます。そうした条件を考慮し、負荷が未知の値(数Ωから500Ω)になる汎用の電流ループ・トランスミッタでは、正の方向(0~20mA)だけに対応する形でMAX22000/MAX14914Aを使用します。

先述したように、出力電流が負の場合、MAX14914Aからのリーク電流の影響は無視できません。つまり、未知の負荷に対して0.1%FS未満の性能を達成するという目標に対して悪影響が及びます。ただ、PLCが使用されるほとんどの環境では、電流ループ・トランスミッタ・システムの起動フェーズの間に負荷の値が決まります(許容可能な負荷が存在する場合にオープン/短絡の障害を検出)。負荷が既知の固定値である場合、負の電流による誤差は、その負荷を前提としたキャリブレーション・シーケンスを実行することで補償できます。その誤差は線形性を備えるので、負のフルスケールにおいて1点キャリブレーションを行うだけで済みます。それにより、誤差のバジェットを大幅に改善できます。


4. アナログ入力電流モード(±20mA)


4~20mAの一般的なトランスミッタでは、1番端子と4番端子で500Ωの負荷を介して接続を行うことによってループが形成されます(図18)。50Ωの高精度の抵抗によって電流を電圧に変換し、AI5とAI6の間でその値が測定されます。抵抗性の負荷の値は既知であり、アナログ入力部の一部として機能します。そのため、通常はその負荷を基板上に配置した後にキャリブレーションを実行します。リーク電流の影響は、そのキャリブレーション・シーケンスによって補償されます。図19は、様々な温度における誤差が±0.005%FSR以内に収まっていることを示しています。

図18. アナログ入力電流モードの構成例

図18. アナログ入力電流モードの構成例

システムにおいて0.1%FS未満という性能目標を達成するためには、高い精度が得られるよう温度係数が5ppm/°C~10ppm/°Cの抵抗を選択します。例として、温度係数が10ppm/°C、値が500Ωの抵抗を使用するケースを考えます。その場合、100°Cを超えると、抵抗値には約±0.5Ωの変化が生じます。これは±0.05%FSRの誤差に相当します(以下参照)。

数式1

つまり、誤差源となり得る他のデバイスにとっては、ヘッドルームがほとんど存在しないことになります。言い換えれば、高精度の抵抗を選択することにより、システムの性能が決まると言ってもよいでしょう。

図19. 負荷が500Ωの場合のアナログ出力電流の誤差(%FSR)。3種の温度に対する評価結果を示しています。

図19. 負荷が500Ωの場合のアナログ出力電流の誤差(%FSR)。3種の温度に対する評価結果を示しています。

5. 24Vのフィールド電源を使用する場合のアナログ入力電流モード(0~20mA)


図20に示したのは、アナログ入力電流モードの構成例です。端子にフィールド電源を供給する場合の例であり、HVDD/HVDDOは32V、HVSS/HVSSOは-14Vです。なお、HVDDとHVSSの間の絶対最大電圧は48Vなので、HVSS/HVSSOでは-14Vを使用します。

図20. アナログ入力電流モードの構成例。1番端子に24Vのフィールド電源を接続しています。

図20. アナログ入力電流モードの構成例。1番端子に24Vのフィールド電源を接続しています。

この独自のモードはMAX22000が内蔵するDACによって実現され、1番端子の24Vのフィールド電源がトランスデューサ(電流トランスミッタ)に供給されます。このような条件では、50Ωの高精度の抵抗を使用し、その両端でハイサイドの検出を行うことになります。フィールド電源として24Vが望ましい場合、このモードは0~24mAの電流だけに対応します。電流検出アンプの入力AI1、AI2を使用することにより、センサーにソースされる電流を測定します。リーク電流による誤差は、電流が0~24mA、1番端子の電圧が正の値であることから無視できます。ただ、キャリブレーションの性質から、ゼロ・スケールで0.03%の誤差(シフト)が観測されます(図21)。このキャリブレーションは、各端子が0Vという条件で電流源を使用して実行しました。アプリケーションの通常の動作によって24Vのフィールド電源が有効になると、CSAのCMRRによって誤差が生じます。端子における24Vの電圧と電流源を使用したキャリブレーションが完了すると、このゼロ・スケールの誤差は解消されます。このモードにおける誤差は±0.04%FSRに収まります。

図21. 24Vのフィールド電源を使用した場合のアナログ入力電流に対する誤差

図21. 24Vのフィールド電源を使用した場合のアナログ入力電流に対する誤差

フィールド電源を使用しつつ、更に精度を高めたいケースもあるでしょう。その場合、フィールド電源向けに構成したMAX22000に対して別のキャリブレーション・シーケンスを適用することで、問題を軽減することができます。

まとめ

本稿では、アナログI/OのMAX22000とデジタルI/OのMAX14914Aを組み合わせて使用する方法を紹介しました。そのようにすれば、産業用アプリケーションやデータ・アクイジションのアプリケーションにおいて、入出力ポートを共有して効率的に利用することができます。つまり、様々な入出力モードを利用しつつ精度の高いシステムを実現することが可能になります。また、本稿では、各種の構成におけるフルスケール誤差の評価結果も示しました。それらの結果から、このソリューションは、0.1%FS未満の精度が目標となる産業用のPLCやPAC、データ・アクイジション・システム、プロセス制御システム、分散型システムに最適であることがわかります。更に、アナログ出力電流モードに対してキャリブレーション・シーケンスを適用すれば、4象限の電圧/電流の入出力において0.1%FS未満の精度を実現することが可能になります。