概要
設計リソース
評価用ボード
型番に"Z"が付いているものは、RoHS対応製品です。 本回路の評価には以下の評価用ボードが必要です。
- EVAL-ADICUP3029 ($52.97) Ultra Low Power Arduino form factor compatible Development Platform
- EVAL-CN0428-EBZ ($58.85) Water Quality Sensor pH or Conductivity
- EVAL-M355-ARDZ-INT ($58.85) ADuCM355 based Sensor Interposer Board
機能と利点
- 1個~4個のセンサー・チャンネルを測定
- SPI、I2C、またはUART通信を選択可能
- 10ピンJTAG/SWDコネクタを装備しているためプログラミングが容易
- Arduinoに対応したフォーム・ファクタ
参考資料
-
CN0428 User Guide2018/11/09WIKI
-
ラピッド・プロトタイピングを実現するためのソリューション2024/04/15PDF4 M
-
CN0428: 水質測定システム (Rev. 0)2018/11/13PDF332 K
-
液体測定 ―水から血液まで2019/10/01
回路機能とその特長
pH など、重要な液体分析の多くは、電気化学に依拠しています。この電気化学は化学の一分野で、ある反応物質から別の反応物質への電子の転送を測定することで、酸化還元(レドックス)反応の特性を評価します。電気化学手法を直接的または間接的に用いることで、水質に影響を与えるいくつかの重要なパラメータを検出できます。これらのパラメータには、化学的指標、生物学的および細菌学的指標、更には重金属など低濃度の汚染物質なども含まれます。これらの指標測定の多くは、被検体の重要な品質パラメータを決定することに直接関係します。
図 1 に示す回路はモジュール式のセンシング・プラットフォームで、これを用いることで柔軟な電気化学的水質測定ソリューションの設計が可能になります。高度に統合化されているため、1 つの電気化学測定プラットフォームを、pH、酸化還元電位(ORP)、導電率セルなどの様々な水質プローブに適用できます。
このシステムは、異なる水質測定に対し最大 4 つのプローブを一度に接続できます。
回路説明
Rev. 0 を翻訳したものです。最新版は英語資料をご覧ください。
pH 測定の基本
pH 値は、水溶液中の水素イオンと水酸化物イオンの相対的な量を表す尺度です。モル濃度で表すと、25ºC の水には、1 × 10−7モル/リットルの水素イオンおよびそれと同じ濃度の水酸化物イオンが含まれています。中性の溶液とは、水素イオン濃度と水酸化物イオンの濃度が正確に同じであるような溶液です。pH は水素イオン濃度を表すもう 1 つの方法で、次式で定義されます。
そのため、水素イオン濃度が 1.0 × 10−2モル/リットルであれば、pH は 2.00 となります。
pH 電極は、多くの産業で用いられる電気化学センサーですが、特に、水処理・排水処理産業において重要です。pH プローブは、測定用ガラス電極と参照電極で構成され、バッテリに類似しています。プローブが溶液中に置かれると、溶液の水素測定電極が水素活量に応じた電圧を生成し、この電圧が参照電極の電位と比較されます。溶液の酸性度が増す(pH が減少する)につれ、ガラス電極の電位は参照電極の電位と比べ高く(mV が増加)なります。また、溶液のアルカリ性度が増す(pH が増加する)につれ、ガラス電極の電位は参照電極の電位と比べ低く(mV が減少)なります。これら 2 つの電極の電位差が測定電位です。代表的な pH プローブは、理想的には 25ºC において±59.154mV/pH の単位を生成します。これは、次のようにネルンストの式で表されます。
ここで、
E は活量が未知の水素電極の電圧。
a はゼロ点の許容誤差で、±30mV。
T は周囲温度(単位 ºC)。
n は原子価(イオンの電荷数)で、25ºC の場合 1。
F はファラデー定数で、96485 クーロン/モル。
R は理想気体定数で、8.314 ボルト・クーロン/ºK モル。
pH は未知の溶液の水素イオン濃度。
pHISO は基準水素イオン濃度。プローブの資料を参照してください。代表的な pHISOは 7 です。
この式は、溶液が酸性かアルカリ性かによって発生する電圧が異なり、一定の法則で水素イオン活量と共に変化することを示しています。溶液の温度が変化すると、水素イオンの活量も変化します。溶液を加熱すると、水素イオンの動きが速くなり、2 つの電極間の電位差が増大します。反対に溶液を冷却すると、水素の活量は低下します。理想的には、pH が 7 の緩衝溶液中に置かれたときにゼロ・ボルトの電位となるよう、pHISO が 7 の電極が設計されます。
pH 測定における温度補償
溶液の pHを測定する際に考慮すべき極めて重要なパラメータの1 つは、温度変化です。溶液の温度が変化すると、溶液の pH 値も少なからず変化します。この変化値は pH の読み取り値の誤差とはみなされません。これは変化後の温度における溶液の真のpH 値です。
温度の変化は、測定電極の感度の変化をもたらす可能性があり、この感度変化は測定誤差につながります。この誤差は予測可能であり、プローブを温度範囲全域で校正し、その後の測定の温度について補正を行うことで補償できます。
理想的な電極は、pH7 で正確にゼロを示す電極です。pH7 では、電極の感度に対する温度の影響は無視できます。しかし、ほとんどの pH電極は理想的な電極ではなく、温度変化による電極感度の問題があります。一般的な温度誤差は、pH7 を基準として0.003pH/ºC/pH の単位に非常に近い値となります。そのような場合、この 0.003 という補正係数を適用するよう、pH メータを校正することが重要です。
この補償は、温度センサーを pH センサーで正しく校正することで実行できます。それにより、この温度センサーは、温度変化が生じた際にはそれを検知できます。変化が生じると、pH7 を基準とした 0.003pH/ºC/pH単位の補正係数の読み取り値が最終的な pH の読み取り値に加えられ、それによって pH メータは、補正されたより正確な読み取り値を示します。このメカニズムは、温度変化によって生じる可能性のある pHの誤差を補正するのに十分役立ちます。
pH の校正
pH 電極の特性は、電極のコーティングおよび経時変化により、時間と共に変化します。そのため、最大精度を実現するには校正手順が必要です。
校正は、それぞれの pH が既知である 2 種類の緩衝液の pH を測定することにより行います。ソフトウェアには、各種 pHの緩衝液に対する NIST ルックアップ・テーブル、および 0ºC~95ºC でpH 温度補正された pH 値が含まれています。溶液温度の測定には測温抵抗体(RTD)を使用します。
次の線形方程式を使用して、
pH センサーの伝達関数における実際のスロープを決定し、実際のオフセット電圧を測定します。このスロープを計算するには、次式を解きます。
ここで、
y1 は第 1 の点で測定した電圧。
y2 は第 2 の点で測定した電圧。
x1 は第 1 の点での既知の pH。
x2 は第 1 の点での既知の pH。
上記の測定を行い、校正点のいずれかを式 2 に代入した後、次の最終式から未知の pH を決定することができます。
ここで、
x は未知の pH。
y は測定した電圧。
b は測定したオフセット電圧。
m はスロープ。
その後、式 3 を用いて、前述のネルンストの式によって求めた値を調整できます。
詳細については、CN-0428 ユーザ・ガイドを参照してください。
導電率測定の基本
導電率は、物質がどの程度電流を導通するかを示す尺度です。物質が電流を許容できる度合いが導電率の尺度です。金属や半導体の電気伝導は、電気的に帯電した粒子の動きに伴って生じます。原子の外殻にある価電子は、外部から印加された電位差が存在する場合に移動を行い、その結果、電子の流れが生じ、これが電流となります。
H2O の H+イオンおよび OH−イオンへの解離量が少ないため、純水の導電率は非常に低い値となりますが、日常生活で使用する水は相当量のイオン性物質を含んでいるため、導電率は増加しています。とりわけ、水道水、蒸留水、表流水、工業用プラントで使用される水には、様々なイオン成分が含まれています。そのため、溶液中の導電率測定には、溶液中に含まれるこれらイオン性物質の作用を測定することが含まれます。
溶液中に存在するイオン成分には、正電荷および負電荷が関連します。外部電極(陰極および陽極)を通じてそのような溶液に電位差が加えられると、これらの電極間にカチオンとアニオンの移動による電流が発生します。電流を生み出すイオンの流れを測定することは、その溶液中の導電率を測定することになります。
導電率は、移動度、原子価、イオン濃度、溶液の温度など、溶液の様々な要因に大きく左右されます。また、導電率は溶液の純度にも強く依存します。例えば、超純粋な水のサンプルには、それほど多くのイオン成分は含まれていないため、導電率は低く、およそ 5µS/cm です。これに対し、金属塩やイオン成分を含む水のサンプルには、電気を伝導する多くのカチオンおよびアニオンが含まれているため、導電率は高い値となります。塩水ではおよそ 5S/cm となる場合もあります。このような違いがあるため、導電率には広い測定ダイナミック・レンジを設定する必要があります。
金属や半導体の場合と同様、溶液中の導電率はオームの法則に従います。電位差(V)が 2 つの電極間に印加されると、カチオンおよびアニオンの移動に伴い、電極間に電流(I)が生じます。
この電圧(V)は、電流(I)に正比例します。すなわち、V α Iです。
比例定数は、溶液の抵抗(R)に他ならず、次式に示すオームの法則を用いて計算できます。抵抗の単位はオーム(Ω)です。
ここで、
V は電圧で単位はボルト(V)。
I は電流で単位はアンペア(A)。
R は溶液の抵抗で単位はオーム(Ω)。
抵抗の逆数はコンダクタンス(G)と呼ばれます。その単位はジーメンス(S)で、Ω−1と同じです。
電気化学においてもう 1 つの重要なパラメータはセル定数(K)で、これは、電極間の距離(d)と電極面積(a)の比です。
ここで、
K はセル定数(cm−1)。
a は電極の実効面積(cm2)。
d は電極間の距離(cm)。
上記の計算をまとめると、導電率は、溶液の電流を流す能力で、コンダクタンスとセル定数の積で表されます。導電率(κ)は次式で定義されます。
ここで、
G = コンダクタンス(S)
K = セル定数(cm−1)
セル定数(K)の単位は cm−1であるため、導電率(ρ)の単位は通常、S/cm ですが、ほとんどの環境水は、mS/cm または µS/cmの範囲に収まります。
ORP 測定の基本
酸化還元電位(ORP)は、物質が電子を得る(酸化)傾向にあるのか、電子を失う(還元)傾向にあるのかを示す電気化学的な尺度です。別の化学物質を酸化または還元する溶液の特性を表すもので、ミリボルト単位で測定されます。ORP は、酸化剤と還元剤の両方を含む溶液中において、酸化剤の還元剤に対する相対的な量と強度に依存します。ORP センサーとレドックス・センサーという用語はどちらも一般的に用いられており、どちらを用いてもかまいません。実際の測定は pH の測定と同様です。pH は水素イオンの活量を測定して酸/塩基のレベルを示すのに対し、レドックス測定では、電子の活量を測定して溶液の酸化/還元能力を示します。正の結果をもたらす ORP 読み取り値は、酸化を促進する環境であることを常に示します。反対に ORP が負の値の場合は、還元環境であることを示します。ORP は、特定の反応が生じると予想されるか生じないと予想されるかを示すものです。ORP と共に、pH、温度、溶液中の不純物など、溶液の様々な他のパラメータを知ることで、発生が予想される反応を詳細に解析できます。
ORPの測定はpHの測定に類似していますが、電極を正しく選択することが差別化パラメータです。低抵抗の電極を用いることが重要です。プラチナや金などの不活性金属電極は、一般に好まれる電極です。
電気分解のプロセス中、これらの低抵抗の電極は、平衡状態が実現するまで、電子を酸化体に供給するか、還元体から電子の供給を受け続けます。安定状態は、電極での電荷による電位の蓄積により実現され、この蓄積が溶液の ORP となる電圧を生成します。
溶液の酸化還元電位の一部は温度の関数であり、これはネルンストの式に反映されています。
ORP 電極は、次式に示すネルンストのハーフセルのポテンシャル式に従って、レドックス電位を測定します。
ここで、
E は測定した電極の電位。
E0 は、分析対象のシステムに固有の電圧。E0の値は、特定の反応についての化学ハンドブックに記載されています。
T は絶対温度(K)。
n は、酸化種と還元種の間で平衡状態が実現している場合の電子の数。
F はファラデー定数で、96,485 クーロン/モル。
R は理想気体定数で、8.314 ボルト・クーロン/ºK モル。
Aox は酸化体の活量。
ARed は還元体の活量。
電気化学的アナログ・フロント・エンド
ADuCM355 は、必要とされるすべての測定機能を低消費電力マイクロプロセッサ(MCU)と統合した、電気化学測定のためのプラットフォーム・ソリューションを提供します。主要な測定および電気化学的機能に加え、カスタマイズされた柔軟な測定も任意の測定機能を用いて実行できます。これにより、複数の検出パラメータにわたりソリューションを再利用するための非常に低い消費電力を実現し、ベンチトップ測定器の機能と性能をセンサー・ハウジング内に実装可能な、小さいフォーム・ファクタのフル機能測定プラットフォームが可能になります。ADuCM355 は高度に統合化されているため、部品を個別に実装したソリューションに比べ、デバイス数の削減と信頼性の向上を可能にすると共に、整合性がより高い性能を実現できます。
マイクロパワーの高精度アンプ
LTC6078 を用いることで、pH プローブなどの高インピーダンスセンサー向けに高精度バッファを実現できます。その高精度性能および低バイアス電流(1pA の最大入力バイアス電流)は、pH プローブのインピーダンスが数ギガオーム(GΩ)にもなり得るようなこの設計においては、重要な要素です。
LTC6078 の 1µV p-p という低 1/f ノイズ・ファクタも、更新レートが低い検出システムにおいて測定精度を確保するための重要な特性です。LTC6078 は、低電源電圧で高精度性能を維持し、高い入力インピーダンスと広いゲイン帯域幅を備え、また、超低消費電力(54µA)での動作が可能で、シャットダウン機能も利用できます。
アプリケーション・モード
EVAL-CN0428-EBZ ボードは、EVAL-CN0428-EBZ ボードのスイッチおよびジャンパの構成に応じて、温度補償を行った pH測定モードおよびインピーダンス測定モードが可能です。表 1 に、各測定用の各種スイッチ構成を示します。
スイッチ S1 には 2 つの設定があり、プリント回路基板(PCB)にラベル表示されているように pH 設定と Z 設定の選択が可能です。ユーザは、高インピーダンス LTC6078 バッファを用いた電圧測定(pH 設定を使用)、または、ADuCM355 を用いたインピーダンスまたは導電率の測定(Z 設定を使用)が可能です。
スイッチ S2 では、ADuCM355 に内蔵の抵抗(INT)を使用するインピーダンス測定レンジ、または LTC6078 による 10MΩ トランスインピーダンス・アンプ(TIA)レンジを選択できます。ADuCM355 の内蔵抵抗は、大電力 TIA(HPTIA)に対しては最大128kΩ、省電力TIA(LPTIA)に対しては512kΩが可能です。EVAL-CN0428-EBZ には 1MΩ の抵抗も内蔵されており、これをADuCM355 に外付けして用いることで、インピーダンス測定時により低い電流レンジが可能です。
Desired Measurement | S1 Setting | S2 Setting |
pH | pH | Not applicable |
Conductivity or impedance with autoranging from 100 Ω to 10 MΩ | Z | INT selects the internal ADuCM355 resistors with autoranging |
Low current conductivity or impedance greater than 200 kΩ | Z | HI-Z selects the 10MΩ LTC6078 low current TIA range |
pH モードの考慮事項
高インピーダンス LTC6078 バッファを用いて電圧を測定するには、スイッチ S1 を pH に設定する必要があります。pH、ORP、あるいはその他のイオン選択性電極のようなポテンショメトリック・センサーを含む電圧出力センサーには、pH モードを使用します。
インピーダンス・モードの考慮事項
EVAL-CN0428-EBZ をインピーダンス・モードに設定するには、スイッチ S1 を Z に設定する必要があります。インピーダンス・モードは、導電率センサー、電気化学インピーダンス分光法の掃引、その他の抵抗ベースまたは電流ベースの測定に用いられます。
S2 を INT モードにすると(内蔵の ADuCM355 TIA レンジおよびオートレンジ機能を使用)、100Ω 未満から約 10MΩ の範囲のインピーダンスを測定できます。
インピーダンスまたは導電率を測定する場合、ADuCM355 の測定ファームウェアが TIA およびプログラマブル・ゲイン・アンプ(PGA)のゲインを自動的に調整し、A/D コンバータ(ADC)を飽和させることなく入力信号を最大化します。これにより測定のダイナミック・レンジが大幅に増加するため、広い範囲の導電率が測定できるだけでなく、ORP などの低抵抗センサーとpH プローブなどの高抵抗センサーのどちらのインピーダンスも測定できます。実際にこれを行うには、そのような広い範囲での精度を向上するために、複数の外部校正抵抗を用いる必要があります。これらの補助的な校正用抵抗は設計に含まれています。回路がレンジを切り替える必要がある場合は、測定時間が増加します。この増加は、低周波数の測定時には顕著なものとなります。
S2 を高インピーダンス・モードで用いる場合(LTC6078 で外部10MΩ のレンジを使用)、200kΩ から 100MΩ を超える範囲まで測定できます。S2 は、リーク電流の少ない機械式スイッチですが、これは同時に、10MΩ の高インピーダンス・レンジの場合にはオートレンジ機能が使用できないことを意味します。検出可能な最大電流は約 100nA です。そのため、このモードでは200kΩ 未満のインピーダンスは検出できません。
センサー接続
メインのセンサー測定用に BNC コネクタが用意されています。これらの測定としては、pH、ORP、あるいは任意の 2 線式導電率プローブがあります。すべての水質プローブが BNC ベースというわけではありませんが、BNC はアナログ出力プローブとして最も一般的なコネクタです。
温度測定用には、RCA コネクタが使用されます。温度は、負の温度係数(NTC)サーミスタを介してプローブ自体に統合化されている場合がしばしばあります。PT100 や PT1000 などの RTD温度センサーも一般的です。RCA は一般的なインターフェイスの 1 つですが、バナナ・プラグなどその他のインターフェイスもあります。
RCA プラグや RCA アダプタが使用できない場合には、ヘッダP3 を用いて温度入力の測定ができます。
バリエーション回路
4電極の導電率プローブを EVAL-CN0428-EBZに直接使用することは推奨されません。ただし、一般的に ADuCM355 はこれらのプローブに対応できます。エンド・システムにおいて 4 電極測定が必要な場合は、ADuCM355 ソフトウェア・ライブラリのM355_4WireImpedance プロジェクト例を参照してください。
回路の評価とテスト
この回路は、EVAL-CN0428-EBZ 評価用ボード(図 5 参照)、EVAL-ADICUP3029 Arduino ベース・ワイヤレス開発プラットフォーム(図 6 参照)、EVAL-M355-ARDZ-INT Arduino シールド・インターフェイス・ボード(図 7 参照)を使用します。プラットフォーム・ボードのユーザ・ガイドは、www.analog.com/jp/EVAL-ADICUP3029 で入手できます。
システムは、EVAL-ADICUP3029 ボード、EVAL-M355-ARDZ-INT Arduino シールド・ボード(EVAL-ADICUP3029 ボードに挿入)、および最大 4 枚の EVAL-CN0428-EBZ センサー・ドータ・ボード(Arduino シールド・ボードに挿入)で構成されています。EVAL-ADICUP3029 Cortex M3 は Arduino に対応しており、ホスト MCUの役割を果たします。その機能は、センサーと接続するEVAL-CN0428-EBZ ドータ・ボードにある測定エンジンと通信することです。
Arduino シールドは、EVAL-ADICUP3029 とセンサー・ボードの間のインターフェイスです。最大で 4 枚のセンサー・ボードを一度にシールドに装着できます。水質センサー・ドータ・ボードは、既製の pH、導電率、ORP、温度プローブ用に BNC コネクタおよび RCA コネクタの両方にインターフェイスするADuCM355 の、良い使用見本となるものです。
必要な装置
以下の装置類が必要になります。
- EVAL-ADICUP3029 回路ボード。
- EVAL-M355-ARDZ-INT Arduino 対応プラットフォーム。
- ファームウェア付きの EVAL-CN0428-EBZ 水質センサー・ボード(合計で最大 4 枚)。
- USB ポート付きで Windows® 7(32 ビット)以降を搭載のPC。
- シリアル・ターミナル・ソフトウェア(PuTTY、Tera Term、その他同様のもの)。
- USB Type A - micro USB 変換ケーブル。
- 試験溶液。
- BNC 接続可能プローブ(最大 4 個)。
- RCA 接続可能温度プローブ(オプション、最大 4 個)。
- ビーカ(オプション)。
- プローブ・ホルダ/スタンド(オプション)。
- プローブ校正用の校正バッファ(オプション)。
- EVAL-ADICUP3029 の配線パターンを切断せずにドータ・ボードの再プログラミングを可能にする、外部デバッガまたは追加の EVAL-ADICUP3029 ボード(オプション)。ドータ・ボードでの ADuCM355 の再プログラミングについての詳細は、ユーザ・ガイドを参照してください。
推奨機器
次のプローブが推奨オプションです。
- Cole-Parmer 100 シリーズ交換用 pH/温度電極。
- Cole-Parmer 100 シリーズ交換用導電率/温度プローブ、K = 1。
- Sensorex S550C-ORP ヘビーデューティ ORP センサー。
セットアップ
評価用回路のセットアップは、以下の手順に従います。
- 最大 4枚の EVAL-CN0428-EBZボードを EVAL-M355-ARDZ-INTシールド・ボードに差し込み、次いで EVAL-ADICUP3029回路ボードに差し込みます。
- EVAL-M355-ARDZ-INT評価用ボードおよび EVAL-CN0428-EBZ評価用ボードのスイッチ設定がどちらも正しく行われていることを確認します。
- EVAL-ADICUP3029 の仮想 COM USB ポートを PC に接続します。
- CN-0428 ファームウェアの設定に一致するようシリアル・ターミナル・ソフトウェアをセットアップし、正しい仮想COM ポートを選択します。
- EVAL-ADICUP3029 ボードのリセット・ボタンを押すと、ソフトウェアによって水質測定の手順が表示されます。
ドータ・ボードは専用のファームウェアと共に出荷されますが、新しいファームウェアをプログラムできる用意も整っています。ドータ・ボードは、EVAL-ADICUP3029のデバッガ・セクションにより USB を介してプログラムできます。ただし、3 本の配線パターンを切断し、また、EVAL-M355-ARDZ-INT に接続するために同梱ケーブルを使用する必要があります。これらの配線パターンを切断した後、USB を介して通信を行うためのケーブルが必要となります。これ以外のオプションは、追加の EVAL-ADICUP3029を使用すること、あるいは、外部デバッガを使用することです。詳細については、CN-0428ユーザ・ガイドを参照してください。
ハードウェアおよびソフトウェアの運用の詳細は、CN-0428 ユーザ・ガイドに記載されています。このユーザ・ガイドは、アナログ・デバイセズのウェブサイト(www.analog.com/CN0428-UserGuide)にあります。
性能の測定結果
ボードには、TIA が備える各ゲインに専用の、4 つの校正レンジがあります。これらは、プログラマブル・ゲインを持つ内部TIA です。図 10 に、既知の抵抗値を測定した場合の校正後のパーセント誤差を、様々なゲイン・レンジに対して示します。このグラフは、既知のインピーダンスを測定するシステムの精度を実証するものです。ADuCM355 のスイッチ・マトリックスのスイッチ抵抗およびリークを補償することで、既知の抵抗による校正はインピーダンスベースの測定の精度を向上するのに役立ちます。ボードごとに更に校正を行えば精度を一層向上できます。詳細については、CN-0428 ユーザ・ガイドを参照してください。
その後、センサー・ボードを使用して容器入り飲料水の pH レベルと導電率を室温でテストすることで、その性能を評価しました。図 11、図 12、図 13 は、それぞれ pH、導電率、ORP に対して得られたプロット例です。