DN-212: LT1777高電圧、低ノイズ降圧スイッチング・レギュレータ

LT®1777は広い入力範囲のバック(降圧)スイッチング・レギュレータで、特に低ノイズ・アプリケーション用に設計されています。LT1777はテレコム、自動車セルラー電話、GPS受信機の電源など、低ノイズが要求されるアプリケーションに有用です。図1の回路図にLT1777の能力を示します。

図1. 100kHzの低ノイズ降圧スイッチング・レギュレータ

図1. 100kHzの低ノイズ降圧スイッチング・レギュレータ

LT1777は4.7Vから48Vの入力電圧を受け入れることができ、公称スイッチング周波数は100KHzです。モノリシック・ダイには、オンボード700mAピーク電流スイッチ、発振器、コントロール回路、および保護回路を内蔵しています。このデバイスは優れたダイナミック入力電源除去および短絡保護を与える電流モード制御を使用します。低ノイズを達成するために、LT1777は電源経路の小型インダクタ(図1のLSENSE)でプログラムされるdI/dt制限回路を備えています。またスイッチのターンオンおよびターンオフ時にdV/dtを制限する内部回路もあります。

図2は低ノイズLT1777のVSWノード電圧とスイッチ電流を示しています。図3は同じテスト条件(スルー・レート制限なし)での、高電圧LT1676降圧レギュレータのVSWノード電圧とスイッチ電流を示しています。図2および図3から、LT1777のスイッチ・ノード電圧とスイッチ電流波形はLT1676よりもよく制御されており、立上りと立下りも遅いことが分かります。伝導EMIと放射EMIは、パワー・スイッチのターンオン時およびターンオフ時の鋭いエッジを低速化すれば、変換効率がわずかに低下するだけで劇的に減少します。

図2. LT1777のVSW電圧とスイッチ電流

図2. LT1777のVSW電圧とスイッチ電流

図3. LT1676のVSWノード電圧とスイッチ電流(スルー・レート制御なし)

図3. LT1676のVSWノード電圧とスイッチ電流(スルー・レート制御なし)

図4はLT1777およびLT1676の電流波形のスペクトル分析を示します。水平軸は2MHz/DIV(0MHzから20MHz)で、垂直軸は10dB/DIVです。図4からLT1777は、LT1676に比べて約-20dBほど高周波ノイズを減衰することが分かります。

図4. LT1676および低ノイズのLT1777のスペクトル分析波形

図4. LT1676および低ノイズのLT1777のスペクトル分析波形

LT1777はシャットダウン(SHDN)ピンをグランドに接続すればディスエーブルでき、入力電流を数µAに低減します。通常動作の場合、SHDNピンを100pFのコンデンサでグランドにデカップルしてください。LT1777にはSYNCピンもあり、内部発振器を130kHz~250kHzの外部クロックに同期させるのに使用します。デバイスの内部発振器を使用するには、単にSYNCピンをグランドに接続してください。

LT1777はこのような広範囲の入力を許容するので、内部制御回路は通常は出力電源に接続されているVCCピンから電力を得ます。起動中、LT1777はVINから電力を得ますが、スイッチング電源の出力が2.9Vに達した後は、出力電圧を使用して内部制御回路に電力を供給し、それによって高いライン電圧で動作しているときには消費電力を数百mW削減します。

図5はセンス・インダクタLSENSE=0.47μH、VIN=12V、およびVOUT=5Vを使用した場合のLT1777の標準効率曲線を示します。

図5. LT1777の出力の効率

図5. LT1777の出力の効率

低ノイズの両電圧電源

図6の回路はLT1777といくつかの標準部品を使用した、単一10V~28V電源から5Vおよび-5Vの低ノイズ電源を生成するための安価な方法を示します。

図6. 10V~28V電源から±5Vを生成する安価な電源

図6. 10V~28V電源から±5Vを生成する安価な電源

L1AとL1Bは1個のコア上の2つの巻線で、±5Vを発生するために使用されます。2つの巻線間の結合ミスマッチを抑えるために、C2が追加されており、巻線の電位が等しくなるようにして、クロス・レギュレーションを改善します。両方の出力から得られる全電流は500mAに制限されます。最大負電源電流は正5V負荷によって影響され、標準制限は正電流の半分です。

著者

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Ajmal Godil