フォトカプラを必要としない1000V出力の絶縁型フライバック・コンバータ

フォトカプラを必要としない1000V出力の絶縁型フライバック・コンバータ

著者の連絡先情報

George Qian

Zhijun (George) Qian

Michael Wu

Michael Wu

絶縁型フライバック・コンバータを使用すれば、信頼性が高く、使いやすい電源回路を構築できます。自動車、産業、医療、通信などの分野で、高電圧を扱うために絶縁性を持たせなければならないアプリケーションで使用されています。このような用途では、負荷、ライン、温度に対して優れたレギュレーションを実現しなければなりません。「LT8304-1」は、最大出力が1000Vの絶縁型フライバック・コンバータです。高い出力電圧を要するアプリケーション向けに最適化されていることに加え、フォトカプラを必要としない点を特徴とします。

従来、レギュレーション用の帰還ループでは、アイソレーション・バリアを介して帰還情報をやり取りするために、フォトカプラが必要となっていました。それに加えて、高い出力電圧を直接検出するために、サイズの大きい分圧器も使用しなければなりませんでした。1206サイズの抵抗の場合、対応できるのは最大200Vです。そのため、バルク抵抗ソリューションを採用することになります。1000Vを検出する場合であれば、1206サイズの抵抗が少なくとも6個と、スモール・ボトムの抵抗が必要になります。

4V~28Vの入力を基に1000V/15mAを出力

フライバック・コンバータであるLT8304-1は、コンポーネントの数を少なく抑えて電源回路を構築できることを特徴とします。図1は、4V~28Vの入力電圧を基に、1000Vの電圧と15mAの負荷電流を出力可能なソリューションの例です。なお、出力可能な電流量は、入力電圧の高さに依存して増減します。入力電圧が24Vより高ければ、出力電流は13mAに達します。LT8304-1では、1次側の波形を基にして出力電圧を検出することができます。そのため、高電圧に対応するための大型の分圧器は必要ありません。また、フォトカプラも不要です。

図1. 入力が4V~28V、出力が1000V/15mAの絶縁型フライバック・コンバータ
図1. 入力が4V~28V、出力が1000V/15mAの絶縁型フライバック・コンバータ

LT8304-1周辺のコンポーネントに対する電圧/電流ストレスの算出方法については、同ICのデータシートにガイドラインを示してあります。特に、この1000V出力のソリューションでは、2次側に、出力巻線を3分割したトランスを使用しています。2次巻線の比が1:30の単一のトランスではなく、1次側と2次側の巻数比が1:10:10:10のトランスを使用するということになります。このようなトランスを使うことで、出力電圧のストレスを、高電圧に対応する3個の出力ダイオードと3個のコンデンサに分割することが可能になります。個々のコンポーネントの定格電圧が、全体の電圧の1/3に抑えられるので、出力側のダイオードとコンデンサの選択肢を増やすことができます。

図2に示すように、このフライバック・コンバータのピーク効率は90.5%に達します。フォトカプラを使うことなく、各入力電圧に対する負荷レギュレーションを通常2%~3%に抑えることが可能です(図3)。

図2. 各入力電圧に対する図1の回路の効率
図2. 各入力電圧に対する図1の回路の効率

図3. 各入力電圧に対する図1の回路の負荷レギュレーション
図3. 各入力電圧に対する図1の回路の負荷レギュレーション

4V~18Vの入力を基に800V/10mAを出力

図4に示したのは、4V~8Vの入力を基に、800Vの出力電圧と最大10mAの出力電流を供給可能なソリューションです。このフライバック・コンバータでは、入力が18V、負荷電流が10mAのときに、88.2%のピーク効率を達成できます。図5に、各入力電圧に対する効率を示しました。また図6には、優れた負荷レギュレーションが得られることを示しています。このソリューションにも、コンポーネントの数を少なく抑えられるという特徴があります。

図4. 入力が4V~18V、出力が800V/10mAの絶縁型フライバック・コンバータ
図4. 入力が4V~18V、出力が800V/10mAの絶縁型フライバック・コンバータ

図5. 各入力電圧に対する図4の回路の効率
図5. 各入力電圧に対する図4の回路の効率

図6. 各入力電圧に対する図4の回路の負荷レギュレーション
図6. 各入力電圧に対する図4の回路の負荷レギュレーション

まとめ

LT8304-1は、消費電力が極めて少ない絶縁型フライバック・コンバータです。モノリシック型の使いやすい製品であり、高い出力電圧が必要なアプリケーション向けに最適化されています。1次側のフライバック波形から、絶縁された出力電圧を直接サンプリングするので、すべてのソリューションにおいて高いレギュレーション性能が得られます。また、大きな分圧器やフォトカプラは必要ありません。出力電圧は、2個の外付け抵抗と3つ目のオプションである温度補償用の抵抗によってプログラミングできます。境界モードで動作させることにより、負荷レギュレーションに優れる小型のマグネティック・ソリューションを実現することが可能です。高電圧に対応するすべての回路や制御ロジックと共に、2A/150Vに対応するDMOSパワー・スイッチを、熱性能の高い8ピンのSOパッケージに収容しています。LT8304-1は、3V~100Vの入力電圧に対応して動作し、最大24Wの絶縁出力電力を供給可能です。