マキシムT1/E1/J1トランシーバのT1/E1ループバック動作
要約
このアプリケーションノートでは、マキシムT1/E1/J1トランシーバのループバック機能の概要について述べます。ループバックモードは、デバイスや機器の診断テストに役立ちます。ループバックモードでは、デバイスの一端から送出された信号がネットワークまたは特定のリンクを経由した後、送信デバイスの別の一端に戻ります。この両端の信号は、比較することができます。2つの信号の差異は、障害を追跡するのに役立ちます。
はじめに
このアプリケーションノートでは、マキシムT1/E1/J1トランシーバのループバック機能の概要について述べます。T1およびE1は、任意のメディア上の1.544Mbpsと2.048Mbpsの伝送を表す場合に使用される用語です。
ループバックモードは、デバイスや機器の診断テストに役立ちます。ループバックモードでは、デバイスの一端から送出された信号がネットワークまたは特定のリンクを経由した後、送信デバイスの別の一端に戻ります。この両端の信号は比較することが可能で、差異があれば障害を追跡するのに役立ちます。
ループバック
マキシムT1/E1/J1トランシーバでは、次の6種類のループバックがサポートされています。
- リモートループバック(RLB)
- ローカルループバック(LLB)
- フレーマループバック(FLB)
- 診断ループバック(DLB)
- ペイロードループバック(PLB)
- チャネル単位ループバック(PCLB)
リモートループバック(RLB)
このループバックでは、機器リンクの遠端をテストすることができます。信号は、遠端機器から、LIUおよびジッタ減衰器を通過してループします。
制御レジスタのRLBビットをローに設定すると、リモートループバックは無効になります。
制御レジスタのRLBビットをハイに設定すると、リモートループバックは有効になります。
リモートループバックでは、RTIPとRRINGによって入力されたデータは、ジッタ減衰器を通過してTTIPとTRINGに返送されます。データは通常と同様、引き続きデバイスの受信側フレーマを通過します。送信側フォーマッタからのデータは無視されます。
詳細については、図1を参照してください。
ローカルループバック(LLB)
ローカルループバックでは、TSERからRSERにデータを転送し、TCLKからRCLKにクロックを転送することができます。ローカルループバックは、ディジタルループバックとも呼ばれます。デバイスのディジタル回路を通じてデータがループバックされるためです。
制御レジスタのLLBビットをローに設定すると、ローカルループバックは無効になります。
制御レジスタのLLBビットをハイに設定すると、ローカルループバックは有効になります。
ローカルループバックでは、データはトランシーバの送信側を通して通常どおり送信されます。RTIPとRRINGで受信したデータは、送信されるデータで置き換えられます。ローカルループバックのデータは、ジッタ減衰器を通過します。
詳細については、図2を参照してください。
フレーマループバック(FLB)
このループバックは、アプリケーションのテストやデバッグに役立ちます。フレーマループバック(FLB)では、マキシムのデバイスは、送信側のバックプレーンから受信側にデータをループします。データはTSERからRSER、そしてクロックはTCLKからRCLKに転送されます。
制御レジスタのFLBビットをローに設定すると、フレーマループバックは無効になります。
制御レジスタのFLBビットをハイに設定すると、フレーマループバックは有効になります。
フレーマループバックが有効になると、TSERからの信号はフレーマを通過してRSERに届きます。このループバックは、フレーマの機能をチェックします。T1モードのフレーマループバックでは、フレーム化されていない「すべて1」のコードがTPOSOとTNEGOで送信されます。E1モードでは、通常のデータがTPOSOとTNEGOで送信されます。
フレーマループバックモードでは、受信側の信号はすべてRCLKIの代わりにTCLKでタイミングの同期をとります。フレーマループバックを使用する場合、このループバック中にRCLKをTCLKに接続することはできません。これは、動作不能の原因となるからです。
詳細については、図3を参照してください。
診断ループバック(DLB)
診断ループバックは、デバイスのUTOPIAセクションだけを使用します。診断ループバックは、LIUとデバイスのフレーマセクションをバイパスします。
診断ループバックでは、UTOPIAバスの受信側に送信データパケットをループバックすることができます。これは、マキシムのテレコム製品DS2156などに適用可能です。
診断ループバックでは、SCTの送信セクションによって生成されるデータ、クロック、およびフレームパルスの表示が、物理層デバイスからの対応する信号の代わりとして使用されます。受信側の物理インタフェースモードは、送信側の物理インタフェースモードと同じ値に設定しておく必要があります。受信側のアクティブエッジ選択ビットは、同じSCTの送信セクションが使用するエッジと反対のエッジに設定する必要があります。
詳細については、図4を参照してください。
ペイロードループバック(PLB)
ペイロードループバックは、正しくフォーマットされたデータパターンを受信していることを確認するのに役立ちます。このループバックは、データの再フレームと再フォーマットを行います。
制御レジスタのPLBビットをローに設定すると、ペイロードループバックは無効になります。
制御レジスタのPLBビットをハイに設定すると、ペイロードループバックは有効になります。
ペイロードループバックが有効になると、RTIP/RRINGからの信号はLIUとフレーマを通過してTTIP/TRINGにループバックされます。このループバックモードでは、送信されたデータはTCLKの代わりにRCLKに同期します。受信側の信号は、すべて通常の動作を続行します。TSER、TDATA、およびTSIG端子のデータは無視されます。
T1モードでは、D4とESFの両方のフレーミングモードでペイロードループバックを行うことができます。PLBが有効の場合、SCTは受信側からの192ビットのペイロードデータ(BPVは訂正済み)を送信側にループします。FPSフレーミングパターン、CRC6計算、およびFDLビットは、ループバックされません。これらは、SCTによって再挿入されます。
E1モードでは、ペイロードループバックは、受信側からの248ビットのペイロードデータ(BPVは訂正済み)を送信側にループします。送信側は、ペイロードがTSERで入力されたかのように修正します。FASワード(Si、Sa、Eビット)およびCRC4は、ループバックされません。これらは、SCTによって再挿入されます。
詳細については、図5を参照してください。
チャネル単位ループバック(PCLB)
チャネル単位ループバックは、ペイロードループバックの一部になります。データパターンは、ユーザによって選択されたチャネルを通して転送されて返されます。チャネル単位ループバックレジスタ(PCLR)は、バックプレーンからどのチャネル(もしあるならば)を受信側あるいはT1またはE1ラインからのデータに置き換えるかを決定します。チャネル単位ループバックでは、送信クロック、受信クロック、およびフレーム同期信号を同期させることが必要となります。これを行う方法の1つは、RCLKをTCLK、RSYNCをTSYNCに接続することです。ループバックできるチャネルに制限はなく、またループバック可能なチャネル数にも制限はありません。
チャネル単位ループバックレジスタの各ビット位置(PCLR1/PCLR2/PCLR3/PCLR4)は、発信フレームのDS0チャネルを表しています。これらのビットを1に設定すると、対応する受信チャネルからのデータは、そのチャネルのTSER上のデータに置き換わります。
結論
マキシムのトランシーバに備わるさまざまなループバックモードは、ユーザアプリケーションのライン側とシステム側の両方のデータ伝送エラーを診断するのに非常に役立ちます。ループバックを実装するかどうかは、アプリケーションボードでのお客様の必要性に基づいて決定する必要があります。ループバック動作、マキシムのトランシーバやその他テレコム製品に関するご質問がある場合は、まずマキシムのメンバーセンターにご登録ください。登録完了後、オンラインにてご要望を送信ください。