概要
設計リソース
評価用ボード
型番に"Z"が付いているものは、RoHS対応製品です。 本回路の評価には以下の評価用ボードが必要です。
- EV-ADUCRF101QS3Z ($140.06) ADUCRF101 Quick Start Eval Kit
機能と利点
- 風速計の信号処理機能を完備
- ワイヤレスISMトランシーバ
- マイクロ・コントローラ内蔵
マーケット & テクノロジー
使用されている製品
参考資料
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CN0298: 風速と風向のバッテリ駆動ワイヤレス・データ・アクイジション・システム2017/03/07PDF313 K
回路機能とその特長
図1の回路は、パッシブ風速計からの風速と風向のデータ送信に用いられるISMバンドのRFトランシーバを内蔵した、バッテリ駆動の高精度アナログ・マイクロコントローラ回路です。このアプリケーションでは、内蔵の12ビットA/Dコンバータ(ADC)とウェイクアップ・タイマーを使って風向と風速それぞれを収集します。低消費電力の休止モードを使って節電します。これはワイヤレス・リモート・センシングのアプリケーションでは重要なモードです。休止モードでは、ADuCRF101は1.9µAの電源電流しか消費しないため、バッテリ寿命が長くなります。このモードで動作させた場合、1個のCR2032リチウムイオン・バッテリを1年~2年持たせることができます。
ADuCRF101は、低消費電力のワイヤレス・アプリケーションを対象に設計された、このデータ・アクイジション・アプリケーションの全機能を内蔵したソリューションを提供します。ADuCRF101は、12ビットADC、低消費電力のARM® Cortex™-M3コア、431MHz~464MHzと862MHz~928MHzのISMバンドのRFトランシーバ、およびフラッシュ/EEメモリを備えています。このワイヤレス・データ・アクイジション・システムは、低消費電力が不可欠なバッテリ駆動アプリケーションで動作するように設計されています。このデバイスは、プログラム制御で通常動作モードや各種低消費電力スリープ・モードに直接設定することができます。フレキシブル・モードでは、全ての周辺機器を動作させてデバイスを起動することができ、休止モードでは、内部ウェイクアップ・タイマーがアクティブ状態を維持します。シャットダウン・モードの間、デバイスを起動できるのは外部割込みだけです。
図1に示すアプリケーションでは、12ビットADCとウェイクアップ・タイマーを使って風向と風速それぞれを収集します。節電のため、低消費電力の休止モードを使用します。休止モードでは、ADuCRF101は公称で1.9µAの電源電流しか消費しないため、バッテリ寿命が長くなります。ADuCRF101の機能と9mm × 9mmの小型パッケージ・サイズにより、このようなワイヤレス・データ・アクイジションのアプリケーションにおいて使いやすく費用対効果の優れたソリューションとなります。
回路説明
図1の回路には、全機能を内蔵したワイヤレス・データ・アクイジションのソリューションADuCRF101を組み込んだEV-ADuCRF101MK3Z評価ボードが含まれています。ADuCRF101の機能は、風速計から風速と風向の情報を収集し、この情報を受信モードにした、もう1つのADuCRF101にワイヤレスで送信することです。
EV-ADuCRF101MK3Zは、431MHz~464MHzのISMバンドで使用するように最適化されています。この評価ボードにより、ボード端部のスルーホールを介してADuCRF101に容易にアクセスすることができます。EV-ADuCRF101MK3Zの詳細については、UG-231ユーザー・ガイドを参照してください。このアプリケーションでは、評価ボードを風速計とインターフェースさせています。風速計はケーブルまたはアダプタ・ボードを介して接続することができます(図1参照)。3VのCR2032リチウム・バッテリを使って評価ボードに給電します。
標準的なパッシブ風速計の風速測定部は、磁石が横切るとオン/オフにトグルするリード・スイッチからなります。磁石は風速計のファンのベアリングに取り付けているため、風 によってファンが回転して、磁石が周期的にスイッチを通過するたびにスイッチがトグルします。このスイッチは、プリント回路ボード(PCB)のGNDピンとP0.7の間に接続します。ファンが1回転するとスイッチが1回トグルすることにより、P0.7に割込み信号として使用するパルスが生成されます。この例では、P0.7はIRQ3に割り当てられています。2つのパルスの間隔を使って風速を計算します。32ビットのウェイクアップ・タイマーを使用します。このタイマーでは、ADuCRF101内部の32kHzのLFOSCクロックと値が1のプリスケーラ除数を使用します。ウェイクアップ・タイマーを使用する主な理由は、休止モード時にアクティブ状態になるためで、汎用タイマーではこの状態になりません。したがって、デバイスが低消費電力のスリープ・モードのときでも、割込みタイミングが継続します。
パッシブ風速計の風向測定部は通常、風向計に接続されたポテンショメータからなります。風向計の方向が変化するに従って、ポテンショメータの値が変化します。ポテンショメータの摺動子をADC1ピンに接続し、ポテンショメータの他の2つの接続は1.8Vの低電圧LDOのLVDD1ピンとP3.4ピンに行います。グラウンドに直接接続せずにP3.4ピンに接続することで、P3.4を内部スイッチを介して接地するか、完全に切断するかの選択ができます。ADC変換の後でP3.4をグラウンドから切断すると、消費電流が減少します。P3.4とグラウンドの接続・切断はソフトウェアで行います。この設定の詳細については、UG-231ユーザー・ガイドのADC回路のセクションを参照してください。
データ・アクイジション・システムを制御するソフトウェアのフローチャートを図2に示します。割込みとタイマーのセットアップの後で、ADuCRF101は休止モードに切り替わります。風速の割込みを2回受け取ると、ADuCRF101はフレキシブル・モードになり、Cortex-M3がアクティブになります。風速はウェイクアップ・タイマーの値から計算します。次に、ADCを設定して風向を計算します。その後、ADuCRF101は低消費電力の休止モードに戻ります。10秒が経過して風速の割込みが2回発生すると、ADuCRF101はフレキシブル・モードで起動します。トランシーバが起動して風速と風向のデータを送信します。送信直後、このデバイスはスリープ状態に戻ります。最終的に、ADuCRF101は休止モードに戻ります。この回路では、トランスミッタは周波数偏移が75kHzで最大300kbpsの速度での送信をするように設定します。節電のため、最大送信データレートを使用します。
1回のデータ送信シーケンス時間に対する消費電力を図3に示します。この回路では、差動パワー・アンプ(PA)を最大電力(10dBm)で使用しました。動作周波数は433MHzに設定しました。10dBmの出力電力のときのPAの消費電流は21mA程度です。
ADuCRF101の最大データ送信レート300kbpsを使用することにより、トランシーバが最大電力で送信する時間が最小限に抑えられます。PAの出力電力を小さくすることにより、消費電力をさらに低減することができます。PAの最適な出力電力は、アプリケーションで必要とされる送信距離で決まります。図3から、10秒の周期での1回の送信シーケンスで使用する平均電流は22µAです。この値はCR2032リチウム・バッテリの約1.2年の寿命に相当します。実際には、バッテリの寿命はもっと長くなります。それは、この例では送信が10秒ごとに行われると仮定し、風がないことにより送信が行われない場合を考慮に入れていないためです。
バリエーション回路
データ送信の頻度は任意の値、たとえば10秒ごとから1分ごとに変更することができます。これは総消費電力に大きく影響します。もう1つの変更可能なパラメータはデータを送信するデータレートです。通常は300kbpsを使用しますが、38.4kbpsと1kbpsに変更できます。低いデータレートを使用する利点は、同じ出力電力に対する送信距離が長くなることです。欠点は、長い送信時間を要するために総消費電力が大きくなることです。異なる周波数が必要な場合には、EV-ADuCRF101MK1Zボードを使用することができます。この代替評価ボードは862MHz~928MHzのISMバンドのどこでも動作するように設定できます。
このアプリケーションで使用可能なその他の代替デバイスは、UHFトランシーバADF7023とマイクロコントローラです。これらのデバイスを組み合わせて使用するとADuCRF101と同じ機能を実現できますが、複雑さが増します。
回路の評価とテスト
必要な装置
以下の装置が必要です。
- EV-ADuCRF101MK3Z評価ボード、433MHzアンテナ、ソフトウェアをそれぞれ2組。
- J-Link Liteエミュレータを組み込んだUSB-SWD/UART-EMUZコンバータ・ボード。このボードはEV-ADuCRF101QS3Zクイック・スタート・キットの部品として提供されます。
- パッシブ風速計(たとえばDavis Instruments社製)
- PC(Windows®32ビットまたは64ビット)
セットアップ
以下の手順で回路をセットアップします。
- 風速計をEV-ADuCRF101MK3Z評価ボードに接続します。接続は図1のとおりに行います。ケーブルを使って評価ボード端部のビアに直接接続するか、または評価ボードが実装されているマザー・ボードを介して接続することができます。
- これで、EV-ADuCRF101MK3Zが風速計のデータを収集して送信できます(Txボード)。
- 次に、USB-SWD/UART-EMUZボードをTxボードに接続して、デバイスにコードをダウンロードできるようにします。このコードは評価ボード・キットに付属したDVDに記録されています。デバイスにanemometer_transmit.cコードをダウンロードします。ダウンロードはJ-Link Liteエミュレータを介して行います。DVDからデバイスにコードをダウンロードする方法の詳細については、評価ボードのユーザー・ガイドを参照してください。このコードは、図2に概要を示したように、P0.7を割込みとしてセットアップし、ADC1チャンネルをセットアップして実行します。
- USB-SWD/UART-EMUZをもう1台のEV-ADuCRF101MK3Zに接続し、anemometer_receive.cコードをダウンロードします。このコードは、評価ボードEV-ADuCRF101MK3Zをレシーバ・モード(Rx評価ボード)にセットアップし、UARTで受信したときの風速と風向のデータを出力します。
- Rxボードのグラフィック・ユーザー・インターフェース(GUI)をPCにインストールして、風速と風向のデータを観測することができます。anemometer_Demo.exeファイルを実行してGUIをインストールし、順次表示されるダイアログ・ボックスに従って最後まで進みインストールを完了させます。
図2のフローチャートに示すように、Txボードはデータがある場合に10秒ごとにそのデータを送信します。P0.7に割込みが発生しない場合(つまり無風状態の場合)は、送信しません。Rxボードは直ちにこのデータを受信し、UART/USBコンバータ・ボードを介してPC上で動作するGUIに出力します。
機能ブロック図
テスト・セットアップの機能図を図4に示します。
テスト
GUIからレシーバ・ボードへ接続するCOMポートとボーレートを設定する必要があります。ボーレートを19,200kbpsに固定し、COMポート番号をUSBケーブルで使用される番号に正しく設定する必要があります。GUIは新しいデータを受信するごとに絶えず更新し、長時間データを受信しない場合も、一般にオートゼロを行いません。Txボードの消費電力を最小限に抑えるためには、LK1を取り外して赤色LEDをオフにし、消費電力を低減する必要があります。
UG-480ユーザー・ガイドは、ADuCRF101評価ボードの使用、プログラム、デバッグ、および評価の方法を詳細に説明しています。このユーザー・ガイドにはインターフェース方法を含むボードの全ての機能が記述されています。全ての部品表(BOM)とボードの回路図も含まれています。
UG-231ユーザー・ガイドは、ADuCRF101の機能と特長の包括的なリファレンス・ドキュメントです。このユーザー・ガイドは、このアプリケーションで使用される機能(つまり、タイマー、休止モード、ADC、割込み、およびトランシーバの動作)を含むデバイスの全ての機能の設定方法と使用方法を詳細に説明しています。